477 エンカウント
さてと、地上からは何も見えないけど、メルティシア上空に恐らくまだ居るはずなんだよね。トロイの様子を探りに来ただけだから、今回は攻略とかそういうのはナシ。とりあえずまずはセット効果の変更から……はぁ~……作り替えたくなかったんだけど、三姉妹の絆と狂騒静謐英雄の誓いは他の装備と効果が被って装備してるだけ無駄な状態になっちゃったから、急遽新しい究極神器を作ったのよね……。
結局なんだけど、この専用装備コンテンツって何十個も装備を持つことになると思う。10点セットの効果を変えると干渉する、不都合になる効果を持ってる装備はその都度付け替えることになるし、これを作ったから完成ってことは絶対ない。そうじゃなかったら"専用装備プリセット"なんて項目あるはずないし。凄いんだよこれ、現在着用中の専用装備と設定してるセット効果を丸ごと呼び出して瞬時にお着替え出来るんだから。もうこんなの『状況に応じて装備変えてくださいね』って言ってるようなものだよ。
「リンネ、それ何してるの?」
「専用装備のセット効果を変更してるんです」
「せっ、え?」
「あ、究極装備を10個揃えると専用装備化して、その後10点セットでの効果が固定が2個とそれと別個に5個セット出来るんですけど、この5個がまた色々セット出来るせいで面倒で……」
「な、何があるの? 例えば」
「全部効果が抽象的な表現なんですけど、例えば変える気がない有能な効果は『我が視界を遮るものはなし』ですね。目隠しされても瞬きをしても状態異常にかかったとしても、目を物理的に潰されない限り常に視界が確保されます」
「後ろから、だ~れだってしても、ばれちゃう……?」
「後ろまでは見えないですから、でもそれをされても視界がゼロになることはないですね……」
「わあぇえ~……」
レーナちゃんの『わあぇえ~……』って言った時の絶望顔ちょっと好き。思わずスクショ撮っちゃうぐらい可愛い。本当にこの人、私より10歳ぐらい年上なんだよね……? リアちゃんを相手してるみたいで、思わず頭を撫で撫でしたくなっちゃうんだけど。これは運営にバグ報告したほうがいいのでは?
「他にも、四つもあるの?」
「そうですね、他にも四つあります。今回は『我、致命傷以外無傷なり』で掠りダメージ無効と、『運命のダイス、事象歪曲』で被ダメ確率無効と、『生命の源泉』で死亡時完全復活効果と、『暖かな抱擁』で完全な被クリティカル確率の減少を積みました」
「それ、どうやってリンネを倒せば良いの?」
「これでも死ぬときは意外とあっさり死ぬかも……」
「わあぇえ~……」
とりあえず生き残り重視で構成したけど、ここまでやっても死ぬ時はあっさり死ぬんだろうなあ~……。前回のトロイちゃんの攻撃から強化されたぐらいならまあ、海の王者の通称クソレーザーより強いぐらいだろうから避けきれると思うけど。レーザーの数が増えてたら怖いね。
「まずはどのぐらいまで近づいたら攻撃してくるか探りましょうか。よし、どん太! お空へ向かって出発!」
『わうーんっ!!』
「うわあ、本当に空中をふみふみして走ってる……。こわい……」
「レーナちゃんも飛んでる時に白銀のオーラが翼みたいで綺麗ですね」
「頑張ってデザインした、ふふ~ん」
やっぱり何と言っても超機系はデザインを自分で決められるのが強いね。自由自在に変えられるわけじゃなくて、決められたルールの中であれこれ四苦八苦しながら理想デザインに近づけなきゃいけないみたいだけど、それでも自分の好きな見た目で遊べるのはモチベーション高いよね。
「どのぐらいまで飛んだらトロイが見えるかなあ」
