473 神々の争い
イベントが眠っちゃったから、もうこれは放置してうちの従者と親睦を深めようの会を開催しようと思います。現在深夜2時だけど、まだまだ興奮冷めやらぬって様子で皆起きてるからね。せっかくだから皆で話をしようかなって。そういうことで、急遽大樹に建てたマイホームでゆったり星空を眺めながらお菓子と紅茶を嗜みつつ、唐突な雑談会を開催中です。
「んー……」
『わう~?』
それで、全員を集めてみたんだけど……。ふと見てみれば、大体いつもこの並びになってるなーと思って。まず私の後ろか食べ物の近くにどん太、右隣に千代ちゃん、左隣にリアちゃんとエスちゃんとめーちゃん。ティアちゃん達がいつも違う位置。おにーちゃんが全員を見渡せる位置に居て、ヴァルさんとマリちゃんがその隣。従者同士でいつの間にかグループというか、そういうのが出来てるなーと。
「リアちゃんエスちゃんめーちゃんは新しいグループね」
「え?」
「なんでしょうか?」
「あ、えっ! お呼びですか!」
「いや、新しいグループが出来てるなーと思って」
「…………なんとなく?」
「落ち着きます」
「こ、ここが良いので……!」
新しいグループのロリっ子三人組は波長が合うのかな。まあ今後色々と更に仲良くなったり、時には喧嘩したりするかもしれないけど、良く見てみれば三人とも組み合わせ的にバランスが良いのよね。リアちゃんが魔術アタッカー、エスちゃんがタンク兼物理アタッカー、めーちゃんがサポーター。自分に足りないものを無意識に補おうとしてる? いや、考え過ぎかな。
「ティアちゃん達仲良し三人組は、いつもの三人って感じ」
「はい! デロナちゃんが言葉をいっぱい教えてくれるので楽しいです!」
「本当はゼオお姉ちゃんに教えるつもりなんですけど、ティアお姉ちゃんの方が覚えちゃうんです!」
「新しいを覚える、古代語忘れそうでいけません!」
「三人とも得物が長いのもお揃いだよね」
「あ! 本当ですね!」
「言われてみれば、デロナも長杖だし、ゼオお姉ちゃんは大鎌だし」
「ティアも長槍、皆長いです! デロナは身長が短いですけれど!」
「ゼオお姉ちゃんだってりんねーさまより小さいくせにーっ!」
「あ、ちょっと傷が付きました。ふふ、冗談です!」
「今はティアが一番大きいです~!」
「む~っ! ちょっとずるい~っ!」
ティアちゃん、ゼオちゃん、デロナちゃんのやり取りはいつまでも見ていられるよね。なんというか会話の内容も可愛いんだ……。あ、でも全員ステータス的な意味で体力が付いたことだし、もしかしてお昼寝とかはしなくなっちゃうのかな。
「仲良く揃ってお昼寝は、もうしないの?」
「ん~。寝ると健康に良いです、スレトイスが減ります!」
「スートーレースー!!」
「ストレスさんをやっつけるのに、ティアもお昼寝をします~! あ、でも今は夜だからお夜寝ですか?」
「多分それは普通の睡眠じゃないかな……。いや、元吸血姫で今も吸血姫の名残が残ってると考えるとティアちゃんの適正は夜、お昼寝するほうが普通の睡眠なのかも……?」
「頑張るじゃない時、眠い時は寝ます!」
「眠い時に寝るのは大事なことだね……。あ、なんか急に疲れがどっと出てきた気がする」
『リンネはこちらの肉体は強力でも、こちらの肉体を操る異界の体は強くなっていないのだろう? 知らず知らず、無意識に向こう側も力が入ったりして疲れているんじゃないか?』
うわ、おにーちゃんが普通に喋ってきた。最近ちゃんと伝えたいことだけは口にするようになったよね、おにーちゃん……。あれ、もしかして私が原因? 何か言ったような気がするんだけど、勢い任せだったから詳しく覚えてないんだよね……ご、ごめんね、おにーちゃん。
「そうかな、向こうでも鍛えてるんだけど」
『リンネ殿のあちらでの話は聞いたことがありませんな』
「確かに、ほとんど聞いたことがないな。ペルセウス嬢と非常に親密なのはなんとなく察しているが」
『(*´ω`*)』
「特に面白い話はない……あ、そうだ。明日から長期間のお休みに入って、前より一緒に居られる時間が増えるかも?」
『今日のようにゆっくり落ち着いて話が出来る場が増えると、我々も嬉しい限りだ』
『(*´∀`*)』
「リンネは忙しすぎる。急ぐ理由はわかるが、やり過ぎは及ばざるが如しという言葉があるように、余裕も増やさねば詰め込みすぎて動けなくなってしまうぞ」
「うーん……。確かにそうかも。反省します……」
『リンネ殿があっさり認めるとは……』
『明日は槍が降るな! 間違いない!』
「こういう時ばかり意気揚々と喋りだすな、フリオニール殿は……」
