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569 神々の黄昏・4

「あ~あ……。一瞬にして国家予算が~……」

「希少素材が~……」

「でもバリアも破壊出来ましたし、道も出来ました! 完璧ですね!」

『)ヽ´ω`(』


 いやはやあまりにも危険な一発勝負だったけど、なんとかこの勝負に勝つことが出来たね。

 皆にプリティーヌ号へ運び込んで貰ったものは大量の爆薬。それをティティエリーナ号にバビリーニ号を守らせて、バビリーニ号から戦艦型ミサイルプリティーヌ号を発射したのよ。

 十分に引き付けなければプリティーヌ号はブラフだとバレてしまうし、遅すぎては内部で爆発するかこちらに爆風が返ってきてしまう。デロナちゃんとリアちゃんのバリアによる防御にも限界はあるし、考えうる最良の結果で突入出来たのは良かった……けど。


「アレだけバカスカと波動砲を撃ってきてたスナイパーが居ないな」

「カチコチに凍ってたりして~♡」

『いや、恐らくこちらに発見されるのを嫌って隠れているな』

「むぅ~! 卑怯ですね! 正々堂々戦え~!!」

「リアちゃん、その可愛らしいパンチで倒せる相手だと良いね……」

「倒せるのはエリスぐらいだな」

「いや、殴らんでも死んどるで。ほれ、見てみ」


 全く、相変わらずですね~エリスさん……。まあ、リアちゃんは何をしていても可愛いですからね。こらこらリアちゃん、尻尾でスカートが持ち上がってるよ。はしたないからやめなさいな。


「リンネ、大型機の反応が全くない。上空からでも見えたデカブツすら見当たらない。あまりにも不気味だ」

「凍ってる、とは思えないんだよね。ブリザーマンさん達による超越大魔術がいくら凄い威力だったとは言え、これぐらいの対策は当然のようにされていると――うわああ!?」

「今の衝撃は!?」

「右舷に攻撃を受けています! 砲弾は無属性、恐らく……瓦礫です!! 瓦礫を投げつけてきています!!」

「なんで探知に引っかからないんだ!」

「強力なステルス装置を使用しているようです! 狙い撃ちにされています!!」


 瓦礫……あのデカい奴だ。砲台が使えないから、質量で攻撃しようってわけね。エネルギーリソースも使わないし、これで数名退場させられれば上々。何もしないよりも低リスクで高リターンが望める……なるほど、考えなしの巨体ってわけじゃなさそうね。警戒しないと……ッ!?


「緊急着陸!! どこでも良い、とにかく地面に突っ込んで!!」

「リンネ、それではこの船まで」

「良いから!! 相手はマザートロイとその僚機、考えなしの馬鹿な攻撃はしてこない!!」

「搭乗員全員に告ぐ、バビリーニ号は緊急着陸を実行する! 衝撃に備えてくれ!!」

「リンネちゃ~ん、今度はどうしたの~!」


 連携している(・・・・・・)。相手は、連携しているんだ! これまでの敵とは違う、個々の戦力でぶつかってくる相手じゃない。この瓦礫攻撃は陽動、本命は別にある! 私の作戦を、こちらの二の矢三の矢作戦を真似てきた? ありえない話ではない。恐らくこの瓦礫攻撃による轟音で、何かを隠そうとしている……。


「熱源や動体が隠されているなら、瓦礫攻撃以外の連続した音源を探って!」

「あ、ああ? ああ、やってみる……」


 私の直感が正しければ、まず間違いなく……!


「瓦礫の直撃とは別に、な、何かがこちらへ近づいてくる音を検出したぞ!! 左舷後方だ!」

群狼戦術(ウルフパック)か!』

「フリオニール!! 左舷後方、正体不明の敵機の攻撃を防げ!!」

『防御担当は俺に続いてくれ、行くぞ!』

「頑張れ~おに~ちゃ~ん」

「レーナちゃんもカウンターで狙撃に回って!!」

「あわわ~」

「こちらが着陸する前に乗り込んでくるつもりです! させない、追い返せ!!」


 やっぱり、攻撃に合わせて足音を掻き消しながら近づいてきてる! こちらが着陸する前に乗り込んでくるつもりだ!! 敵と対峙する前のこの瞬間、上陸前が最も無防備だと判断してきたわけね。判断が正確、かつ凶悪過ぎる。とことん弱いところに付け込んでくる! おにーちゃんがボソッと言ってたけど、こういうのが群狼戦術(ウルフパック)って言うのね!! やられる側になると最悪の気分だわ!!


「前方、熱源を感知!! トロイだ!!」

「う、撃ってくる!!」


 だあああ~!! 防御担当が今居なくなったばっかりなんですけど!! 狙いすましたかのようにトロイちゃんが出てくるじゃん、最低!! もう上陸するだけ~余裕~とか思ってたのに、上陸する瞬間をフルボッコにされてるじゃん。何か作戦はないかな、どうにかする方法は……。


『龍種の意地、見せる時が来たか……』

「ヴァルフリートさん! やれるんですか!!」

『やれるか、ではない。やるのだ』

「……貴方だけが頼りです(・・・・・・・・・)

『ああ……ああ、わかった』


 ここでヴァルフリートさんの切り札を使うのは痛いけど、致し方ない……。トロイブラスターをまともに食らったら間違いなくこの船は蒸発する。二の矢三の矢、群狼戦術……辛い戦いになるわ。


