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507 Operation Bunny Hunting・4

『ボス、これ以上は遊びじゃ済みませんよ……』

「いいの!! シャーリーはまだ遊び足りないの、これからが面白いところなんだから!!」

『……わかりました、俺達も全力でサポートします』

「準備出来たら行くよ~♡ この仮拠点は廃棄、どうせ挟み撃ちにしようとしてくるだろうからいらない!!」

『了解、挟撃に注意します…………チャットヴァーリ、ちょっと来てくれ』

『はっ!』

『…………ビッグボスに連絡してくれ』

『…………わかりました。ご武運を』

『見つかるなよ』




◆ ◆ ◆




『来たぞ、また爆弾からか!』

『これで決めるつもりなら、余ってるものを全部ぶつけて来るはずだ! ローゼス隊、構え!! なんとか耐え凌げ!!』

『黒兎はレーザーを嫌った、徹底的に叩き込んでやれ!!』

『ワオォォオオオオオオオオオオオオーーン!!』

『どん太が【破壊の咆哮】を発動』

『ホーミングミサイルが複数破壊されました。シャルナーデフラッシャーが破壊され、眩い閃光が迸る! シャルナーデノイジーマインが破壊され、けたたましい爆音が鳴り響く!』


 あ!! 閃光手榴弾だ、しかも目が潰れるぐらい強力な奴!! 夜にこれをやられるのはかなりキツイ、目がチカチカする~……!! ついでに音でも攻撃してきた、迎撃させる為にわざと投げてきたんだ、かなりの場数を踏んできた傭兵部隊みたいだって言ってたけど、本当に襲撃能力が今までの敵とは段違いだわ!


『デロナが【リフレッシュフィールド】を発動、身体機能が正常化します』

「う……! 狙いは黒兎!! 点で撃たない、面で制圧して!!」

『撃て!!』

『ローゼス隊が【一斉掃射】を発動、ゼイルマン隊が【一斉掃射】を発動』

「シャーリーのこと、熱烈大歓迎だ~♡」

『シャルナーデが攻撃を回避しました』

「……どう、ユキノさん!」

「今、ポイントAを突破しましたね~」

「千代ちゃん、わかった!?」

「にわかに信じ難いですが、ええ、今理解出来ました」


 ユキノさんから聞いたシャルナーデちゃんの能力、聞いた時は我が耳を疑ったね。効果自体は単純だけど、完全に使いこなせれば原理不明の最強能力だった。

 シャルナーデちゃんは避けてるんじゃない。答えは向こうが言っていた通り、当たっていない。そもそも当たっていないんだ。


『黒兎兵団・ドゥーベが【音速ロケット砲】を発射しました』

『オーレリアが【漆黒の黒猫(ヴァニャタスキャット)】を放ち、【音速ロケット砲】が虚無に飲まれました』

「私が無力化やります! 黒兎さん、頑張って!」

「やっつけないようにやっつけてきます!!」

「油断してやられないようにね!!」


 取り巻きの連中はゼオちゃんとティアちゃんに任せる。他の子は防衛に専念してもらって、私とどん太、千代ちゃんとユキノさんでシャルナーデちゃんを無力化する。どうにか対抗出来そうなのが私達三人だけだと判断した。


『戦術兵器RXMk-Ⅱがステルス状態を解除しました』

「あああ!?」

『(;´∀`)……!?』

「出番だわおにーちゃん!!」

『行くぞ、フリオニール殿!!』


 嘘でしょ、なんか巨大兵器まで連れてきてるんだけど……。ラビットエックスマークツー……!? いやいや、どう見てもウサギ型のガスマスクの頭部が付いたメガリスアーマーじゃん!! 本気も本気、超本気なんだけど!?

 おにーちゃんがヴァルフリートさんに抱えられて、そのまま飛んで運搬されて行ってる……。機動力のないおにーちゃんの貴重な高速移動シーンだ……。


『フリオニールが【巨大英雄化】を発動、巨大英雄フリオニールになりました』

「わぁ~凄い凄ぉ~い♡ 大きくなれるのぉ~!? 格好いい~~♡」


 良かったね~格好いいってさ、おにーちゃん……。いや、そんなこと言ってる場合じゃなんだよシャルナーデちゃん? こっちだって対策としてあれこれ用意して待ってるんだから、余裕かましてるとあっという間に無力化しちゃうんだからね?


