557 ぶっちぎりでイカれた覚悟・5
まったくもう、とうとう遊び疲れてどん太達はほぼ全員寝ちゃったわ。丸まったどん太に包まれて、全員仲良く夢の中よ。寝てる子はレイヴスラシルのマイホームにそのまま転送して置いてきたわ。
「さ~て~と~……?」
『うむ……』
『( ^ω^)』
「ええ……」
残ったのは私とおにーちゃんとヴァルさん、そして千代ちゃん。なんか珍しい組み合わせになったけど、このメンバーが残ったのは都合がいいよ。なんせ今から何をやっても黙っていてくれるからね。
「200周で半分溜まったんだから、倍走れば完成するでしょ」
『う~む……』
『( ;^ω^)』
「ええ~……」
「正直さ、パーティ分けだとかぱんぱかタイムだとかで、意外と時間を使ってたからね。ボスも私と千代ちゃんで殺す以外何も考えずに全力周回すれば、200ぐらいなんとか行けるでしょ」
「行けるでしょうか……」
『遅めの夕食を挟んだとはいえ、20時間連続……いや、前日から合わせて30時間以上連続ではないか?』
『我が神の体調が心配だ』
「メディカルスキャンをしたけど、絶好調だったよ。リアルタイムスキャンでもプレイに適した体調って言われてるし」
「精神的に疲労を感じ次第、お辞めになられたほうが……」
「計画の遂行には装備強化が必須なの。絶対にね……! 正直、今の貧弱な装備でレギンさんやパーニにダメージ通ると思う? 勝てそう?」
『……奇跡的に、全ての攻撃を捌いてダメージを受けず、なおかつこちらの攻撃は致命的であるならば、勝てると思うが』
『千に一つ、いや……万に一つの勝ち筋であろうな』
「ぽこんことオロチ程度であれば、造作もありませぬが」
「強い相手には何度チャンスがあっても足りないよね。一度のチャンスをものにするには、強力な装備の組み合わせと強化が必須なのよ」
強い相手と戦う時、装備が弱ければそれは明確な弱点になる。
いくら実力が上、または拮抗していても、実力を発揮し切るだけの装備がなければ力負けしてしまう。装備が強ければ攻勢防御、相殺が可能だったはずなのに、弱かったせいで劣勢防御、相殺失敗になってしまうなんて悔しすぎる。だからきっちりと戦闘スタイルを確立して装備のコンセプトを決め、妥協なく可能な限りの強化をしておきたい。
特殊装備だけは現状の限界である+30まで強化してある。これは呪物作成で作ったものだから、そっちで強化可能だったしね。強化素材も実はこのダンジョンで余るほど落ちるから、全員分を現状の限界まで強化するのは容易だった。ただ、限界解放には神器などの対応している強化機による限界突破が必要で……。
いずれにしても、強化機が無い現状で改善出来るところはない。強いて言うなら、装備の組み合わせの見直しによって耐性面とか火力面を伸ばすことぐらいかな。それも現状では満足するところまでやっちゃったんだけどね。
「そういえば、ヴァルさんは種族的なアドバンテージがあって良いなーと思うことが多いけど、逆に悩みとかはあるの?」
『細かいことは苦手だ。翼も邪魔に思うことが多々ある。龍種特有の体の硬さ、可動域の問題を感じることもある。特に問題なのは……オーレリア王女に硬いから触るのを避けられることだな……』
「あ、それは切実だ……」
『(´;ω;`)』
『うむ……』
「おにーちゃんもそれが問題なのね……」
「ふわふわもふもふでも、抱きつかれてお昼寝をされると困りまする」
「どっちにしろ悩みがあるのね……」
『悩みのない種族など存在しないだろう。各々長所と短所がある。自身の短所も特徴の一つだと理解できぬようでは未熟だと思って割り切っている』
「短所も特徴の一つ、か~……。まあ胸が大きいと足元が見えないとか短所があるし、重いし、見られるし、良いことそんなにないしね」
「魅了されるのでそれは長所に御座います」
「味方が魅了されてたら短所じゃない?」
「うっ、確かに……! いえ、此方は強い心で自制しておりますので」
まあどんな種族でも体型でも、身体的な特徴が長所にも短所にもなるよね。リアちゃんだって小柄だから質量勝負になると負けるし、マリちゃんは技量ではどうにも出来ない近距離戦での力の差とかもあるし。どん太もその巨体がメリットにもデメリットにもなるし……。まあ私も、胸がちょっとね。カーミラさんも…………あれ、カーミラさんが胸を邪魔そうにしてる瞬間そういえばなかった気がする。細剣だからスマートに立ち回れるし、むしろ小柄で巨乳だから左腕を相手に見せないように立ち回ったりもしてるし……。メリットの塊だな?
もしかして私、胸を有効活用出来ていないのでは……? せっかく左腕を隠せるぐらいの体格してるのに、魔手を有効活用出来ていない……? これは、由々しき事態だわ。作業周回だとばかり思って戦闘スタイル改善をあまりしていなかったけど、意識してみる価値はあるかもしれない。
「よし、とりあえず100周行こう」
「と、とりあえずが100なのですか!?」
「戦闘スタイルの改善、立ち回り改善を意識しながら、瞬間的な迷いを捨てられるように強く戦おう。高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応するのよ」
「それは悪く言えば常に無策ではありませぬか!?」
「やり合いながら、必殺のパターンに持ち込むのよ! まあやってから考えよう、今までもそうだったようにね! それじゃ、適度に交代を挟みつつやろうか。朝までに何周出来るかな?」
『今夜は寝かせて貰えそうにないな』
『いや、俺達は寝る必要が特には……』
『まあそうではある。一週間は寝ずに戦い続けられるのが、我ら龍族だ……デロナ殿はまあ、特別だ』
「デロナちゃんはしょうがないから」
「此方は食事だけ頂ければ、それで十分に御座います!」
「オーケー、わかった」
今寝ちゃってる子が甘いって話じゃないよ。これも種族や体質の長所短所の話ね。龍種は眠りが少ない種族だけど、デロナちゃんは体質的によく寝るのよ。まだちっちゃいからね、寝る子は育つって言葉もあるし。これから大きくなる……かもしれないからね。
まあまあとにかく、朝まで何周行けるか挑戦よ。休憩とぱんぱかタイムをガンガン削って、戦利品は無造作に倉庫へ突っ込む。これから投入するアイテムを分けておく倉庫の新しいタブも作ってきてあるから、完全に無確認でバンバン投入していくよ。従者は休憩だったりお腹が減ったりしたら交代、私は全部出る。
「始めるよ」
「御意に」
設計図は残り半分。強化機設計図選択箱の存在――これはまだ開封してない――があることも既に確認済み。最後の1枚はこの箱で、これから先もドロップすればその分短縮出来る。
終わらせよう、この果てしなく時間のかかるコンテンツを。まったく、絶対にやりたくないと思ってた強化が、早くやりたいと思うようになる日がくるとはね……。お願いだから、全員分がすんなりと目標数値まで届くと良いんだけど。まあ、絶対誰かの装備が詰まるだろうね……。一体誰の装備が詰まるかな、私の予想だとマリちゃん辺りが……。
『29階への再挑戦が選択されました。30秒後――転送短縮要求により、即時転送されます』
あ、転送を短縮設定してたんだったわ。いけない、気合い入れないと!!
大雨と落雷で家、PCや家具家電が……orz
暫く復旧にかかります。この件について感想での反応は不要です……。