506 Operation Bunny Hunting・3
「まだ弾薬残ってたんだ~♡ シャーリーとまだまだいっぱい遊んで~♡」
『ローゼスが【重狙撃砲】を発射、シャルナーデが攻撃を回避しました』
『どう見ても頭に当たったはずだ、どうなっているんだ!』
「当たらないも~ん♡」
今回の防衛は皆に任せて、私は私に出来ることを全うしよう。無闇矢鱈に攻撃をしかけても意味がない、シャルナーデちゃんがどうやって回避してるのかを分析してみよう。
まずローゼスさんの重狙撃銃による射撃は完璧なヘッドショットだった。しかし実際はノーダメージ、回避された判定になってる。周囲の取り巻きに影響もなく、誰かが身代わりになっている様子もない。ここは思い切って、犠牲を伴う回避をしているという可能性から一旦離れよう。
『ヴァルフリートが【焼却する獄炎】を吐き出しました』
『黒兎兵団・チャットヴァーリが火だるまになりました』
『シャルナーデが回避しました』
『黒兎兵団・エーカムが【冷却弾】を発射、周囲の獄炎を消火しました』
『これもダメか、どうなっているのだあの兎娘は』
『撃ってくるぞ!』
「ばんばぁ~ん♡」
『シャルナーデが【11ミリのラプソディ】を発射、フリオニールが【守護の誓い】を発動、フリオニールが55Gダメージを受けました』
武装が増えてる、マシンガンを片手で扱っても全くブレないってどういうことなのよ……。唸るような低い発砲音と、空薬莢の落ちる甲高い金属音が混ざり合うこの音がこの子にはラプソディに聞こえるってこと? なるほど、いいセンスしてるかも……。
『シャルナーデが【22ミリのノクターン】を発射、クリティカル! ヴァルフリートが447Gダメージを受けました。HPブレイク!』
『ヴァルフリート!!』
『っぐう!? 避けられる弾道だった、はずだったが……!!』
『デロナが【ハイネスヒール】を発動、ヴァルフリートが完全に回復しました。HPブレイク状態が一段階回復しました』
「きっひ♡」
『シャルナーデが【44ミリのレクイエム】を発射、ヘッドショット! フリオニールが頭部を粉砕されました』
「やったやったぁ~! 大当たり~♡」
『フリオニールが【天魔破斬】を発動、シャルナーデが回避しました』
「わあ!? 頭がなくなっても平気なの~!?」
おかしい、逆になんでこんなに回避が困難なんだろう。おにーちゃんなら今の射撃ぐらいなら回避出来そうなものなのに、確かに構えてから発射するまでが異常に速いし、弾速も悍ましいほどに速い。それでも狙われてるってわかってるんだからガードか回避は間に合うはず、なのにそれが出来てない。
「大丈夫?」
『大丈夫、少し油断しただけだ』
『ゼイルマンが【破壊光線銃】を発射、シャルナーデが攻撃を回避しました』
「あ! シャーリーの嫌いな武器!! それ音が鳴らないから嫌い!!」
ずっとニコニコしてるシャルナーデちゃんが初めて怒った。レーザー兵器系が嫌いなんだ……確かに使ってる武装は全部実弾兵器だけど、何か拘りがあるのかな……。ああ、音が鳴らないから嫌いなのね。銃撃戦はオーケストラだとか言い出しそうだなぁ……。
「ったぁあああ!!」
『姫千代が【雷神脚】【奥義・雷神渦】を発動』
「あ、来た来たぁ~♡ 狐のお姉ちゃん!!」
『シャルナーデが回避しました。シャルナーデが【閃光のワルツ】を発動』
『姫千代が防御に失敗、クリティカル! 姫千代が177Gダメージを受けました。HPブレイク!』
「っぐぁ……!?」
「良い奇襲だったし、惜しかった惜しかった~♡」
『シャルナーデが【黒兎の一蹴】を発動、クリティカル! 姫千代が204Gダメージを受けました。HPブレイク! 姫千代が吹っ飛ばされました』
千代ちゃんの今の攻撃は完璧な奇襲だったし、確実に首を落とす一太刀だった。でも刀が完全に体をすり抜けてノーダメージ。リアちゃんの魔術攻撃もすり抜けてるとなると魔術攻撃もダメ、直接攻撃もダメ、射撃攻撃は実弾もレーザー兵器もダメ。何をやってもダメ、ダメ、ダメ。当たらない。しかも接近戦も馬鹿みたいに強い……とりあえず千代ちゃんは今の状態だと危険だから、死体安置所に戻しちゃおう。
『姫千代を【死体安置所・ちよちよ】に強制納棺し、周囲に再召喚しました』
「ぐっ、かはっ……!!」
「こっ酷くやられたね~」
「消えゆく生命の灯火よ、今一度煌々と燃え盛れ!」
『デロナが【ライフヒーリング】を発動、姫千代のHPブレイク状態が完全に回復しました』
ん~……これはまずいね。この様子だとティアちゃんとゼオちゃんも相手するのは厳しそうだし、どうしたらいいものか……。
「随分と強い相手なんですね~。攻撃が当たらないんですか~」
「あれ、ユキノさん!? 待機だって聞いてなかった!?」
「あれれ? いまログインして来たばっかりなので、わからなかったです~ごめんなさい~」
「白い狐のお姉ちゃんも居るんだ~! こんばんわぁ~♡」
「あ、やば! 見つかった……!」
「こんばんは~ユキノですよ~」
「シャーリーはね、シャルナーデって言うの~♡ じゃあ早速プレゼント、ふぉ~ゆ~♡」
うわやば、ユキノさんがログインしてすぐエマージェンシーコールに乗ってここに来ちゃった! しかも見つかっちゃったし、こうなったらユキノさんにも防衛を手伝って貰うしか……今はとにかく、回避困難な44ミリのレクイエムの対処を考えないとって、もう構えてるーー!!
