496 油断大敵
「セーナ!!」
『慈愛の乙女、セーナが【プチプロテクション】を複数回発動しました』
レベルが表示されない。これは夜影の秘匿なんかと同じような効果だけど、今少し戦った感じでわかる。殺魔と近接でやり合うのは千代ちゃんとティアちゃんしか無理、デロナちゃんと私は後方支援に徹したほうが良い。
猟犬と龍姫はつくねちゃんとユキノさんが相手してるけど、かなり苦戦してるように見える。ガリャルドとかが一般的ドラゴンの最高到達レベルかと思ってたけど、殺魔に飼われてる厳冬龍姫はファーブニルよりもワンランク上のクラス。猟犬はどん太がいればなぁ!! どん太ならボッコボコに出来るのになぁ!!
「空中に壁を出して足場にするつもりですね! えいっ!!」
『ティアラが【黄金神槍驟雨】を発動、プチプロテクションがすべて破壊されました』
「キェエエエエエ!!」
『強き者、殺魔が【魔剣沙雨】を発動、攻性防御!』
「わぁ~手数がティアちゃんより多い!! 壁となれ!」
『デロナが【龍神障壁】を発動、魔剣沙雨を防ぎました。耐久力が減少しました』
繰り出してくる攻撃が単純に強い、速い、多い。しかも複合属性だから属性相性避けも出来ない。困ったことにこの手の攻撃への対策は手数で勝負するか避けきるしかない。ただ避けるのほうだと向こうの体力が尽きるかこっちが尽きるか、しかもなにかしらの事故や妨害による直撃が怖いから回避はしたくない。
『姫千代が【雷神剣】を発動、雷光が殺魔に狙いを定めた!』
『慈愛の乙女、セーナが【避雷針】を発動、遠距離雷属性の攻撃を無効化しました』
「はあ~……?」
「むむむっ……」
どうしたものかな、これは全員呼び出そうかな……。いや、近くにいるリアちゃんとめーちゃんだけでも……。うーん、なんか呼び出したら負けた気がして呼びたくない。良い感じに拮抗してるから押し返したい!!
『魔に打ち勝つ力を! エクストラレインエナジー!!』
『慈愛の乙女、セーナが究極スキル【エクストラレインエナジー】を発動、全員が強化状態になりました』
「闇の慟哭、夜の怨嗟、月の失墜」
「キァアアアアアアアア!!」
「させませんよ~!!」
「勝負っ!!」
『ティアラが【神速穿閃槍】を発動』
『姫千代が【無双輪廻】を発動』
いやあ、究極スキルまで切ってくるなんてもう、本気も本気よ。ジードの村を崩壊させたいの!? 絶対こいつ、悪鬼外道を斬るよりも強者と戦えることに悦びを感じてるタイプの剣士だよ! だって満面の笑みだもん、オリジナリティが超強めの笑顔だけど!
「キェエエエエアアアアアアアアアアアア!!」
『強き者、殺魔が究極スキル【斬】を発動』
「怒り、嘆き、苦しみ、それでも尚、我は渇望する!!」
『ティアラの攻撃が弾かれました』
『相殺! 姫千代が斬を相殺しました』
「カァアアア!?」
「我が慈悲を知れ、我が慈悲を受け入れよ。憐れな子羊に祝福を」
『専用神術【キリエ・エレイソン】【ミゼレーレ・ノービス】を発動、自身を【グロリア】状態にし、周囲のパーティメンバーに分け与えました』
準備がかなり長いダブル究極魔術、日に一度しか使えないのをダブルだよ!! グロリアの効果は複雑だけど、簡単に言えば5分間もの間すべての行動を強化し、かつ絶対的な幸運状態になる。ティアちゃんと千代ちゃんには初めて使うけど、向こうの強化状態への対抗策ぐらいにはなる……なるでしょ? なるよね!?
『厳冬龍姫ゼアヒルドが究極スキル【ホワイトゼロ】を発動、周囲の全てが凍りつく!!』
『凍っちゃえば動けない! やっちゃえ、殺魔様!!』
ああこれ、状態異常耐性とか関係なく空気が凍りつくから本当に動けなくなるやつだ。不死属性ならそもそも水属性ダメージは受けない、ティアちゃんがいるから状態異常も受けないんだけど、物理的に動けないのは状態異常じゃないからね……。
ただ私もね、これは何度か受けてるのよ。特に海の王者とかからね、絶対零度爆弾とか何回も何回も……。あれは本当にウザかった、対策がわからなくて何度負けたことか……!!
