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520 あの日と同じ、別人のような八人

 お昼寝さんとめーちゃんが無事ロストなく復活し、さあこれから緑の呪いで装備を大量生産だと意気揚々と取り組み始めた矢先、私達はとある壁に衝突してしまった。


「なるほどね~。(まご)以上になると、感染力が落ちて質も下がっちゃうわけか~。そういうところ、よく出来てるねえ……」

「裏を返せばここまでは運営の想定の範囲内ってことですか。なるほど、まだ(てのひら)の上を出ていないと。じゃあこれはいくらやっても怒られないってことですね」

「いや、そういう意味じゃねえと思うんだが」

「なんにせよ、孫は五人までっちゅうことやな。子がお昼寝、親が大元の緑の呪い。子はバンバン増やせる、せやけど子から孫は五人までしか感染せえへん。不思議なことやけど、お昼寝から取ったサンプルはもう何回やっても誰も感染せえへん」


 緑の呪いは大元からなら恐らく無限に子を増やすことが出来て、それらを取り込むことでまた子を増やして呪いを拡散することが出来る。しかし、子が緑の呪いを感染させられる数には限りがあるようで、今回サンプルとして扱っていた子、つまりお昼寝さんからは五人しか感染者を作ることが出来なかった。

 これは実験体A君に五回感染させて免疫が出来たというわけではなく、めーちゃんをサンプルにして実験体BからFに感染させたところ、実験体Gには感染しなかったことから『子は五体に呪いを広げると拡散能力を失う』と判明した。

 さらに孫である実験体各種は呪いを広げる事が出来なかった。ウーズとしての能力も非常に低いので、大元がこれらを吸収しない限りは雑魚であることに間違いはない。

 最後に、緑の呪いはランク7。ランク8以上の結界や耐性、同種の状態異常を超えることは出来ない。低ランクでも蓄積すると悪化する状態異常はあるけど、呪いはより強力な呪いを上書きすることが出来ない。これはそもそも呪いがランク毎に発生する異常が異なる、特殊な状態異常扱いだからだと思う。


「つまり、もっと緑の呪いが欲しいですね」

「いやぁ~今のリンネちゃんの顔、絶対そう言いだすと思ったんだよねぇ」

「お昼寝はもう行かせないから! エリスちゃんと一緒に後方支援だから!」

「ほらエリス~僕は無事だから~。操作不能時間は簡易宝物庫に転送されてミニゲームで遊んでるって言ったでしょ? 無事だから、リンネちゃん達のおかげで、ね?」

「行かないもん!!」

「アカン、重症やな」

「お、レーナも起きてきたみたいだぜ。寝てる場合じゃないってメッセージが入ったぞ。またログインしてくるみたいだな」

「ペルちゃん達からもさっき、寝ている場合ではありませんわ~!! ってメッセージ来ましたから、多分ログインしてくると思います」

「おっ! リンネちゃん、ペルちゃんの真似上手いね~」

「よく一緒にいる友達ですし、た、多少は……」

「ふぅ~ん……」


 な、なんですか。友達の真似をするぐらい良いじゃないですか! それより、この後の話ですよ! 緑の呪いで増やせる孫の数に限りがあるのであれば、そもそも親から搾り取れば良いじゃないプロジェクトの話をしましょうよ! 

 祭壇からバビロン様にこの作戦を伝えたら、それならほぼ間違いなく成功するだろうから、好きに暴れて良いって太鼓判も貰いましたし!


「ほ、ほら! 緑の呪いをどうやって効率的に回収するかの話、しましょうよ!!」

「問題が多いよね~」

「そうだなあ。まず、実行役として最前線に立つ奴が欲しいよな。リンネちゃんが前に出ちまうと呪物化の同時進行はキツイから、なかなか前に立たせるってことは出来ねえ。ただし緑の呪いを防ごうにも、耐性があるかもしくは獲得出来る奴には限りがある」

「せやな。それに、子を作ろうにも誰が感染役になるかもあるで」

「装備と死体はなんとか用意出来そうだけどね~」

「え?」

「えっ」


 うん? なんで呪物化の話だけなの? どうして私が前に立っちゃいけないの?


