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538 水底都市アトランティス・1

 一等が当たるまでに使ったチケットの数? 覚えてないね、今まで食べた米粒の数と同じように、そんなものはいちいち数えてないのよ。でもまあ、多分だけど、普通にバビロン様の等身大ドールを注文するのと、さほど変わらない値段になっちゃったんじゃないかな……?

 いや、バビオン公式のアイテムってのが大事なのよ。値段はね、重要なところじゃないの。むしろ問題なのは、ティアちゃんのシルバー消費がーとか、マリちゃんの消費がーとか、一切口に出来なくなったことなの。どうしよ、衝動買いにしたって度が過ぎるわ。もうどうしようもないけど。

 

「やはり凄まじい水圧になるぞ。全面透明の水中トンネルは厳しそうだ」

「外壁は圧を逃すため円形にして、何層かの壁にしないと強度が怖いッスね」

「でも景観は悪くなるし、外の景色が見られなくなってなあ~」

「コスト度外視で高級素材をドカドカ投入出来れば二層ぐらいの壁に出来そうですが」

『推奨、強度を優先』

『グリムヒルデの言う通り、強度を優先したほうが良い。景色はアトランティスとやらでいくらでも楽しんだら良いさ』

「でもさ~せっかく楽しいイベント会場に行くのに、無骨な金属の通路をひたすら進んでいくだけじゃドキドキ感がないよね~」

「トンネルを抜けた先はリゾート地でした~ってのも、悪くねえと思うけどな」

『皆様、アトランティスはもう滅んでいるのをお忘れではありませんか?』

「ん、ウェイブの言う通り、これから復興。まだ楽しい要素、多分ない」


 あ、ちなみに海を割ってアトランティスに行こう大作戦は無事に成功したんだけど、アトランティスへ行くために毎回海を割ってたら手間がかかるから、じゃあいっそのこと大きな海中トンネルを作って恒久的に誰でも通れるようにしちゃおうって結局工事を始めたのよ。

 参加しているギルドはうちのギルドと同盟の全ギルド、更にはアールゲイン制圧戦に駆けつけてくれた野良の生産職の人達とか、他にも手伝いで大勢駆けつけてくれてる。NPCの参加者はウェイブさん、グリムヒルデさん、マグナさん。後はワイパーニもちょっかいを出しに来てる。

 ワイパーニも居るってことはそう、出発地点は月光の歓楽街なんですね。昔、ウェイブさんがこの都市の近辺に流れ着いたことと、そもそもウェイブさんがここから向かうルートしか知らないってことでスタート地点がこの場所に決まったのよ。距離も加賀利より手前の海中だったし、無理な距離じゃないからここを割ることにしたのね。

 

『ん? おや、バビロン様が海中トンネル建設に資材を回すことを決定したようだ。他陣営より先に乗り込みたいようだね。資材共有チェストを送ってくださるそうだ』

「え、本当ですか!?」

『くぅ~。さすがバビロン様、話がわかる』

「ちょっと違う、さっすがバビロン様、話がわかる~だよ」

『把握。要改善』

『グリムヒルデに変な言葉を教えないでくれるかい……?』

『変な言葉ではありません。古くから愛される名台詞、です』

「そうだそうだ~」

『はぁ……』

『魔界アナウンス:魔神バビロンが【プロジェクト:アトランティスロード】への支援を決定。参加希望者は魔神殿にて申請を――』


 おお~! バビロン様がこのプロジェクトの支援をしてくれるって、やった~! 思ったより素材をドカ食いしてたから、支援して貰えるのは本当に助かるね!

 ちなみに現在の工事進行状況は、海を割って海水が入り込んでこないように氷壁と岩壁の二重防壁でせき止めるのは終わってて、海を割った部分の海底を均して平らにするのは先行して進行中。これに関してはもうすぐ終わりそうなぐらいかな? トンネルの方は三割ってところかな? なんせ海底よりも遥かに高い場所は支柱も建てなきゃいけないみたいで、大きさも巨大化してるラージウスが余裕で通れるぐらいを想定してるからかなりの大きさで、なかなか進まないのよね。

 うーん、この支柱を建てる工程……。もう少し早く進まないかなぁ?


「お、アナウンスされてる~。これで資材面が楽になるかもね~」

「でも支柱を建てるの、大変ですよね」

『そうだな、その工程がとにかく大変だ』

『海、ある点を境に、急激な深度増加。支柱、必須』

「リンネ、流石に支柱を減らすことは出来ないぞ」

「海底、上げたら良くないですか?」


 支柱を建てるの大変だし、海底を隆起させて支柱を低くすれば良いんじゃないかな?


「あ、お姉ちゃん! 皆さんが何でそれを早く言わないんだよって顔をしてます! ちなみに私も今そう思いました。どうしてもっと早く言ってくれないんですか?」

「そうか、地属性魔術で……」

「岩壁を作った時に、なんでそれを閃かなかったんだ……」

「バカ正直に支柱を建ててたんがアホみたいやんけ!!」

「コンクリートブラスター、図書館にあった魔術書で読みました。それが最も効果的かと」

「コンクリートは塩水に弱いから、錬金術師に頼んでコーティング薬を作って貰わないと」

「ついでに、これから貰える資材でコンクリートを覆ったら良いんじゃ……?」

「リンネ!! どうして今になって次から次へと案が出るんだ!!」

「な、なんかごめんね……?」


 凄い、皆から殺気に似た歓喜が押し寄せてくる……。カーミラさんもちゃっかり建設魔術みたいなのを教えてるし、うーん偉いねえ……! あれ、でも図書館なんていつの間に行ったんだろう? ログアウト中に行ってたのかな?


