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517 ちゃんと説明しましょう

◆ ローレイ・魔神殿 ◆


 事の顛末を死霊術師教官であり私の先輩であるミーシャさん達に話した所、普段おっとりしていて静かに佇んでいるカーサさんとリザさんが目を見開いて『早くその呪いが見たいわ、見せて頂戴。早く出して』って蠱惑的な表情で迫ってきて、ちょっと興奮した。

 もうちょっとぐいぐい迫ってきて欲しかったけど、お昼寝さんとめーちゃんをこれ以上待たせるわけには行かないから、早く出せって迫るお姉様達を落ち着かせつつ、アルスちゃんやマグナさん、グリムヒルデさんや同盟ギルドの魔術図書館の方々にも同席して貰って一人ずつ呼び出すことに。緑の呪いは一つになる習性があるから、お昼寝さんとめーちゃんが万が一にも一体化しないようにね。


『結界は完璧、ね? ほら、早く出して? ね? お姉さんをあまり待たせないで、ね?』

『もう、焦らさないで早く見せて。私達の知らない呪い、早く見たいわ』

『あらやだ、期待と興奮で手が震えてきましたわ。私ったら、はしたない』


 おかしい、おっとりしていて他者を寄せ付けないオーラをバチバチに醸し出しているお姉様達ってイメージだったのに、こんな未知の呪いで興奮する人達だったなんて……。これ以上待たせたらお姉様達の豊満な胸部装甲トライアングルで押し潰されかねないから、早く召喚を……リアちゃん何ニヤニヤしてるの! 早く出して!! にゃはぁ~じゃないの!!


「リアちゃん! 早く!!」

「しょうがないにゃあ~……。じゃあ出しま~す」

『ッ!!』

『もっと結界を強めて』

『これは、絶対に漏れ出させてはいけないわね。万が一にも地下に染み出さないよう、空中に縛り付けましょう』

『大丈夫、全く漏れ出していないから、ね? なるほど、とても悪質で、気色が悪いわ……ね?』

『脅威度を分析中……。対象の精神汚染度、高。強制的な状態変化、高。拡散力と汚染の深刻度、高。非常に危険、推定ランク、7です』

『ランク7、冥毒よりも上か。厄介だな』

『ヒュドラの毒より強烈なんだ~!』


 ランク7……7!? 確か、普通の呪いと古代の呪い、抹消なんかがランク5で、メルティスの使ってきた強抹消がランク6だから、それを上回る凶悪さってこと!? 甘く見てたわ……。こんなに強力な呪いだったなんて……。


『これの、大本は……封じ込め出来てるのね? 大丈夫、ね?』

「えっと、はい! それは間違いなく!!」

『あの黄金の女王様の結界なら、バビロン様ですら破れませんもの。問題ないでしょうね』

『黄金の女王と、私の結界は、推定ランク、9です。同等の力が、あります』

『グリムヒルデの結界と同等なら、問題ないでしょう』


 え、グリムヒルデさんの結界もそんなに高位の結界なんだ……。じゃあティアちゃんは8かなって思ったら同じく9もあるのね。ワールドアイテム恐るべし……。いやいや、ティアちゃんはとんでもない量の代償を払ってあの結界を作ってるけど、グリムヒルデさんも何か代償を払ってるのでは!?


「グリムヒルデさんも、大きな代償を支払ってるんじゃ……」

『……? この程度なら、何も支払う、必要は、ありません。何も、問題ありません。余裕~いえ~い、いえい』

『演算能力を上げているから、言葉が流暢になっているね。いつもそうすれば良いのに』

『疲れるので。まずは、サンプルを抽出しましょう』

『慎重に、ね?』

『結界にフラスコを、突っ込んで。必要な分が、抽出出来たら、魔力で蓋をしてください』


 ええ、代償なしで結界を……!? ワールドアイテムより凄いものを所持しているんじゃ……。ああ、ティアちゃんは移動に結界に生産に回復から転生まで、いろんなことが出来るワールドアイテムだから代償が大きいだけで、グリムヒルデさんは特化したものを持っているから代償が少ない、もしくはないのか……! アイテムの効力が大きくなればなるほど、代償が大きくなるのね。まあ当然っちゃ当然のバランスか。


