514 混乱の都市
『【葬滅斬】を発動、即死! 緑の呪い・ロザンナが切断され、緑の呪いが拡散しました』
『ティアラが【黄金神槍驟雨】を発動、複数の緑の呪い・ロザンナが破裂し、緑の呪いが拡散しました』
『オーレリアが【焼殺猫猫大行進】を発動、複数の緑の呪い・ロザンナが燃え尽き、緑の呪いが拡散しました』
――違和感。
『レイジが【万物両断】を発動、緑の呪い・ロザンナが切断され――』
『緑の呪い・ロザンナが【死毒酸液】を発射――』
『シャルナーデが【44ミリのレクイエム】を発射――』
『ティアラが【黄金神槍驟雨】を――』
じゃあ、なんであの時あんなに焦ったの?
『シャルナーデが【11ミリのラプソディ】を――』
『オーレリアが【焼殺猫猫大行進】を――』
『レイジが【修羅波動斬】を――』
『緑の呪い・ロザンナが【呪力強化】を発動しました』
ロザンナは簡単に撃退出来る。しかし、その復活速度が尋常ではない。ティアちゃんとリアちゃんが片手間に範囲殲滅を仕掛けても全く減らない。それどころか増えているような気配さえあった。復活速度は問題ないのだから、あの時あんなに焦った理由がわからなかった。
なので、なぜロザンナはお昼寝さんかめーちゃんに乗り移ろうとして失敗した時に焦ったのか。恐らくロザンナ攻略の鍵はここにあると推測し、この理由を考えることにした。
まず考えたのは、まだ復活方法に慣れていなくて乗り移れないスライムが居て焦っただけ。乗り移る前に本体となるロザンナが完全に消滅した場合、意識が保てなくなって死亡するのではないかと考えた。だから乗り移り前に消えそうになって焦った……特に矛盾点は感じないけれど、何故かこの答えに違和感を感じた。
そして今思いついたのが、集団思考。個にして全、全にして個。ここに居るスライムすべてがロザンナであり、上位者であるロザンナの意識を全てが共有して繋がっている。
どうしてこのような考えに至ったか、それはバトルログにロザンナが復活したとは一切書かれていないから。どれを倒してもロザンナで、呪いが拡散したとしか表示されていない。つまり全てがロザンナで、全てが緑の呪いを通して上位者の意識を共有している。だからどれが本体ということはなく、全てを狩り尽くすまでこいつは消滅しないのではないかと推測を立てた。
故に、意識が残っているお昼寝さんとめーちゃんを取り込みかけて焦った。集団思考の上位者はロザンナでなければならない。巣に女王蜂が二匹も三匹も居たら統率が取れず、最悪弱いほうが自我を保てなくなって消滅する可能性がある。万が一にもお昼寝さんかめーちゃんに乗っ取られたらと考えて、あれほどまでに焦ったのではないかという説。
『(リアちゃん、二人を発見しても気がついてないフリをして。攻勢に出られないのは、私達だけじゃないかもしれない)』
『(え? どういうことですか?)』
『(ロザンナは今、確実に自身の配下であるスライムだけに自我を移動して自己を確立してる。これはね、二体だけロザンナにとって爆弾があるからだと思う。お昼寝さんとめーちゃん、この二人を取り込んだ場合……ロザンナは自己を保てなくなる可能性が高い)』
『(ちょっとよくわかんない……)』
『(一人は既に炙り出してるから、もう一人がわかれば、ロザンナは全ての緑の呪いを取り込んで攻勢に出るつもりなんだと思う)』
『(なんだかややこしいですね……。とりあえず、二人の存在が相手にバレたら最悪の結果になるってことでいいですか!?)』
『(その認識で合ってると思う)』
ロザンナは元々が弱い。生前はレイジさんが呆気ないほど簡単に倒せた程度の能力だから、上位者として君臨するには能力が低すぎる。故に、自分より強い存在を取り込んでしまった場合……逆に支配権を奪われてしまう。
『(居た! 青い屋根の建物の中、お姉ちゃんの名前をつぶやいてる個体がいます!)』
『(さすがリアちゃん。今からこの仮説が正しいか実験をするから、まだ探してるフリをしつつ、万が一に備えて二人を保護出来るように立ち回って)』
