505 Operation Bunny Hunting・2
現地、現地! 急げ、急げ! えっほ、えっほ! よしよし、とりあえずお昼寝さんには連絡した! ただしお昼寝さんは『そんなヤバい相手、僕達が行っても返り討ちにされるんじゃ……?』って弱気、そんなんでどうするんですかお昼寝さん! 今日はお昼寝出来て元気なはず、一緒に頑張って撃退しましょうよ~!!
さて到着、歓楽街をぐるりと囲む防壁は……いや、かなりボロボロだわ。修復する間もなく襲撃を繰り返されてる状態かな、リアちゃんが損傷の激しい南側を必死に防壁の修理をしてるけど全然追いついてないね。あの時のダークエルフさんとドワーフさん、えーっと名前はー……ローゼスさんとゼイルマンさん! 二人共もかなり疲弊してる様子だし、他のダークエルフさんとドワーフさん達は二人の部下かな? 皆疲労困憊って様子だね……。
「来たよ!! 状況は!!」
『来たか。取り巻きはどうにでもなるが、致命傷を入れる前に逃げられる。かなり場数を踏んだ凄腕の傭兵部隊のような連中だ。毒物に精神攻撃、視界を奪う攻撃は暗と明のどちらも効かなかった。機械ではないようだが、身につけている特殊なお面が無効化しているらしい。問題なのは……』
『ガゥウウウ!! (また向かってくる!!)』
『あいつだ』
あいつ……? とりあえず死霊神の権能はオンになってる、後は号令系スキルを攻撃系にするか防御系にするか……。まずは様子を見るのに防御系を発動しよう! これまでも撤退させることは成功してるんだから、防御系を支援すれば被害は減るはず!
「死霊神リンネが命ず!! 月光の歓楽街を死守せよ、魔神と我が守護はここにあり!! 立ち上がれ、不屈の英雄達よ!!」
『従者と味方勢力の士気が向上し、全ステータスと防御性能が向上しました』
『まず雑魚を蹴散らせ!! ウサギを街に入れるな!!』
ウサギ……? 敵の大将を指す識別ネームだったりする? おにーちゃんもネーミングセンスが壊滅してるんだっけ……? あ……あ!? いや、違う! そのまんまだ、そのまんまの意味だこれー!!
「いひひひひ!! 一緒にあーーそぼーーっ!!」
『おこちゃまは、もう家に帰る時間だろ!!』
「シャーリーはおこちゃまじゃないもーーん!!」
『フリオニールが【天魔破斬】を発動、黒兎のシャルナーデが剣撃を回避しました』
『【死霊軍神の凝視】を発動、シャルナーデをロックオンしました。情報を分析中です……』
黒兎のシャルナーデ、うさみみを付けたミリタリーガールが敵の大将か!! しかも攻撃を避けるって、こういう意味か……!! 一切避ける動作をせず、真っ直ぐ走ってるようにしか見えないのに、シャルナーデの体を攻撃がすり抜けた! 一瞬で回避した? いや違う、あれは恐らく幻影か分身タイプの回避。攻撃を回避したんじゃなくて、幻影や分身を身代わりにしてダメージを肩代わりさせてる。エリスさんと同じ回避方法に見える!
『黒兎のシャルナーデの情報を表示します……。正式名称【黒兎フィーナ・シャルナーデ】レベル999、ワールドボスクラス、無属性、悪魔系、女性、小型。HPMP測定不能、ARC2100、AARC1990。スキル分析を選択可能……補助スキルを選択しました。補助スキルは【最後の闘志】【純粋】【快楽強化】【ダメージ快楽変換】【決意】【怒りの日】【好物は人神】【兎詐欺】です』
「はあ!?」
幻影も分身も、ないじゃん!! じゃあどうやって避けたの!? あるとすればこの、【兎詐欺】ってふざけた名前のスキルだけど……!! この【好物は人神】って物騒なスキルは何!? 人と神に特効攻撃だぁ!? ぎええええ、私達殆ど特効入るじゃん……!! なんでこんなのが野放しになってんのよ、バビロンオンラインおかしいんじゃないの!?
「シャーリーと遊んでくれる人が増えてるーーっ!! お姉さーーん!! こんばんわぁー!!」
「あ、え、こ、こんばんは……?」
「プレゼント、ふぉーゆー♡」
『シャルナーデが【44ミリのレクイエム】を発射しました』
『フリオニールが【完全なる守護の誓い】を発動、シャルナーデの攻撃を無効化しました!』
『迂闊だぞ!!』
「あ、ご、ごめん……」
「ざぁ~んねぇ~ん♡」
どうしよう、私ちょっとあの子のこと、好きかも……。容姿と、性格が、ちょっとストライクゾーンに、えっと……。た、倒さないと!! いや、出来ればお話し合いを……!! 無力化したい!! 捕まえたい!!
