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544 神木の迷宮・2

『緋影御前が【緋影・一刀断鉄】を発動』

『メルメイヤが【切り払い】を発動、パリイ! 緋影斬波を受け流しました!』


 緋影斬波を切り払った! 得意な距離に持ち込んで仕切り直すのか、それとも……! 私なら、このままあの一刀断鉄に真っ向から挑む!!


『斬波を払った程度で!!』

「ったぁあああ!!」

『何を、何っ!?』

『メルメイヤが【白刃取り】を発動、【一刀断鉄】を無効化しました!』

『取られ、ぐっ……!?』

『メルメイヤが【甲賀流・熊の力】【伊賀流・流星脚】を発動、クリティカル! 緋影御前に99,797Gダメージを与えました。HPブレイク!』


 取った!! その後の流れをものにしたのも良い、全く隙のない完璧な防御からの一転攻勢。自分のほうが圧倒的に上だと思っている緋影御前は、渾身の一撃を止められた上に反撃を受けてプライドに泥を掛けられたような気分だろうね。しかし、未だにめーちゃんは刀から手を離していない。まだだ、まだ叩き込める! この隙、とことんまで突き回す!!


『メルメイヤが【甲賀流・隼の力】【伊賀流・天地返し】を発動、クリティカル! 緋影御前に115,999Gダメージを与えました。HPブレイク!』

『く、かぁああ!!』

『緋影御前が【肘鉄】を発動、メルメイヤが【風魔流・消力】を発動、【肘鉄】の威力を殺し、大きく吹き飛びました』

『お、ぐはっ……!! く、おの、れ……!!』

「望み通りに血が見られて良かったですね!!」

『メルメイヤが【精神統一】を発動、MPを完全に回復しました』

『おのれええええええええええ!! 生かして帰さん!!』


 天地返し、一瞬で相手の背後に回って文字通り天と地をひっくり返す大技。相手からすれば急に相手が消えたと思ったら体が浮いて、その瞬間には地面に頭が叩きつけられてとんでもないダメージを負っていて何がなんだかわからないはず。咄嗟に肘鉄で反撃に出たのは凄いけれど、それを受けても完全にダメージを打ち消すことが出来た消力……。レベルや身体能力を技術で打ち破っている。

 これが、伊賀と甲賀、そして風魔の力をマスターしたニンジャマスターの力……。攻めあぐねれば忍術で、迷いのある近接攻撃は体術で、攻防ともに隙なし、生半可な攻撃は反撃が取られる。


『くぅ……!! かぁああああ!!』

『緋影御前が【殺神緋影連斬】を発動』


 緋影御前は確かに強い。千代ちゃんやレイジさんを見ているから、どういった太刀筋が良い太刀筋なのかは理解している。その2人と比べても全くをもって遜色ない。

 しかし、太刀筋が良くても立ち回りが悪い。まるで、無抵抗の相手を斬ることばかりしてきたかのような、弱者をいたぶることばかり考えている立ち回り。私予想だけれども、恐らく緋影御前は……。


『カーミラが【ノーザンクロス】を発動、一部攻撃を相殺しました』

「おや、考え事をし過ぎるのもよくありませんよ」

「あ、ごめん」

『メルメイヤが【多重分身】【飛燕連斬】を発動、相殺!』


 おっと、範囲攻撃は流石に隠れてても回避しないと危ないわ。カーミラさんってば流石ね、細剣でシャッシャと逆十字を斬るだけで範囲攻撃の一部を弾くんだもんね。それと、空いてるほうの左手の新月の愛(ローヴェヘルミナ)は恐ろしいことに特殊な魔術以外の全ての魔術の触媒として扱えるから、細剣での攻撃をしながら魔術の行使も出来るのよね。多分だけど、カーミラさんに一番与えちゃいけないものを2つとも与えちゃったんじゃないかなこれ……。