『(*´∀`*)!』
「おにーちゃんめ……」
おにーちゃん、ヴァルさん、マリちゃんの三人組は何ていうか……大人組? みたいな感じ! 基本は落ち着いてるけど、時にやんちゃなことをし始めるから目が離せないのよね……。特にマリちゃんがね、いかにも完璧主義の鋼の女って雰囲気を醸し出してるのに、実際は私生活壊滅してる部分があるから怖いのよ。
「…………」
袖をくいくいって引っ張らないの、千代ちゃん。大丈夫、忘れてないから。いつ話を切り出そうかなって悩んでるんでしょ? 意外と感情を溜め込むタイプだから、ちゃんと見ていてあげないと千代ちゃんはお耳がペタン……ってなるからね。ペタンってなった千代ちゃんは復活までかかるよ、もの凄く時間が掛かる。
「千代ちゃん、そういえばネイルして貰ってたよね、エリスさんに」
「え、ええ、その……」
「見せて見せてっ」
「あっ……は、はい……」
まずは千代ちゃんの変わったところからチェックしてあげようね。千代ちゃんは実はこっそり、エリスさんにネイルをして貰ってたんだよね~。黒に金色の装飾で、抜刀の邪魔にならない程度に色々と。
ん~……。千代ちゃんのお手々をこんなにじっくり観察したことなかったからわからなかったけど、やっぱり幼少期から刀を握り続けてたから、がっしりとした手をしてるね。文字通り血の滲むような努力をして来た、千代ちゃんのお手々かぁ~……。普通の女の子みたいなお手々じゃない、今までも私には手を見られないように、触られないようにって避けてた時もあったぐらいコンプレックスだったお手々……。それでも私に手を見て欲しくてネイルをしてくれたんだ、本当こういうところが可愛いよね、乙女を全開に出してくるのよ千代ちゃんは。
「綺麗だね、千代ちゃんのお手々。好きだよ」
「あっ……あり、がとう、御座いまする……」
『わうっ!』
「ねえどん太、今のはお手じゃないのよ。どうしてこんな時ばっかりドヤ顔でお手をしちゃうのかな、このお馬鹿わんこは!!」
『わうぅ~!?』
「ふ、ふふっ……! どん太殿は、可愛いですね」
「まあそこがどん太の可愛いところよね。今日は特別に赦してあげよう」
『わうっ!!』
全く、この場面でお手をしてくるとは……。どん太、恐るべしアイドルパワー。どん太もまさか、ここまで強くなるなんて思ってなかった。これからまだまだ昇格して、誰も追いつけないスピードと誰にも負けないパワーを身に着けていこうね。
「はい。私もお手をしました。どうですか、リンネさん」
「…………」
「…………!?」
『わうっ!?』
「え~……。これは、とてもスラリとした長い指に、雪のように白いお肌に、もう手のモデルとかやったらどうですかってぐらいお綺麗なお手々ですね……。ネイルは赤に染めて挑戦的、白い小さな花びらが描かれていて少し儚げな印象を受けますね」
「好きではありませんか?」
「千代ちゃんのほうが好きです。このお手々はちょっと、いたずらっ子過ぎます」
「では、いたずらさせて頂いても?」
「もうしてるでしょっ!!」
「おやおや、確かにそうですねえ……もういたずらをしているところでした」
はい、突然やって来てはいたずらばっかりする満月の女王様、ご機嫌麗しゅう……。そうですね、今宵は満月ですもんね。最強パワーの状態、感知なんか出来るはずないですよね。はいはい。
「邪神様がバビロン様から分離なさいました。リンネさん、ですね?」
「ええ、そうです。余計なことをしましたか?」
「いいえ、むしろ感謝を。とても強い御方ですが、バビロン様には猛毒となる御方でしたから」
「…………ヘルミナ様のこと、好きで」
「嫌いです。とても、大嫌い。名前を口に出したくないほどに」
「いっ……」
「カーミラ殿、お力をお鎮めに」
「あっ……。申し訳ありません、リンネさん。つい、感情が……」
これまた意外や意外……。カーミラさんがヘルミナ様をここまで嫌っているなんて……。前世の記憶があるとしたら好いていてもおかしくない、むしろまた恋に落ちるかもって思ってたのに……。
「…………バビロン様から、聞きました」
「カーミラさんは、それ自体を否定されて、どう感じましたか……?」
「ええ、否定されて逆に……私がリンネさんに抱く感情は本物なのだと確信しました。否定された時に湧き上がった怒り、憎しみ、昔と今の私の心を踏みにじったことに強い感情の高ぶりを」
「え?」
「え?」
いやいや、ちょっと待って? カーミラさんのその熱っぽい視線って、まさかいや、そういうことなの? 嘘でしょ、千代ちゃんが目の前に居るのにするの!? そういうことするの!?