「キェエエエエエ!!」
『デロナが【あったかぬくぬく】を発動、暖かい空間が周囲に広がります』
「ただの便利魔術で対抗出来るのよね、それ」
「…………なんじゃあそりゃあああああ!?」
このタイプの攻撃はね、魔術師なら便利魔術で一括りにされる超簡単な魔術、あったかぬくぬくで解決出来るのよ……。最初は流石にバグなんじゃないかと思って運営に問い合わせたんだけど『仕様です』って言うんだもん……。恨むならこんな簡単な魔術で対策できる凍結さんサイドに文句を言って貰って。
『【幸運・スキル強化】ティアラが【黄金神槍大驟雨】を発動』
「カァアアアアアアア!!」
『強き者、殺魔が【魔剣沙雨】を発動、劣勢! 殺魔が227Gダメージを受けました』
「キアアアアア!?」
『殺魔様ー!? 今セーナがお助けし』
『【幸運・スキル強化】姫千代が【雷光斬・終】を発動、滅殺! 慈愛の乙女、セーナが絶命しました』
「覚悟ッ!!」
あ、耐性とか複数のHPゲージとか諸々無視してぶった斬っちゃった……。幸運はこれがあるから本当に馬鹿にできないのよ、段階ふっ飛ばして複数本一気に持っていくことがあるから……。まあ幸運状態でもそんなに発動しないみたいなんだけど、今日みたいな土壇場で発動するとやっぱり幸運って、最強バフの一角だなぁって……!
「ッシャァアアアア!!」
「わぁっ!? ま、負けませんよっ!!」
『強き者、殺魔が【殺魔二刀流奥義・絶命渦】を発動』
『ティアラが【神速百連槍】を発動、劣勢! 滅殺! 致命的なダメージを受けましたが、幸運効果によりHPが最終段階で持ちこたえました』
「ひゃあーー!?」
「リャアアアアアアア!!!」
「なんとっ!?」
『強き者、殺魔が【絶命渦・逆転】を発動』
『姫千代が【奥義・無双輪廻】を発動、劣勢! 滅殺! 致命的なダメージを受けましたが、幸運効果によりHPが最終段階で持ちこたえました』
「くっ、うっ……!」
自分でやっても強いんだから、そりゃあ向こうだって使うよねぇ……!! いやしかし二回連続で使えるなんて、しかも強化されてる状態の二人を相手に最終段階まで削るって、この殺魔って剣士本当に強い!! 立ち回りも隙がないし、私なんかがちょっかい出しに行ったらあっという間にみじん切りにされちゃうよ。
「我らに今一度立ち向かう力を、生命の輝きを! ライフ・オブ・ドラゴニカ!!」
『デロナの自動回復効果でティアラ・姫千代のHPゲージブレイクが1段階回復しました』
『【幸運・回復力強化】デロナが【ライフ・オブ・ドラゴニカ】を発動、ティアラ・姫千代が完全に回復しました』
「穿て!」
「カアアアアアッ!」
『強き者、殺魔が【斬り払い】を発動、パリイ!』
魔術もパリイ出来るのぉ……!? 今までそれをパリイしてきた奴は、流石にみたことないかなぁ! 反射してきた奴は覚えてるけど!!
「死ぬまで何度も斬ればええだけのことじゃあああああ!!」
『強き者、殺魔が【殺魔二刀流奥義・絶命渦】を発動』
「穿て!!」
『強き者、殺魔が【蹴り払い】を発動、パリイ!!』
はあああああーー!? はああああああーーーー!!??
「そこ……っ!!」
『【幸運・防御無視】カーミラが【月光弾】を発動、クリティカル! 殺魔に350ダメージを与えました』
「キェエエエアアアア!?」
『強き者、殺魔がスキルの発動に失敗しました』
え、あ、はあああああーー!? カーミラさんが当てた、当てたよ、目に!! ペチって、大した威力じゃないけど目に当たると痛いのよ! 小石が跳ねて目に入ったぐらいには痛いのよ、絶対にね!! なんでも良い、殺魔の攻撃タイミングが狂った! これはチャンスよ!!
「朽ち果てろ!!」
『刻印魔術【死霊王の槍撃】を発動』
『【幸運・スキル強化】ティアラが【黄金神槍殲滅驟雨】を発動』
『【幸運・スキル強化】姫千代が【雷雨斬】を発動』
「キアアアアアアアアアアアアアア!!」
倒れろ、これで倒れろ!! 殺魔ァーー!!
『クリティカル! 殺魔が3,774Gダメージを受けました。食いしばり発動!』
「まだ、まだぁああああ!!」
食いしばりーー!? 今更こんな効果で、でもこの土壇場で食いしばりはムカつくほどに有効じゃないの!! 私の攻撃がラストヒットだから、食いしばり無効効果が抜けてるから食いしばり発動したんだ!! うわああ私が大戦犯じゃん!! どうしようこれ!?
