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521 開戦の挨拶

◆ 黄金の大結界前 ◆


「チェック」

「あ! 駄目ですカーミラ様、待ってください!」

「もう5回目ですよ。今回も私の勝ちです……あ、リンネさんがいらっしゃいましたよ」

「わー! わーー!! リンネ様、今ティアはカーミラ様に17連敗しそうなところで、ちょっと見られたくないですー!!」

「何やってるの……?」

「卓上戦争です。金の駒が先手、銀の駒が後手で交互に駒を動かし、クイーンを取られたら負けです。今は私が17連勝しているところですね」


 黄金領域の結界の前で制御に忙しいかと思ったらそんなことはまるでないとばかりに、ティアちゃんとカーミラさんがチェスをやってる……。そっか、カーミラさんは強かったか……。いやそれより、思ったよりティアちゃんが余裕そうなのがビックリよ。コストがかなり重いはずだから維持もキツイと思ったんだけどね。


「領域の維持は大丈夫なの?」

「あ! 中に生き物や植物が完全にいなくなって、活動を完全に休止したみたいです! 餌が来るまではジッとしているタイプなのかもしれないです」

「餌がないのに動き回っても消耗するだけでしょうから、動かないという選択は間違いではありませんね」

「なーるほど。じゃあどこから入っても即戦闘ってことにはならないかな?」

「それが、領域内の地面は全部制圧されちゃいました! まずは安全地帯の確保からになると思います!」

「あちゃー。なるほど、そうしたら~……」


 なるほど、出られないと確信したから、ならこちらの力が尽きるのを待つのにピタリと動かず時を待とうってわけね。これまでもそうして数々の犠牲者達を取り込んできたからその作戦を取ったんだろうけど、今回ばかりは悪手だってことを思い知らせてやらないとね。


「安全地帯の確保でしょ~? やるやる~♡」

「やる~」

「やろうか。大規模な爆破でご挨拶と行こう」

「やるっすよ~!」

「行け、モロトフくん! アイテム消費特化ビルドの底力を見せちゃれ~!」

「ああ、今日もお金を火力に変換する作業が始まるお……」

「俺達が作る、モロトフが投げる。簡単な仕事だな!」

「よーしよしよし、今日もオクスリを派手にキメてバフ盛り盛りで暴れようね~」

「オデ、クスリ、スキ。バフ、スキ。アイテム、ナゲル」

「モロトフさん、だ、大丈夫なんですか……?」

「ん~……多分?」

「多分!?」


 大規模発破と言えばこの人よね。モロトフさんにありったけの消費型攻撃アイテムを投げさせて殲滅、エリアを確保したら第一段階突破ってことで。

 最悪消滅させてもいいとは思うんだけど、それだと緑の呪いの総数が減ってしまってアイテム作成のうま味が減っちゃうし……。ダメージを与えても分裂してまた吸収されるから総数は減らないし、一旦撤退させるのが目的ならこっちがいいよね。ただ、消耗品を使うとお金が……大丈夫なのかなぁ……。


「お金、大丈夫なんですか……?」

「あ~それは大丈夫。今から使うのはダンジョン内だと威力高すぎて使えないやつの在庫処分だし、破壊力だけだからコストはそこまで高くないんだ。それにほら、無慈悲ダンジョン産の要らないアイテム売れば、消耗した分の何十倍もの収入になるわけだし?」

「あまり無理のない範囲でお願いします。うちのマリちゃんの爆弾を使って貰って大丈夫なので」

「ん? 我の爆弾なら既に殆どをモロトフ君に渡してあるが?」

「え、かなり倉庫に在庫あった……えっ」

「シャーリーのお手製爆弾もね~いっぱい持ってきたよ~♡」

「ん、ギルドに眠ってた爆弾も、お昼寝の爆弾も全部持ってきた」

「あれ、シャーリーちゃんと、ギルドにあった爆弾まで全部……あれっ」

『あらあら、きっと素敵な開戦の挨拶になるわ、ね?』

『あの領域は大丈夫なの? その衝撃に耐えられそう?』

『大丈夫じゃないかしら。バビロン様ですら破れない領域ですもの』

『平気平気、全部投げてヨシ』

「え~っ!? 本当に大丈夫でしょうか~!? ティアは少し不安になってきました!」

『モロトフくんが【死神の力ポーション】【巨人化の薬】【神技:投擲神の加護】【一時の天邪鬼ポーション】を使用、【冥王の神毒】【筋肉崩壊剤】【破滅ポーション】【小人の薬】【衰弱ポーション】を使用しました』


 うわ、うわ、うわ……。ドーピングがヤバいですよモロトフさん、絶対それヤバい……。しかも後半のデバフは一時の天邪鬼の効果で反転して、全部バフになってるんですか!? 装備の天邪鬼効果は常時だからバフはデバフになるけど、一時の天邪鬼ポーションならその効果の後のはバフになるんだ、へえ~!! これはしっかり覚えておこうかな、私も使えるかも!


「オデ、コ、ワ、ス!!」

「大きい黄金回廊を開きますから、そこに投げてくださーい!!」

「ナゲ、ル!!」

「うへえ、スーパージャイアントモロトフくん、ガンギマリだぁ……」

『(っ’ヮ’c)!!』

「本物の巨人族みたいですねっ!」

「なるほど、巨人化すれば一度に投げられる爆弾の量も増えるということに御座いますか……」

「ヌゥゥゥゥウウウ…………ウウウウウウウウンッ!!」

『ティアラが【黄金回廊】を開きました』

『スーパージャイアントモロトフくんが【究極奥義:全力討敵投擲】を発動しました。途轍もない量のアイテムを投げつけます!』


 さあて、黄金領域の中に開戦のご挨拶が投入さ


「~~~~~っっっっっっ!?」

『ッ!?』

『エリアアナウンス:近くで巨大地震が発生しました!』


 黄金領域は耐えてるけど、星が揺れてるよ!! 星が!! 地面が波打ってるのが見えるんだけど!? これ、黄金領域を展開してなかったらこっちまで吹っ飛ばされてるでしょ、絶対!!


