549 これから毎日……?
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バビロニクス大型飛空艇建造ドック。知る人ぞ知るバビロニクスの隠しエリアで、皆の寄付金を使って大型の飛空艇が建造されている場所。実はね、地獄道のギルドホテルのゲームセンターから、一部の認識証を持った人だけが転移出来るようになってるのよね。
さて、なんで今になってこの場所に来たのか。それはね、飛空艇の建造がおおよそ完了したとマリちゃんに報告が入ったからです! 今このタイミングでの完成は本当に嬉しい! 細かいところがまだ残ってるらしいけど、まず間違いなく飛べるとのことで、しかも私が出した要望もちゃんと叶えられてるらしいのよね! 早く見たいなーっ!!
「改めて見ても巨大すぎるな。ローレイが丸ごと飛んでいるようなものだぞ」
「都市が丸ごと飛ぶぐらいの大きさの船だもんね! 本当、凄い大きさだわー!」
「まあ、莫大な投資をした甲斐があるというものだな……」
「投資じゃなくて寄付ね、寄付!」
「大して変わらない気がするがね」
いいの! 投資じゃなくて寄付なの! これはバビロン様主導のもとに作られ、私の要望も組み込まれている巨大な戦闘用飛空艇……いわば、私とバビロン様の共同開発と言っても過言ではないわね! え、過言だって? 過言じゃないもーん! うえっへへへ……!
「あ、リンネちゃんが来たじゃぁ~ん♡」
「おえ!? サリーちゃん!?」
「お久しぶりって感じがする~♡ すっかり遠いお方になっちゃったからぁ、もうサリーちゃんのこと忘れちゃったんじゃないかな~って心配だったのよ~?」
「やあ。どうだい、調子は」
「博士も来てるじゃないの~♡ やっほ、サリーちゃんは元気よ~」
「それは良かった……。ああ、サリーちゃんは持ち前の毒物や薬物の知識を活かして、飛空艇のエネルギー開発部に入って貰うことになってね。魔神兵の面々は戦闘部、調査部、開発部、支援部に分かれて活動しているんだよ。サリーちゃんとモーリスさんは開発部、他はそれぞれ別だね」
「そうだったんだ! わあ、眼鏡に白衣似合ってて……ちょっと、刺激的ですね」
「うむ……」
「うわ、モーリスさんもいたんだ!? すみません、気が付かなくて」
「うぅむ……」
わっ、サリーちゃんとモーリスさんだ! 魔神兵の方々を最近見ないなーとは思ってたけど、それぞれが持ち味を活かすために部署が分かれたのね。サリーちゃんが可愛い系の服を着てるの、なんだかすっごくレア感があって好き……! それに眼鏡と白衣がこんなに似合うなんて、ちょっとこれは刺激が強すぎるのでは? いや、サリーちゃん自体の刺激が強いんだわ。
「あ~あ、毎日パナシーアクリスタルとにらめっこしてるから疲れちゃった~。リンネちゃんと一緒に、どこかに遊びに行きたいなぁ~♡」
「毎日、ですか……。研究結果があんまり芳しくない感じですか?」
「そ~なの。思ったよりも出力が上がらないって感じ?」
「まあ、飛ばすのには問題がないレベルの出力だが、この飛空艇のスペックを最大限に活かせるほどの出力に達しないといったところか。計画に問題はないと思うが」
パナシーアクリスタルか~……。大穴でマリちゃんが大興奮して採取してたっけね、懐かしい思い出かも……。これは、極限濃縮したパナシーアクリスタルかな? 大きくて容量に余裕があるものに、何十個分ものエネルギーを注入して作るんだったっけ。それを何十個も組み合わせて使ってるんだ。それでも最大出力に足りないなんて、なんというワガママ飛空艇……。
それにしてもパナシーアクリスタル、私達の世界にも似たようなものがあるにはあるよね。
「パナシーアクリスタルって、私達の世界でいうところのオイルシェールみたいな感じだね~」
「オイル……なんだって?」
「オイルシェールだよ。私達の世界ではそれ自体を運用することは難しいから……えーっと、確かね? 熱分解をして中からオイルとガスを抽出するんだったかな?」
「…………純粋に、燃料として使えるものだけを取り出すということか?」
「え、じゃあパナシーアクリスタルも同じように出来たら、マナオイルみたいなの出来ちゃうってことぉ? そ、そしたら、わざわざ固形のものをトリミングして同じ形にして交換とかしないで、タンクの中にぎゅうぎゅうにマナオイルを詰めて運用出来たら、さぁ……?」
「うぅぅむ……!!」
「パナシーアクリスタルからマナエネルギーを抽出する方法はあるが、それは受け皿となるクリスタルがなければ維持できなかった。その受け皿自体を液体化すれば……」
「無駄がなくなるじゃな~い! おら、モーリス!! ボサッとしてないでどうにかしてこいつを液体にするんだよ!! 休憩してる場合じゃないんだよ!!」
「う、うむ……」
あ……。うん、毎日にらめっこしてて飽きたって言ってたのに、本当にごめんなさい……。マカロンとかネイルケア用品とか、後で差し入れしなきゃ……。 あ、そうだ。
「あっ、ねえねえマリちゃん」
「リンネ、その発言の内容次第では何人か死人が出るかもしれない。気をつけてくれ」
「え、えっとね、シャーリーちゃんが使ってる銃弾って、凄く強力じゃない? 何を使ってるのかなって、もしかしたらヒントになったりしないかなぁ……?」
「……今すぐ協力して貰おう。すぐだ、すぐにもだ。シャルナーデ嬢を迎え入れるんだ」
「は、はいっ!! 呼んでくるね!!」
わあ、飛空艇の完成度合いチェックに来たはずだったのに、なんか大変なことになっちゃった……。とりあえずシャーリーちゃんを呼んできて、技術流用出来ないかだけを確認しよう!
「――え? シャーリーの使ってる弾丸について知りたいの? いいよっ♡」
「うん、もしかしたら研究が進むかも~って……」
――――この後、シャーリーちゃんの弾丸に使われている火薬を見て、全員が顔を真っ青にした。使われていたのは液体の火薬、原材料は…………。
「このキラッキラの鉱石と透明な鉱石をね、頑張って砕いて粉みたいにして、すっごく圧力をかけながら超高温で熱するとね、液体になるんだよ~♡ シャーリーはこれね、作るのが日課なの!」
「真地獄晶石だあ……」
「真地獄晶石だな……」
「これすっげー高いやつじゃん……」
「うぅむ……」
「迷宮の奥で元ボスがよく持って帰って来てたよ?」
真地獄晶石、今でも当然のように何百Gって値段もする鉱石と、極限濃縮したパナシーアクリスタルを1対40の比率で混ぜ合わせたものをお使いになられていました……。
そして今、私は戦慄しています。これからシャーリーちゃんの弾丸費用、私持ちだよね……? へ、へへ、へへへへへ……! これから毎日、真地獄晶石を手に入れにいかねばならんべさ……。
――――うお、吐きそう、死ぬ……!
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