「リンネちゃん、僕達も誰か参加したほうが良いんじゃない……?」

「いえ、大丈夫です……。ヴァルさんがとっておきの、切り札を使います」

「ほんまにその切り札だけで大丈夫なんやろな、二の矢が要るんとちゃうか!?」

「いいえ! 二の矢は逆に、用意してはいけないんです。それが彼の、特性なので……!!」


 ヴァルフリートさんはその昔、龍王国を守るためにたった一人でオルヴィスの前に立ちふさがった。実力差は明白だったのにもかかわらず、オルヴィスを撤退に追い込み、龍王国を守ることにも成功している。つまり彼は、特別な条件が揃った時……途轍もない力を発揮することが出来る。


『ヴァルフリートが特殊状態【我が主の最後の希望】状態になり、【最後の闘志】【龍種究極覚醒】【闘神降臨】【限界突破】【超越】が発動しました』

『ヴァルフリートが解放超越スキル【龍の炎】の発動スタンバイ!』

「うわああ!? なんだい、この揺れは!!」

「まだ発動前やっちゅうのに、なんやこの衝撃波は!?」

「リアちゃん、デロナちゃん、掴まっておきな」

「はい! つるつるのおじさん!」

「は~い!」

「あ゛あ゛あ゛あ゛エリスちゃんがそれ代わるぅぅぅうう!!」

「馬鹿なこと言ってる場合じゃないでしょ!!」


 龍の炎。ただ、それだけの名前のスキル。ドラゴンブレス、超龍砲、炎の息吹……数あるブレス攻撃の中でも、『龍の炎』と称することが世界に(・・・)赦されているのは、私が知る限りではヴァルフリートさんのこの一撃しか知らない。これが絶対的な龍の炎であり、他はこの名を使うことすら赦されていない。

 ガリャルドやつくねちゃんが『龍の炎』を真似ようとした時、発動に失敗して肉体を内側から炎で焼かれるという『龍炎の呪い』が発動した。騙ることが赦されていないのだ。


『ゴォオオア――――』

『ヴァルフリートが解放超越スキル【龍の炎】を発動しました!』

「――――ッ!?」

「~~!!」


 発動の瞬間、私達の周囲から音が消えた。音も、色彩も、何もかもを焼き尽くす龍の炎が、トロイちゃんの発射したブラスターと衝突する。

 極光――まともに見つめれば目が潰れるほどの燦爛たる輝き。みるみるうちに都市を覆っていた氷が溶け、再攻撃を仕掛けようと動き始めた刹那、砲台自体が熔解し始め崩れ落ちた。

 私達に向けられていた防衛兵器達が次々と熔解し、空中要塞メルティナの廃墟が溶岩へと変わる。まるで、太陽がこの場に召喚されたかのような灼熱。

 この司令室は防弾どころか断熱処理等も完璧にしたつもりだった。しかし、そんなのは全くの無意味。この空間ですらステラヴェルチェの砂漠のど真ん中よりも暑く、様々な機器がオーバーヒートの警告灯を発している。恐らく、熱暴走に耐えきれず爆発するエリアも出てくるだろう。

 

 これが、龍の炎。あらゆるものを焼き尽くす、騙ることが赦されない最強の炎。


『攻勢防御! 【オメガトロイブラスター】は【龍の炎】に飲み込まれました!』

『システム:バビリーニ号、全ブロックにて火災が発生! 被害甚大! 墜落します!!』

『システム:活動が危険な酸素濃度です! 呼吸に注意してください!!』

「(オ、キシゲン、ボム!!)」

「(にゃああ……!)」

『オーレリアが【オキシゲンボム】を発動、酸素濃度が急激に上昇します!』


 司令室の僅かな隙間から漏れ出た空気が、龍の炎によって酸素も焼き尽くされてしまった。私は酸素濃度が低下しても不死属性だから問題ないけど、お昼寝さん達は一呼吸で死に直結する可能性がある。一度この龍の炎を見た後だったからオキシゲンボムという選択がすぐに取れたけど、最初に発動した時は不死属性じゃない子が死んじゃって……。まさか、そんな原因で死ぬなんてって驚いたものよ。


『く、かぁ……はぁ……ふぅ……』

『ヴァルフリートが【龍の炎】により燃え尽き、【灰燼】状態になりました。死体安置所へと自動転送されます』

「ヴァルさん……。お疲れ様、ありがとう……」

『システム:ヴァルフリートが特殊な死亡状態になりました。最大短縮でも復活には2時間00分必要です』

「……リン、ネ!! 墜落、する!! 衝撃に、備え」

「うわあああああああ!!」


 龍の炎が逆噴射の働きをして、バビリーニ号の墜落が早まったんだ!! さっさと地面に到着したかったからこれは助かる……本当に、ありがとう!! 救世主ヴァルフリート……!!


「く、うぉ、痛え……」

「部屋の中で人間ピンボールみたいになってたねえ~……」

『(我が神! こいつは強すぎる、狐ちゃんと兎ちゃんを寄越してくれ!)』

「え……? 千代ちゃん! シャーリーちゃん、フリオニールとエスちゃんの援護に行って!」

「御意!! 全員、此方に続け!!」

「は~い!! 兵隊さん、皆行くよ~!」

「姫千代班、出番だぞ! 行け行け! ワイも行くで!!」

「レーナシャーリー班、行くっすよ~! 先に向かってるレーナちゃんと合流するっす~!」


 フリオニールが音を上げるほどの相手、これは想像以上に厄介な相手が突っ込んできたかもしれない……。私が行って解決したいけど、総大将の相手を誰がするんだって話になるし……。


「全員緊急下船!! この船も爆発するぞ!!」

「残りは全員事前の打ち合わせ通りに、ここからが作戦の本番よ! さあ、散って!!」

「よぉ~し、いっくぞ~! 皆ついてこーい!!」


 さあここから、ここからよ!! 一進一退の空中戦からの地上戦!! これが本番よ、気を引き締めて行くよ!!


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