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466 ぶっちぎりでイカれ過ぎた女・6

 私には、もう何も、わからない。


『ほら、御覧なさい。敗戦濃厚、主も勝てる見込みが薄く我が身も危険となった途端、無様にも逃げ出そうとしているセリョーガの姿を』

「ち、違う、まだ、セリョーガは奥の手を……」

「儂を、儂を守れぇ!! こんなところで、死んで、たまるかぁああ!!」

『ほら、御覧なさい。悪魔憎しと叫びながら、悪魔の力に魂を売ったグランディスの姿を。殺しさえ楽しめれば良いから自分は何をしても良いだなんて、悪魔よりも悍ましいとは思いませんか?』

「やめて、やめて……!!」


 悪魔の冷たい手が肩に触れる。抵抗する気も起きない。だって、だって、勝てるはずがない。一生懸命戦って、自慢の配下の兵をぶつけても、何をしてもこの悪魔に通用しない。降り立った場所から一歩も動かすことが出来なかった。オリジナルの暗黒騎士もレイジという剣士の相手でいっぱいいっぱい、セリョーガは……セリョーガは、違う、まだ戦ってくれる。私達と一緒に、メルと一緒に最後まで戦うって……。


『エスちゃ~ん。飽きたからこっち来ちゃいましたっ!』

『ロリコンはどうしましたか?』

『穴あきチーズみたいになっちゃいました。でも死体を全部消すとお姉ちゃんが後で使えないので、頭と心臓だけ残してありますっ! ほらっ!』

「ひっ……!?」

『それはそれは、リンネ様もさぞお喜びになられるでしょう。ええ、とても!』


 アグニが、こんなに簡単に、あっさりと、し、死んだ……? それに今、この猫の子はどこから現れたの……? この戦場はメギド様が時空系魔術を、自軍以外は発動出来ないように制限しているはず。なのに今、間違いなく時空魔術で現れた。そうとしか、思えない……!


それ(・・)はまだ解体(ばら)さないんですか?』

『あまりにも哀れなので、現実を教えているところです』


 殺される……。この猫の子は、冷たい悪魔よりももっと邪悪で恐ろしい……! 少しでも気分が変われば、飽きられてしまったら簡単に、あっさりと殺される……!! 


『貴方が本当にこの世を憎んで、メギドという存在を信仰して、そのためには如何なる犠牲も惜しまない真の信仰者であれば、今すぐ剣を手に取りエス達に反撃すべきです。だってそうでしょう? 主の敵が目の前にいるのですから、戦わなければ』

「た、たか、う……たた、かわ、なきゃ……」

『でも貴方は戦えない。立っているだけで精一杯、本当は今すぐここで(うずくま)って、目を、耳を、心を塞いで自分の世界に閉じこもりたい』

「やめて!! メルの心に入り込んで来ないで!!」


 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ、メルはもう弱くない……! メギド様はメル達に居場所をくれたんだ、もう弱くない、メルの居場所はメギド様の隣で……!! 悪魔の声を、聞いちゃダメ……!!


『(貴方の居場所なんてどこにもない。ほら、御覧なさい。メギドの隣に立っているのは誰? 貴方じゃない、オルヴィスにそっくりな女。貴方の居場所はどこにもない。貴方のためにメギドは戦わない。貴方の窮地に、メギドは助けに来ない)』


 やめて、やめて、やめて、やめて、いたい、いたい、いたい、いたい。こころに、はいって、こないで。


『(誰のために戦うの? メギドの為に戦うの? メギドは貴方を見捨て、知らない女を守る為に戦っているのに? それとも変わり果てたお友達の為に戦うの? 暗黒騎士の力を植え付けられ、物言わぬ戦闘人形と化したお友達は、果たしてあれはまだ貴方の守りたかったお友達なの? 本当はもう、お友達の魂は…………朽ち果て消えてしまっているのに)』


 やめて、いたい、くるしい、こわい、たすけて、たすけて……。


『(誰も助けに来ない。お友達は貴方をもう覚えていない。戦う理由が貴方には存在しない。残っているのは憎悪だけ? 世界を憎む理由は何? 貴方が世界を恨む理由は誰に植え付けられたものなの? 自分の憎悪じゃない、他人の憎悪しか貴方には残っていない。ほら、御覧なさい。貴方に世界を恨めと憎悪を植え付けた男は、世界憎しと戦っていない。貴方が知らない女の為に、自分のために戦っている)』


 ころして、ころして、もういや、なにもかも、きえて、くるしい、たすけて……。


『(私を見なさい)』


 …………きれい、こわい、つよい、しあわせそう。


『(リンネ様は私に全てを与えてくださった。新しい体、新しい生き方、新しい世界、新しい考え方、生きる理由、罪も、罰も、怒りも、赦しも、何もかも与えてくださった。私には大いなる使命があり、ありとあらゆる戦うべき理由がある。だから私は前よりも何倍も、何十倍も今、輝いている。でも、可哀想な貴方には、もう何も残っていない)』


 もう、メルには、なにも、のこって、いない……。


『(そんな可哀想なメルメイヤに、リンネ様は特別に三つの選択を与えてくださるそうです)』


 みっつの、せんたく…………。


『(一つ目は、今すぐここで全てを諦め消滅するという選択。貴方には何も残らず、貴方を覚えている人は誰一人居なくなる。メルメイヤという存在は今日この瞬間、世界から抹消される。貴方は怒りも苦しみも、喜びも楽しみも何もない場所で永遠を過ごす。もう誰からも何も与えられず、誰かに傷つけられることもない)』


 このまま、きえる……? いや、いや、消えたくない……。いっぱいいっぱい、今まで沢山我慢してきたのに、何も出来ないまま消えたくない……!


