459 地獄道、決起
「……なあ、あいつらヤバくない?」
「チート利用者だろ? 威張り腐っててうっぜーマジで」
「お前本気で言ってる? チート使ったらどんだけの爆速でBANされて警察来るか知ってるか?」
「未だにチートチート言ってる奴は脳みそなさ過ぎるバカですぞ」
「どうやって強くなったか考えない奴マジで脳みそ終わってんな」
「は? 何だお前らやんのかクソ」
「お前さっき総合掲示板でレスバ負けた奴だろ。通報しましたからな?」
『静まれ!! 戦の邪魔になるのであれば、この場で斬る!!』
『ナンナイアの救援の為に駆けつけたことを忘れている者が多すぎるであります! ノーチェ、士気を下げる者は取り押さえてナンナイアの牢にぶち込んでも構わないと言われているであります!!』
『おーいお前ら!! 聞いたかぁ~~?? 士気を乱す奴は敵の送り込んだ工作員として牢屋にぶち込んでも良いってよぉ!! わかったかぁ!!』
お前達は底で吠えていろ。私達の世界に、その声は届きはしない。
「遅れました」
「来た来た、ほら軍団長さん! この子が噂のリンネちゃんだよ~? リンネちゃんヤッホ~!」
『こ、この御方が……!』
「よう!」
「来たんか、ペルちゃんの隣空いとるで!」
「リンネさ~~ん! ほらここ、ここですわ~っ!!」
「あっはは……。ペルちゃん元気ね~……じゃあ、お邪魔します」
「リンネちゃんが邪魔だったら、エリスちゃん達は粗大ゴミか何かだよ~」
「邪魔やないし、ワイらはゴミとちゃうで。逆転して上の上に返り咲いたトッププレイヤーや!」
「それ、ヴァルフリートさんかエスちゃんに一回も勝ててないのに言う?」
「あ゛!? 今心の奥が痛うなったわ……」
『条件が異なればわからない。真正面から堂々の一対一で勝てないというだけだ、絶対の差ではない』
ああ、私の世界は間違いなくこっちだ。それに、私が想像していたよりも……更に上の世界になってた。行けても数回勝てるかどうかかな、最短転生数回で650超えるかな? なんて思ってたのが失礼だったね。
「ちょっと単刀直入に、ARCとAARCは今いくつですか?」
「え、あ~……」
「ステータス聞くんは~……」
「私はARC1350です。AARCは1250、メギドはAARCが推定1300あります」
「1300!?」
「アカン、まだ世界が上やった!!」
「わたくし、ARC1290ですわ! AARCも同じですの!」
「わ、わっちは、ARC1310! AARCは1200……」
「ユキノも1300ありますね~。AARCは……1220です~」
「最上位ネームドに通用しそうなメンバーは、うちの従者を合わせて13人……ですかね」
「そっか~……。僕はARCが950ちょい、1000がカンストかと思ってた~……」
やっぱり、ドレイク装備一式ではアーケインが1000超えてなかったみたい。それでも1000近くなら、メルメイヤの精鋭には対抗出来るかな……。メルメイヤが1100ちょっとだから、う~ん950だと攻撃力75%減衰はきつそう。メルメイヤより上は避けて貰おう。
「今日も動かないなら、今日中にもっと強化したほうが良いかな!?」
「いえ、絶対に今日動きます。赤い満月は魔の力が増大する夜、私達も恩恵を受けますが向こうは更に恩恵を受ける夜。この好機を逃すはずがありません」
『この日を待っていたのか……!?』
「なーるほど、好機を待っとるっちゅうのは当たってたんやな……」
「――――あ。遅れた、リンネにも負けた。リンネ~座るところない~お膝の上~」
「レーナちゃん、はいどうぞ~」
「ん、いい位置」
「……!?」
「ペ、ペルちゃん……。こ、こういうところで、負けてるから、ダメなんだって……」
「…………!?」
レーナちゃんがいないと思ったら私より遅れてたのね。装備の調整に時間掛かったのかな? 私達みたいに頻繁に装備変更出来るわけじゃないから、大変だよね……。超機系装備には基本的にはセット効果がない代わりに、後付で組み合わせて疑似セット効果を付けられるのが強みよね。今回も飛行系とかの効果を付けたのかな。
「はいこれ。テスト飛行がてら、リンネに教えて貰った奴らの顔、撮ってきた」
「え、行ってきたんですか!? よく帰れましたね……」
「ステルス飛行特化で組んだ。即帰ったから、セーフ」
『此奴達が、メギドと……』
「これ、どっちがどっちや?」
「この老人のほうがメギドじゃねえか?」
「あ、その渋いおじさんのほうがメギドです。赤髪がアグニ、金髪はグランディス、桃髪はメルメイヤ、お爺さんがセリョーガ、そして私がついでに危険だと睨んでいるのが、その暗黒騎士風の奴です。名前はわかりません」
