495 数奇なる運命
暫く笑い転げてたところで笑えない出来事が。ジードの村の村長さん、既に亡くなっていました。自然死や病死とかじゃなく、プレイヤーによって殺害されてた。どうやら初狩りギルドの連中に襲撃されて、殺害された挙げ句村長宅を拠点として使われているみたい。村の人も口止めの為に家族を人質に取られて村長宅の地下室に押し込められてて、そこで初狩りギルドの連中の為にこき使われてる様子。
めーちゃん達の偵察により得た情報によれば、今のめーちゃんで倒せなさそうな相手は居ない程度。20人ぐらいが家の中に居て、狩りに失敗した奴らと偉そうなのが言い争ってるって。そんなわけでティアちゃんにお願いしてジードの村長宅の近くまでやって参りました。
「なるほど三下の下衆にしてはよく考えたなクソ野郎共が、わっちが行って全員燃やしてやろうか、あ?」
「迂闊に放送しなくて良かったですね~」
「人質が面倒くせえなぁ!!」
一応内部の情報についてだけど、地下室にも見張りが居て、異変を察知されたら人質に被害が出たり初狩りギルドのクズを取り逃がしたりしそうだから、行動を起こすならスピーディにやらないといけない。じゃあどうやればいいかって?
「もしもしめーちゃん? 放送して良いよ?」
「え、放送するんですか~?」
「うん、やっちゃう」
ジードは別に魔界領地じゃないから、別にどうなろうとも関係ないんだよね。私からすれば人質を取られても問題ないので、初狩りギルドの連中を一網打尽に出来ればオッケーなのでゴリ押ししまーす!
『わかんねえって言ってんだろ、ログに誰にやられたって出てねえんだから!!』
『あのスポットはウゴーのとこの雑魚が馬鹿みたいに釣れる絶好の狩り場だったのによー。代わりになる場所探してこいよ、お前らがバレて場所潰したんだからさ』
『あ!? ざっけんな、テメエが安全だっつうから行ったのにこっちのせいかよ、テメエのせいだろ!!』
『あーはいはい。じゃあ俺のせいで良いよアルトラ君』
『今はヘイヨーだって言ってんだろ!!』
『あーあ、ジードは雑魚ばっかだから村人ぶっ殺して拠点にする案を出してくれた時までは輝いてたのになー。てかこの初狩りと取り返し屋のシステム、最近全然儲かんなくない?』
『知るかよ、副社長に聞けよ。てか中でそれ喋んなって言われてんだろ!!』
『失敗したからってカリカリし過ぎじゃね?』
ふーん……? めーちゃんがマリちゃんの作った中継装置でローレイの都市内全体にこの映像と音声が流れてるわけだけど、初狩り以外にもなんか終わりそうな奴らがいるっぽいね……? 取り返し屋なんて聞いたことないけど。
「取り返し屋って何……?」
「初狩りに取られたアイテムを取り返す業者みたいなのが居るんだよ。初狩り狩りみたいな謳い文句で、金さえ払えば初狩り野郎を追い詰めてアイテムを取り返すって触れ込みで商売してる臭いのが居るんだよ」
「へえ~つくねちゃん詳しいね~」
「え、あ、あ、き、聞いたことが、ああ、あるだけ」
「そうなんだ。でも今の感じだと多分、マッチポンプだってこと?」
「そ、そうなる、かも。まあそうだとは思ってた、けど」
はは~ん。初狩りが奪ったアイテムを取り返す業者ね、PvPが苦手で良いアイテムを取られちゃった初心者をターゲットにした商売かな。取り返すって言っても初狩りをやってる同じ連中の仲間が運営してるから、追い詰めて取り返すと見せかけたショーをして、それで儲けてるってことね。
「ち、ちなみに、レアアバは、一着5000円、とか……」
「は? え? 現金!?」
「そ、そう。現金。なかなかない、一品物とかは、た、頼むしかない、でしょ……? しかも、犯人を追い詰めて、とと、取り返すから、気分も良いし……」
「ええ、酷すぎないこれ……? 運営はこれ、知ってて放置してるのかな?」
「多分、まさに今、しっぽを出した……感じ……?」
ゲーム内通貨かと思ったら、現金でやってんの!? グレーどころか黒、真っ黒じゃん! いわゆるゲーム外代行サービスってやつでしょ? 利用規約でバッチリ違反って書いてあるのに!!
