571 神々の黄昏・6
上陸してからというもの、豪雨のように浴びせられていたビームやミサイルや瓦礫がピタリと止んだ。もはや遠距離で仕留めることは不可能、これ以上の消費は無駄だと判断したのかなと思う。
どん太の魔狼神化モードについていくのは大変だったけど、それだけ急いで接近しなければならない理由があったからね。トロイちゃんを完全フリーの状態で放置なんてしたら、こっちの命がいくつあっても足りないよ。さて、出迎えの挨拶で一撃飛んでくるかな……? ん~……?
『――来ましたね』
『ガウウウ!!(攻撃する!!)』
「待ってどん太」
目の錯覚かなって思ってたけど、やっぱりトロイちゃん……大きいね!? 身長、6メートルぐらいあるのかな。あれだけ攻撃してきてたから、接近したらすぐに近接攻撃を仕掛けてくるかと思ったけど、剣を持ったまま佇んで待ってたわ。それにしても、特大剣を二刀流……。トロイちゃんからすれば片手剣ぐらいの扱いなんだろうけど、私の身長と変わらない剣を2本は……。当たったらアウトと思った方が良さそうね。
それで? なんでまたここまできて迎撃せずに待ってたのよ。急にやる気が無くなった……って、そんなわけないか……。
『聞きたいことがあります』
「それなら、丁度私も聞きたいことがあったから、少し話しをしようか」
『なぜ、魔族は争いを求めるのですか?』
「メルティスを滅ぼしたいから。自分達が滅ぼされたくないから。100パーセント、私利私欲」
『…………清々しい程、本当のことを言うのですね』
「言葉を飾って自分達の行為を正当化したくないからね。やってることはメルティスと大差ないもの。ただ1つ訂正させて貰うなら、魔族全体が争いを求めてるわけじゃない。私達、バビロン様を崇拝する魔族だけがそうなだけ。魔族全体の意志じゃない」
『天族と魔族全体がぶつかり合っているのではなく、メルティスとバビロンがぶつかっていると言いたいのですか?』
「簡潔に言うとね。対話不可能な圧制者には、力で対抗するしかないのよ」
どうして天族と魔族が争っているのかについて考えてたのね。まあ、私からすれば天族は全て敵なんだけど、うーん……ヒュリエスちゃんみたいな例もあるからね。天族憎しってよりは、メルティス憎しって感じ? だから、天魔の衝突ではなく、メルティスとバビロン様達と私達の衝突が正しいよね。
『理解しました……。貴方の聞きたいことは、なんですか?』
「どうして私達と戦わなければならないの? どうしても戦わなければダメなの?」
『戦闘用に、戦をするために作られた私へ、なぜ戦うのかと問いますか。ふふっ……! 愚問でしょう』
今、笑った……?
『戦いたいから。天と魔が衝突する時に備え、力を蓄える。そして天魔が衝突する時、それを調停せよ。つまりマスターは私に、戦えと仰ったのです。戦うために生まれてきたのですから、戦うのは当たり前でしょう。ましてや、領域を侵犯してきた魔族と戦うのは当然のこと』
「……あ~」
『それも、三度も』
「ん~……!!」
あ~。シンギュラリティ号で近寄った一回目が、そもそもトロイちゃん的に激おこ案件だった~……? えっと、二回目が私で、三回目が造反者のことね……。え、じゃあこの宣戦布告とか戦闘って、大元の原因はほとんど私だったりする……? いや~それぐらいで怒らないでよって言いたいけど、う~ん……!!
『ご自身が原因だとお考えですね?』
「うっ……!? ま、まあ……そうなるかなって……」
『うっふふ……!! 安心してください。決断したのは私です……私が貴方と戦いたかった。だからこうしたのです』
「え、どうしてそんなに固執するの……?」
『それを私も知りたいのです。戦うために生まれてきた私が、誰と戦えと言われたわけでもない私が、どうして貴方に固執するのか。攻め込んできたから? 何度も来たから? そんなのは後付の理由、大義名分です。私はただ、貴方と戦いたいからこうしているのです』
トロイちゃん……事前に聞いてた話と違って、物凄く感情的なんですけど……。上手く説得すれば戦闘を回避出来るかもって聞いてたけど、これは絶対に回避出来ないやつじゃん。とことんまで戦って、最後にどちらが立っているかってところまでいかないと、絶対に納得してくれないやつだよ。
『システム:デロナが消滅しました。死霊神の名の下に、デロナの存在を証明しました。【死体安置所】へ自動納棺されました』
『システム:オーレリアが消滅しました。死霊神の名の下に、オーレリアの存在を証明しました。【死体安置所】へ自動納棺されました』
『(お姉さん、青いロボットが、自爆したの……。シャーリーも、ちょっと傷が深いかな……)』
『……デイポボスがやられたようですね。ただでは死ななかったようですが』
「自爆……?」
『指向性を持たせた自爆でしょう。どうしても、邪魔な相手が居たのでしょうね』
『ガウウウ!!(いつまでお話ししてるの!!)』
おにーちゃんが居るのを差し置いて厄介な後衛から的確に潰すとは、これは相当に戦況がマズいことになってそうね……。だからといって、今更援護に行けるわけないし……。
どん太の言う通り、いつまでもお話しをしてるわけにはいかないね。それじゃあ、そろそろ……――殺気ッ!
『最後にもう1つだけ、聞かせてください』
「…………プライベートのこと以外なら」
『ふふっ……。その、ドンタクンなる魔狼が、貴方の最強の従者で間違いありませんね?』
「最強、ではないかな」
『おや……。それは良くありませんね……。それでは貴方に勝った後、完膚なきまでに叩きのめしたと言い難い』
「最良の従者にして最高の相棒、なら間違いないけど」
『ガウッ!!(くるよ!!)』
『それなら良いです。ええ、最高ですね』
『機神装甲戦姫トロイ(Lv.1500)が【戦闘モード】を起動しました!』
嘘でしょ……!? じゃあ、今までのモードって、まさか……!! 戦闘モードじゃなかったって……こと!?
『貴方とこれほどまでに戦いたい理由を、私の中に走るノイズの正体を、確かめさせて頂きます』
「もう嫌ってほど教えてやるわ!! どん太、やるよ!!」
『ワオオオオオーーン!!』
これは、経験したことがないほど辛い戦いになりそうだわ!!