「緑の呪い、錬金術にも流用出来ましたよね? ほら、同じぐらいの呪物とか劇物を大量に混ぜて、エルドリード金貨を粉々にして混ぜ込んだやつ」

「それがどう……し……た、の……?」

「ランク8の呪いを被っておけば、低ランクの呪いで上書きされることはないはずなので、金運壊滅の呪いを受けてカジノ全敗状態を付与して緑の呪いに突っ込めば、緑の呪いは金運壊滅を取り込めないはずですよ」

「…………えっ」

「子も作らなくて良いと思います。親から直接搾取しましょう。呪物化だけじゃないですよ、錬金術や魔力抽出もです。緑の呪いの親玉から金運壊滅の呪いポーションを大量に作って、魔力抽出で魔力結晶をどんどん作って、魔石や魔導具をガンガン作りましょう。今からやるのは討伐じゃないです、狩りです。緑の呪いが完全に消滅するまでしゃぶりつくします」

「親からの反撃が、苛烈だと思うけど……」

「いらっしゃるじゃないですか。プロフェッショナルの方が」

『……? あ。いえ~い、プロフェッショナル、いえ~い』

「ああ……!! ああ!!」


 そう、グリムヒルデさんですよ。その力が絶大なのは既に周知の通り、緑の呪いを閉じ込めることが可能な結界を作ることが出来る彼女の力があれば、熾烈な攻撃を防ぎつつ、使いたい分量の緑の呪いを攻撃して切り離して捕縛、アイテム化して徐々に緑の呪いを消耗していくことが出来る。

 こちらには攻撃力が非常に高いメンバーが揃ってるし、緑の呪いへの対抗策はさっき偶然出来た金運壊滅の呪いポーション、通称『カジノ全敗薬』がある。更に絶対死守したいメンバーはティアちゃんとパーティを組めば状態異常を完全に無効化出来るので防御さえ固めれば安全。防御に特化してるメンバーを配置すれば概ね完璧だと思う。


「作戦はこうです。まず緑の呪いの初動を防ぎつつ前進、グリムヒルデさんの安全地帯を確保するために制圧を開始、更に地下からの攻撃がないようにデロナちゃんがランドプロテクターを発動して安全を確保する。安全を確保したら今回のメインアタッカー、生産職の皆さんに入場して貰います。設備を設置し終わったら更に攻撃開始、切り離した緑の呪いを結界で攫い、アイテム化して撃退します。これの繰り返しです。切り離しに向かうアタッカーは常にカジノ全敗状態を維持し続けましょう」

「それ、大丈夫? 副作用で後遺症残ったりしない? 今後もカジノ負けやすくなるとか、ない?」

「大丈夫ですよダメぽさん。多分大丈夫です」

「多分じゃ嫌なんだなぁ~!!」

「ギルド軍資金大きく増やせるチャンスだし、やるでしょ! この大博打!」

「勝率が物凄く高い博打だ、やるっきゃねえだろ」


 この作戦に対する反対意見は無かった。むしろ、生産メインでやってたレベルの低いギルドメンバーさんが大活躍する戦闘になるので全員が賛成、パーティ編成などをお昼寝さんやもってぃ達が細かく設定し、どのパーティも手を余さないようにうまく割り振ってくれた。


