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561 チートのようなバグのような正常な異常者

「主任、神木の29階のボスってどのぐらいかかる想定で作られてますか?」

「短期決戦でも3分、長期戦になると20分はかかるはずだが」

「ですよね。52秒って記録はチート使用ってことで摘発していいですか?」

「待て、プレイヤー名は?」

「えっと~……リンネです」

「バカモン!! そいつがこのゲームのバグだ!! そいつなら何も異常じゃない!!」

「え、チートじゃないんですか……? いや、無理ですよね……?」


 この新入りは何もわかっていない。リンネの脅威を何も知らない。何も理解できていない。新人教育担当は何をしていたんだ? このゲームには、ぶっ壊れているプレイヤーが1人いると!! なんでちゃんと教えていないんだ!!


「過去の映像を遡って見てみろ!!」

「は、はい! えっと、うわあ! ロゼって子と戦闘してますよ!!」

「ロゼだぁ!? ゴルゴラのロゼか!?」

「えっと……そうです!!」

「そいつは選定(・・)する剪定(・・)で気に入ったプレイヤーを隔離して、強制的に4人パーティまで減らす害悪ボスだ。しかも勝てる相手だけを選びやがる最悪のボスだ。おまけに本体はその可愛い子ちゃんじゃなく、遠くに見えるデカい薔薇の株が本体だ。ドリアードみたいなやつだな……どうやって勝った? パーティ編成は?」

「2人です!」

「2人だあ!? 剪定の対象外だぞ、4人以下では不発なんだよ!! なんで初見でその選択が出来るんだよ。やっぱりチートか? ボスを事前に知ることが出来るチートとか使ってるかもしれん、調べてみろ! 絶対何かの痕跡が出る!!」


 ロゼに2人で挑むだあ!? やっぱり何か補助ツールを使ってるんだろ? 古代神術も発動が早すぎるんだよ、どうしてスクロールを取り出して発動するよりも早く古代神術が発動できるんだあの異常者。バグだ、バグなんだよ存在が!!

 それに運営への質問機能もだ。毎回毎回こちらが想定していない質問ばっかり送ってきやがって、その度にチームと管理AIで『これ仕様? バグ? 仕様かなぁ……仕様だよね』とか悩む羽目になって!! ンァアアアー!!


「えっと、ずーっと2人で周回しているから、2人で挑んだだけみたいですよ」

「はあ!? ずっと2人!? どれだけやってたんだよ……」

「29階を、累計38時間は周回してますね……。最初は大人数だったみたいですけど、ついてこられなかったのか、徐々に人数が減ってるみたいです!」


 38時間、は……? 29階を? 38時間? バケモノ揃いの29階だぞ、まだ装備も+0だよなぁ!? ステータスだって追いついてない、ギリギリの戦いを強いられるはずの29階を……ほわあ。バグだぁ、バグ報告しなきゃぁ。うんえいさん、バグりようしゃがいまーす。俺が運営なんだよボケが!! バグなのはプレイヤーなんだよアホが!!


「1人で、強化機の設計図揃えちゃったみたいですね……」

「は、え? あれは100人規模のギルドで数週間かけてやっと完成する、もしくは今回のアトランティス復興で設計図の一部が手に入れられるだけで、1人で完成させられるはずないだろ」

「38時間で1000周以上やってるみたいです……」

「せ、せ……!?」


 はあああ……。はあ、はあ……? 1000以上も行っちゃったんでちゅか? しゅごいでちゅね、やばいでちゅね。僕達がお休みだー、おねんねしよーってぐっすりしている間に、1000周以上回って強化機を……いや待て、どの強化機を完成させた?


「どの強化機が出来た?」

「全部です!」

「バカ、全部なんて強化機はねえんだよ!!」

「え、でも、全部です……魔界系4種、全部……」

「…………バカか!?」

「えっと、バグです!」

「知ってんだよバカが!!」


 全部って、神器に将器に超機に宝具、全部か!? 全部だ、うわあ……。全部完成してやがる、地獄道の幻想郷に、強化機が4種建設終わってやがる……。しかもなんだ、ついでと言わんばかりに呪物作成人形と邪神の業火もレベル9までいってんじゃねえか! 馬鹿野郎それは、ダメだろ!

 邪神崇拝をしているプレイヤーは少ないが、バグの弟子が邪神崇拝してただろ……。ついでと言わんばかりに余ったエーテル瓶を全部突っ込みやがったのか……。なんてことしやがる……。


「でぇ!? ロゼは、何分かかったんだ? 流石に苦戦しただろ」

「いえ、秒殺されてます……」

「あ、うん、そう……。僕のロゼちゃんが……」

「え、きも……」

「俺が作ったんだよ!! 俺のデザイン、俺のこ・ど・も・な・の!! 秒殺!? そんな悲しいことがあるかよ、首を落としても死なないし、出血しない限りダメージを負わないようにしてあるチートボスだぞ? なんで的確に出血狙うかなあ!! どうして弱点にすぐ気がつくかなあ!?」

「あ、そうなんっすね……」


 ロゼちゃん、ロゼちゃぁ~ん……。俺の癖がいっぱい詰め込まれたロゼちゃんを秒殺、秒殺……。なんて酷いことを……。どこで弱点に気がついたんだ? 最初は普通に立ち回ってるように見えるが、どこで弱点に気がついて……。いや、どこで気がついたのかわからん!! やっぱチート使ってると思うわ!! そうじゃなきゃこんなすぐに弱点バレないだろ。


