481 革命児
同盟のギルドも含めてギルドメンバー同士がそれぞれやりたいこと、やるべきことを決定して散り散りになった頃、私はきぬちゃんに教えて貰った座標へ行く為にローレイへとやって来た。既に連絡は取ってあって、指定座標に向かえば会えるって聞いたけど……。
「ローレイにこんな道が狭いところあったんだ」
「なんだかちょ、ちょっと、薄暗くてジメッとしてますね……」
かなり活気がある貿易都市ローレイとは思えないほどの廃屋、人の気配がない区域が北東部にひっそりと……。未だにこの辺りの復興は進んでないんだなぁ……海賊の被害で減ってしまった人口は戻らないものね。いくらバビロン様や私が死者を蘇らせる力を持っていたとしても、か弱い魂を救うことは……。それこそ、リアちゃんの護衛をしていた騎士達のように。
「全然人の気配を感じないね」
「メルは、新しい力を手に入れる為に生まれ変わってしまったので、リンネ様のオーラに押されて、その……」
「ああ! ごめんごめん、権能がオンのままだったわ」
『【死霊術神の権能】を一時的に解除します』
メルメイヤちゃんがさっきから微妙にぷるぷるしてたの、私が原因か! いやいやごめん、いつぞや沢山使うものだと思って回収してた転生の書の使い所と思ってさ、転生の書のもう一つの使い方……というか、実はこれが本来の使い方なのかな? めーちゃんを転生させてレベルを1まで下げて全部リセットしちゃったのよ。パッシブスキルは職業由来じゃないものに関しては残ってるし、伸びたステータスとかは一部そのまま残ってるから通常のレベル1と比べたら雲泥の差はあるんだけど、それでも私の隣に居るとプレッシャーを感じるらしいから辛かっただろうね。辛いならそう言えば良いのにって思うけど、めーちゃんは溜め込んで我慢するタイプみたいだから言えないんだろうなあ~……。
『ヘイ、レディース。ひょっとして煌めくシャイニング負けない眼差し、きぬがプロデュースの風魔忍志望のレディー、オーケー?』
なんだこいつ。なんだこいつ……!? いつから屋根の上に居たの!? 何だこの金髪忍者!?
「リ、リンネ様……?」
『オーケーリンネ、リンネイズゴッデス。間違いなくスゥパァーパゥワーネクロマンサー、つまり隣の桃色のエトランジェが風魔忍志望、完全理解理解ソウ理解』
なんだこいつ!?
『早速どの程度か調べる必要、あるよね? 君の情報をプリーズ、まずは君と言う名の情報の海に飛び込んで行くぜ、ヒュウィゴー!』
「発言は馬鹿っぽいけど強いよめーちゃん、戦闘態勢!」
「は、はい!?」
凄い早口で何言ってるか微妙に聞き取れなかったけど、強烈に癖の強いラッパー気質な変な忍者だってことはわかった!!
『ソウ奇想天外イリュージョン、太陽みたいにデッカイエクスプロージョン、ドゥルルルルルル』
『革命異端忍者・FUMA-MON(Lv.950)が【神出鬼没】【火遁・風魔爆裂手裏剣】【風魔連術】を発動』
――こいつ、強い!! 見た目と言動と行動の全てが馬鹿っぽく見えるけど、この短時間で相手が対処出来ないであろう手数で攻めてくる! 遠距離攻撃と魔術攻撃の複合、属性は火! 問題なのは爆発に恐らく斬打突の全てを属性を含めているであろうこと、防御が絞れない!!
「爆発は、上に……!! 逃がす!!」
『メルメイヤが【大激震・昇竜】を発動、相殺!』
『君、グレイト!!』
巻き上げた瓦礫を空中に放つスキル、力任せだけど爆裂手裏剣の着弾前に相殺させようとしたのは良いセンスをしてる。ある程度私達の戦闘に付き合わせたり、どん太の遠距離攻撃対処法を見て学習したのもあるだろうけど、いざ実戦となってすぐに取り入れられるのは才能ね! それにひと目見てあれが爆発物だと判断したのも凄い、直感? 経験則? レベル1でこの初手を防げるなんて凄い!
『続いてくイリュージョン、地下に潜るスゥパァパゥワー、溢れ出すクレイズィーなブィート、ドゥルルルルル』
『革命異端忍者・FUMA-MON(Lv.950)が【神出鬼没】【土遁・地竜破穿天突】【風魔連術】を発動』
詠唱が速い、滑舌が良すぎる。しかも忍術を用意しながら物理的な反撃に対応するのに、武器には常に手をかけている。このレベルの高さに特殊技術、伊達や酔狂なんかじゃない。相手に『なんだこいつ』と思わせるのも恐らく計算の内、一瞬の油断と判断力が低下している内に勝負を決めて仕留める。きぬちゃんのスタイルに確かに似てる……。ただ、めーちゃんにこのスタイルが定着するかどうかは……。
「はぁっ!!」
『メルメイヤが【軽量流動】【反動強化】を発動』
『まだこんなもん、普通にどう見ても対処不能なアタァック』
『メルメイヤが【強打】を発動、相殺不可! メルメイヤが16Mダメージを受け、大きくノックバックしました』
やっぱりレベル1でゴリ押し相殺は……。いや、これはもしや……千代ちゃんの……?
