484 責任は
「ふ~ん……」
「詳しい情報は、なさそうで御座いますね……」
「う~ん……。とりあえずまだ試作機らしいってことぐらいかな」
「試作機に御座いますか……」
同盟ギルドメンバーの人達や掲示板から集めた情報だけれども、どうやらトロイの取り巻きが地上で機体の性能テストと、こちらの実戦力を計測しにちょっかいを出しに来ているらしい。
確認されたのは【勇敢なるヘクトール・試作型】と【不屈なるカサンドラ・試作型】の2機で、いずれも10メートルはあるんじゃないかってぐらいの巨体。ヘクトールは目にも止まらない速度で繰り出されるクロー攻撃、打撃と斬撃の両方が可能な上にエネルギーブレードにも出来る武装持ちの近接型。カサンドラはヘクトールの支援をしていたらしいけど、詳しいことは不明……ヘクトールよりは小柄だったってことぐらい?
「ヘクトールに反撃した数名が見込まれて称号を貰ったらしい。でも、効果量はかなりショボいみたい。バビロン様から頂いた称号の方が何百倍も強いわ」
「此方に至っては無双絶剣殺界、斬撃を防ぐ者無しに御座いますからね」
「HPが50パーセント切って攻撃力1.1倍だって。このぐらいは基本性能よね」
「はて、此方の無双絶剣殺界は基本性能として常時1.5倍と聞きましたが……」
「そうね。まあ、ちょこっと反撃したぐらいで貰える称号にしては破格よね」
称号に関してはステータスとは別個にプレイヤーやNPCに与えられるもので、強力な称号になれば【称号スキル】として一つだけセットして常時発動させることが出来る。ヘクトールに反撃した人は称号を貰ったみたいだけど、私達がバビロン様達から貰ってる称号に比べたら可愛らしい効果量。正直欲しいとは全然思えないし、一つしか発動出来ないんだから要らない。称号コレクターは欲しがるかもしれないけどね。
「ティア殿とは、いつ結婚式を……?」
「幻想郷の大集会場と大広間、あそこでやりたいんだって。そしたら他の子も皆あそこが良いって、幻想郷のレベル……全体の修復度が上がって、かつての華やかさとまでは行かなくてもある程度輝きを取り戻したら、その時にやりたいなーって」
「左様に御座いますか……」
「なぁに? 千代ちゃんだけの私じゃなくなっちゃうの、寂しい?」
「そのようなことは……ちょっとだけ、ありますけれども……」
「ふふっ、じゃあ今夜は千代ちゃんが寂しくないように、一緒に姫の間で寝よっか」
「ふぁぇ!? ひぇ、ほえ!?」
うんうん、わかりやすい反応で可愛いねえ……。お耳と尻尾がぴこぴこ、ぼわーっと逆立って喜んじゃって。顔は平静を取り繕うのを努力してるみたいだけど、体のほうが正直過ぎるよね。
「そのためにはまず、千代ちゃんのお母さんと、メイナさんと、麒麟さんを説得して欲しいなぁ~」
「あっ! しょ、それでしたらええ、大丈夫です。既にメイナと麒麟には念話で軽く話を通しておりますゆえ! それに、甲賀忍術は此方でも伝授可能に御座います! 母上から受け継いでおりますから!」
「ほえ~……。甲賀忍術って、伊賀忍術や風魔忍術と何が違うの?」
そして前から気になってた伊賀、甲賀、風魔の忍術は何が違うの問題。実はこれあまり詳しくなくて、どの師匠がどの忍術担当なのかを知ってる程度だから……。
「伊賀忍は甲賀忍と袂を分かつこととなり分裂した流派に御座いますね。基本的な部分は同じであるものの、分身や隠密、主に攻撃性に尖った忍術が伊賀となります。逆に此方や母上の扱う甲賀忍術は瞬間移動や自己回復や強化などの神秘性に尖った忍術で御座います。風魔忍はどちらの流派にも属していた忍者が両方の良いところを取り入れ、更に自身の強みも組み込み自己流に改変した攻守に優れた忍術と聞きます。此方も母上も剣術が基本であり、足りないものを甲賀忍術で補っておりますので正当な甲賀忍とは言えませぬが……」
「なるほど、確かに千代ちゃんの印術って瞬間移動、回復、強化って感じだね。術自体での攻撃はないんだ」
「いえ、一応あるのですが……。忍術を使うよりも、剣を振るった方が確実で早いので」
「あ、うん、それは確かに……」
なーるほど、それじゃあ風魔忍を基礎にしたのは間違いなかったかも? 風魔忍を軸にして、現世の伊賀甲賀の良いところを更に組み込み、それに仙術と霊術も合わせる……。わあ、加賀利のレアクラスハッピーセットじゃん! なんか、良いね! 激レア感あるわ!
「それより、その……。仙術と霊術は相性が最悪でして、恐らくどちらかしか……」
「え゛」
「麒麟を封印していたのがメイナの一族でして、零姫様の亡き後自棄酒を呷り暴れ回っていたのを……はい……」
「ああ、だから微妙に距離があったんだ! 零姫様とメイナさん!!」
「自分でも悪かったとは思っていたようなのですが、それでもこんなに長い間封じることはないだろうと……。末裔であるメイナには関わりのないことなのですが……」
どっちかしかダメなのぉ!? うーん、困ったなあ……。ああ、むしろ今になって私もミスをしたことに気がついた、転生回数的に五つの職とばっかり思ってたけど、レベル800になった時に極めた四つの職を合算して最終クラスになるんだから、どっちかしか取れないじゃん!!