「みーちゃん」

『みーちゃ……あら、呼んでくれたわ、ね? 嬉しい、ねえカーサ? 聞いた? みーちゃんだって。リザ、聞いた? みーちゃんって』

『お気に入りの子に変な名前の呼ばせ方する遊びはもうやめなさいな、子供みたいよミーシャ』

『あらあら、意外と子供っぽいところが可愛いのよミーシャは。ええ、私達は一緒に動きましょうね? そのお誘いでしょう?』

「ええ、一緒に動きましょう。それと、出来ればニンギリフさんも呼びたいです」

『今呼んであげるわ、ね? ふふっ、面白い子。やっぱり好き、ね?』

『どういうことかしら?』

『あらあら、あらあら……うふふふ……競争ね?』

「あら、バレちゃいましたか。カーサさんにはバレなかったので、ちょっとだけ嬉しいです」

『私にもわかるように説明して頂戴。仲間はずれは嫌よ』


 さて、私のパーティの編成だけど……。実はもう、絶対にこのパーティにしたいと心のなかで決めてた編成があったのよね。


「私のパーティは、リアちゃん、おにーちゃん、千代ちゃん、みーちゃん、カーサさん、リザさん、ニンギリフさん。この8人で行きたいです」

「にゃはは~……なぁるほどぉ~」

『(  ^ω^)』

「御意に……おや……?」

『面白いわ、ね? ほらカーサ、ここにニンギリフが居たら、ね? 見覚えある……でしょう?』

『まだピンと来ないかしら~?』

『……ああ、ああっ! ええ、思い出しましたわ。なかなか粋な計らいですこと』

『ほら、来たわ。なんで呼ばれたって顔、ね?』

『本当よ、なんで呼ばれた……あら、あの時の決勝以来ね。お久しぶり』

「お久しぶりです、ニンギリフさん」


 いつぞや、ガトランタ王国で行われた天下一決定戦の団体決勝。あの時は敵同士だったけど、今度は力を合わせて同じ敵に挑もうかと思って。それならニンギリフさんも絶対にいたほうが燃えるなーと思ってこの編成にしたのよ。


『どちらが多くの呪物を作れるか、より多くの戦果を上げるか、勝負ということですのね』

『負けないわ、今度こそ』

『あらあら、また熱くなってしまうわね』

「お互い頑張りましょう。でも、あまりにも敵が強かった場合は……」

『なんだかよくわからないけれど、強者と戦いに行くのか? それとも雑魚の始末か?』

「物理的に一つにならなくても、我々は一つとなることが出来ることを証明しに行くんです」

『よくわからないが、更によくわからなくなった。しかしみーちゃんが笑っているということは、面白いことが始まるのは確定しているな。付き合おう』

「(*´ω`*)」

「あの時より私達はずーっと強いですよっ! にひひ~よろしくおねがいしま~す」

『あの時の言葉、覚えていますわ。あれから学ぶ機会がなかなかありませんでしたが、この戦場で貴方の剣技……学ばせて頂きますわね』

「此方もまだまだ道の途中、共に高め合いましょう」

『あら、嬉しい……ご一緒させて頂きますわね』


 なんだか思った以上に燃えてるわ……。でも良いことよ、お互いの向上心に火が点くこの感じ。私達は強くなれる、それこそ緑の呪いのように物理的に一つにならなくても、更に高みを目指し続ければいずれ手が届く。天に、刃を突き立てるんだ。必ず切り裂いてやる、そこで胡座をかいて見下していろ……すぐに天地をひっくり返してやる。


「詳しい話は道中で。作戦は単純ですが、一つのミスが致命傷に繋がりかねない。油断せずにいきましょう」

『久しぶりに前線、ね? あの日以来、かしら。さあ、着替えてきましょう、ね?』

『久しぶりの戦装束ね。本気で行くわよ』

『魔光剣を抜くなんて、何十年? 何百年振りかしら~』

『え? そんなに本気で挑まないといけない相手なのか? 待って、私も将器の禁を解くから』


 ミーシャさん達も本気だ、私も本気でこの作戦を成功させなきゃ。気合い入れて行くぞ、緑の呪いを食い尽くしてやる!! あ、その前に他の子達の編成もしないと! 主に後方支援、有事の際の緊急要員として活躍させる予定だけど……余裕があるなら、皆にもばんばん動いて貰えるような配置にしておこーっと!

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