494 もう止まらない
テレポートを妨害する方法はいくつかある。
まずはそもそも発動させない方法、テレポート禁止の広域フィールド効果を持つスキルを発動すればテレポートが禁止されるから、発動自体が出来なくなる。ただし現状このスキルは究極スキルを止めるほどのパワーがないので、死亡時の転送までは阻害出来ない。
次にテレポート先を割り出す方法。テレポートは必ず転送先が魔術陣に刻まれているので、これが秘匿されていたり巧妙に隠蔽されていない限り、魔術陣を読み解ける人には簡単に割り出されてしまう。なんなら【ディレイマジック】を付与されてテレポートの発動を遅らされて、転送先を割り出されてそこに罠を仕掛けられてから転送させられるなんてことも普通に起きる。これは無慈悲カーミラさんが息をするように使ってくるから理解させられた。
そしてテレポート先の書き換え。これはトラクタートラップとか、バキューム系のスキルが該当する。テレポート先を任意の場所に強制的に変更して捕獲するのに使うのが主な用途かな。ヴァハールさんにされたアブダクションがこれだよね。
「つまり、テレポートは無策で使って良い便利なものではないってことです」
「なるほど、しかしこれには高い技量が必要とされますよね?」
「逆にこれが出来ないとやりたい放題されるから、テレポート対策は必須なんです。毎回成功させろってわけじゃなくて、一回でも成功させれば以降の脅しになるので封じる事が出来るんですよ。一回妨害されたら、二回目以降は一か八かになってしまいますよね?」
「確かにそうですね。不確かな逃走手段は頼りたくないです」
『きゃうっ!』
「本当にわかりましたか? 返事だけは元気なんですから、ジャンボは」
『わっ!』
カーミラさんと、一応ジャンボにもこれを説明してみたんだけど、まあまだこの対策をする段階ではないからね。今は戦闘スタイルの確立と、出来ることを増やすのが課題だから。後は強敵と対峙したときの立ち回り方とかかな。
それで害虫駆除をするって言った割にはのんびりしてるわけなんだけど、これには深い理由がありまして……。
「へ、へえ、勉強に、な、なる……」
「テレポート系はついつい後手後手に回ってしまって~。先回り出来る技術、妨害する技術、凄いですね~」
「魔術師対魔術師は、こういうちょっとした技術の差で負けますからね」
つくねちゃんとユキノさんが居たんだよね。心配になって遠くから見守っててくれたらしいんだけど、私達の様子がおかしくなったのを見て駆けつけてくれたのよ。
それで初狩り狩りのことを話したら、この際だから徹底的にやろうってことになって、現在は目立たず動ける人を総動員中。なんと今回、うちのめーちゃんが潜入部隊に入って初仕事です! ちなみにイルエル姉妹は伊賀忍ベースで修行中で、イルエルちゃん達も潜入部隊に入ってる。
ところで、話がどこまで広がってるかって……気になるよね? 私も気になったからどこまで話が広がって動いてるのか調べたんだけど、どうやらカーミラちゃんの邪魔をする赦せないクズは殺すぅ~って桃色のお姉さんまで行ったみたいで、魔神兵も総動員で動いてるよ……。昔、仲間とルテオラの弱き民の為に立ち上がった人達だもん、弱いプレイヤーを食いものにしてる連中は赦せないよねえ……。
『リンネ、頼まれたものは完成したぞ。以前作った音声を遠くの機械に飛ばせるものを応用するだけだから、簡単に作れた』
『ありがとう~。もう歩けるの?』
『あ、歩ける……。あの時は冗談に決まっているだろう?』
『いや、歩けないよ。アルテナが休んでいるから今は俺が支えてる』
『こら!! フリオニールさん、それは内緒だって言っただろう!?』
『エモーションは出したが、返事はしてないからね』
うーん、ここぞとばかりにおしゃべりフリオニール……。最低のデリカシーのなさだけど、これは嘘をついたマリちゃんが悪いってことで……。
『と、とにかく!! ローレイで設置すれば良いんだろう!? 子機は姫千代さんが持ってそちらに走って向かっているから、これで通信は切らせてもらうよ!』
「あ、逃げた」
「マリにゃん足腰よわよわ~!」
「本当ね……。リアちゃんは追跡準備出来た?」
「出来た! かんぺき~!」
かんぺき~の時の満面の笑み可愛すぎるでしょ。今のこそ録画して定期的に見返したいわ。本当、リアちゃんとこの森で出会えて良かった。リアちゃんにこれまで何度助けられたことか……。戦闘面でも、精神面でも。
「さてさて、それじゃあ千代ちゃんが到着する前に……」
「やりますっ! やっつけます!!」
「よーし、やっちゃえティアちゃ~ん」
ティアちゃんがふんすふんすって鼻息を荒くドヤ顔してらっしゃるよ。カーミラさんに力を見せたいのと、カーミラさんの邪魔をした悪い奴らをやっつけたいのとでテンション高いね~。それじゃ、遠慮なくやっちゃって頂戴。
「カーミラ様、ティアがカーミラ様に憧れて辿り着いた力、見ていてくださいねっ!」
「は、はい。よろしくお願いします……?」
『ティアラが【黄金の女神】を発動、一度のみ攻撃スキルが究極強化されます』
あ~それはね、ちょっと張り切りすぎだねぇティアちゃん!!
