480 会議は踊る、しかも進んでる
私はまだ、このバビロンオンラインという海の浅瀬しか知らない、海の広さと深さと恐怖を知らない無知な冒険者の一人に過ぎなかった。
「全員合計で、5572周だね……」
「それで、3個……」
「ソルラーラーは出さんと思って間違いあらへんな」
「無慈悲にもレベル差があるし、その僅かなレベル差でドロップする素材が変わる……?」
「エリスちゃんは低難易度だとドロップ率も低いのかなーって思いまーす」
「リンネちゃんが海の王者で2個、ユキノさんが大英雄零姫で1個、およそ0.05パーセントかあ~……」
「ソルラーラーの回数を全部弾いたらもっと確率は上やろ」
「なんにせよ、試行回数が全てだな」
「それにエテ瓶だけじゃないしね、欲しい素材……」
オンラインゲームベテラン組が予想するには、エーテルの入ったガラス瓶……略してエテ瓶は、恐らく無慈悲ダンジョンの全域からドロップするものではないかと。この要求量からしてその可能性が高い、と。
なんせ現在この幻想郷にある設備の強化だけでも、判明しているだけで要求量が210個。210個だよ、210個!! 設備数が14個、強化段階レベル5でそれぞれ1個、レベル6が2個、レベル7が4個、レベル8が8個、一つの設備辺り15個ずつ要求してくる。しかもレベル9になると今度は別の素材【原初のマナクリスタル】が必要になってくる。聞いたことも見たこともないよ……。あ、当然だけど他の素材も必要。これらに関しては全員がなにかしらの素材を所持してたから、集めるのが無理ってことは無いと思う。
問題なのは設備投資が終わってクリアかって言うと、これがスタートラインってことなんだよね。今度は装備を作るための素材が……。
「それぞれが得意なボスをガンガン回して集めるのが良いかなぁ~?」
「無慈悲フーマ得意デース!!」
「ああ、きぬちゃんの職業教官かぁ……。まず見つけるところからなんだよねえ……」
「フーマシショーに皆さんを紹介するも、やぶさかでない!」
「お、珍しく難しい言葉が当たってる」
「イエーイ!」
それはそうと、将器強化機の設計図の破片Dをきぬちゃんが持ってた。きぬちゃんの職業の忍術教官、風魔教官の無慈悲版からドロップしたらしい。風魔教官はローレイのどこかに居るらしくって、追いかけていって見事に風魔教官の隠れ家まで辿り着ければ、風魔忍に転職出来るようになるらしい。きぬちゃんは本気の風魔教官を超えた皆伝クラスの忍者になったから、見込みのある人だったり交流して欲しい人を紹介して会わせることが出来るようになったみたい。会ってみたいけど、うーん……最初から職業をガラッと変えられるような子は……。
「あっ」
「え、ちょっと待ってねリンネちゃん、それは良い話かい? 悪い話かい?」
「心の準備が出来てねえ」
「アカンでリンネちゃん、心臓なくなってまう!」
「ひ、ひとごろし、する……?」
「え、いえいえ、きぬさんに是非うちの子を風魔教官に紹介して欲しいなって思いまして」
「ええ? リンネちゃんのとこの子、転職させちゃうの?」
「メインクラスじゃないと、ダメデスヨ?」
「本人が前の力を使いたがらないというか、全て捨てたいって言ってたので……」
「じゃあ大丈夫オーケーネー!」
「話し合い終わったら、よろしくお願いしますっ!」
「ふふふふーふー♡」
そうだそうだ、いい機会だしガラッと変えちゃうほうが良いかもしれない子、居たわ! 暫く私と二人でハードな鍛錬になると思うけど、本人がそう望んでるんだからその気持ちに応えてあげないとね。
「とりあえず設備レベル4までは上げられそうだから、全部レベル4にしちゃおうっか。そしたら何から上げていくのが良いかなー?」
「神聖なる火の蝋燭と魔物加工設備は使う人いなさそうだし、これは上げなくても良いんじゃな~い?」
「むしろそれの代わりに厨房作って欲しいんだけどな」
「わたくし、魔力抽出機が欲しいですわ! 魔剣強化に必須ですのよ!」
「じゃあ二つは潰して、二つ追加で……んー結局変わらないねー」
「今気がついたんやけど、ワン公の要求素材三倍やで」
「は……?」
「えっ」
「ほんまやって、強力な生産スキルを持つ設備やから、要求量が非常に多いって説明出るで」
「ひょわあああ……」
「いやでも、うん、使うから……」
「あ! そうだ!」
「待ってリンネちゃん」
何回このやり取りするんですかー。今回もそんなに大したことじゃないから、発言しちゃいますよー?