『(二つ目は、全ての力を失い、ただの一人の少女として生まれ変わるという選択。慈悲深きリンネ様と魔神様は貴方の全てを赦し、新たな人生をやり直す手助けをしてくださることでしょう)』


 やり直せる……? メルの、今までの、全部を、赦してくださるの……? もし、赦してくださるのなら……。


『(最後に、三つ目は――――)』


 三つ目の、選択は…………。ああ、そうしよう……。きっと、それが良い。メルにはきっと、それが相応しいことなんだ…………。




◆ ◆ ◆




「きひっ! きーっひっひっひ!! これだけの兵を相手に、流石に手も足も出んじゃろうて!」


 儂はこんなところで、こんなところで消えて良い存在ではない。天才だ、偉大なる大天才だ、儂は世界の宝!! メギドというスポンサーが役に立たなくなったのであれば、スポンサーを変更すればいいだけのこと!! こんなこともあろうかと、古の超機メガリスアーマーを極秘に修復していたのは正解じゃった。まだ完全な姿とは言えぬが、小奴らを蹴散らしここから逃亡する程度なら造作もないこと…………むっ?


『ピピッ……。アーマロイド・ヴェルーゼ、損傷度が30パーセントを超過……』

『ピピッ……。ヴェルーゼ隊、壊滅度40パーセントを超過……』

「な、なんじゃ、急に……」


 急に、捨て駒達が押され始めて……? まさか、敵の援軍か!? ええい、まだ起動には時間が掛かるというに!! しかし、乗り込みさえすれば儂の安全は保証されたも同然。焦ることはない、起動前にここがバレて破壊さえされなければ…………。


『ピピッ……。アーマロイド・ヴェルーゼ、損傷度が35パーセントを超過……』

『ピピッ……。ヴェルーゼ隊、壊滅度60パーセントを超過……』

『ピピッ……。アーマロイド・ヴヴスラ、損傷度が15パーセントを超過……』

『ピピッ……。ヴヴスラ隊、壊滅度20パーセントを超過……』


 ありえん、早すぎる。どれだけ強力な援軍が来たというのじゃ……!? まだヴェルーゼ隊が残っておるのに、後方に待機しているヴヴスラ隊が被害を受けているということは、乱戦状態……!? 奴らをどれだけ多く見積もっても、これだけの損害を与えられる程の人数は…………!


「外の映像を出せ、早く!」

『ピピッ……。警告、メガリスアーマーの起動が遅れる可能性があります……』

「構わん、どうせ残り1分じゃ!」

『ピピッ……。ヴヴスラの情報とリンクします……』


 一体どれだけの援軍が…………あ…………?


『――破壊だ!! 破壊だ!! 破壊しろ!! あは、あははは!! あははははははは!! 戦場から逃げ出す敗北主義者を殺せ!! メルを捨てて戦場から逃げた罪だ、罰を受けろセリョーガ!! あは、あははは!! あっはははははは!!』

『ピピッ……。メルメイヤが、裏切った模様です……』

『メルを裏切ったメギドもだ!! グランディスも!! メルを使い捨てた!! 遊び終わったオモチャのように!! もう要らないゴミのように、メルを切り捨てた奴らを皆殺しにしろ!! エス様と、メルを大事にしてくれると約束したリンネ様の敵を、皆殺しにしろぉぉおおおお!!』


 メル、メイヤ……? あの、小心者で、自己主張の少ない、あの小娘が……なぜ……?


『ピピッ……。警告、メルメイヤが急速接近中……。到着予想時間、14秒』

「メガリスアーマーの起動を、急げ!!」

『ピピッ……。全機能を回せば間に合います』

「全て回せ!!」

『ピピッ……。全機能を――――』


 ――――ガァンッッ!!


『セリョーガァアアアアアアアア!!』

「起動しろ、起動しろ、早く、早く……!!」

『ピピッ……。メガリスアーマー・プロト、起動……』


 今は敵が誰かなど、もうどうでもいい!! 逃げる、儂はここから、生きて脱出する!! こんなことなら、メギドに多少魔力は劣るとも若い体を貰っておけば良かった! くそ、くそっ! おのれ小娘、儂を邪魔するのであれば、例えお主であろうとも容赦せんわ!!


『ほう、ちょっと不格好で悪趣味な外装だが、ちゃんと動くメガリスアーマーか。欲しいな』

『え~壊しちゃ駄目ですか~?』

『なるべくなら切り落とす方向で。打撃や熱などで変形させるのはやめてくれ、修復に時間がかかる』

『なんやなんや、敵の嬢ちゃんに騙されとるんかと思ったら、ほんまにあるやんなあ! 暗黒騎士の次はメガリスアーマーかいな、骨が折れるわ~』

『ほら、メルは役に立ったでしょう? 皆で褒めてください。メルはいい子ですね、よく出来ました』

『あ、あ、エス様、エス様、あ、あっ……!』


 くそ、洗脳かっ! だがメルメイヤにも有効なのであれば、次の研究は洗脳も良いかもしれんなぁ~……。さて、メガリスアーマーを甘く見ておる雑魚共に!! 古の超機の素晴らしさを教えてやらんとなぁあ!! メガリスアーマー、発進じゃあ!!


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本作をご覧頂き誠にありがとうございます
 宜しくお願いします!
ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました ~裏イベントを最速で引き当てた結果、世界が終焉を迎えるそうです~Amazon版
アース・スターノベル様より出版させて頂いております!
― 新着の感想 ―
[良い点] これでメガリスアーマー修復できるようになりそう。楽しみ
[良い点] まぁそりゃ酷い環境化におったのに、優しくされて優遇されたらコロッと傾いちゃうよね〜 当たり前なんだよなぁ〜
[一言] 直接脳内にファミ◯キください戦法が こんなにおそろしいとは…w
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