「要注意は6人って言いたいところだけど、僕達はこの内相手に出来そうなのって……」
「メルメイヤ、セリョーガの両名です。メルメイヤでもAARCが1100、精鋭も1000を超えてます。セリョーガも1000あり、配下はアンデッドと機械の組み合わさったハイブリッドアンデッドです」
『前にこのような者達は見たことがない……』
「恐らく、再召喚や再編成に時間がかかったのかと思います」
「それがこの夜を待ったことで、揃ったっちゅうわけやな……」
だから先に攻撃を仕掛けていたら勝ててたかって言うと、それは難しかったと思う。私と私の従者の装備とかもそうだし、急激に上昇したステータスに体を慣らす時間も欲しかったし、今日まで待つのは必須の時間だった。
私はシステムによって守られているから体の方は大丈夫だけど、どん太なんて露骨に変化し過ぎて戸惑っていたからね。まさかおねだりの為にヘソ天して尻尾をブンブン振っただけで、地面が抉れてるとは思うまいよ。千代ちゃんも食べたものを燃焼させようと尻尾を出してメラっとしたら、燃焼しすぎて餓死寸前まで行ったからね。もう食べるななんて絶対言わないよ。
一番ヤバかったのは……リアちゃんだね。どん太と一緒におやつが食べたくて、スイーツを売ってる店の店員さんに『ありがとう』って笑顔を向けたら、店員さんが魂が抜けたような顔になってリアちゃんの虜になっちゃって……。リアちゃんの言葉には強い魔力が籠もってて、耐性がない人は一撃で魅了状態に陥っちゃう。強制ロリコン製造機と化してしまったのよね……。ここ数日はお喋りぐらいちゃんと出来るようにってマナコントロールに必死で、ちょっと可哀想だった。
ゼオちゃんは『いただきま~す!』の一言で目の前のテーブルと食べ物が消し飛んだ。オーラが強すぎたのね。デロナちゃんとエスちゃんはなんというか、言い表しにくい色気というか……。まだギリギリ被害が出てない、恐らく、多分、きっと。
おにーちゃんとマリちゃん? なんともない。さすがおにーちゃんとマリちゃんね。強いて言えば弱いやつが近寄ると恐怖とか麻痺とか色々発生するぐらい?
――――ああ、忘れてた……。私が一番ヤバいんだった……。ちょっと殺気を出すと、レベルが離れてる相手が即死するのよね。このオーラを出した状態でうみのどーくつとか散歩すると、近寄っただけで全員心停止して死ぬよ。ふとした拍子にこのヤバいオーラがオンになるから、オフにするように心穏やかに過ごすことを心がけてます……。
「で、具体的に……どう防衛する?」
『相手の勢力が前回と比較にならない程であれば、かなり厳しい戦いを強いられることになるでしょう……』
「え?」
「え、なんで驚くのリンネちゃん……?」
え、防衛? 相手の力は尋常じゃないってわかりきってるし、それはやっちゃダメだと思うんですけど。
「防衛しません。逆にこちらから攻め込みます。ナンナイアに被害を出さないように派遣されたのが私達ですし、ここで応戦するのは最終手段。最初から最終手段を取るのは愚策ですし、とにかくこちらから出ます。捕まってる人達はとりあえず巻き添え食って貰って死んで貰いましょう」
『ひ、人質ごと、ですか!?』
「ほら言った、リンネはぎゃくさつのプロ」
「ん? 聞いた話ではナンナイア側に捕まってる人は居ないんですよね? プレイヤーだけなら死ねばリスタート出来るんですし、そもそも命令無視して突っ込んだのは自己責任。レーナちゃんみたいにガチガチに対策組んで戻れる実力もなしに行ったなら、巻き添え食らって死ぬのは仕方ないですよね。むしろ殺せば救助できるって考えで行きましょう」
『しょ、正気ですか……!?』
「正気ですが? え、それともこのナンナイアを、戦争に関係ない非戦闘員の居るこの場所を、命令違反を犯したお馬鹿な増援に配慮して戦場にしますか?」
『…………た、確かに、それは、そうですが』
「大義を見失わないことです。我々が救うべきはナンナイア王国、我々ではないです。これ以上無辜の民の犠牲を出してはなりません!」
プレイヤーは死んでも大丈夫とか、普通のNPCに言ってもすぐには理解できないよね。軍団長さんからすれば非道な決断なんだろうけど、死んで会えなくなるわけじゃないし。最悪現地住民が人質になってたら、バビロン様なりデロナちゃんに土下座して生き返らせて貰おうの精神よ。
「あ、そうだ。レーナちゃんARCとAARCいくつですか?」
「ARCは1150。AARCは1100~」