『ホワッツ!?』
『メルメイヤが【強打】を発動、相殺不可! メルメイヤが17Mダメージを受け、大きくノックバックしました』
「相手の攻撃と自分の攻撃をぶつけて、その反動でわざと大きく飛び上がって……」
「学んだんです、これは……避けれない攻撃じゃないって!!」
『君、アメェイズィング!!』
地面から突き上がる岩の杭にわざと自分の攻撃をぶつけて、その反動で大きくノックバックして衝撃を殺す、通称『反動パリイ』!! 私が物は試しで敵の攻撃を受ける時に浮遊を使って、攻撃を敢えて無抵抗に受けてそれを流すのに成功したのを千代ちゃんが見て編み出した反動パリイ、殺しきれてなくて多少ダメージは受けているみたいだけど、それでも紙一重で生き残ってる。
『スゥパァイリュゥズィオン! スゥパァモードゥ!!』
『革命異端忍者・FUMA-MON(Lv.950)が【多重分身】【風魔手裏剣・猛吹雪】【神速風魔一閃】を発動』
遂に出した、これがめーちゃんを試す最後の一撃になると思う。反動で大きく跳ね上がって空中に居るめーちゃんが分身から繰り出される剣閃と、四方八方から背丈程もある巨大な風魔手裏剣に対してどう対処するのかが見たいんだと思う。本来は初手で終わらせるはずだったテストに対して予想以上に対処出来た為に嬉しくなったんだろうね。最初に登場した時よりもテンションが高いし、間違いなく笑ってる。楽しいんだろうなあ……。
「っく……!!」
『メルメイヤが【大旋風】を発動、【軽量流動】【反動強化】を解除しました』
高速回転で弾く、この猛攻を受け切るのを選んじゃったか。確かにここまで追い詰められた様子を見たことがないから、斬新な対処方法を思いつかないよね。私だったら大旋風を発動後、最初に当たった攻撃の反動で吹っ飛んだ後に反動強化を切って猛スピードで吹っ飛びながら、吹っ飛んだ方向の攻撃だけ受けて抜け出す……かな。
『メルメイヤが相殺失敗、199Gダメージを受け死亡しました』
『ヘイヨォ、ウェイクアップ!』
『革命異端忍者・FUMA-MON(Lv.950)が【冥遁・生命口寄せの術】を』
「目覚めよ」
『【反魂の儀式】を発動、メルメイヤが生き返りました』
『革命異端忍者・FUMA-MON(Lv.950)が術の発動に失敗しました』
『ワァオ……』
「私ともやる?」
『ノーノーノーノー、勝てるビジョン一切ナッスィン。あの時のオゥラがグォングォンオープンだけでデッド、無理を悟るでしょ?』
「そっか」
「……リンネ様、負けてしまいました」
「いや、レベル1で良くここまで抵抗したと思うよ。ビックリするぐらい私達の戦闘を良く見てたのね」
「直接何かを教わる機会が、今までなかったので、記憶の奥底に今でも数々の戦闘が焼き付いて離れません……!!」
いやあ、ここまでよく張り合ったよ。転生してステータスだけは高かったからってのもあると思うけど、少ない手札でレベル差949差の相手に三手……複数手あったから合計九手? 凄いよ、本当に!
「それで、うちの子は風魔忍になれそうですか?」
『オーケーオーケー、何も問題ナッスィン。今すぐ風魔忍法にトライ、ヒュウィゴー! レッツスタディして最強の忍び目指して登竜門カモン。バッド途中で諦めたら破門バカモン打ち首獄門』
あ……きぬちゃんの破門バカモン打ち首獄門、これかぁ……!! メッチャ影響受けてるじゃーーん!!
「どう、この人の風魔忍法学んでみる気になった?」
「リンネ様のファミリーの誰とも異なる、今まで見たことが無い技術、是非学びたいです! そしてこの……えっと……師匠! 師匠を超えたいです!」
『フーマモン、オーケィ? リピートアフターミー、フーマシショー』
「はい、えっと……フーマ師匠!」
おー……。なんかいい感じに決まった。これで転職終了かな。
『メルメイヤが隠しクラス【風魔忍】に転職しました。育成方針はFUMA-MONによって自動で決定されます』
『このエィリァ、私のネェム出したら当然破門バカモン打ち首獄門、アンダスタァンド?』
「わ、わかりました」
「紹介制なのね」
『このエィリァで私のアタァック避けたらグレェイト、弟子入りでオーケィ』
「なるほどね」
ということは、きぬちゃんってまともにスキルとかなかった時代にレベル99でここに迷い込んで、このフーマモンの攻撃を避けたか弾いたかしたんだ……。まぐれかもしれないけど、それでも凄いなぁ……!!
『それじゃ今日一日か二日程借りてオーケィ? 前の弟子はゴリラ・ゴリラ・オブ・ゴリラ、自由に育てたのはフェイルドな選択。風魔忍に伝わるレジェンドなウェポンからチョイス。伝統的な正しい風魔忍をスタディするべき』
「めーちゃん、この変な人と一日か二日一緒に居て大丈夫……?」
「え、えっと」
『安心してもいいよプリーズ、私はこう見えてもレーディ。タッチミー?』
「え゛」
え、嘘、この人……女性なの!?
「あ、ほ、本当だ、女の人ですよ! リンネ様!」
『いざとなるとちょっと恥ずかしいタッチ』
「……!?」
どうしよう、色々理解が追いつかないけど、もうこうなったらお願いしよっ! うちのめーちゃん、変な育成しないでくださいね! めーちゃんこの変なお姉さんと暫くの間、修行を頑張ってね……!? え、女の人なのぉ!? ええ……ええ……??
書籍化に伴い、サブタイトルを書籍版と統一致しました。
株式会社アース・スターエンターテイメント、アース・スターノベル様より、本作【ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました ~裏イベントを最速で引き当てた結果、世界が終焉を迎えるそうです~ 1巻】を出版させて頂ける運びとなりました。
5月15日の発売を、どうぞお楽しみに! 書籍オリジナルの要素も御座います。