『(六個!!)』
『(仕方ないなあ……)』
『(やったやった~!!)』
リアちゃん、負担が増えた分報酬を上乗せ要求してきたわ。まあ、リアちゃんが今まで稼いだ額から比べたら可愛い値段の商品なんだけど、ツナ缶にしては高すぎるのよね。シークレット装備が複数買えるんじゃないかって値段するんだもん……。最近は流通量が増えた気がするけど、入手できる場所が増えたのかな? そんなところがあるとしたら、どこで手に入るんだろ。
それより、実験ね。呪いということは私の領分でもあるということ。本来だったら敵に餌を与えるような行為だけど、この仮説が正しいなら……。
『【緑の呪い・ロザンナの残骸】を納棺します。【緑の呪い・ロザンナの残骸】を納棺します。【緑の呪い・ロザンナの残骸】を――』
『カズヲ、ヘラスツモリ? ムダヨ、ムダァ!!』
「起きろ」
『警告:離反する可能性が非常に高い行動です』
「起きろ」
『【黄昏の乙女・グナ】と【緑の呪いの不完全な集合体】を融合して召喚します……。離反しました。緑の呪いを取り込み始めました』
「は? え!? 何してんねん!?」
ティスティス様に処分を頼んだけど、処分するのは非常に難しいと言われたグナの霊体。死体安置所で腐らせ続けてたから、丁度いいしここで処分しようと思う。こいつは魂ばっかりは非常に強力だから、ロザンナ程度の低位の存在では取り込むのは危険なはず。さあ、どうなる?
『バカメ、ワレノチカラヲ、ギャクニリヨウシヨウナド、ト……』
『ヨニセイジャクノ、アラン、コトヲ、ヨニ、セイジャク、ノ』
『緑の呪い・グナが【群体吸収】を発動』
『ア……? ア、アアアア!! キサマアアアア!!!』
『緑の呪い・ロザンナが【群体吸収】を発動』
『オーレリアが【にゃんにゃんディメンション】を発動、ティアラが許可しました。緑の呪い・お昼寝したいと緑の呪い・メルメイヤを異空間に送り込みました』
「急に巨大化を始めおったで!? なにしとんねんリンネちゃん!?」
「なになに~!? どうなってるの~!!」
「これでいいんです。読みは、当たりでしたね」
グナが自身の勢力を増そうと周囲のスライムを取り込む。このままではロザンナがグナに負けてしまうので、ロザンナも周囲のスライムを取り込むしかない。
これにより、本来ならアールゲイン全体に居るスライムがロザンナの力になるはずだったのに、新たな上位者であるグナがロザンナをも取り込もうとして吸収を開始したので本来の半分かそれ以下の力になってしまった。
「大きな巣を一つ相手するより、中くらいの巣を二つ相手するほうが楽だと思いまして」
「お昼寝は!?」
「隔離しました。もう何の憂いもありませんし、敵は大ボス一体が……中ボスが二体になりました」
『オノレエエエ!! コムスメガァアアアア!!』
『ヨニ、セイジャクヲ、フタタビ、メギ、ド、ヒトツニ、ナリ、マ、ショウ……』
『ヨルナァアア!!』
『緑の呪い・ロザンナ(Lv.1050)が【毒水刃】を発動、緑の呪い・グナ(Lv.1080)がダメージを受けませんでした』
「なんや、仲間割れか!?」
「緑の呪いの行動の根源は全てと一つになることです! グナがロザンナを取り込んで巨大化する前に」
「どっちも倒せば、良いんだよね~!?」
『シャルナーデが【88ミリのスクリーム】に【シャルナーデマイン】を装填しました』
レベルはどちらも4桁に届くほど、巨大化したから恐らく耐久性はさっきまでとは段違いだろう。でも本来レベル1300の超巨大スライムを相手しなければならなかったことを考えれば、圧倒的に楽なはず!!
「ややこしい部分は終わり! ここからは単純明快な、火力の世界よ!!」
「火力~♡」
「火力です~!!」
ここからは、火力の……!?
『レイジが【切腹】を発動、絶命!』
は……!? はああ……!? レイジさん、なにやってんのおおおーー!?