「多分、雲の上。2000メートルより、上?」
「うわーそんなに高いところにいるんだ、まだ200メートルぐらいかな?」
「高度計、あるよ。今250超えた」
「じゃあこのまま上まで行ってみましょうか」
2000メートルって言うと、ぎりぎり雲の中層域に達するぐらいかな? 地上からはカモフラージュされてるから目視で確認出来ないけど、近づいていけば見えてくるはずだから、まずはトロイが反応しないぐらいの距離から観察して、それからちょっかいを掛けてみようかな。
「リンネ、夏休みに入ったの?」
「あ、そうなんです。昨日で丁度終わりで」
「今度どこか、遊び行こ? ダメ?」
「えっ、全然大丈夫です! むしろお仕事忙しくないのかなって」
「うーん、最初の案で通っちゃったから、暫く暇? 一ヶ月ぐらい、予定ない」
「そんなにないんですか!?」
「ん、新規の案件がなければ、本当に何もない」
レーナさんが優秀なのはわかっているけど、そんなに何もない期間が続いて大丈夫なのかなってちょっと不安になっちゃう……。社会人ってそんなものなのかな? 今は昔と違って休みが多い企業のほうが優秀な企業って言われてるし、真弓の傘下の企業なんだろうし、そういうことなんだろうなあ~……。
「そういえば、レーナちゃんってその……えっと……」
「リアルの話? 大丈夫、言っても」
「あの……眼帯って、オシャレで……?」
「ううん、左目が見えない。昔ちょっと、大きい事故で」
「あ、そ、そうだったんですか。すみません、嫌なこと聞いちゃって……」
「リンネに話して嫌なことは何もない。暇な時にお部屋、行って良い? いっぱいお話したいな」
「わあ、勿論良いですよ! お菓子用意して待ってますね!!」
「その時に、ゆっくり左目の話、聞いて欲しい」
「は、はいっ!」
わあー……家に誰かが遊びに来るなんて、真弓以外だと初めてかも……? 近所のちっちゃい女の子と、自宅でお茶を……? うへへへ、言葉にするとなかなかにとんでもない破壊力だよ!?
『わう……? わうっ!?』
「どん太どうし」
「ん」
――ヒュンッ……。
「たあああ!?」
「ん゛!?」
『きゃううぅん!? (今の何!?)』
何か通り過ぎてった!? どん太が避けなかったら直撃コースだったよね!? 今のは一体なんだったの……ああ……!? 地上に直撃して、バカでかいクレーターになってるんですけど!? とんでもない破壊力だよ!!
「トロイから攻撃されてる!? まだこっちからは見えないのに!!」
「んっ! 見える、空間が歪んでる!」
『わうっ!! (大きいのが、飛んでるよ!!)』
ギリギリ目視で異常を確認できるか出来ないかぐらいの距離が、既にトロイの攻撃範囲に設定されてるの!? でもあんな超長距離の超威力の狙撃、そう何回も撃てるとは思えないし……。
『ガァウウ!! (飛んでくる! 右!!)』
「そっちは左ぃ!!」
「あわわわ……」
「回避、回避!! こうなったら何が何でも接近して、ログだけでも拾う!!」
何回も撃てるんですか、ああそうですか!! 一発当たったら木っ端微塵にされるレベルの謎狙撃を何回も何回も撃ってくるんじゃないよ、馬鹿なんじゃないの!? こうなったら戦闘ログが表示されるか、トロイを肉眼で確認出来るまでは何が何でも接近してログ拾ってやる!!
「どん太、右!! 跳ねろ! 伏せ!!」
『ワウゥッ!! (忙しいよう!!)』
「なん、で、避け、られ、る、のー……!!」
そう言いながらレーナちゃんも避けられてるじゃないですか、これなら接近ぐらいならなんとか…………!?