「じゃあ、シャーリーも本気で……相手してあげるからねえ!!」

『シャルナーデが【決意】を発動、【11ミリのラプソディ】【22ミリのノクターン】を発射』

『クリティカル! ヘッドショット! マリアンヌが絶命しました』

『クリティカル! ヘッドショット! ヒュリエスが最後の闘志で持ちこたえました』

『カウンターミサイル失敗! クリティカル! ヘッドショット! オーレリアが絶命しました』

『クリティカル! ヘッドショット! ハートショット! ローゼスが絶命しました』

『クリティカル! ヘッドショット! ハートショット! ゼイルマンが絶命しました』

『シャルナーデに【快楽殺人ブースト】【快楽殺神ブースト】【連続ヘッドショットボーナス】【幸運の黒兎】が発生しました』


 へ……? え……? は、嘘、ほぼ全滅……!? ちょこっとバフ積んだだけでこれ!? カウンターミサイルまで貫通してるし、デロナちゃんが生きてるのだけが救いじゃない!? これは予定変更、さっさと接敵しないとやりたい放題やらせることになっちゃう!!


「デロナちゃん復活お願い!! どん太ーッ!!」

『ワウー!!』

「楽しい楽しい~!! まだまだいっぱい遊んで、シャーリー遊ぶのだぁ~い好き!!」

『【アンデッド憑依】を発動、【破壊の死霊獣神】になりました』

「やっとやる気になってくれたんだ、一番強そうで可愛いお姉さん!!」

「お世辞でもありがたく受け取っておくね、可愛いバニーガールちゃん!」

「きゃ~!! 可愛いって褒めてくれた~!! お姉さんだぁ~い好きっ!!」

『シャルナーデが【マッハ2.2のオーバーチュア】を発射』

『刻印魔術【虚無の黒猫(ヴァニャタスキャット)】を発動、虚無の黒猫達が出現し、【マッハ2.2のオーバーチュア】が虚無に飲み込まれました』


 リアちゃんに貸して貰った虚無にゃ術、虚無の黒猫はなんでも虚無に飲み込んでくれる。銃弾に対しても絶大な効力を発揮するけど、発動が遅れてタイミングが合っていないと頭を撃ち抜かれる。早めに発動する感覚よりももっと早く、狙ってくると思った時には発動しないと無意味になる。しかし一度でも発動しておけば、貸し出して貰った黒猫を好きな時に好きな数だけ呼び出せる。要は、呼び出すタイミングが大事なのよ。

 だからこそどん太を憑依させた。身体能力向上による感覚強化、考えてから実行するまでのスピードが極限に上がるのは、どん太を憑依させるスタイルがベスト。一撃必殺の小型レールガンみたいな爆速で弾を発射出来るような銃でも、タイミングさえ合えば今みたいに攻撃を無効化することは可能なのよ。タイミングが合わなかったら? その時は死ぬだけよ。


「わ~お……♡」

『【魔狼疾駆】を発動』

『姫千代が【雷神脚】を発動』

『ユキノが【縮地】を発動』

「でも、さっきみたいには行かないよ~♡」


 私が割り出せたのは補助スキル、一時的なバフ効果を与えてくれるスキルを割り出しただけ。攻撃や移動系のアクティブスキルは割り出せてないし、それこそ常時ステータスだけが上昇するパッシブスキルは割り出せてない。そもそもシャルナーデちゃんのステータスも判明してない。つまり、ステータス差がどれぐらいあるのかわからないということ。

 そして今、こうして至近距離で対峙した結果わかったのは、シャルナーデちゃんはスキルの発動がなくても私や千代ちゃん、ユキノさんのスピードに対応出来ているということ。これ以上の加速要素がある場合、スピード面では圧倒的に不利。

 更に前回の戦闘でわかっていることだけど、豪脚。無造作な蹴りの一撃で千代ちゃんを数百メートルふっ飛ばして、防壁に叩きつけて防壁もろとも千代ちゃんをボロボロに出来る程のパワーもあるということ。生半可なパワーじゃ太刀打ち出来ない。


『(リンネちゃん、海から奇襲を仕掛ける作戦が想定内だったみたいだよ!! でもまさかバビロンガーほどの巨大ロボットで来るとは思ってなかったみたいだ!)』

『(敵部隊の後ろを取りましたがバレてましたよ! これから敵部隊後方、それと敵の巨大ロボと衝突します!)』


 海からの奇襲も想定内だった、しかし巨大ロボで現れるとは思ってなかったか。作戦の立案と実行は恐らく大将であるシャルナーデちゃんがやってるはず。何も考えていないような振る舞いはブラフか、もしくはこれがデフォルトの戦い方だから演じる必要もないということ。

 頭脳戦は負けるか互角、相手が仕掛けを多く持っている現状では分が悪い。やるなら数を活かした手数の勝負。それもほぼ無駄玉なしの大量の有効打での手数勝負。


「きっひひ♡」

『シャルナーデが【11ミリのラプソディ】を発射しました』


 マシンガン、上空に向かって……? まさか、バレてる!? そんなはずない、だって姿すら見られていないのに!