「うぇえ、気持ち悪い色。臭そうです!」

「こら、お昼寝さんかめーちゃんかわからないけど、臭そうなんて言わないの!」

『多分腐臭がするわ、ね? 絶対、嗅いじゃダメ……絶対、ね?』

「絶対に嗅がないんで、近づけないでください!!」

「りんねーさまも失礼だよ~」

「うっ! す、すみません……」

『これは、ふぅむ……。肉体がウーズに置き換わっているのではなく、湧き出したウーズに肉体が飲み込まれている状態なのか?』

『じゃあ分離機で良いんじゃな~い?』

『溶けている部分が半分、残っている部分が半分、肉体の主導権はどちらにもない。分離機では中途半端な、それこそ骨と液体にしか分離されないかもしれないぞ』

「すみません、分離機での分離よりも、魔力抽出機でウーズと人間の魔力を分離し、ウーズを別の依代に移し替える方法はどうでしょう?」

「マグナさんとゴリアテさんのどちらの方法も難しいように聞こえる。分離でも魔力抽出でも呪いが肉体を切り離してくれるとは思えない。解呪と分離が同時に必要だろう」

「解呪だけ行うのは?」

「ウーズと共に肉体がロストする可能性があるのは許容できない。少なくともお昼寝さんが肉体の主導権を握っているようには見えないから、ウーズが祓われたら同化した肉体ごと消滅する可能性があるぞ」

「回復魔術だけじゃ治らないのかな~?」

『うーん、それでは治らなそう、ね? デロナちゃん、なかなか困ったわ、ね?』

『ミーシャ、未知の呪いにうっとりしていないで対策を考えなさいな』


 なんか難しい話が始まっちゃった、私じゃついて行けない……! なんちゃらかんちゃら法とか、なんちゃら機を用いた分離解呪とか、よくわからない……!!

 あ、リアちゃんがツニャ缶を開封して食べてる!? 待ちきれなくて食べちゃってる!! 尻尾がぴーんって、あんなにお目々開いて、感動してる……!! 一気にがっつきたい欲求を抑えてひとくちひとくちを噛み締めてて、うーん。可愛いねえ……。


「ツニャ缶、美味しい?」

「美味しいです! プレミアムは格別です!! あっ!!」

「元のお魚さんはマグロっていうんだよ。旬のマグロを美味しい状態で保存するために缶詰にしてあるの」

「ふにゅ~ん……ぺろっ……」

「こらこら、ウーズ化したお昼寝さんと見比べない……の……」


 ウーズ、美味しいところだけ、ツニャ缶、一体化しきれてない、呪い……。

 つまりツニャ缶でいうところのツナの部分がお昼寝さんで、油の所がウーズ。油を切ってもツナから油が抜けきることはないから困ってるわけね。魔力抽出機が油取りシートみたいなもので、分離機が遠心分離機だ。どれもこれもツナと油が分かれてくれなくて皆困ってるよ~と。

 そして今思いました。お昼寝さんとウーズが混ざり合ってる状態って、装備と死体と呪いが混ざって出来るアニメイトフェティッシュと似てるよね。

 じゃあ逆に、わざと装備と死体を投入してアニメイトフェティッシュしちゃえば、余った材料のお昼寝さんは分離されて出てくるのでは? さっきはアニメイトフェティッシュじゃなくてアンデット作成だったけど、こいつは死体か呪いとして合成対象に選ぶことが可能だったもんね。グナの逆をやればいいんだよ。


「アニメイトフェティッシュしちゃえば良いんじゃないですか?」

『は? 何を考えているんだお前は』

「いやいやリンネさん、それは流石にマズいですって」

「お昼寝さんのこと素材かなんかに見えてるんですか!?」

「あ、いや」

『困ったわ。血も涙もないの、ね?』

『仲間を見捨てるつもりだなんて、お姉さん悲しいわ』

『あらあら、なかなかに鬼畜なのね』

「え、ちょ、違うんです!!」

「リンネちゃん、そりゃあねえだろ……」

「りんねーさま、それはあんまりだよ~っ!!」

「あ! 説明! 説明させてください!!」


 あ、圧倒的に説明不足だった!! 違うの、お昼寝さんを使うとかじゃなくて、そうじゃなくって! 皆そんな目で見ないで! リアちゃん、絶対わかってるでしょ!? にやにやしてツニャ缶ぺろぺろしないでフォローして!?


「にゃはは~」

「ツニャ缶! ツニャ缶なんです!!」

「はあ!?」

「ますます意味がわかりません。ちょっと落ち着いてくださいリンネさん」

「もしかして頭の方を緑の呪いにやられたのでは?」

『それは言い過ぎ。でも多分やられてる』


 やられてないから! 説明するから! ちょっと待ってよ、本当に落ち着いて!? 今説明、するからぁ!! これは誤解です。誤解なんです……わああ武器まで向けないで!? 本当に違うから、皆が思ってるようなことはしないから~!! あああ~!!

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本作をご覧頂き誠にありがとうございます
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