『ティアラが【黄金神槍驟雨】を発動』
「あ……」
「あー! 森を枯らした槍の雨ー!!」
それはカーミラさんと嫁入り戦争を起こした時に使った、森が絶滅しかけたスキルの……強化版だねえ……。あの時でさえバフスキルは使ってなかったのに、それを使ったら……!!
「え、これ、ヤ、ヤバい」
「わあ~キレイですね~」
「ユキノさん呑気過ぎない!?」
「そうですか~? あ、流れ星に似てますね~! 落ちてきたみたい!」
これは初狩りのクズ、塵すら残らず跡形もなく消えるわ……。ああ、森が……。ターラッシュの南の森が半壊してる……!!
「ああ! そういえば、今度ルテオラの北側も雪かきしないと!!」
「それ今思いだすのリアちゃん!?」
『メルメッゾが絶大なダメージを受け死亡しました』
『ヘイヨーがが絶大なダメージを受け死亡しました』
「あ、死んだ。リアちゃん追跡!」
「やってまーす!」
『姫千代が【雷光脚】を発動、回避しました』
千代ちゃんガッツリ巻き込まれてるー!? いやでも回避出来てる、凄いわ……。あの日負けたのがよほど悔しかったか、走り込みに磨きをかけて回避技術が上がって……あが、あががが…………。
「わ、わっちの目には、雷が、ここ、こっちに、向かってきてるように……!」
「速すぎて、目で追えないですね~! でもキレイです~」
「リンネ殿ーーっ!!」
「わあ~ティアの槍を踏み台にしてこっちに来ます~!!」
「うわあ……」
「私も、いつの日かティアラさんのように強く、姫千代さんのように速く、リンネさんのように……う、美しく、なれるでしょうか……」
「全部目指すと大変なんで、まずは一つ一つ乗り越えていきましょうね……」
海も走って渡るぐらいには凶悪な脚力になったのは知ってたけど、もはや雷が意思を持って走ってるようにしか見えないぐらい速いよ……。無策で戦ったら百回戦って百回負けそう。ガチの近接職には勝てないって前から言ってた通り、高レベルになってもそれは変わらないどころか、ますます差が開いたのを実感させられるね。近接職、怖……。
「お届け物にございます!」
「テレポート対策してるから、テレポート以外で届けてくれたのね、ありがとう千代ちゃん」
「ん~……♡」
テレポート対策を色々講じてるから、マリちゃんが作ってくれた機械の子機を直接運んでくれたのね。ありがたいけど、早すぎるでしょ。ローレイからここまで何分で来たのよ、このサンダーフォックスは。
「にゃ! 転送先、わかりました」
「おお、さすがリアちゃん!!」
「撫でてくれたら教えます」
「そんなことならいっぱい撫でちゃう!!」
「ん~~……良いですね、お耳の裏も。うーん、良いですね……。あ! それで場所なんですけど」
さーてー? 初狩りしてる外道共の巣窟は、どこかなー?
「ジードの村、一番大きい赤い屋根の家みたいです!」
「そ、村長の、い、家じゃ、ない……?」
「村長の、家……? あ、めーちゃん! イルちゃんエルちゃん!」
「はっ、此処に居ます!」
「居るよ~」
「居るよ、エルだけど」
ふ……い、今真剣になるところだったんだけどエルちゃん……。ちょっとごめん、それ、笑いのツボに入ったかもしれない……!
「こ、これ、使い方……ぐっ……」
「え、嘘、ウケた……?」
「エルのこのネタがウケたの、初めてかもしれない?」
「この、スイッチ押すと、この画面っぐ……えへっ……! 映ったもの、送れる……ぐひっ……」
「わ、わかりました。秘密裏に、必ず!」
「此方も万が一の為に、気が付かれない位置より護衛致しまする」
「ダメ」
「ピカピカで目立つ。これはエル達の仕事」
「そう、待ってて。必ず成功させる」
「おねが、へっ……!」
ごめんね、もう耐えられそうにないから笑うね。私最近思ったんだけど、笑いのツボが人とずれてるような気がする……! もしかしたら、ローラちゃんのあのスキルが特効かもしれない……どうしよ、ローラちゃんのネタ思い出してまた笑いが込み上がって来た……!!
「ふ、へっ……あはっ……!!」
「お姉ちゃん……」
「リンネ様の笑顔さんが、制御不能になっちゃいました!」
何その表現可愛い、もう限界…………限界なんだなぁ!! 何よ、居るよ、エルだけどって!! そんな持ちネタあるなんて聞いてないよ、不意打ちはダメだよぉ~!!