「やっぱチートじゃない?」

「いえ、チートどころかアドオンの1つも使われてないですね。バビオン以外に起動しているアプリが1個もないです。いやあ、凄いですね……。これが最高峰のプレイヤーの動きですか」

「あのなぁ!? 最高峰のプレイヤーがこいつだったら、他のプレイヤーが山の麓ぐらいにしかいねえんだよ!! 同じ土俵に乗せるな、こいつは別だ!! こいつは山の頂上じゃない。空どころか宇宙ぐらいまで突き抜けてるぶっ壊れなんだよ!!」

「確かに周回速度は凄いですけど……」


 こいつ、まだリンネのヤバさを理解していないようだな……。よろしい、この俺がリンネのヤバさを纏めて教えてやろう。どれだけこいつがイカれているかをな。


「こいつはな、まず今で37日目だ」

「え、嘘ですよね? うわ本当だ!」

「レベルランキングは開始して3日ぐらいでトップになった。ペナルティで出現するモンスターを逆に狩るっていうバカみたいなプレイを確立させ、一気にトップになった。そもそもこれも、ゲームを開始する前に出現するガイド役の天使を殴り倒しちまったことがキッカケだ」

「え? そんな天使今はいないですよね?」

「メルティスが次元の狭間に送り込んでいた天使だが、そのアクセス経路である天界の一部がリンネによってぶっ壊されたからな。だから今は世界の管理者が代行している。前は天使がガイドしてたんだよ。自由に冒険しろってキャッチコピーがあるのに、ガイド役の天使に従ってメルティス教に入信させられてたんだ。意外にもこれを不思議に思うプレイヤーが全くいなかった。集団心理と潜在意識ってやつだ。皆やってるし、こういうゲームなんだろうってな」

「は~……。それを事前情報無しで、殴り倒したんですか? え、でも天使も流石に避けません?」

「避ける。というか防衛機能が備わってた。普通は攻撃的な行為をされるとガイドを放棄してターラッシュの草原にぶん投げられるようになってたんだが、開始してものの数秒で、天使が反応するよりも先に拳が顔面に突き刺さってた。そして、魔神バビロンの特殊出現フラグを踏んだわけだ」

「うわ~……。その頃から異常だったんですね……」


 うむ、お前にもこいつの異常さがわかってきたようだな……。他にもこいつはな――――。


「――――で、本来その時点で捉えられるはずのないオルヴィスもぶっ倒してしまって、現在ストーリーが大絶賛完全崩壊中だ。いや、崩壊というかこちらの想定を上回りすぎているが正しいな。本当はメギド率いる不死の軍団に周辺各国が制圧されて、メギドと戦争をするのに勢力拡大をしなければならないってストーリーになるはずだった」

「それが、丸々吹っ飛んじゃったんですか」

「そのせいで見ろ! 冒険者の全体レベルがガタガタだ!!」

「だからこんなに差が酷いんですね~……」


 これまでのリンネの話をしていたら、つい熱が入ってしまったな。いやはや、これじゃ俺がリンネの大ファンみたいじゃないか。可愛いロゼちゃんを秒殺しちゃったプレイヤーなんて、誰がファンになるもんかよ。いやあそれにしても凄いな、リンネは……大したやつだ……。


「あ、ログインしてきましたよ!」

「38時間周回した後に、3時間で復帰してきたのか……?」

「体調は大丈夫なんですかね……。あ、元気そうですよ」

「あ、そう。よかったね……」


 もう復帰してきちゃったの……? もっと休んでろよ、頼むから。これから何をする気なんだ? ええ、パーニェイナ? 財の神を、倒しに行こうだ!? お願いだからそれ以上強くならないで欲しいんだけど、うわあこれ以上強くなっちゃったらどうするんだよ。


「主任、めっちゃ顔が笑顔になってますよ」

「はあ!? なってないが!?」

「まあ、そういうことにしておきますね」

「そういうことってなんだよ。別に俺はファンでもなんでもねえんだよ!!」

「それも、そういうことにしておきますね~」


 こいつ、俺をバカにしやがって……!! 誰がこいつなんか、俺の可愛いロゼちゃんを秒殺したこいつなんか、うおおお……!! でもロゼちゃんの本体と戦ったらどうなるんだろうな、流石に5分はかかるか? 神木のダンジョンの奥で出る設定だし、そのうちまた衝突するよな? あ、衝突したら俺に通知が入るように設定しちゃお! いの一番で見たいしね。


「…………俺、ここで上手くやっていけそうな気がするっす」

「そう? まあ、結構ハードだけど給料はいいから。頑張ってくれや」

「うっす」


 なんだこいつ、めっちゃ笑顔で気持ち悪いな。まあ、長く続けてくれるならそれに越したことはないし、問題行動さえしなければどうでもいいわ。それより、こんなに知識がないんじゃ、他にもやっちゃいけないタブー行為とかも教えておかないとな。


「よし、そしたらタブー行為とかについても教えといてやる。よく覚えておけよ」

「あ、うっす!」


 全く、新人教育担当は何をやってるんだよ。こっちの仕事ばっかり増えて大変なんだぞっつうの! まあいいや、とりあえずダメなことは先に教えておかないとな! ふんふんふ~ん。

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本作をご覧頂き誠にありがとうございます
 宜しくお願いします!
ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました ~裏イベントを最速で引き当てた結果、世界が終焉を迎えるそうです~Amazon版
アース・スターノベル様より出版させて頂いております!
+注意+

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