572 神々の黄昏・7
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どんな攻撃であろうとも、一発当たれば即致命傷。一手一手に対応を間違えた奴から死んでいく。
ペルちゃんは立ち回りが雑なくせに、フィジカルだけで生き残ってる。さすが戒律47型……3つのスキルだけしかないのに、馬鹿げた身体能力だけでトロイの戦士達を相手にしてるよ。
無限湧きしてる雑魚を相手にしているのはレイジ、僕、ハッゲ、エリス、ティアラちゃん、ゼオちゃん。いやまあ、無限湧きではないんだろうけど、そんな勢いで雑魚ロボットがわんさか出現するんだよね。何処から出現してるのかって、トロイの地下からだね。この下にファクトリーがあるらしいよ? マリアンヌちゃんが解析して場所は突き止めたけど、じゃあ誰がファクトリーを潰しに行くのって話になったところで……まあ、そういうことなのだ。誰も手が空かないんですねー。
「お昼寝、ちょっとキツいかも……。職ポイントが尽きそう……」
「ハッゲに頼んで提供して貰いなよ~」
「流石に提供スキルにも限度があるぜ!! もう何度も使えねえ!!」
エリスの職ポイントが尽きかけてる。ハッゲは提供ってスキルでHPから職ポイント、挙げ句自分にかかってるバフの一部なんかもパーティメンバーに渡すことが出来るんだけど、どうやらハッゲの方も職ポイントが枯渇するっぽいね。エリスが幻影を出せなくなったら、ドルスってロボの狙撃がもろに直撃するか、ペルちゃんみたいにフィジカル回避しか選択肢がなくなるんだよなあ。
『ちっ! 小賢しい!!』
「ちょわー!!」
『ペルセウスが【プリンセスハリケーン】を発動』
『カサンドラが【古き暴風の術式】を発動、相殺! 【プリンセスハリケーン】が霧散しました!』
「ぬんっ!!」
『ドルスが【リニアレールガン】を発射、MISS……。対象に回避されました』
なんで攻撃しながら回避も出来るんだよ~……。見てから回避余裕とか言ってるけど、そもそも狙撃が見えないんだよ~!!
「来るで、第5ウェーブやな……」
「職ポイントが4しかなーい!!」
「俺だって10しかねえんだよ!!」
「ん~! ピーマンです! ここを乗り切らないと辛いですから、ね!!」
「正しい判断だ、支持する」
「良い、思います!」
神様のところの神様達が、僕達には理解できない圧縮言語で話しをしてる……。な、なんなの、ピーマンって……。
「エルドリードの権能を発動します!」
『ティアラが【黄金郷の権能:能力再生】を発動、【ハッゲ】【エリス】の職業ポイントが50回復しました』
「は!? なんじゃこりゃ!?」
「え、そんな、嘘……!?」
「驚くのは後にして、敵さんに集中してくださーい!!」
え~……。職ポイントってそんな、即時回復系のスキルが存在してるの……!? しかもこれ、究極スキルとか神技ならまだしも、まさか通常スキル扱い? 何回でも発動出来るってこと!? いや、ヤバいヤバい、こんな事考えてる場合じゃない。雑魚が再出現するんだよ~!!
