522 Reginleif・1
『ミーシャが【ダークランサーレイン・エンドレスリピート】をスタンバイ』
『セーブ』
『ミーシャが【セーブ】を発動、ミーシャの現在状態のみが記録されました』
そう、だった……。ミーシャさんにはセーブとロードがあるんだった……!! しかも、封印武器を解放した影響なのかわからないけど対象を絞って自分だけにすることも出来てる!
それに加えてこの大軍勢、一人一人が強力な武具を身に纏ってる……。低く見積もっても、八人フルパーティなら真勇者ペアといい勝負が出来そうなぐらいの強さを感じる。特に何人かはずば抜けて強い、しかも呼び出された従者の中に……!!
『わうーん♡』
『こらこら、遊ばないの。今から狩りなのよ、モッチリーヌちゃん』
『がう~』
モッチリーヌ二世ちゃんが居る! ミーシャさんが従えてたんだ、どこにいるのかなーってずーっと思ってたのよ! 確か二世ちゃんはちょっとやんちゃな子で、サディーナちゃんを振り回して困らせてた子だったような……。
『わうっ!! (こんばんは!)』
『わう? わうーん!! わうわうあうあう』
『アオーン!! (頑張ってね!!)』
『わふっ』
おお、どん太と会話してくれた! 何を話してたんだろ、雰囲気からしてどん太のことは気に入ったみたいだけど。あ、いけないいけない! ミーシャさんの大軍勢に圧倒されてる場合じゃないのよ! 私だって負けないよ。死霊術師は本体が弱いとされてるけど、私はそれを克服するビルドを組んでるんだからね。
「リアちゃん!」
「にゃい?」
「合体しよっ!」
「え、キモ……あ! 憑依ですね! 大魔術型で対抗しましょうっ!!」
「え、今キモいって……」
「そんにゃこといってにゃいでーす。はいはい憑依憑依!!」
『リンネちゃんは、憑依型なの、ね?』
「えっ? 死霊術師って憑依が基本なんじゃ」
『それは特殊な死霊術師だわ。死術師型と降霊術師型のいいとこ取りをする、バビロン様と同じタイプよ』
え、今まで自分が普通の死霊術師だと思ってたんだけど、私って……異常、なの……? いやいや、特殊なだけで少ないわけじゃないはずだし、憑依だって使いこなしてる術師はそれなりにいるはず!
『そうね、特殊だわ。少なくとも私は死者に拒絶されるし、合わせることも出来ないから不可能ね』
『死者は永遠の眠りを妨げられた時点で、術師に対して憎悪の感情を抱くのが当たり前よ。よくもまあ、そこまで従者に好かれているものだと感心するわ』
『私も、仲が良い子は、モチちゃんぐらい……かしら?』
『わうっ!!』
『でもモチちゃんは暴れん坊だから、私は合わせられないわ』
『憑依は従者と息を合わせなければ動きがチグハグになり、最悪は途中で分裂を引き起こしてお互いに無力化してしまう。かなりハイリスクな術よ』
「えっ」
これ、ハイリスクなスキルだったんですか……!? いやでも、今まで分裂しそうだとか、リスクを感じた場面なんて全くなかったんだけど……。これは、プレイヤーの特権かな? それとも、本当に扱うのが難しいスキルなの?
『(お姉ちゃんと私達は深く心が繋がっているから、分裂したりしないの!)』
『(あ、なる、ほど……!!)』
『(大好きだから、多少無茶だと思っても信じてついていけるんです!)』
『(凄く嬉しい。ギュッてして良い?)』
「早く憑依させてください!!」
「う、は、はいっ! じゃあリアちゃんよろしくね!!」
『【従者憑依】を発動、オーレリア・ステラヴェルチェが憑依し、プリセット【猫神降臨】が呼び出されました』
おおっ! リアちゃんを憑依させた時に自動発動するように設定したプリセットがちゃんと発動した! リアちゃんと私はスキルが多いから、有効状態にするスキルや特殊能力、装備自体の変更とセット効果の設定まで、これらを一瞬でセット出来るように事前に設定したのよ!