「リンネ様、メルの土遁と風遁で遠くまでコンクリートブラスターを飛ばせると思います! やらせてください、今度こそお役に立ってみせます!!」

「めーちゃんはいつも真面目だし、いつも役に立ってるよ? 頑張るのは良いことだけど、一人で背負うと大変だから。皆で力を合わせてやろうね」

「は、はい……!」

「リンネはその皆の頑張りを、一瞬でぶち壊してくるんだがな」

『アルスを呼ぶか……。コンクリートをコーティングして、更に外殻として耐水耐腐食素材を被せてそれもコーティングすれば良いわけだ。簡単だな、ははは……』

『心労を検知』

「こんくり~こんくり~ぶっらすた~」

「コンクリートブラスターは聞いたことがない魔術ですね……。カーミラさん! その魔術書がどこにあるか、教えて貰っても良いですか?」

「ええ、ちゃんと覚えています。ティアラさん、ローレイに行きたいです」

「…………」

「ティアラさん? 聞いていますか? ローレイに行きたいです」

「ひぇえ!? は、はい!! 行きましょう、すぐに!!」


 ティアちゃんが周りに水がいっぱいで緊張してる……。実害はほぼないけど、やっぱり潜在的に苦手なのね……。とりあえず、ローレイに戻ってコンクリートブラスターの魔術書を取ってきて貰おう。そうすれば、この工事も一気に進むだろうしね!


『わんっ!(あ! 青色の大きいお魚だ!)』

『どん太よ、あれは毒がある。食わないほうがいいぞ』

『あれを食った時、三日はグロッキーだったなぁ~。最悪だぜ!』

『くぅ~ん……(食べられないんだ~……)』

『ぎゃう~!』

『母ちゃん、そうは言っても食えねえものは食えねえから、無理だから……』

『あ、諦めてくれ……。味はまあ、美味いんだが……』

「お、毒のある美味い魚か。面白そうだな」

「あの魚は美味なのですか!」

「美味しいフィスハ、食べたい! ハッゲさん、よろしくお願いです!」

「もしもお腹が痛くなっても治してあげるから、食べちゃえ~♡」


 腹ペコ軍団は海を割った時に生き残った海の幸に釣られてる……。ハッゲさんすみません、どうにか腹ペコ達を満足させてあげてください……。


『へえ~……。毒があっても美味な魚ですか。お金になりそうですねえ……』

「本当、すぐお金になりそうなのは嗅ぎつけてくるよね」

『当然当然、貴方にやられた無理難題も今になってみれば良い経験。それにガトランタ王の信頼も得られましたし、感謝していますよぉ~?』

「ロボッ闘魂、開催はいつだっけ?」

『嘘でしょう? 自分から持ちかけてきておいて忘れていらっしゃる? 信じられないんですけれど!? 来週末、ちゃんと出場者も集まっていますし、予定通りに開催しますからねぇ!?』

「あ、そうなんだ。大会管理もやってるんだ、ありがと」

『こ、この……! はあ……。こんなお方に振り回されている皆様が可哀想ですねぇ……』

「ところで、美食がどうのってイベントは? 上位存在から審査員を命じられてるんでしょ?」

『代理審査員を置いていますから心配ありませぇん。景品も上位存在が勝手に送ってきてくださいますし、むしろどうして私が選ばれたのか全くわかりませんねぇ? 私、必要あります?』

「ないんじゃない?」

『そうド直球に言われるのも腹が立ちますねぇ!?』

「強いて言うなら、問題が起きた時に対処できる戦闘力? 強いんでしょ、パーニェイナ(・・・・・・)さん?」


 守銭奴のワイパーニがこのイベントに絡んでる理由なんて、戦闘力ぐらいしかないんじゃないかな? 任されてるエリアも比較的治安が悪い月光の歓楽街だし。救世主モードになればプレイヤーなんて一捻りに出来るぐらいは強いはずだもんね?


『パーニェイナ? 何のお話しですかぁ?』

「え?」

『よく似た人の名前と間違えましたかぁ? 私の名前はワイパーニ、ですよぉ~?』

「…………」


 ワイパーニは腹芸が得意なほうではない。思ったことはすぐに口に出すし、煽られたらすぐにボロを出すし、商人としての目もなんだか微妙な二流商人。もしかしたら、ワイパーニとパーニェイナは…………別人格? 危機的状況、もしくは救世主モードのフラグがオンになることで、別の人格を呼び出して超強化されるタイプなのかもしれない。だから同じ名前で呼ばれるとなんとなく嫌なのかも……? なんにせよ、パーニェイナの人格は呼び起こさないほうが良いかもしれない。


『――――あまり()を挑発しないように。無益な殺生は嫌いですので』

『死の商人パーニェイナ(Lv.1300)に【殺意】を向けられました』

「う……!?」

『…………? おやぁ、どうしましたかぁ? しかし暑いですねぇ~……。冷たい飲み物を売り出したら売れるでしょうかぁ? ああ、冒険者はそのぐらい自前で用意できますよねぇ』


 なるほど、ね。これは絶対起こさないほうが良いわ。ワイパーニを煽るのは構わないけど、パーニェイナを煽るのはヤバいのね。ちゃんと覚えておこう……。


『システム:死の商人パーニェイナから挑戦状が届きました。魔神殿各所にて【チャレンジ:激戦・死の商人パーニェイナ】に挑戦出来るようになりました』


 うへえ、それはまた今度かなぁ~……!

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本作をご覧頂き誠にありがとうございます
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ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました ~裏イベントを最速で引き当てた結果、世界が終焉を迎えるそうです~Amazon版
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