「た、耐えてる!! 領域耐えてる! 突入は少し待って、先に空気送って!!」

「く、空気~!!」

『空気は不要、グリムヒルデは突撃します』

「おにーちゃんもついてって!」

『(`・ω・)!』

『あらあら、先を越されてしまったわ、ね?』

『モロトフくんが全ての能力を失い、解除不能なハイパーグロッキー状態になりました。暫くの間、反動で動けません』

「さい、こう~……♡」


 これは領域の中にあった酸素が消滅してるよね。空気が不要なグリムヒルデさんとおにーちゃんが先に行って安全地帯を確保しに行ったけど……まさか、今ので緑の呪いを撃破しちゃったなんてことは……。


『(我が神、中は見事なまでにほぼ更地だ。目標は現在わずかに残っている建物がある入り組んだエリアで再生中、どう見てもピンピンしている。これぐらいじゃどうってことないって様子だ。機械のお嬢さんは安全地帯を確保した)』

『(ありがとうおにーちゃん!)』


 うん、ないね。こんなに簡単に倒せてたら、冒険者支援システムが『しっかり対策してください』なんて言わないのよね。さあて、魔術師組が空気を送り込んだし、私達も行こうか!!


「よし、呪い対策をした第一陣、突撃!! 素早く生産施設を展開、それまで敵の戦闘力を確かめつつ、残った瓦礫も全部押しつぶして完全に更地にする! 相手が入り込んで逃げる場所を潰す!!」

「よぉ~し、今度はやり返す番だ~」

「お昼寝は絶対、エリスちゃんから離れないでね! 絶対だから!」

「はいはぁ~い。エリスは心配性だなぁ~」

『さあさあ、私達の夜の始まり、ね?』

『お互い頑張りましょうね、リンネさん』

『行きましょう姫千代さん。よろしくお願いしますね』

「こちらこそ、お願い致しまする」

『封印指定全解放、来い……慈悲の大戦斧よ!!』

『封印指定全解放、ね。来たれ、支配者の灯火』

『封印指定全解放! 来なさい、襲撃者の夜よ!』

『封印指定、全解放。魔光剣、抜剣』


 え、封印指定……普段は封印しておかないと大変なことになるような武器でも持っていらっしゃるんですか……!? え、ええええええーー!?

 ニンギリフさん、なんですかその……!? 自分の背丈の倍以上もある巨大な斧は!? ミーシャさんは綺麗な赤いカンテラが付いた杖、綺麗な杖だけど効果はわからない……。カーサさんのは見えない……けど、何か武器を手にしてる! リザさんのはもう、ビームソードじゃないですかやだー!! これで天魔破斬とか呼吸をするように放つんですよね。怖すぎる……。


『ニンギリフが【一撃の慈悲】の称号を解放しました』

『ミーシャが【蕩ける支配神】の神力を解放しました』

『カーサが【冥夜の襲撃者】の称号を解放しました』

『リザが【剣の神】の神力を解放しました』



 あ……。てっきりもう、ミーシャさん達は超えたか並ぶぐらいの実力ぐらいにはなったかなーとか思ってたけど、全然……! 


『蕩ける支配神・ミーシャが【死体安置所・1~500】を解放し、大量の死の従者が召喚されました』

『さあ、行きましょう、ね。久々の狩りの夜、よ……!!』


 神格は同等かもしれないけど、スキルの格が、段違い過ぎる!!




◆ ◆ ◆




挿絵(By みてみん)

【蕩ける支配神・みーちゃん】

 彼女がなぜ、幾千幾万の冒険者に死体安置所を貸し出せるのか。疑問に思ったことはあるだろうか。その答えは、無尽蔵。無限に死体安置所を作り出すことが出来る。

 死と時は密接な関係にある。死とは生が刻む時の流れが終わること。彼女は死と時を捻じ曲げることにより、膨大な死者達を時間の墓場に閉じ込めているのだ。


挿絵(By みてみん)

【冥夜の襲撃者・カーサ】

 殺した死体を即座に呪具に変える暗殺者が存在する。彼女の見えざる手に触れられた者は呪具という名の永遠の牢獄に封じ込められ、生まれてきたことを後悔することとなるだろう。


挿絵(By みてみん)

【剣の神・リザ】

 斬られたことにすら気がつけない。死んだことにすら気がつけない。瞬きをした瞬間に自分が不死者に変えられてしまうなど、想像したことはあるだろうか? 彼女と敵対すればそれはすぐに実現するだろう。興味があるなら彼女に剣を向ければ良い。


挿絵(By みてみん)

【一撃の慈悲・ニンギリフ】

 その巨大な斧に、その巨大過ぎる斧に、敵対者は嘲笑を向けるか、恐怖と絶望で赤子のように泣き喚くことなるだろう。もっとも、前者もすぐに後者と同様の姿になるだろうが。

 執行者ニンギリフは慈悲深い。獲物を過剰に痛めつけることを好まず、可能な限り一撃で敵対者の生命活動に終止符を打つ。その慈悲は魂にすら響き渡り、悪しき魂は瞬時に両断されて輪廻へと旅立つこととなる。

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