「ん゛ん゛ん゛ー……!! メイナさん、今は凄く楽しそうな感じ!?」
「え、ええ。毎日がめくるめく輝いていて、一分一秒を生きるのが楽しいと言っておりました」
「邪魔しちゃ悪いから、メイナさん……断っちゃおう! ごめん嘘、今のは建前! 本音は私の管理ミスなの! ごめん、千代ちゃんごめんっ! メイナさんもごめんっ!」
「いえいえ、謝らないでくださいませ! 此方も興味がある者が居る程度にしか伝えておりませんので! それでは、めるめいや殿は麒麟に弟子入りをお願い致しますか?」
「うん、お願いっ!」
ふう……。危なかった、軽症で済んだ……済んだかなぁ。メイナさんには悪いことしちゃったかも、今度様子を見に行って直接謝ろうかな。むしろ機嫌悪くしちゃうかな、接点少なかったしなぁ……。あ、カジノで思い出したけどドワーフ関連のイベントってどうなったんだろ。
「御意に御座います! それでは、此方はもう十分蒸し風呂を堪能致しましたので、汗を流して加賀利まで走ろうかと思いまする」
「え、ここから走っていくの!?」
「ええ、良い運動になるかと。それでは、その……」
「夜の10時には行くからね」
「は、はい。お待ちしておりまする……そ、それでは……!」
「また後でね」
「また後で、また後で……また後で……♡」
この約束すっぽかしたら、二度と千代ちゃんにお話して貰えなくなりそうだわ。夜の10時だから、9時半にアラームをバンバン鳴るようにセットしておかないと……。
「他の皆は~……。リアちゃんとエスちゃんはルテオラの雪原消滅させて遊んでる、どん太はモッチリーヌちゃんとじゃれてる、おにーちゃんとマリちゃんとヴァルさんは……メガリスアーマーのところにいる? ヴァルさんが珍しいかも。えーっと、ゼオちゃんとデロナちゃんも珍しい、生命研究所に里帰り中だわ。皆と一緒にお菓子でも食べてるのかな?」
お暇な従者ちゃん居ないかな~って見た感じ、ティアちゃんとカーミラさんだけだわ。せっかくだから二人とも呼んじゃおうっかな?
『(ティアちゃ~ん、カーミラさ~ん、お暇ですか~?)』
『(は~い! ティアはお暇さんで~す!)』
『(おやおや、もう姫千代さんとはよろしいのですか?)』
『(うん、夜にまたって約束したから。ちょっと月光の歓楽街に行ってみない?)』
「行きます」
「ひっ!?」
「ティアも行きまーす!」
「ひょえ!?」
二人とも、自在に使える長距離移動スキル持ちだから、呼んだら爆速で来るんですけどぉ!? ちょっと待ってね、私もサウナの汗を流したら着替えて行くからぁ……!
「おやおや、呼び出しておいてサウナローブ一枚とは……」
「カーミラ様?」
「え、えっと、これは抜け駆けや誘惑をしようとしたのではなく……」
これ、ティアちゃんと早めに結婚式しないとダメだ……! 今日は土曜日で、明日が日曜日だから……日曜の夜とかに予定しようかな!? そうしないと、ティアちゃんが一生カーミラさんに笑顔で圧を掛け続ける気がする!!
「ティアちゃん、結婚式いつが良い……?」
「ティアは今でもいつでも大丈夫ですっ!!」
「今ァ!?」
「はいっ! リンネ様が選んでくれる時間が、ティアの特別な時間になります!」
胸が、苦しい……! 純粋過ぎるティアちゃんの笑顔がぁ……!!
「明日の夜、とか……ど、どう……」
「はいっ!! じゃあティアは皆さんに自慢をして来るので、やっぱりお暇さんじゃなくなっちゃいました! 行ってきますっ!」
『ティアラが【黄金回廊】を開き、移動しました』
「え、あ、ちょ!!」
ティアちゃん嘘でしょ……!? 行動力の化身過ぎない!? だ、誰の影響を受けてこんな……!!
「…………いい子ですねぇ。ああ、どうしましょう、本当に可愛い……」
『ティアラが【黄金回廊】から現れました』
「あ! カーミラ様、ティアは明日の夜結婚します! 絶対、来てくださいねっ!」
「ふ、ふふっ……! 本当にいい子ですね、必ず行きますよ」
「はいっ!」
『ティアラが【黄金回廊】で移動しました』
私、こんなに可愛くていい子と明日結婚するの……? ティアちゃん大丈夫? 私で良いの? 本当に? 私、全世界のティアちゃんファンクラブの会員から刺殺されたりしない……?
「時子ちゃんに、ウェディングドレス作って貰おうかな……」
「おや、我が家に伝わる花嫁衣装をと思いましたが」
「それはカーミラさんが私の隣で着るやつでしょ」
「…………今、一瞬呼吸を忘れてしまいました。本当に、今の言葉に嘘偽りは、ないのですね?」
「え? うん、ティアちゃんより後なのは譲れないからね! カーミラさんは、その後ね!」
「嬉しい……本当に……。さあ、月光の歓楽街に早く向かいましょう? 楽しい気分の内に、することを済ませてしまいましょう」
「あ、そうだね! それじゃ、月光の歓楽街に出発~」
きっと後のことは後の私がなんとかしてくれるはず。今はちょっと思考能力が足りないの、とにかく気になることを先に終わらせて、考えるのはそれからにしよう!