『(リンネ~ヤバい~撃たれてる~)』

『レーナのバリアが破損しました』

「シャーリーね、わかるよ……お姉ちゃん達がやりたいこと! シャーリーのことが見えるんでしょ? でもね、シャーリーはお馬鹿なおこちゃまじゃないの!」

『ユキノが【神威】【神速抜刀術】【奥義・氷華一閃】を発動』

『シャルナーデが【決意】【★シャルナーデの絶技】を発動』


 ――――負ける。作戦が全て読まれてる、おにーちゃんが言っていた場数が違うって情報を甘く見すぎてた。素人の戦術なんて完全に読み切ってるし、私達程度の戦士は何度も相手をしてきてるんだ……! この衝突はマズい、ユキノさんが負ける!! 私にはシャルナーデちゃんの姿は見えないけど、ええい考えても勝てないなら直感だ! ユキノさんが攻撃を仕掛けそうな位置を予測して、当たれよ!! 


「穿て!!」

『【カーススピア】を発動、シャルナーデが17Kダメージを受けました』

「へ……!?」

『シャルナーデが体勢を崩し攻撃に失敗、【黒兎のステップ】を発動』

『ユキノが攻撃をキャンセルしました』


 当たった……いや、掠っただけ。それでも敗北必至の衝突は避けた。この一撃は大きいはず、なんせ簡単に倒せると思ってた相手の前提が崩れたのだから。見えているかもしれない、対応されているかもしれない、このまま強みをぶつけるのは愚策かもしれない、この一瞬で弱気な考えが浮かんだ。だからこそのバックステップ、考える時間が欲しくて距離を取った。

 お互いに足が止まった。まるでここが地雷原だとわかって一歩も動けなくなったかのような睨み合い、どちらも余裕なし。次に取る行動が命取りになる可能性があるのだから、迂闊な行動は出来ない。しかし時間を使いすぎれば新たな問題が発生する……葛藤している。


『レーナが究極スキル【アルティメットレイン】を発動』

「……!!」

「来る!」

「参るッ!!」

『シャルナーデが【決意】【黒兎の豪脚】を発動』

『姫千代が【雷神剣舞】を発動、周囲に雷光の斬撃が迸る!』


 攻撃を秘匿して来た、まっすぐは来ない! これはもう賭け、私ならどうするかを考えた末の大勝負。まず上空から倒し損ねた相手からの魔弾の雨、まるで光の雨のようなそれを回避しなければならない。目の前の相手は範囲攻撃を選択した、初めて見る攻撃を相手にしたくない。回り込みたい、狙いたい相手二人はまだ手札を切っていない。この状況下で狙うなら……!!


「……そこだあああ!!」

『【魔狼疾駆】【一打全力(ワンダフル)魔狼拳(パンチ)】を発動』

「嘘ッ!?」

『相打ち! シャルナーデから440Gダメージを受けました。MPブレイク!』

『相打ち! シャルナーデに399Gダメージを与えました。HPブレイク!』


 急旋回して私への直接攻撃、正面からの心臓狙いの一撃。2秒もあれば急遽攻撃対象を変更しても動きがバレない距離、ユキノさんを襲撃すると見せかけて私へ攻撃することに全部ベットしての勝負。相打ちなら私の勝ちだ、この隙を二人が見逃すはずがないのだから。対象は強烈なダメージが快感となって目の前で悶絶中のはず、私は次の勝負に全てをベットする……!


『姫千代が【神気解放】【奥義・雷神一閃】を発動』

『ユキノが【神速抜刀術】【奥義・氷華一閃】を発動』

「うが、て……!」

『【カーススピア】を発動、シャルナーデに11Gダメージを与えました。【呪い】状態になりました』

「た゛の゛、し゛い゛……ッッ!!」

『シャルナーデが【最後の闘志】【決意】【怒りの日】を発動』


 やれる……!!