私にリアちゃんが憑依した時にセットされるようにしたのは、私の攻撃スキルとリアちゃんの全にゃ術、一部の特殊魔術などの攻撃系。パッシブ系はMAGとMNDを最優先、他のステータスも上がるやつは全投入して、防御系のスキルはスキル制限40の枠が勿体ないから封印して攻撃力アップ系で埋めた。そしてリアちゃんと言えばにゃ~語による完全詠唱強化、これは最終倍率にかかってくるから絶対外せない。ちなみに私がにゃ~語を使う時は、リアちゃんが自動で翻訳して喋ってくれるから心配ない。最初は猫ちゃんの言葉も覚えなきゃダメかなって心配だったけど、そんなことはなくて本当に良かった。
最後に装備。これはリアちゃんの箒を優先してにくきゅースタッフ化、近接攻撃を扱えるようにした。あれから装備の作り直しを幾度と行い、アップグレードを試行錯誤した結果……出来上がった箒はもはや、箒と呼んで良いのか怪しいモノに仕上がった。
【□■おまえをそうじするもの+0】(究極神器・ウルトラエピック・箒・カードスロット◆)
・【専】オーレリア・ステラヴェルチェ
・にゃ術師系専用装備
・ARC+250
・装備専用付与スキル【消えろ】使用可能
・基礎攻撃力+200K
・装備中【ハイシールドイレイサー】永久付与
・【UG1】装備中【ディスペルアタック】永久付与
・【UG2】装備中【パーマネンスイレイサー】永久付与
・【共鳴】全ての攻撃が3HIT増える
・【カード】反響する禍津アラクネカード
――そうじのじかんだ by伝説の掃除屋・シャパリュ
特殊強化・破壊不可・専用【オーレリア】・1.0kg
最初は【掃除屋の箒】だった。それに除去系が付与されるアップグレードキットを合わせたら共鳴して、その効果が……全攻撃プラス3ヒット。純粋に攻撃力が4倍になるし、状態異常とかそういうのも4回抽選される。ただしこの装備には攻撃力上昇とかが一切付いてないから、そこは他の装備で補わないと結局火力が激減しちゃう。
最初の頃は微妙だなーって思って見てたけど、私が色んなビルドを試し始めた結果……とんでもない組み合わせを見つけてしまった。もはやバグなんじゃないかって、そんな組み合わせをね……。
『あら、ネコちゃん、ね?』
やだ、ミーシャさんがいたずらっぽく微笑みながら、空いてる方の手を頭に乗せて『猫耳ね、猫耳』ってぴょこぴょこ動かすの、可愛すぎる……!! どうしてこの人、こんなミステリアスでグラマラスでセクシー過ぎるお姉様な容姿をしてるのに、中身が少女少女~ってしてるのかしらね!! ほら、カーサさんが苦笑いしてるじゃないですか!
『猫耳、なかなか似合うわ』
『(;´∀`)』
「あ、は、はい……。ありがとう、ございます……」
そういう意味の苦笑いかーーっ!!
「それでは、おばけ殿。背中は任せまする」
『(*´∀`)b』
「よし、じゃあ……準備は良いね? 念には念を入れて金運壊滅ポーション、使うよ!」
『ええ、どうぞ』
と、とにかく! 気を取り直して、例のポーションを使って対策に対策を重ねていこう! 万が一、闇属性や不死属性なんかも貫通する強化型の呪いをもってるかもしれないからね。こういうのは対策出来るなら何重にもやったほうが良いのよ!
『【金運壊滅ポーション】を使用、周囲のパーティメンバーにも同様の効果が降りかかります』
『【金運壊滅の呪い】になりました。効果時間終了まで解除不能な強力な呪いです!!』
『フリオニールが【カジノコイン】を全て落としました!!』
『工エエェェ(´゜д゜`)ェェエエ工』
「えええええええ……」
「どうして先に預けないのですか、おばけ殿!!」
『(おにーちゃん……そういうところなんですよね……)』
『あらあら……』
『あら、勿体ない』
『ふふっ、そういうのもダメなのですね~』
『完全に金運に関する因果を捻じ曲げられているな。ほら、拾おうとしても弾かれる』
なんでカジノコイン預けてきてないのよーー!! あれ、待って? もしかしてこの呪い、ティアちゃんにかかったら大惨事になるんじゃ……。あ、状態異常無効を解除しなければかからないか! それでも一応、釘を差しておかないとね。
「ティアちゃん、絶対に黄金の女王の権能を解除しちゃダメよ。この呪いにやられたら、ティアちゃん完全無力化されちゃうから!」
「は、はいっ! 気をつけます!」
『ミーシャが【突撃体勢、全体整列】を発令、全ての従者が命令に従います』
「お、始まるんやなリンネちゃん! 初手は任せたで、気を付けて行き!」
「はい、レイジさん! 行ってきます!」
「僕達もすぐに続くよ~」
「ちゃんと酸対策もした!? お金も置いた!? 大丈夫だよね、お昼寝っ!!」
「エリスは心配性過ぎるよ~。もっと気楽に~? ね~?」
「気合、入れて、行こう~。ふんす、ふんすっ」
「レーナも気合入ってるな! ははは! じゃあ、よろしく頼んだぜ!」
「はい! じゃあ、安全地帯から出るよ……一瞬の油断が命取りになる! 気を引き締めて行くよ!!」
さあ、ここからは今までの和気藹々モードじゃいられない。グリムヒルデさんの結界から出たらそこは死地、緑の呪いが蔓延してウーズに飲み込まれた更地のアールゲインが広がってる。
「突入!!」
今度はさっきみたいな無様な敗走はしない、絶対に……!!
『まあ、ブサイク、ね……』
『穢らわしい瘴気が……!』
『う、臭いですわ』
『鼻が腐りそうだ、反吐が出る。一刻も早く絶滅させるべきだ』
『ヒトツになりま、ショ、う。ここから出セ、出セ出セ出セ出セ出セ出セ出セ出セ出セ出セ出セ無駄だ無駄だ無駄だ無駄だ無駄だ無駄無駄無駄無駄無駄』
「ああ、そんなに出たいなら出してあげるよ。望み通りの形とは……いかないだろうけどね!!」