『マリアンヌが【ソニックスナイピング】を発動、シャルナーデが銃弾を回避しました』
「わぁ~楽しい~!! シャーリーと遊んでくれるの~!?」
「遊びでやってるんじゃない!!」
『シャルナーデが【22ミリのノクターン】を発射しました』
「どこに撃って……曲がる!?」
「危ない!!」
『ヒュリエスが【ディボーション】を発動、マリアンヌのダメージを肩代わりします』
『クリティカル! マリアンヌが377Gダメージを受け、ヒュリエスが肩代わりしました』
「うっ、結構効きます……かなり痛い……」
「うっそ~! 当たったのに死なな~い!!」
『それは俺が言いたいんだよ!!』
「私も言いたいわ……」
いやぁ~なんだあのバズーカー砲みたいなハンドガン……。ハンドガン扱いで良いのかな、もう砲の領域に入ってると思うんだけど。
44ミリのほうは一発ずつしか撃てないのかな、22ミリのほうは10発以上撃ってきてたね。両手で銃を持ってるからリロードの隙が大きいだろうに、大した威力だけど襲撃には向かないんじゃないかな……?
「死ぬまで当てれば良いね! きっひひひ……!!」
「あ……?」
え、それどうなってるの……? 銃弾が、マガジンが宙に浮いてる……勝手にリロードされるの!? いや、いやいや違うな! 恐らくどん太が使うコントロールなんかと同じだ、手を使わずに特殊能力でリロードしてるんだ! うわあ~こんな使い方が出来るんだ……これはマリちゃんにコントロールを修得して貰わないと! どうやって身につけた技能なのかインタビューしたいから、やっぱり無力化して捕獲しよう! 兎狩りだ、兎生け捕り大作戦!!
待てよ……? この黒兎以外の取り巻きは何してる? 数人は一緒に突撃してきてやっぱり退散とばかりに帰ってったけど、他にも大勢居るような言い振りだったけど……? まさか、大将を囮に別働隊が回り込んで襲撃する作戦なんじゃ……?
『(リアちゃん、千代ちゃん、ティアちゃん、あとマリちゃんとエスちゃんも!! 二手に分かれて西側と北側の警戒に回って! 別働隊がいる気がする!)』
「あれれ~? シャーリーと遊んでくれないの~?」
『ボス、狩人が移動しています。恐らく作戦がバレました、引き上げましょう。今回は明らかに失敗です』
「う~ん……。しょうがないにゃあ~。いいよ、また遊ぼうね~♡ ばいばぁ~い♡」
『総員撤退、総員撤退。狩人に目をつけられた。繰り返す、総員撤退』
『ワウッ!! (また逃げられちゃうよ!!)』
『ダメだどん太君、深追いするな! 敵の規模が未知数だ!』
「どん太、とりあえず相手のことはなんとなく理解できたから今回はここまでよ」
人員が移動したのを察知しただけで、撤退の判断を下せる奴がいるのは予想外かも……。機動力を活かして一撃入れて撤退のヒットアンドアウェイ作戦だけど、襲撃場所やタイミングを変えてくるのは結構厄介な相手
『ん……? どん太君、ヴァルさん!! 空だ!!』
『狙いはこれか!』
『わう?』
「え? あああああ吠えろどん太ァーー!!」
『ワッ……!? ワオォォォォォオオオオオオオオオオオオーーン!!』
『ヴァルフリートが【王龍砲】を発動』
『どん太が【破壊の咆哮】を発動』
『刻印魔術【巨大暗黒球体】を発動します』
厄介なんてもんじゃないわ!! 撤退したと思わせておいてこれか、範囲攻撃が得意な子が一斉にいなくなったのを見られた? 相手にもこちらの戦力を分析されてる気がする!!