『シャルナーデが【片手白刃取り】を発動、姫千代とユキノの攻撃を受け止めました。【大量出血】状態になりました』

「……!?」

「まさか……!?」

「い゛い゛い゛い゛い゛!! た゛の゛し゛い゛い゛い゛い゛!!」

『シャルナーデが【★シャルナーデの絶技】を発動、絶命! ユキノが死亡しました』

『姫千代が【雷神脚】を発動』

『シャルナーデが【黒兎の一蹴】を発動、破壊! 姫千代の右足を破壊しました!』


 あの目にも止まらぬ一閃を、手を突かせて根本まで、刀の(つば)まで手をねじ込んで止めた……!? 鍔を握られて止められてはそれ以上の攻撃が出来ない、体術が咄嗟に出なかったユキノさんに絡みついて、脚で首をへし折った! 両手が使えなくても足技がある、まだまだ戦闘続行ってことね。

 千代ちゃんは力勝負で負けた、同じ蹴り技でも力と速度が上回っている方が勝つのは当然のこと、しかももう……動きがズレ始めている(・・・・・・・)


「貰ったぁ~!!」

「う、あ……!」

『シャルナーデが【★シャルナーデの絶技】を発動、絶命! 姫千代が死亡しました』

「後はお姉さんと、空を飛んでる子だけだね!! 楽しかった、久しぶりに凄く楽しかった~♡」

「…………」

「立って~? 最後までシャーリーと遊んで? ねえ、立ってよ~……」


 私は敗北を噛み締めてるから立てないんじゃない。勝利を諦めきれないから立たないんだよ。狙いは一つだけ、それをしてくるかどうかは運次第。

 

「立ってシャーリーと、遊んでよ~!!」

『シャルナーデが【黒兎の一蹴】を発動』


 ――――勝った。私は賭けに勝った。


『クリティカル! シャルナーデから499Gダメージを受けました。MPブレイク! 大きく吹き飛ばされました』

「え……?」

「…………ヴァニタス、ヴァニタータム……。虚無に、飲まれろ」

『刻印魔術【虚無の黒猫(ヴァニャタスキャット)】が、シャルナーデの両脚が虚無に飲み込まれました』


 私はもう、既に黒猫を一度呼び出している。貸して貰った黒猫は一匹だけじゃない、三匹貸して貰った。残り二匹はスカートの中に隠してたんだよ。今日ほどゴスロリ衣装の大きなスカートが役に立ったと思ったことはないね。

 私が立ち上がらなかったのは黒猫を隠すため、そして蹴りを誘発しやすいように、怒らせるために立ち上がらなかったんだ。蹴られて吹っ飛ばされた時に、黒猫だけを残すためにね。

 

 油断。勝てるとしたらそれしかなかった。


 最も脅威となるユキノさんを排除し、動きに対応出来るようになった千代ちゃんを撃退し、後はそこまで強くない私と空からの狙撃手だけ。勝った。後は好きなように痛めつけて楽しもう。この瞬間が欲しかった。この瞬間が生まれることに全てを賭けた。


「あ、脚、な、なく、な……ああ……あっ……」

「げほっ……げほっ……! う、ああ……! ど、う? 降参、する……?」

「シャーリー、もう、あ、遊べない、の……? お、おしまい……? し、死んじゃう、の……?」

「降参して、大人しくしてくれるなら、殺さない……約束する」

「や、くそく……? 約束、するから、降参するから、まだいっぱい遊びたい、の……死にたくない、死にたく、ない……」

『(ティア、ちゃん。拘束具、作って……後、それから治療で……)』

『(勝ったんですか~!? 凄いです~! 今行きますっ!)』

「わかった、約束ね……まず、拘束させて貰うから」

『姫千代を【死体安置所・ちよちよ】に納棺しました』

『ユキノが復活猶予時間を経過し、拠点に転送されました』


 2秒。たった2秒のズレ(・・)。それがシャルナーデちゃんの凶悪性能の正体。行動が加速し続け、最大で情報が2秒ズレる。私達が見えていたのは2秒前のシャルナーデちゃんで、本物は私達が知覚する2秒前には行動を終えていた。

 だからガードが出来ない、当たらない。攻撃しているのが2秒前のシャルナーデちゃんなんだから当然だよね。これが【兎詐欺(うさぎ)】判定の正体。

 ユキノさんは剣士系のスキル【先の先】と特殊能力【指先に感じる世界】で、2秒先の行動予測情報に斬り掛かっていたから当てられた。それでも微妙に誤差が生じていたのと、技量不足で完全には当てられなかった。

 なら、情報がズレていても関係ない方法で倒せば良い。蹴りを入れる瞬間、その瞬間に私に接近しているという事実は誤魔化せない。しかし相手は反応速度が凶悪で、生半可なカウンターじゃ見てから避けられる。だからこその満身創痍、油断、行動を狙い撃ちにする必要があった。


「リンネ様~!!」

「ん、ティアちゃん悪いんだけど、両手両脚……脚は治してからでもいいけど、拘束して頂戴」

「はい! ウサギさん? 動いたらやっつけちゃいますからね?」

「うん……」


 はあ……。ティアちゃん製の拘束具なら、いくらなんでも簡単に破壊されるなんてことはないでしょ。ないよね?


