515 絶望の都市
『レイジが【絶命覚醒・羅刹鬼神】を発動、レイジの死亡条件が特殊条件に変更されました。全ての能力値が極大に上昇します』
「え、それ自分で発動出来るんですか……」
『なんだ、この程度の相手ではそこの現人神で十分であろうレイジ。気易く呼び起こすな』
「たまには弱いもんをギッタギタにするのもええやろ」
『……確かに、たまには悪くない』
「え、その後ろの霊体さんと会話も出来るんですか……」
ああ! 絶命時に発動出来る系のスキルがありましたね! それ自殺でも発動出来るんですね……。特殊条件で死亡って、どうやったら死ぬんだろう。前は肉体が強化されて変異するタイプだったけど、今度は剣鬼みたいなのが後ろに霊体で現れるタイプなんだ。あ、目が合った。こんばんは~……?
『おい、レイジ、レイジ! 現人神と言えど我が見えるはずがないが!?』
「ああ、リンネちゃん死霊の神やし、オッサンの上位神かもしれへん」
『……あ、どうも、羅刹鬼神を名乗らせて頂いております。どうぞよろしくお願いいたします』
「え、あ……。ど、どうも……。死霊神のリンネです……」
さっきまでの威厳、どこ!? あんなに堂々としてた羅刹鬼神、どこ!? いやそれよりグリーンスライムをぷにも残さず絶滅させるのが先だったわ! ツッコミが追いつかないから、挨拶のつづきは後でね!!
『ナニヲゴチャゴチャト』
『羅刹鬼神が【斬撃】を発動、緑の呪い・ロザンナに17,744Gダメージを与えました。レベルが減少しました』
『ッ……!?』
「お? 今のはさっきまでのダメージの受け方とちゃうな、なんや……逃げるつもりかいな」
『死霊神様、こちらは逃げ出した方の粘液を追わせて頂きたくてですね、ええ、大変心苦しいのですが、そちらはおまかせ致してもよろしいでしょうか……?』
「え、あ……はい……」
『よし、行くぞレイジ!! 早く行こう!!』
「……はぁ、なんやかなぁ」
『(ティアちゃんもついて行って、万が一にも脱走ってことがあるかもしれないから)』
『(はい~!!)』
「あ~緑のオバサン逃げちゃった~!!」
「シャーリーちゃんとリアちゃんはこっちに残って欲しいな~。これを処理しないと」
「いいよ~♡」
「は~い!」
なんか羅刹鬼神さんからどことなく漂ってくる残念感……。片方は突然逃げ出したから、私は自分で作った方を始末しないとね。それにしてもさっきの攻撃、今までとは違って呪いが拡散せずにレベルが下がったけど、どういう条件で発生するんだろう? ん、なんか鈍臭かったグナがぐにゃぐにゃし始めた……?
『セカイ、ヲ、ヒトツ、ニ、セカイ――――ユルセナイ』
『緑の呪い・グナが【圧縮死毒酸弾】を発射』
「う……!?」
へえ、凄いね。こんな状態になってもまだ私への恨みだけは消えずに残ってるんだ。一瞬だけ確実に自我を取り戻して、私にだけありったけの殺意を向けてきた。事前に異変を察知していなかったら、前衛職ビルドに変更していなかったら、恐らく今の毒酸弾は避けられなかっただろうね。
恐らく攻撃は無属性と毒属性、遠距離突属性の複合攻撃。毒属性の方は不死属性で防げるから良いとしても、酸によるダメージと弾丸の直撃ダメージは防げない。いやあ、面倒くさいなあ~……。
『緑の呪い・グナが【圧縮死毒酸弾幕】をスタンバイ』
「あ、ヤバ」
「にゃんにゃうにゃーにゃん!!」
『オーレリアが【希少魔石・魔猫の目】を消費し、【守護猫・がーでぃにゃん】を召喚しました』
「わああ!! 可愛い~~!!」
瓦礫で出来た巨大な猫の石像! 一旦隠れて攻撃をやり過ごして、どう押し切るのかを考えないと。ロザンナのレベルが下がって逃げ出したのも気になるし、さあどうしたものか……。
「これは長期戦になるかも、一旦隠れるよ!!」
『緑の呪い・グナが【圧縮死毒酸弾幕】を発射』
『がーでぃにゃんが【百連発ねこぱんち】を発動、劣勢! がーでぃにゃんの損壊度が60%を超えました』
「にゃ~ごにゃ~ごにゃんにゃ~ご!!」
『オーレリアが【守護猫・修復】を開始、がーでぃにゃんが完全に修復されました』
え、それ強くない……? いつの間にこんな強いスキルを……あ!! もしかしてこれ、ゴリアテさんのパペットマスター系のスキルか!! うわあ、凄いドヤ顔してる。ツニャ缶8個にしてくれとばかりのドヤ顔……。
さて今のは流石に大技、連発は厳しいでしょ。反撃と行きますか! まずは小手調べ、そこらの瓦礫を手にとって、ありったけの力を込めて……!!