『ホーミングミサイルが複数破壊されました。シャルナーデマインが破壊され、鋼鉄の矢が発射されました。鋼鉄の矢が暗黒球体に飲み込まれ消滅しました。ホーミングミサイルが複数破壊されました。ポイゾニックボムが破壊され、毒物が散布されました。毒物が暗黒球体に――』
『後方で待機していた部隊からの面攻撃か、撤退したと油断させておいてこれは、腹立たしいが有効な攻撃だ。恐らくすぐに再襲撃する気だ!!』
「ローゼスさん! ゼイルマンさん! 相手は間髪入れず再襲撃に来るはずです! 疲弊している相手を狙い撃ちにするはず、今回は私達が食い止めますから一旦撤退を!」
『馬鹿にしないでくれ、これでもグレイトメタルから信じて送り出された鋼鉄の第一兵団だ! ローゼス部隊とゼイルマン部隊は一歩も退かない!!』
うわぁ、どう見ても疲労困憊なのに、心が強すぎる……。カーミラさんとどんな契約を交わしたのか不明だけど、自分の命以上に大切なものなのかな、その鋼鉄の第一兵団とやらのプライドは……。
「――でもさぁ~? どう見ても弾薬切れかけだし、装備もボロッボロだよねえ~? そんなんでどうやって戦うのさ、言葉で弾丸でも止めるつもりかい?」
『まだ、まだ我々は、銃弾尽きても心は折れていない! まだ戦える!!』
『銃がねえなら投石でもなんでもしてやるさ、投石機を作ってでも……あ? あんた誰だ?』
「あ、お昼寝さん!!」
「やっほ~。どれどれ、仕方ないなあ……。初めて使う権限だけど、ギルマス権限を使わせて貰うか~」
お昼寝さんが来てくれた! 他のメンバーさんも来てくれたかな、誰の姿も見えないけど……。
「地獄道よ、我がギルドに集う戦士達よ。我らの戦場ここにあり、今すぐここに集え!」
『ギルドアナウンス:お昼寝したいがエマージェンシーコールを発動しました』
うーん!! 格好いいんだけど、アナウンスのログがどうも締まらない!! エマージェンシーコールはするけどお昼寝がしたいみたいなことになってる!!
『ギルドアナウンス:お昼寝したいが仮設ギルド前線基地を設置、緊急倉庫を設置しました』
「誰かしらが武器弾薬ぐらい倉庫にぶん投げてるでしょ~。ほらあった、ほらこれも。ほい、ほい、ほれほれ~戦う意志のある奴は武器を手に取って戦え~」
『これは……? 見たこともない銃だ……使えるのか……?』
『自由に使って良いのか!!』
「使え使え~」
おお~……こういう時にギルド倉庫にぶん投げてた装備が役に立つのね……。これからも要らないなと思ったらギルド倉庫にぶん投げて溜めておこう。
「じゃじゃ~ん。エリスちゃんが緊急メンテ明けに降臨~」
「ん、来た」
「面白いイベントがあると聞いて!!」
「あ、もってぃ……」
「何かあるんですか? うわ、ここどこですか!?」
「あ、ゴリアテさん!」
「えっ……ぼ、僕の時の反応と違う……」
まあそりゃもってぃだし、ねえ……?
『どうだろう我が主神、今回で倒せるだろうか……』
「退路を断たない限りは無理。こっちから逆に攻勢に出ないと、それは今回じゃ無理だから……お昼寝さん! 次回は私達だけでもう一度食い止めるので、その次の回で総力戦にしましょう! 防壁内で隠れて活動したほうが良いかもです!」
「ん? ああ、なるほどね。今戦力が増えてるとバレるとよろしくないのね~。よし、じゃあ今回は準備回ってことで! 全員聞いたー? 今回とにかく準備、なるべく気配っていうか、声と音は出さないようにね~。特にもってぃ~!」
「凄く信用されてない!」
「前科何犯だと思ってんだ」
「いつまでもハッゲにケツモチされとったらアカンぞもってぃ!」
『ギルドアナウンス:お昼寝したいが隠密行動を発動、ギルドメンバーと同盟ギルドメンバー全員が【隠密】状態になりました』
『【隠密】状態を拒否しました』
次の襲撃で急に戦力が増えてるとバレたら完全に撤退されるかもしれない。そうならないようにするには、今回はこっそり準備を進めて……次回で決める。獅子は兎を狩るにも全力を出すっていうしね。こちらがまだ子猫だと油断させておいて、次回急に獅子に化けてやる!
『来たぞ!!』
「死霊神リンネが命ず!! 月光の歓楽街を死守せよ、魔神と我が加護はここにあり!! 立ち上がれ、猛き英雄達よ!!」
『従者と味方勢力の士気が向上し、全ステータスと攻撃性能が向上しました。防御の号令が解除されました』
『鋼鉄の誓いを忘れるな、ローゼス隊は一歩も退かない!! 続け!!』
『ゼイルマン隊、油断するなよ!! 敵は強い!!』
兎狩り大作戦のために、今は耐え忍ぶ時。ここが正念場よ!! 掛かってこい、黒兎部隊!!