「呪いの人形、一番良い素材で作って設置したらレベル高い状態で設置されますかね?」
「ああ、そういえば確かに呪い装備を作る設備がねえな」
「元々は悪魔人形のスキルだったみたいだけどね~」
『きゃうっ!』
「あ、それじゃリンネちゃん置いといてくれるかい? サブマスターまでは承認無しで設置や変更出来るようにしたから、ポンと実行していいよ~」
「は~い」
『サブマスター【リンネ】が【満月の女王の究極結晶】で【神秘的な呪いの人形】を作成し設置しました』
おお、出来た出来た。露店だって開けるんだから、この幻想郷で設置出来なかったらおかしいもんね。お~ちゃんとギルド帰属の設備になってる、これでもレベル8なんだ……。レベル9にするのに例の原初のマナクリスタルはどうしても必要ってことなのね。
「レベル8!?」
「おお、凄えなあ!!」
「エテ瓶メッチャ削減出来たやんけ!」
「レベル9にはどうしてもマナクリ必要なんですね」
「原初のマナクリスタルは、本当にレア中のレア素材なのかなー」
「原初に続く大穴、無慈悲あるかも。関係ありそう?」
「確かに、レーナちゃんの言う通り原初に続く大穴が関係してそうですね!」
「た、確かに、最近全然、行ってない……」
「ボスラッシュモードもあったんよな」
「増えてるかもしれないねー。誰も知らないってことは、誰も行ってない感じだね」
「ほな後で確認するとこに増やしとこか」
「そうだな、確認した方が良いぜ」
原初に続く大穴、確かに最近行ってないから無慈悲あるかどうかも確認してない……。他にもまだまだダンジョンいっぱいあるだろうし、見つけたいなぁ~新規ダンジョン……。ルテオラの雪原を焼き払ったらなんか出てこないかなあ?
「ルテオラの猛吹雪に覆われてる雪原を焼き払ったら、新しいダンジョンとか出てきませんかね? 超地獄ダンジョンは前に教えた通りですけど、まだありそうじゃないですか?」
「ルテオラのひえひえ鉱山を登るルートとかも確認してねえな」
「神樹のてっぺんとかも行っとらへんよな?」
「海の底に国があったんだよね、それも調べたいよねー」
「そういえば、アルトラが飛ばされた島もアンデッドだらけでしたわよね!」
「なんや行っとらへん場所だらけやなあ!」
「他にも行ってない場所どんどん出して、皆で確認しに行こうよ!」
「砂漠の砂もガッツリどかしたら地下遺跡とか出てきたりして~」
「各都市の地下も怪しいぜ。黄金郷みてえにメガリスアーマーみたいなのが埋まってるかもしれねえぞ?」
「住民に聞き込みしてみようか?」
「サキュバスポリスさんが住民と交流あるので、そちらに聞くのが良いかもしれませんね!」
次々と未開拓地域の話が……! この調子なら、一箇所ぐらい新規ダンジョンが見つかるかも? まあまず私は、きぬさんに約束を取り付けて貰って風魔教官に会うところからかな。風魔教官と交流を深めれば無慈悲ダンジョンも解放されるみたいだしね。
「それじゃ、まずは情報をまとめて誰が何をするか決めちゃおう! いやあ~楽しいね~。トロイちゃんが絶望的にヤバいけど、どれだけ迫れるかが今から楽しみだ~!」
そうだった、トロイちゃん……。きっと向こうも武装強化とかしてるんだろうなあ、私を取り逃したから絶対行動してるはず……。軽率だったかなぁ? いや、でも遅かれ早かれ強化なり侵略なりの行動はしてたはず。皆と楽しく冒険しながら、トロイちゃんの攻略を目指して頑張っていこう……!