『【幸運・不可視】カーミラが【月光穿】を発動、殺魔が14ダメージを受け死亡しました』
「あっ……」
「えっ!」
「あら……!?」
え、あっ……。倒した……。倒しちゃった、カーミラさんのチクッとした一撃で……。まだまだピンピン動けそうだったのに、チクッとしただけで……。
「え、偉いっ!! カーミラさん大勝利!!」
「あ、わわ……。ありがとうございます……?」
「カーミラ様凄いですーー!! ティアも撫でてハグしますー!!」
「此方も……」
「わ、わあ……! 髪の毛が、ぐしゃぐしゃになってしまうので……!!」
「あっ、ごめんなさい」
「じゃあ皆でハグします~!!」
「ティアさん、待ってくだ……うっ、千代さんまで、潰れる……! リンネしゃ、ちゅぶれてひまいまふ!!」
あの場面で手が出せるなんて、カーミラさん偉すぎる……。皆で囲んでハグしちゃう、トライアングルハグをくらえ~っ!! ちゃっかりデロナちゃんも外側からハグしてるわ、カーミラさんの代わりに撫でとこ~……。
『カーミラがレベル100に上昇しました。上限解放を行ってください』
『ジャンボがレベル100に上昇しました。上限解放を行ってください』
『ミッション達成により、レベルが980に上昇しました。おめでとうございます!』
『姫千代がレベル980に上昇しました』
『ティアラがレベル980に上昇しました』
『デロナがレベル980に上昇しました』
『オーレリアがレベル980に上昇しました』
あ!! リアちゃんが近くで攻撃しようと待機状態だったから、戦闘参加とみなされてお溢れレベルアップしてる! ズルい、悪い子!!
『厳冬龍姫、殺魔の猟犬が力を失いました』
『むむ、殺魔め……まさか負けるとは……。降参じゃ、煮るなり焼くなり好きにしておくれ』
『ガウウウウ……』
「それじゃあ~煮ます~!」
『ほ、本気で食べる気なのじゃ……!? いやじゃ、せめて殺してたもれ!!』
『ギャウウウウ!!』
「ぜん、ぜん、致命傷が、与え、られなかった……」
『掠っただけで死にそうじゃった、内心では童のように泣きじゃくりたかったわ!!』
『キュゥ~ン……』
ああ、生き残ってたほうも力を失って降参した。どうしよう、このバトルジャンキーモンスター……。正直、素材にしちゃっても良いんだけどね。だって素材にしちゃっても多分、どこかに無慈悲ダンジョンとして現れて戦えるだろうし……。
「ん~……。とりあえず武器を取り上げて、起こそうかぁ……」
「起こすのでございますか!?」
「え、生き返らせるんですか~!?」
「ここまで強いと、どこで何をしてた人なのか気になるじゃん」
「それはまあ、確かに……。これほどまでの猛者がいたことに驚きを隠せませぬ」
「本当に強かったですね~!!」
でも、オリジナルとはもう会話が出来なくなっちゃうからやっぱり起こす。こんなに強いとなると流石に気になるし、話を聞いてみたいから起こしてみよう。従者にするんじゃなくって、デロナちゃんに頼んで復活の方で生き返って貰おう。
「それじゃ、デロナちゃんお願い!」
「は~い! あ、武器ちゃんと取り上げておいてね~! 揺蕩う魂よ、己の肉体へ帰れ! グレーターリザレクション!!」
『【幸運・スキル強化】デロナが【グレーターリザレクション・ドラゴニカ】を発動、殺魔・セーナが復活しました。狂化の呪印が解除されました』
およ……? 狂化の呪印……? もしかして話を聞いてくれないのと関係あったり、する……??
「…………参りましたァーー!!」
「うわ、急に土下座しないでくださいよ……。それよりまず、誤解を解きましょうよ。村の人達は無事ですし、私達は危害を加えてません。そもそも言っちゃ悪いですけど、この村を支配しても何の得もないんで」
「申し訳ねえ、申し訳ねえ!! この無礼は腹を切って詫び申す!! ああ俺の剣が、どこにもねえ!!」
「せっかく生き返らせたんですから死のうとしないでくださいよ!! ちょっと、黙って話を聞いて下さい!!」
「こんな恥を晒して生きていけねえ!! 死なせてくれぇ!!」
「黙って話を、聞け!!」
『殺魔に1Gダメージを与えました』
「うげぼぁ!?」
話を聞かないのは、この人のそもそもの性格が原因だわ。とりあえず頭を冷やしてもらおうね、ぶん殴れば大人しくなるでしょ、なるよね?
「えっと、大人しく話を聞きますね?」
「……ひふ」
「もう切腹だとかなんだとか言いませんね?」
「……ひああい」
「りんねーさま、この人……顔が凹んでるよ……?」
「ちょっと喋るの大変そうだから治してあげて」
「ええ……」
『デロナが【ハイネスヒール】を発動、殺魔が完全に回復しました』
よし、大人しくなったね。それじゃあええっと、サツマイモさん……? とりあえず聞きたいことが色々あるし、話を聞いてみようか。