「緊急回避!! 主よ、我らを哀れみ給え!!」
『ガアアア!! (ああ、大変!)』
『【ミゼレーレ・ノービス】を発動、地獄の四姉妹が慈悲を与えます』
『【慈悲効果・速度上昇】どん太が【魔狼超特急】を発動、移動速度が絶大に上昇します』
「――――…………」
ごめんねレーナちゃん、これは自分達を守るので精一杯だわ。
『【空対空大型魔獣撃滅用ミサイル】が衝撃波で破壊されました』
『【大型殲滅レーザー砲】がプラズマ放電で相殺されました』
『【リニアジェット爆裂砲】が衝撃波で破壊されました』
『BLOCK!! 【75ミリバルカン砲】はどん太の防御を貫けませんでした』
ヤバい、前よりも格段に武装が強化されてる。しかもこれはトロイの攻撃じゃなくて、恐らくトロイが設置してる自動迎撃装置の攻撃。つまりトロイは今、完全にフリーの状態ってこと……!! そしてこの攻撃、間違いなく私達は…………誘導されている!!
『(どん太、レーザー砲の方に突っ込め!! 多少痛いけど踏ん張って!!)』
『ガ、ウゥウ!!』
『どん太が66Gダメージを受けました』
『機神装甲戦姫トロイ(Lv.1500)が【トロイブラスター】を発射、対象が存在しませんでした』
機神装甲戦姫、トロイ……レベル……1500!? はああああ!? 進化してるとか、そんなレベルじゃないじゃん!! でも誘導から逸れたおかげでトロイは攻撃を外したし、トロイの位置もわかった!! そこだ、顔ぐらい拝んでから帰らせて貰う!!
『(どん太、位置はわかったね!? トロイの顔を見たら帰るよ!! 勝てる相手じゃない!!)』
『ワゥウッ!!』
『【空対空大型魔獣撃滅用ミサイル】が衝撃波で破壊されました』
『【大型殲滅レーザー砲】がプラズマ放電で相殺されました』
『【リニアジェット爆裂砲】が衝撃波で破壊されました』
『【ソニックパルスキャノン】が発射されました』
『ガァアアアアアアアアーー!!』
『どん太が【破壊神の咆哮】を発動、相殺!』
居た、見える……あそこだ!! スクショ準備、チャンスは一度きり! よーく狙って……!!
『(撮った!! 帰……ッ!?)』
『ワアァアアウウウウーーン!? (さっきより大きい武器持って来たよおーー!?)』
『(い、急いで逃げろー!!)』
『機神装甲戦姫トロイ(Lv.1500)が【絶滅砲ラグナロック】を発射スタンバイ……』
絶対ヤバい、絶対ヤバい、絶対無理! 絶対無理!! 無理無理無理無理!! 無理!! 無理だって死ぬ!! クリティカル以外ノーダメとか関係ないって、当たったら死ぬ名前してるもん!!
『ガアアウウウ!! (絶対離さないでね!!)』
『(わかっ……!!)』
『どん太が究極スキル【破壊の落星】を発動、全てを破壊する流星となります!』
は、や……っ!? 自由落下速度の何倍のスピードで落ちてるのよ君……!? お願いだから地上に誰も居ないのをお祈りするしかないよ、居たらごめん! 本当にごめん……!! 振り切れ振り切れ!! 逃げ切れーー!!
◆ ◆ ◆
「…………対象ロスト。ラグナロック、キャンセル。脅威レベルをプラス90に修正、確認した存在で最も脅威と判定。神々に並ぶ存在と判断。暫定で【黒き神】と命名。天魔大戦の準備レベルを上方修正、更に強化する必要性を考慮。随伴していた存在の脅威度はプラス10で確定、現状は危険因子とならないと判断。以後、急激な成長をする可能性があると判断し、黒き神と同等になる可能性を想定」
『トロイの判断を支持』
『支持』
『支持』
『プラス99にすることを提案』
『想定される天の神、魔の神と同等と判断するということか?』
『プラス99を支持』
『プラス99案に支持を変更』
「プラス99に上昇修正。資源不足が考えられます。リスクレベルはやや高いものの、得られる収入がリスクレベルを遥かに超えているポイントを発見。制圧ポイントとして新たに提示」
『『『『『支持』』』』』
「目標、魔導帝国デリランド。移動開始」