 そしてめーちゃん、隙の大きい範囲攻撃の隙を突いて分身を再展開。飛燕連斬はその名の通り燕が飛び交うように斬撃が飛んでいく強力な範囲攻撃。分身の飛燕連斬も合わさる姿はさながら荒れ狂う嵐の中を飛び交う燕のよう。


『おのれ、なぜだ! 畜生風情が、肉袋風情が!!』

「人斬りの味を覚えて忘れられない、己が化け物に成り果てたことにも気が付かないか!」

『黙れ!!』

『メルメイヤが【甲賀流・龍の力】【伊賀流・大嵐投法】【風魔手裏剣・朧月】を発動』

『緋影御前が【切り払い】を発動、失敗! 合計117,114Gダメージを与えました。HPブレイク!』

『っくぁああ!! なぜじゃ!! なぜ!!』


 風魔手裏剣・朧月。背丈ほどもある巨大な十字の手裏剣を横方向ではなく縦に、地を這う車輪のように投げつける忍術。恐ろしいのは分身のものと合わせて6枚が連なって飛んでいくのが、はたから見ると1枚が飛んできたように見えること。緋影御前が切り払ったのは1枚目だけで、残る5枚は完全に直撃した。これで体が真っ二つにならないのが不思議なほどの致命傷だけど、最終ゲージと表示されないってことは……まだ最低でも1ゲージは残ってるってことね。


()くなる上は!!』

『緋影御前がHPブレイク、最終ゲージに突入! 【奥義・絶命遊戯】を発動』


 敵対NPCの奥義スキルは初めて見るかも……! HPを削ってスキルを発動、そういうのもあるんだ……いや、元から緋影御前はそんな傾向だったね。

 攻撃は、殺神緋影連斬とほぼ同じ……? いや、四方八方に飛ばしていた緋色の斬撃が意思を持っている(・・・・・・・・)かのようにカーブしてくる! 憎き相手の首を飛ばさんとばかりに、緩急を付けて斬撃が襲いかかってくる。殺神の名も伊達ではないということね。


『ほおれほおれ、逃げ惑え!!』

『メルメイヤが【風魔忍術奥義・月隠れ返し龍】を発動』


 風魔忍術奥義、月隠れ返し龍? これは見たことがないかも、どんな忍術なのか……ああ、ああ! そうか! 朧月、月を隠せば龍となる!! まさかさっき投げた風魔手裏剣・朧月は、まだ攻撃の途中だったんだ!!

 十字の手裏剣が四片に割れ、まるで龍の爪のようになって返ってくる……!! 緋影御前はめーちゃんをなんとしても殺さんと必死になりすぎて、さっきの朧月がまさか返ってくるなんて夢に思っていない!! 

 緋影の刃か、龍の爪か、先に相手の喉元へと届くのは…………!!


『妾の勝ちじゃ!! 散れ、肉袋!!』

『メルメイヤが【空蝉の術】を発動、攻撃を身代わりカカシが肩代わりしました』

『は……! あ……!? な、に……?』

『クリティカル! 緋影御前に合計297,777Gダメージを与え、撃破しました』


 緋影の刃が先、しかしそれはめーちゃんが既に用意していた身代わり。忍者がそう容易く攻撃を受けるはずがない、今まで攻撃をあえて貰っていたのは身代わりの存在を教えないため。

 空蝉、身代わりの木人と自身の位置を入れ替えて攻撃を無効化する忍術の基本中の基本。そう、めーちゃんも薄々気がついていたはず。

 緋影御前の剣術は、戦うための剣術じゃない。ただ悪戯に人の命を奪うための、殺人遊戯(おあそび)の剣術。千代ちゃんやレイジさんと遜色ないのは太刀筋だけ、命のやり取りをする者の立ち回りではなかった。これが、私が途中から気がついた違和感の正体。