『シャルナーデが【黄金の拘束具】の着用に同意し、無力化されました』

『ティアラが【金錬術・黄金の生命活性】を発動、シャルナーデの欠損状態が回復しました』


 ああ、ちゃんと言うこと聞いてくれたわ。とりあえず最低限回復したし、どうしても聞きたいことだけ先に聞こうかな。


「一つだけ、今すぐ聞きたいことがあるの。答えてくれる?」

「うんっ……」

「どうしてこんな、復興中の都市を襲撃したの?」

「ビッグボスが、遊んできなさいって、言ったから…………」

「遊んでって……ああ、はぁ~……。だからずっと遊んでって言ってたのね……。ねえ、ビッグボスの遊んできなさいってさ、破壊しろ、殺してこい、殲滅しろって意味なの?」

「うう……わかんない、シャーリーはいつも、遊ぶって言ったら、こうだから……。あ、うっ、でもね! ビッグボスから、綺麗なコインを沢山貰ったんだよ! シャーリーの宝物なの!! ほらっ!!」

「…………はぁ~」


 これ、お金……はぁ~……。ビッグボスとやらが言ってる遊んできなさいって、もしかして本当にそのままの意味で遊んでこいってことだったんじゃないの……? カジノもあるし、お酒も飲めるし、楽しい施設がいっぱいある月光の歓楽街で……。


『(リンネちゃん、黒兎兵団は殆ど敗北まで追い込んだんだけど、最後の抵抗が激しいんだよね。とりあえずまだ一人も殺してないけど、大怪我してるのは大勢いるから、放置すると死にそうなんだけども~)』

『(大将を無力化出来ました。今そっちに連れていきますから、それで完全に抵抗せず負けを受け入れてくれると思います)』

「ティアちゃん、デロナちゃんを連れてきてくれる? 味方の治療が先だけど、敵の治療もしたいから」

「わかりました! リンネ様は優しいですね~」

「ん、まあ今回は完全に個人的な感情によるものが大きいけどね。じゃあ、シャルナーデちゃ」

「シャーリーって呼んでね~♡」

「シャ、シャーリーちゃん。お仲間に投降するように説得してもらっていいかな?」

「うん……わかった……。あ~あ、負けちゃった、初めて負けちゃったんだ……」


 今まで負けなしだったのがむしろ凄いよ……。まあ、負けたら終わりみたいな世界で生きてきたんだろうから、負けなしなのは当たり前なのかもしれないけどさ。

 アールゲイン、私が想像してた大規模ブラックマーケットなんかよりも、もっと闇が深くて恐ろしいところな気がするわ。これで尖兵なんでしょ? もっと強い奴がいるかもしれないってことなんでしょ? いやあ、ここまで強くなってもまだまだだなって思い知らされるわ……。


「じゃあ、行こっか」

「うん……♡」


 兎狩り大作戦はおしまい、狩人の勝ちだってことを伝えに行かないとね……。それにしても本当、お昼寝さん達が来なかったら物量で押しつぶされてただろうなあ……。シャーリーちゃんとだけ戦える環境を作って貰えたことに感謝しないと……。ああ、そうだ! わざわざ歩いていくことないじゃん!


「どん太、憑依解除~」

『【アンデッド憑依】を解除しました』

『わうっ!!』

「あ!! ふわふわのわんちゃん!!」

『わう?』

「どん太、向こうの戦闘地域まで乗せて。一刻も早く戦闘を終了させたいから」

『わうっ!! (うん、わかった!)』


 どん太に乗って行けば、うわああ……ダルい……。どん太の身体能力向上の恩恵が抜けると、やっぱり普段がダルく感じる……。でもシャキッとしないと、万が一にも拘束具から抜け出して……は、ほぼないと思うけど、無力化したとは言えど一応まだ敵なんだからね、シャーリーちゃんは。行こう、まずはこの戦闘を終了させるんだ。

兎詐欺(うさぎ)

 黒兎のシャルナーデ専用スキル、情報が最大で2秒ズレる。相手から見える情報は常に2秒遅れの姿しか見えず、実際に攻撃を仕掛けてきたのは2秒前なので着弾もズレる。弾丸をカーブさせるスキルは、そのズレを気が付かせないために身に付けた。近接攻撃でもズレが生じるが、自分の2秒前の姿に重ねるように攻撃を放つため、初見では気が付くのは困難。バレたとしても対処困難な攻撃に切り替え、意外にも頭脳派な戦闘を得意としている。

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