『あ、ってか銀8口きてっから、行ってきてよ』
『あークソ、だっる……。在庫141しかねえぞ』
『オク売れればちょっとは増えっから、あーマジであのキューブの売上奪えねえかなー』
『何回もやってるけど無理だって結論出ただろ。あの売上現金化したらマジで億万長者だよな、クソふざけやがって、個人が所有して良いもんじゃねえだろ』
『ちょい、夜勤イライラするからって喋りすぎな? まあギリ、ログに残っても結びつけるものにはならねえから良いけど』
『メルメッゾはルールが守れてお利口ちゃんでちゅね~』
『死にてえかテメエ……』
『おらおら、かかってこいよ雑魚』
『おいやめろよ、不安でイライラしてんのはみんな一緒なんだから我慢しろ』
『……ッチ』
なんでこんなにこの連中ギスギスしてるの……? 仲間同士ってか同業者なんだからもうちょっと仲良く出来ないわけ……?
「いや、本当にイライラし過ぎじゃない……?」
「さ、さっき、アルトラって言ってたから確信し、したけど、多分この業者……ジョニーだとお、思う。社長が死んで、会社が傾いてる、か、から、不安でイライラ、し、してる」
「ここまで情報が割れたら、ユキノ達が介入するより先に運営さんが動きそうですね~?」
「た、多分もう、警察までい、行ってると、思う。もう助からない」
「今度は保釈金を払う人もいないですからね~」
へえ~……あ、そういえばこの前ニュースでやってた! あれが社長だったんだ! そりゃあ社長が死んで会社が傾いたらギスギスするか~……。他社のゲームに寄生して利用規約に反する行為で金儲けしてる連中だし、同情はこれっぽっちもしないけどね。
『ターラッシュの9チャンに』
「あっ」
「え、あ? あ! 垢バンの、リアルタイム映像に、なっちゃった……!」
「わあ~。全員が一斉に消えましたね~」
「めーちゃんが動揺して探してる……。今のが垢バンかあ~……」
うわ、全員が光の粒になって消えちゃった。ログアウトは特殊な転移陣でシュンって消えるから、これは全く別物ってことだよね。この世から消されたみたいな、そんな感じだった!
「悪い人達が、消えてしまいましたね……?」
『きゃう?』
「えっとね、私達はこの世界で生きていく為に守らなくちゃいけないルールがあるんだけど、さっきの人達はそれを完全に破ってその証拠を押さえられたから、この世から消されてしまったの。アカウントバン、この世からの永久追放ってことかな」
「つまりそれが可能な、とても恐ろしい力を持つ存在がいるのですね……」
「そう、そういうこと!」
ああ、全員バンされたなら、人質も全員安全に解放出来るね? 本来はパニックに乗じて突撃して、その時に人質に損害が出ても生き返らせれば良いか、最悪初狩り連中を懲らしめられれば良いと思ってたけど……。思ってた展開の斜め上を行っちゃったわ。
「どれどれ、じゃあ誰も居なくなっちゃった村長の家に行きましょうかね」
「こ、これから、ど、どうするの?」
「ん~……。生き返らせたり治療したりしても、あんなクズプレイヤーに簡単に乗っ取られるような村ではなあ~……」
「確かに、将来的にまた同じことが繰り返されるだけですね~」
ジードの村、村人を救助したとしてもその後がないんだよね。プレイヤー数十人に乗っ取られる程度の能力じゃ、いたちごっこになるだけだろうし……。
「――お前達がこの村を蝕む腐れ外道だな?」
「え?」
え、いつの間に後ろに、というか誰!? 誰なのこの男!?
「とぼけるな、この村から命からがら抜け出した娘が言っていた。異界人が村を支配していると、悪魔だと。悪魔だ、悪魔だろお前? 悪魔だなあ!!」
「いや、人違いです! しかもそいつらさっき、あそこの村長の家で始末されたんで!!」
「その村長の家の中に、悪魔の気配が……しねえだろうがぁあああああ!!」
「むっ……!?」
「わあ……!?」
やばい、全然人の話聞かないタイプの奴だこいつ!? え、嘘、速い!?
『強き者、殺魔が【滅魔破斬】を発動、姫千代が【葬天破斬】で相殺しました』
『強き者、殺魔が【殺魔の猟犬召喚】【慈愛の乙女召喚】【厳冬の龍姫召喚】を発動、複数の敵対者が出現しました』
「人喰い悪魔だ、ぶっ殺せ!!」
『グルァアァア……!!』
『悪い人達なのですね、私戦います!』
『また悪童狩りか? 否、此度は随分と骨が折れそうであるなぁ……』
ど、どうしてこんなことに……。私達は初狩り狩りをする為に色々と準備をして追い詰めたはずだったのに、狩る側だったはずなのに、いつの間にか変なやつのターゲットにされちゃってるんだけど!? どうしよう、全力で戦うべきなの? 戦うべきだよね!? ええい、殺しちゃったらごめん! やらせてもらうよ!!
「話の通じる相手じゃない、戦うよ!!」