『ドルスが【パルスキャノン】を発射』
『ペルセウスが【プリンセスディフレクト】を発動、【パルスキャノン】を弾きました!』
『そこっ!!』
「あら!?」
あ、狙撃と魔術が逆パターンだ。ペルちゃんが対応ミスっちゃった、あーあ……。これは戦線崩壊かなぁ……。
『カサンドラが【古き業火の術式】を発動、Block! ペルセウスがダメージを無効化しました』
「あら、10パーセントが出ましたわ!!」
『なぜだ、今のは手応えがあったはず!!』
「これは頂きですわー!!」
『ペルセウスが【プリンセスメテオール】を発動』
『うっ、くっ……!! ああああ!!』
『カサンドラが40,500Gダメージを受け、大きく吹き飛ばされました』
うわあ、この土壇場で!? 確率でダメージ無効とかの効果を引き当てたっぽいなあ、10パーセントとか言ってたし多分そうだわ。
さてこっちも集中しないとね。雑魚の数は、多いなあ……。シャウタの最下層に居た一番強いロボットに似てるけど、あれより何千倍も強いんだよねえ……。どん太君がささーっと駆けつけて、全部なぎ倒してくれないかなあ……。
『機械獣ヴァリドーラの【ホーミングレイ】がレーナに直撃、レーナが【残機・4】になりました』
『レーナが【再出撃】【フルパワーモード】を発動、レーナが【ハイパーモード】で起動しました』
「レーナが6回墜ちたな……。後4回か、厳しいな」
上空で戦ってるレーナちゃん、HP制じゃなくて残機制なの本当別のゲームやってるよねえ、あの子も……。ドラゴン型の機械獣、トロイの戦士達ほどの戦力ではないみたいなんだけど、それでも高速で飛び回られると鬱陶しい上に、馬鹿みたいに硬くてねえ……。もうあれはね、任せっきりよ。
「この数、とても厳しい! デアタ・ライナ!!」
『ゼオが【死の雨】を発動、斬撃の雨が降り注ぎます!』
『【アシッドマグネットスライムボンバー】を発動、磁力を帯びた強酸性のスライム爆弾を投下します。発動先を決め、起爆してください』
100体か200体か、もう数えるのも嫌になるぐらい沢山いるよ~……。まあ、最初から数える気なんてないけどね。全部溶かしちゃえば、まとめて1個の巨大なスクラップなんだからさ!!
「ほ~ら、死の雨避けるんじゃないよ~! こいつを受け取りな~!」
『エリスの【幻影】が一定数以下になったため、自動召喚されました』
「だーくそ、馬鹿みたいに撃ってきやがって!!」
「幻影が秒でなくなっていくんですけどおお!!」
「ぎゃーぎゃー喚いとらんで、はよ幻影ださんかい!!」
「レイジみたいに刀で銃弾弾けるなら、エリスちゃんだって苦労しないの!! それに自動でしか増えませーん!!」
「だったら弾けるようにならんかい!!」
「レイジ、そりゃ流石に無茶振りが過ぎるよ~!! それ、起爆!!」
よし、目標地点に爆弾が到達した。それじゃ、こいつで……こいつで、あれ? あれ……?
「あれ? あれ……?」
「どうしたのお昼寝~! さっさとどっかーんてしてよ~!!」
「アカンで、かなりの数が迫ってきとる!! はよ!!」
「おいお昼寝、まさかだが……。冗談、だよな……?」
「…………」
いやぁ、どうやら冗談でもなんでもなく、これはねえ~……!!
『アラート:【アシッドマグネットスライムボンバー】の発破信号が妨害されています!』
「お昼寝、効果時間、もう終わる! いつ爆発ですか!?」
「発破信号がね、なんかぁ……。妨害、されてるみたいなんだよねえ……?」
「うわぁ~ん! お昼寝さん、土壇場でやらかしちゃったんですか~!!」
「うわぁ~ん、です!! これは神技を切る、仕方ありません!!」
どうやら、どっかの誰かに発破信号をジャックされて妨害されたっぽいねえ……? うわあ、うわあ最悪だよ~。有線の発破装置か、時限爆弾にすれば良かったわ!! リモコン爆弾なんて、機械系相手に絶対使っちゃダメなやつだったよ~!! ごめん、本当にごめん!! ゼオちゃ~ん……神技、切って!?
「――いや、大丈夫だ。アレが完成したようだ。ティア、我を上に送ってくれ」
「あ!! わかりました、送ります!!」
「おお、凄い丁度いい。素晴らし、です!」
「数十秒、凌いでくれ」
『ティアラが【黄金回廊】を開きました』
え、切らないの!? ここで切らなかったら相当に厳しいと思うんだけど、大丈夫なの!? いや、元はと言えば僕が悪いんだけどさ……。どうしよう、爆弾の雷管を何かで狙って、爆弾を起爆させることを優先するべき……? それとも、もう1個爆弾を作ってそれを即席で改造して……!?