『メギドヲ、カエシテ、ユルサナイ』
「私の返事は、これよ!!」
『【怪力投擲】を発動、クリティカル! 緑の呪い・グナに8,870Gダメージを与えました。レベルが減少しました』
なんでこんなにあっさり当たるの……? 減少したレベルは……88も下がってる。まさか、100ギガダメージ毎にレベルが1下がるってこと? このまま殆ど抵抗してこなかったらレベル1080なんて、あっという間に削りきれるじゃん!
「え、リアちゃんアレ削って? 虚無で、にゃおんってして?」
「え~」
『オーレリアが【虚無の黒猫】を発動』
『シャルナーデが【44ミリのレクイエム】を発射』
『ァ、アアアア!!』
『クリティカル! 緑の呪い・グナに47,730Gダメージを与えました。レベルが減少しました』
『緑の呪いが【骸吐き】を発動、骸が虚無に飲まれました』
「わあ~すっご~い! どぼ~んって穴が空いちゃった~♡」
流石に当たっちゃいけない攻撃は避けるのね。シャーリーちゃんの魔改造されたヤバい銃の方は避けきれないから当たるしかないよね。そもそも避けられないだろうし、2秒ズレてるから。シャーリーちゃんが銃を構えた時には既に直撃してたよ。ログも本来ならリアちゃんが発動するより、少し先に発射したって出るはずなんだけどね。タネがわかってると見てて面白いわ。
「なんだ、あっという間に倒せるわこれなら」
「よわよわ~♡」
「弱いはずなのに当たらなかったです! 面白くないです、ねっ!!」
『オーレリアが【虚無の黒猫軍団】を発動』
『シャルナーデが【22ミリのノクターン】を発射』
『緑の呪いが【骸津波】を発動、大量の骸が虚無に飲まれました』
『クリティカル! 緑の呪い・グナに22,470Gダメージを与えました。レベルが減少しました』
「呆気ないけど、これでトドメよ!!」
なんだ、呆気ない。見た目こそ禍々しく忌々しい緑の粘液だったけど、所詮スライムはスライムか。体積も殆ど失ってかなり小さくなっちゃったね~。それじゃあ魔狼掌底砲で木っ端微塵にふっ飛ばしてやるわ! 何、今更ぐにゃぐにゃして毒酸でも吐く気? もう遅い!
『(リンネ様大変です~!! 倒しちゃダメです~!)』
「え、もう無理!」
『【魔狼掌底砲】を発動、クリティカル! 緑の呪い・グナに38,440Gダメージを与えました。緑の呪い・グナがレベルを失い、消滅しました』
え、もう倒しちゃったよ!? 何、倒しちゃダメな理由でもあった!? 何か見落としてた!? どうしよう、ティアちゃんから念話が入ったけど止められなくて倒しちゃったんですけど……。
「な~んだ、大したことなかったね~♡」
「帰ってツニャ缶の時間です! 帰りましょう~!」
「あれ、鍵が落ちてるね~」
『(リンネ様、鍵から遠ざかってください~!!)』
「離れて!!」
「ッ!!」
「わあ~!?」
シャーリーちゃんがリアちゃんを抱えて逃げてくれたからとりあえず離れられたし、私も自前の身体能力で離れられるから問題ない。それで、この鍵が何か問題を……? 離れてるけど、鑑定鏡使えるかな…………ッ!?
『緑の鍵の情報を表示、し、マ、ス……ヒトツニ、ナリマショウ、ヒトツ、ニ、ナリ、マ、シタ』
え…………?
【(SW)緑の鍵・複製品】(準ワールドアイテム)
・本体は複製品を自由に生成可能である
・同一人物が二つ以上の鍵を同時に所持することはできない
・鍵を空間に突き刺し発動すると、緑の呪いが発生するポータルを作り出すことが出来る。緑の呪いを受けた対象はウーズと化す
・ウーズは独自の力を有し、死亡した時に呪いを振りまき他者と一つになることで復活することが出来る
・上位者はウーズや拡散した緑の呪いを取り込むことで無限に強化され、この世を統べる力を手に入れることが出来る
・上記の効力を説明し、同意を得た相手に渡すことで鍵をいくらでも増やすことが出来る
『君達、私は此処から出たいのだが、通してくれル通シ、通セな、通――緑の呪いハ貴方に語りかけてイ、ス、マス、語り、返事ヲシ、ロ殺ス貴方は死亡しました。貴方ハ、貴方ハ貴方ハ貴方ハ貴方ハ貴方ハ貴方ハ死亡シマス。破壊さレ』
…………ッ!!
『ヒトツニナリマショウ』
「お姉ちゃん!!」
「か、い……回避ッ!!」
何よ、この、化け物…………。