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563 あっさりと

 パーニェイナはあっさりと降参を選択した。戦闘力の全てはアルティメイタムだったようで、自分にはお金を稼ぐ能力と、それを使う能力しかないからとのこと。ちなみに魔術やスキルの発動にはシルバーを消費する必要があるようで、負け戦にこれ以上お金を使いたくないって。


『驚いたよ。まるで別人のようだ。この私を倒すために選び抜いた仲間達も見事だ』

「誰と一緒でも勝てた。倒すためのイメージは無限にあったから」

『……嘘だ、と言いたいところだが。どうやらその目は本気で言っているらしいな』


 実際、私はパーニェイナに勝つための作戦を幾つも用意していた。これはその作戦のうちの1つに過ぎず、他の子ときても倒し切る自信はあった。リアちゃんかゼオちゃんが一緒にいたなら余裕だっただろうし、エスちゃんがデロナちゃんと一緒だったらもっと余裕だった。それに奥の手もまだ切っていない。


『私では力不足だったな。お前の本気を引き出すことが出来なかった』

「いや、私は本気だったよ。倒すためにはどうすればいいか、何千もの強敵達を屠りながら策を練り続けたから勝てた。本気で挑んだからこその圧勝だよ」

『……そうか。失礼なことを言ったな、すまなかった』

「えっ……。ん、お望みとあらば、本気の中でも最大の本気を見せるけど?」

『勘弁してくれ。アルティメイタムを再構成するための費用がどれだけかかると思っているんだ。まったく……まあいい、それよりもだ』


 ちょっと意外。まさかパーニェイナが謝ってくるなんて思いもしなかったから驚いちゃった。話題を切り替えて驚いたのは隠したつもりだけど、まあ財の神なんて御大層な名前がつくほどの商人。一瞬だけ表情に出たのを見逃したりはしないだろう。触れないでくれたのは、優しさだね。


『私はどうすればよかった? 何をすれば勝てた?』

「イメージよ」

『イメージ……?』

「常に自分が有利な展開を作り続けるイメージ。戦場を支配し、あらゆる可能性を考慮して、最悪の結果を引いても依然有利であり続けるための策をイメージするのよ」

『そんな完璧な策、私の手札では……』

「だから私は増やしてきたじゃない、手札を。確実に勝つための手札をね」

『そうか……。強さの秘訣について理解出来た気がする。感謝するよ』


 よかった、私の思考を理解してくれる人がいて。うちの従者やギルドメンバーに考え方を伝えた時、いつも『ちょっとよくわからない』って言われてたから、パーニェイナにも伝わらなかったらどうしようかと思ったわ。てっきり私の考え方が間違ってるのかと。


『さて、何か欲しいものはあるか? 勝者の権利だ、遠慮なく言いたまえよ』

「えっ」

『そこは別に驚くところでもないだろう……』


 いやいや驚くよね。だって超が付くほどケチな商人が、何か欲しいものはあるかって言ってくるんだよ? 勝者の権利だから遠慮なくって。まさかなにか貰えるなんて思ってなかったから、急に言われても困っちゃうなあ……。うーん、それじゃあ……。


「じゃあ、アルティメイタムの設計図ちょうだい!」

『は?』

『(;´∀`)!?』

「リンネ殿、それは……」

「さすが我らが主、ド鬼畜で御座います」

「エスちゃんそこまで言う!? えーいいじゃん、倒したんだし! もう私達は究極体を超えたんだから、ちょうだーい! 勝者の権利! 勝者の権利ー!」

『参ったな、遠慮なくとは確かに言ったが、本当に遠慮の()の字もない』


 いいじゃん! 遠慮なく言えって言ったもん!!


『まあまあ、なにもやらんとは言っていないんだ。そんな膨れっ面はよしてくれ』

「え、くれるの!?」

『お前が欲しいと言ったんだろうが。それにこいつはもうアルティメイタムじゃない』

『パーニェイナから【元アルティメイタムの設計図】を受け取りました』

「ありがと……アルティメイタムじゃない?」

『究極の到達点ではなくなったからな。これを超えなければならない』


 おお、早速勝利のイメージに向かって前進しようとしてる! そうよね、負けて悔しいよね! 到達点だと思っていたところが通過点だったのはムカつくよね! じゃあ超えないと!


『さて、またアルティメイタムと名付けるのも芸が無いな……』

「また超えられちゃったら恥ずかしいしね~」

『(;´∀`)……』

「流石はド鬼畜、我らが主で御座います」

「エスちゃん!? エスちゃん今、おかしかったねえ!?」

『お前も自分がおかしいのを自覚したほうがいいぞ』

「なんか言った!?」

『いや何も……』


 エスちゃん最近毒舌が過ぎない!? 最初は素直でいい子なのかなって思ってたけど、段々と本性が出てきたよねえ!? 名前の通りサディストになってきたよねえ!?


「じゃあ次の機体は、ずんどこ丸」

『オーバーテイカー』

『ほう?』

「ずんどこ」

『あ、お前は黙ってくれ』


 ずん……ずん……。


『超越する者。何度でもその名を冠することが出来るだろう? 前のオーバーテイカーを超えたなら、オーバーテイカーマークツーとか、オーバーテイカー改とか』

『いい名前だ、気に入った。お前の主より何千億倍もいいな』

『(*´∀`*)』

「リンネ殿には名付けの才能がありませぬ故、致し方ありませぬ」

 

 名付けの才能が、ない!?


「ええ、今世でもカーミラと名乗って本当に良かった。ジャンボは、まだマシでしたね」

『ぴゃう?』


 まだ、マシ!?


「リンネ様のつけるお名前は、ちょっと独特ですからね!」


 独、特……!?


「ティア、たまにはハッキリとリンネさんに変だ(・・)と言ってやったほうがいいですよ」

「えっと、でも、リンネ様が傷ついちゃいますし……」

「その言い方が一番効くかと」

『わん!! わん!!(ご主人!! 変な顔!!)』

「そういえば、一番の被害者がいましたね」


 被害……者……!? どん太、嘘だよね……?


『わう、わうんっ!!(僕の名前と一緒で、変な顔!!)』

「名前が、変……!?」

『他所様の飼い犬にどうこう言うのは失礼だが、どん太は酷いと思うぞ』

『(;´∀`)』

「あ……。あ……? あ゛……」

「あ、リンネ様が倒れます~!!」

『まさか戦闘よりもダメージを受けているんじゃないだろうな』


 どん太、なまえ、へん、ひどい……? あ、あ゛……あ゛……!? ア゛……。


『おいおい、嘘だろう……?』

『精神的ショックにより【気絶】状態が発生します』


 もうだめ、こころ、ぽきんって、いった。つらい。つらいもん。


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本作をご覧頂き誠にありがとうございます
 宜しくお願いします!
ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました ~裏イベントを最速で引き当てた結果、世界が終焉を迎えるそうです~Amazon版
アース・スターノベル様より出版させて頂いております!
― 新着の感想 ―
> また超えられちゃったら恥ずかしいしね~ キレッキレの煽りで草が止まらん パーニェイナにも勝ったのに、己の壊滅的ネーミングセンスを自覚させられて気絶してしまった……。リンネちゃんの特大の弱点ですね…
個人的にはめっちゃどん太ちゃんいい名前だと思ったのに...自分もダメージ受けたよ...響きがいいじゃんね〜!!そう思わないですか〜?!!
数少ない欠点。 ネーミングセンス!!
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