「姫千代さん」
「…………はい」
「リンネさんを、私にもください。愛させてください。私もリンネさんの隣に居る権利が欲しいのです」
「此方が何を言うかは……もう、おわかりでしょう?」
「その覚悟を示せと、言うのならっ!! 今宵は満月の夜、私の覚悟を見せ」
「あ!! ストップ、ストップストップ!! ここはある大魔術師の安息の場所、ここでの戦闘は駄目です! 駄目よ、駄目ーーっ!! 駄目ったら、駄目ーーっ!!」
「ぴぴぴぴーーっ! 怖いオーラを感じました、エルドリード警察到着でーすっ! えっへへ~!」
おお、危ない危ない……。千代ちゃんとカーミラさんが今すぐここで戦争でも引き起こすかと思ったよ……。本当に危なかった、エルドリード警察は頼りになるなあ……。
「カーミラ様、話は聞きました! でも、ティアが先にリンネ様のお嫁さんになりますっ! ティアが先です!」
「え……? えっ?」
ん゛っ゛!?
「だって、ティアはリンネ様と約束したんですよっ! だから次はティアが結婚するんですっ!!」
『(*´∀`*)!』
「あ、した。してました」
「え……?」
「待て、我もリンネとはもう深く心を通わせた、生涯のパートナーとして相応しいと言っても過言ではない存在だ。我も結婚を考えている」
「あ、じゃあ私もすると思います!」
「ゼオお姉ちゃん、それはちょっとあんまりだと思う!!」
「リンネ様の、第一側室争奪戦ですね……」
『逆に聞きたいのだが、姫千代殿以外とはまだ結婚していなかったのか……?』
「え、リ、リンネ様、ごご、ご結婚なさっていたのです、か!? それも、同性……同性、ですよね!? わ、ひゃ、ほわ~……!!」
なんでついでとばかりにマリちゃんとゼオちゃんも立候補してくるの!? え、嘘でしょ!?
「一番お姉ちゃんと付き合いが長い私が最初~!! わ~た~し~で~す~っ!!」
『くぅ~ん…… (僕が一番長いのに……)』
「どんどん、うるさい!」
『きゃうぅん……』
「ティアが先です! 約束ですっ!!」
「わ、私だって、この想いは本物です。譲れません」
「いや、とりあえず我が先だろう。今後のことを考えて、我が二番であるべきだと思う」
「私も楽しそうなので混ざります! 二番は絶対貰います!」
どうして……。どうして、ただの雑談会のはずだったのに、なんでこんなことになっているの……?
『正妻の狐さんを説得出来た人が二番になるべきだろう。いや、俺は約束は約束だからティアラちゃんが』
「「「「ちょっと黙ってて!!」」」」
『(´;x;`)』
お、おにーちゃん……!!
「決着は?」
「生死決!!」
「ティアも手加減しませんよ!!」
「だから、ここでやらないでって!!」
「場所は?」
「黄金郷のちょっと離れたところです!!」
「ティアが有利な場所、ずるい思います!」
「もう、我慢出来ません!!」
『カーミラが【アースブレイカー】を発動スタンバイ』
『姫千代が【神雷絶脚】を発動、カーミラに68Gダメージを与え、大きく吹き飛ばしました』
ああ、ああああ……。北の森に、カーミラさんがふっ飛ばされた跡が、木が薙ぎ倒されている……!!
「距離を離されたら術使われ放題じゃないですか~!! 何してるんですか~!!」
「追え追え~っ!!」
「逃しませぬ!!」
「逃したのは姫千代殿のせいでは?」
「カーミラ様、待て待て~!! ティアが先なんです~っ!!」
どうしよ、これ。どうすれば良い? ここでもう眠いからってログアウトしたら、皆凄い反応しそうだなぁ……。あ~あ、立候補した子、全員行っちゃったよ……。
「ねえデロナちゃん、ここで争わないようにって私……言ったよね?」
「りんねーさま、言ったよね~!」
「もう全員言う事聞かないから、デロナちゃんと先に結婚するってことで、どう?」
「良いのっ!? でも、ティアお姉ちゃんがぷく~って膨れそうだから、デロナは後が良いなぁ~!」
「デロナちゃんは、いい子だねぇ……。うんうん、ヴァルさんもそう思うでしょ? ね?」
『え、ああ、ああ!? ああ……そ、そうだな……うむ……』
「エスちゃんとめーちゃんもほら、おいで。ちょっと精神が疲労を訴えてるから、私の癒やしになって……」
「え、えっ。じゃあ、し、失礼しま~す……」
「はい、失礼し…………鎧は、今すぐ脱いだほうがよろしいでしょうか! エスは今日ここで、皆様に見守られながら初夜を迎えるのでしょうか!」
違う、違う、そうじゃない……。そうじゃないんだよ。どうして、どうして……。どうしてこうなっちゃったの……!! カーミラさんが全部悪いんでしょうが!!
『マリアンヌが死亡しました。専用の死体安置所へ強制納棺されました』
マリちゃん南無。相手が、悪すぎるもん……。うん……。