「やりましたね。お見事で御座いました」

「めーちゃん! 凄かった、立派な忍びに成長したね!」

「い、いえ、私なんてまだ、カーミラ様やリンネ様なら無傷でお倒しになられたかと……!」

「そうですね。余裕でした」

「こら! カーミラさん!!」

「ふふっ……。冗談です、そんなことはありませんよ。貴方ほど勇敢に戦うことはなかったでしょう。今の貴方はとても美しく、勇ましく、逞しい。この勝利を誇りに思ってください」

『ぴゃんっ!(格好良かったもんね!)』

「誇りに……」

「私ね、最初は勝てないだろうって決めつけて手を貸そうと思ってたの。でもめーちゃんは私が想像していたよりもずっと、ずーっと強かった! ううん、強くなった! 今のめーちゃんの姿を見て、凄く……安心したよ。これからは何も命令したりしない、無条件で背中を任せられるって、そう思える程に成長したよ!」

「…………」


 それでも、緋影御前は圧倒的な強者だった。そんな緋影御前の弱さを見極め、徹底的に弱点を突いて攻略したのは、本当に凄い成長だと思う。以前なら絶対、どうしたらいいのかわからず私に助けを求めていたと思うから。


「り゛ん゛ね゛し゛ゃ゛ま゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

「あーよしよし、泣かないの! うんうん、今まで自分の殻が破れずに辛かったね……」

「殻を破る、ですか……。ふふふ……」


 わー泣いちゃった、こうやって感情を隠さずに大泣きしたのは初めてかな……。やっと心を開いて完全に私を受け入れてくれたね。とても分厚かった最後の壁が崩壊したのを感じるよ。

 そしてこら、カーミラさん! 貴方は殻を何枚破れば気が済むんですか! 元の自分では辿り着けないであろう、純粋な状態で新たな戦術を身につけ、ジャンボの憑依による更なる強化まで組み込み、月の女神の力と記憶の封印を解いてもよい肉体まで成長したのを見計らい、文字通りの転生を果たす……。この女神ってば、消滅しかけてもただでは復活しないんだから……。

 まあ、カーミラさんはさっき冗談って言ったけど、本当にカーミラさんとジャンボのペアなら猛虎と緋影御前は恐らく……悲惨な末路になっていただろうね。それほどまでにこの女神、強いんだよ……。


「ひっぐ……! ひっぐ……! ほ、ほう、じゅう……!」

「報酬なんて後でいいから、もうちょっと落ち着いてから、ね?」

「いいですね~リンネさんのお胸に、私も抱きつきたいですねえ……」

「カーミラさんがしたいのは首筋に齧り付くことでしょ」

「それはとても素敵ですねえ……」

「…………ふ~ん」

「あっ、ほら。好きな相手の首筋にキスマークをつけるのなんて素敵じゃないですか、ふふふ……」

「今齧り付くって言ったよね?」

「いえ、どうでしょう? 聞き違いだったかもしれません」

「戻ってるよね?」

「なんのことやら、うっ……頭が……! ジャンボ、私は頭が痛いです。撫でさせてください。癒やしを補充する時間です……ほら、こっちにおいでなさい」

『ぴゃ、ぴゃうっ!(う、うん!)』


 ほら、これだよ。これで吸血鬼時代のカーミラさんの記憶がないって言い張るんですよ。絶対嘘じゃん、戻ってるじゃん……。これで本当に戻ってなかったら、健気にも記憶が戻ったふりをしている幼女ってことになっちゃうんだよ? そんなの絶対ないじゃん……。


「こしょこしょこしょこしょ、ばぁ~」

『きゃうん! きゃうん!(わぁ! くすぐったい!)』


 やっぱり、戻ってないかも。いや戻ってるかも……。シュレディンガーのカーミラさん、本当に困った女神様だわ……。


「ひゃ……! はなみじゅ……!」

「あびゃびゃびゃびゃ……」


 こっちも困った子だわ。ほら、鼻水拭きなさい……。あ、これアバターガチャチケじゃん。後でめーちゃんの鼻水まみれのガチャチケで適当なコスチュームガチャ回すか……。


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