『シャルナーデが【44ミリのレクイエム】を発射』
『斬り払い! ユキノが【44ミリのレクイエム】を回避しました』
「いきなり危ないですね~」
「え……?」
「え~!! 嘘ぉ~!! まぐれかな? まぐれだよね~?」
『シャルナーデが【22ミリのノクターン】を発射、斬り払い! ユキノが攻撃を回避しました』
「曲がる弾丸も珍しいですね~ビックリしました~」
「…………やばぁ~い♡」
え、千代ちゃんやおにーちゃんですら回避や防御が困難なのに、連続で全部弾いた……? まぐれなんかじゃない、ユキノさんは完全に対応が出来てる……!!
『ユキノが【縮地】を発動』
「うっ……♡」
「お返しで~すっ!!」
『ユキノが【奥義・氷華一閃】を発動』
「ん……!?」
『どこを……!!』
ユキノさんが突っ込んでっちゃった! いやでも、どこに向かって攻撃してるの!? シャルナーデちゃんが居る場所とは全然違うところに斬り掛かって……!
『シャルナーデが144Kダメージを受けました』
『当たった!? どうなってるんだ!?』
「何も無い空間に斬り掛かったのに、向こうにいるシャルナーデちゃんの頬が少し切れた……?」
ど、どうなってるの……? まさか、今見えてるシャルナーデちゃんそのものが幻影で、本体は別の場所に隠れてるってこと!?
「やば……やば……♡ 撤退撤退~!!」
「逃がしませんよ~!!」
「ユキノさんダメ!! 深追いしないで!!」
「え?」
いけない、ユキノさんはシャルナーデちゃんを攻略出来る鍵になるかもしれないけど、銃弾は切り払えても爆発物は……!!
『シャルナーデが【シャルナーデクラスターマイン】を起爆』
「あっ……!!」
『クリティカル! ユキノが連続した致命的ダメージにより、死亡しました』
「あは、あはっ……!! 危なかった~♡ 撤退、撤退するよ!! また来るからね、今度は本気で来るからね~♡」
ユキノさんがやられたけど、今回はどうにか凌いだ……。でも今の今まで本気じゃなかったってことは……。次はユキノさんへの対策もしてからまた来るってことだよね。さっきの現象はいったいどういうことなんだろう? まずはユキノさんを復活させて回収しないと……。
『今のうちに負傷者は手当を、ユキノ嬢を救助しに行かなければ……』
「此方が、参りまする」
「早く連れてきて~! デロナ、復活魔術を発動出来る状態で待ってるから~っ!」
「御意っ!!」
『姫千代が【雷神脚】を発動』
とにかく、次は本気で来るって言われた以上こっちも本気で対応しないと。メンテ明け早々にハードだけど、今まで戦ったことがない相手でなんか楽しい!! それにその、か、可愛いし……。
「リンネちゃ~ん? 次の作戦、どうする~?」
「あ、そうですね! 次は向こうも本気で来るみたいなので、こっちも本気で行きましょう! まず防衛部隊は今まで通り、お昼寝さん達は回り込んで敵の後ろから挟撃でどうですか?」
「撤退を防ぐわけだね~。恐らく後方待機の部隊も居るはずだから、その殲滅の為に」
「あ! 出来れば、全員生け捕りにしたいんです! 無力化、無力化で!!」
シャルナーデちゃんとお話するには、恐らく向こうの兵隊を一人でも倒しちゃうとお話出来なくなると思うんだよね……。出来れば全員生け捕りにしたい、取り巻きはそこまで凶悪な性能してないみたいだし。
「か、可能ならね……」
「いっけどり~。いっけどり~」
「あ!! レーナちゃんはこっちで、ペルちゃんも貸して貰いたいんですけど!!」
「お~?? ごっしめい~」
「リンネちゃん、落ち着いて聞いてね。ペルちゃんは……まだログインしてないんだ……」
「ぎゃああ~~!! じゃ、じゃあ、仕方ないですね……。あ、ユキノさんは絶対借ります!」
「おっけー。じゃあ陸路で西側からぐるっと回り込むルートで……」
「海! 海行こうよ! 海を潜ってったら絶対向こうも驚くって!」
「もってぃ~? 海を行くなんて現実的じゃない方法は」
「いや……海を行く案……。ありだと思います!」
「え?」
「えっ!」
いやいや、言い出しっぺのもってぃがなんで驚くのよ。陸路で回り込むとなると、恐らく向こうは陸路を監視しているから見つかってしまうはず。海から回り込んで奇襲なら、それも海を潜るなら完全に意表を突けると思う。
「え、でも、やっぱり海寒そうだし、僕……濡れたくないかも……」
「私にいい考えがあります!」
「お゛わ゛ぁ゛」
なんですかお昼寝さんその声、どこから出たんですか……? いやいや、全然不可能じゃない方法なんでとりあえず作戦を聞いて下さいよ~……ね、とりあえずお話だけでも! ね!?