「なんでそんな高いねん!」
「昼間ずっと海の王者ソロやってた」
「あのミサイルとビームの雨どうやって対処したの!?」
「ん、気合避け。リンネも気合いで避けたって言ってた」
「あのミサイルとビームと銃弾の雨は、頑張れば気合いで避けられますからね」
「は? え? あれを、気合いで……?」
「エリスちゃん頭痛くなってきました~」
「気合いで避けれるっちゅうんやから、気合いで避けれるんやろなあ……」
「今度気合い避け試そうよ、意外とソロの方が狙われる人が絞られるから避けられるのかもよ?」
「あ、それはありそうやな!」
「え、何この会話、僕怖いんでちょっと退席して良いですか?」
「座ってろもってぃ」
「ギルマス、今ちょっと心と体が疲れてるんでジッとしててください……」
「どうして、僕頑張って800越えたのにこの扱いは、なんで……」
「諦めろ、ナスがなる! デース!!」
「為せば成る、やなぁ……」
きぬさんともってぃさん……と、その従者ちゃんも800越えたんだ。あふぅんウニさんは、もってぃさんの頭がちょっとその、アレだから一緒に出席して来てくれてるのかな。きっとそう、多分そう。あふぅんウニさんは名前こそ知的じゃない感じがするけど、実際はもってぃさんの100倍ぐらい頭良い人だからね。安定して超機の制作フローチャートを研究してて、そのチャートとかもレポートも公開されてるけど、マリちゃんも『非常に参考になる』って太鼓判押してるぐらいだしね。居てくれて安心~。
「おっと、無慈悲モードの攻略アレコレはまたにしようよ。今は誰がどう出るか、敵の勢力にどうぶつけるかを話し合わないとね」
「敵の勢力は非常に振れ幅が大きいと言わざるを得ません。平均はレベル500前後ですが、メギドはレベル990、直近の配下も最低が920とかなりの高水準。それに赤い満月の効果で強化されているはずです。それに対して構成されている軍団はレベル700から200のアンデッドとブレが激しいようです。あ、軍団のほうは魔神兵の双子の姉妹、イルちゃんとエルちゃんに"レベルスキャナー"で集めて貰った情報です」
「あの装備、NPCでも使えるんだ!」
「無慈悲ドゲル何回かやると出るやつだ~」
「ネームドの方は上位クラスの凝視スキルがあっても、運が悪いと誤った情報が出ますね。多分レベルスキャナーとか、クレアボヤンスを私とかに使っても全員弾くか誤情報出ますよ」
「使って良い?」
「良いですよ~レーナちゃん」
「…………うわ、レベル1って出た。うそつき」
「まあこういうことですね」
「はあ~……。レベル偽装とか、そういうのもあるんだあ~……」
「ちなみにメギド達のはレベル偽装を貫通出来る御方の目で見たので間違いないです」
「逆に嘘であって欲しい数値」
やっぱり、皆と一緒にお話しながらプレイ出来るの最高だなあ~……。皆が付いてきてくれて、本当に良かった。それも私の想像を遥かに超えるところまで来てくれるなんて、嬉しくて泣いちゃいそう……。最悪私と従者だけでなんとかする大苦戦になると思ったけど、メルメイヤとセリョーガ、あわよくばグランディスと暗黒騎士の相手をしなくてもいいなら、かなりの余裕が生まれそう。バビロン様達はヘルミナ様の件があるから直接は手を出せないけれど、なんとかなるかもしれない……。
「それじゃあ、メンバー編成をしましょう。作戦は強襲、敵陣のど真ん中をぶち破っての突撃! 混乱している配下の相手は、皆さんに任せる……。どうでしょう?」
「敵陣に突っ込まないと、いつ僕達の番になるかわからないしね~。色々と用意もされちゃうだろうし? 今度は絶対に守らなきゃいけない拠点もある。強襲でいいと思うね~」
「俺もその作戦で構わねえ。むしろそれがいい」
「せやな、暴れたろ!」
――――作戦は強襲、敵陣のど真ん中を突き破って本陣に攻め込む。混乱した配下、メルメイヤとセリョーガ、グランディスと暗黒騎士は皆に任せる。私とどん太達で、メギドとアグニを討つ……! 簡単に出てくる作戦だけど、達成は非常に難しい……。でも、ナンナイア王国に攻め入られたり準備されたりしたらこっちに被害が出る。これが一番良い作戦のはず!
「……せやけど、どうやってど真ん中突き破るんや?」
「私にいい考えがあります」
「あっ」
さあ、作戦を始めよう。ナンナイアの明るい未来の為に、ヘルミナ様の憂いを断ち切るために、そして……。一番は、私達自身のために。メギド、お前達のための戦争は……これから、私達のための戦争として食い散らかさせて貰うよ。