『――ヴァリドーラ! カサンドラ! 上空だ、それを絶対に撃ち落とせ!!』
『手が回らない! 忌々しい小娘め! 力だけが強い!!』
「ふぅん!!」
『ギャァアアアアアアン!!』
「止まった。お利口さん、良い的」
『レーナが【フルオープンアタック】を発動、残弾を撃ち切るまで全ての武装を発射します!』
『ギャッ!?』
『機械獣ヴァリドーラが【高速回避運動】を開始』
「ちっ、動いた~」
どーうーしーよー……。僕、ギルドマスターのはずなんだけどなあ~……。戦場で何が起きているかもわからないし、指揮も出来ないし、これじゃもってぃと大差ないよ~……。とりあえず足止め用に、毒沼地化爆弾でお茶を濁すか。
『【クアグマイアボンバー】を発動、毒沼地化爆弾を投下します。3秒後に起爆します――――起爆』
「とりあえずこれで、こいつは安心と信頼の時限式。それ、ドッカーン」
「お!? おお、ええやん!! 侵攻がガタガタになったで!!」
「見ろ、多脚戦車が足を取られて照準が定まってねえ!!」
「チャンスじゃない!? チャンスだよ!!」
おお、お茶を濁すつもりがかなり上手くいった!! そっか、こいつら重いし良く沈むよねえ!! 50センチぐらいしか毒沼地化しないけど、それだけ沈めば十分行動力が下がるか! 雑魚は僕らと変わらないぐらいの人型、もしくは蜘蛛みたいな多脚戦車だし、効果あり……だ! そしたらこのまま、押し返して……んぇ?
「な、なんや、影……上!?」
「新手か!?」
「うわ、人型の巨大ロボット!?」
『――くそぉおおおっ!!』
『ドルスが【ハイメガビームキャノン】を発射』
え、新手……いや! 向こうの狙撃手が撃ってきたってことは、仲間じゃない……!? これって、飛空艇に撃ち込んできてた特大ビーム砲じゃ……ヤバい、直撃する!!
『ティアラが【黄金回廊】を開きました。【ハイメガビームキャノン】が吸い込まれました』
「はい! プレゼントですー!!」
『【黄金回廊】から【ハイメガビームキャノン】が発射、クリティカル! 機械獣ヴァリドーラが240,780Gダメージを受けました』
『ギャァアアアアアアアン!! ガアアアアアアア!!』
『違う、誤射じゃない!!』
直撃、しない……? ティアラちゃんの黄金回廊、あまりにもそれ便利すぎない!? この子のスキル、ぶっ壊れてるよねえ!? いやそれより、この巨大な人型ロボットは……何……?
『――バビロニクスで開発していたのは、何も飛空艇だけじゃないさ』
『――起動キー、アルテナを承認。起動シーケンス、完了。システム、オールグリーン』
「わあ~!! 格好いいです~!! 新型、新型ですよ~!!」
「ここは危ない、退避必要です!!」
『ドルス、なんだアレは!!』
『わからない! 突然現れた! 空から、飛んできたんだ!!』
『なぜレーダーに引っかからなかった!!』
「よそ見をしているなんて、随分と余裕ですわね!!」
『くそっ、この筋肉ドラゴン女め!!』
お、これ、これってもしかして……!? いや、僕も何回か乗ったことあるけど、こんなんじゃなかったじゃん!
『くそ、そいつはマズい!! 逃げろ、ヴァリドーラ!!』
『ギャァアアアン!!』
『逃げる? もうこの戦場のどこにも、お前達の逃げ場はないぞ』
『エリアアナウンス:マリアンヌが【メガリスアーマー・アルティメイタム】を起動しました!!』
『――メガリス・アルティメイタム。戦闘モード』
『ギャアア!?』
えっと、これって……。もしかして、ここは危ないって……! 僕達の、鼓膜が……!?
『マリアンヌ・ULTが【インフィニティ・ヘキサガトリング】を発射スタンバイ!』
「アカン、あんなバカでかいガトリングガン弾いたら……!?」
「おい! 耳がぶっ壊れる前にどこかに避難しねえと……」
「ち、地下や! 地下に行くで!」
「エリスちゃん、大賛成ー!」
「ティアラも賛成ですー!」
「地下に逃げ込めー!!」
『インフィニティ・ヘキサガトリング。発射――――ッ!!』
ヤバい、耳が!! 耳が、死ぬ!!
【インフィニティ・ヘキサガトリング】
右腕に3門、左腕に3門、合計6門のガトリング砲を装備している。両腕を合わせた時に六角形に見えたことからこの名がつけられた。インフィニティの名に相応しく、まさに無限の弾幕を展開してくるロマン兵器。
1発1発の弾丸が成人男性サイズであり、普通の人間が当たれば当然木っ端微塵である。なお、当然のように実弾を採用しているため、途轍もない爆音が響き渡ることとなる。当たらなくても近くに居たら音で死ぬ。なお、マリアンヌはこの音が原因で一度だけ死んでいる。