445 加減を知らない
黄金郷にギルドの仮拠点もあるし、自分の家もあるからここへのアクセスは非常に簡単。ただし、到着した後の景色が昨日とは全く異なっているというのは全く予想していなかったね。
「でっか……」
「城堡が完成していますわね~! でも、お城はまだなのかしら?」
「まだ、っぽいね。建設中なのかな」
一晩で早速城堡が完成してたよ。さすがにお城はまだ出来てないみたいだけど、この壁の向こうではきっと建築がバンバン進んでるんだろうね。私達が氷のドームハウスを建てたエリアの近くに門があるみたいだから、まずはそこから中に入ってみよう。マリちゃん達は恐らく中にいるはずだからね。
「さてさて、中はどうなってるのかな~」
「楽しみですわ……ね……?」
「ん~……。ん~~……」
とても、とても悲しいお知らせがあります……。
「ログハウスしか……」
「ありませんわね……」
この立派な城堡の中には、昨夜と全く変わらないログハウスがぽつーんと建っていました……。立派なのは、周りだけだった……。中身スッカスカのハリボテ黄金郷だった……! そう、そうね、勝手に期待したこちらが悪いんだよね。何よりもまず敷地を確保、ここまで大きく広げるんだぞという意味で城堡から作ったのは悪くない。悪くはないと思う……。ログハウスまでちょっと距離あるし、ペルちゃんとお喋りでもしながら向かおうか。
「ねえペルちゃん、明日いちごのスイーツが食べたいの」
「いちごですの? あのモールに有名店はあったかしら……」
「有名じゃなくてもいいの。衝動的に食べたいって思ったのを買ってみたいなって。それに調べて買うのってなんだかさ、先入観があって嫌じゃない? 自分の感覚を大事にしたいなって」
「そう、ですわね! それがいいですわ!」
「ペルちゃんって何が好きなの?」
「リンネさんですわ!」
「そうじゃなくって。食べ物食べ物」
「あっ! ええっと、うーん……。何が好きなのかしら……」
「私と一緒だね、何が好きなのかハッキリわかってないんだよね~私も。明日好きなもの探しをしようよ」
「好きなもの探し……素敵ですわね! ええ、そうしましょうっ!」
ペルちゃんも好きなものがハッキリわからないんだ。急に好きなものは何かって聞かれても、普通はなかなか出て来ないものなのかな。ユキノさん辺りに聞いたら『お肉ですねえ~』ってすぐ答えが飛んできそうだけど。しかも部位名称付きで。ああでも、どこの部位が好きかって点はすぐに出てこないかもしれないなあ~……。つくねちゃんは何が好きなんだろ、名前の通りつくねが好きだったりして。
「……楽しい?」
「え? えっ?」
「ずーっと笑顔だなーと思って」
「あ、あら、そうかしら? そうかも……? やだちょっと恥ずかしいですわっ!」
「私は楽しいけど」
「わ、わたくしも、その、楽しいですわっ!!」
「昔はむすーっとしてたよね。今の方が好き」
「好き……っ!」
「うん。ペルちゃんにはずっと笑顔で居て欲しいな~。まあ、仕事で大変な時とかはそうは行かないだろうけど」
「なるべく笑顔で居るようにしますわねっ!?」
「作り物の笑顔を貼り付けるのと、自然に笑顔でいるのは違うからね。無理しないでね? 自然な笑顔のペルちゃんが好きなの。可愛いし」
「はわ、あわわ……」
明日休みか~……。あれ、確か海の日から夏休みに入るんだったよね? 7月17日から8月20日まで休みなんだっけ……? あれあれ、ちょっと待って? もしかして学校、後1週間でお休み?? 今週で終わり!?
「ねえペルちゃん」
「は、はいっ!」
「もしかして学校って今週終わると夏休みになる……?」
「そう、ですわね? だから水着を買いましたのよ?」
「あれ、試験とかって……」
「特にありませんわね。わたくし達の学園はそういったもので優劣はつきませんもの。いわばあの学園は社会の縮図、学園生活中に何を成し遂げ何に成長するか、それらに重点を置いている学園でしてよ」
「なるほど~……。私このままだと何にもならずに卒業しそうなんだけど……?」
「本当に何にもならない生徒はあの学園で生き残れませんから、リンネさんは暫くこのままでも平気ですわ!」
「う~ん……そうかなあ~……」
「リンネさんの人生を形作る何かに、きっと出会える時が来ますわ。今はまだ、それを探している段階ですわね。焦る必要はなくってよ?」
「そうかな、そうかも。その時が来ると信じて、色々探してみるね」
「いざとなったらわたくしがリンネさんを秘書にしますから安心なさって?」
「私で大丈夫かな……?」
「…………わたくしがリンネさんについて行けるか心配ですわね。イベントをてんこ盛りにされそうで、なんだか不安になって来ましたわ」
「ええ……」
さすがにイベントを増やすのはゲーム内だけだって、リアルでも増やしたらとんでもないトラブルメイカーだよ……。いやでも、うーん、わからないなあ……。増やすかも……。
『わう! わぉぉ~ん!! (あ、ご主人! やっと来た!)』
「あ、どん太がこっちに気がついた。遠目で見れば愛くるしいわんこなんだけどなあ~……」
「巨大ですものね~……。遠近感がたまにおかしくなりますわ」
「ん、あれ、なんか様子が変な感じ……?」
「です、わね?」
いやいやいやいや~……。もうイベントは勘弁して欲しいんだって、これ以上は駄目だから……。今日は顔を見せに来ただけなの、お願い見逃して~~!!
『オーウッ! やっと来ました、ねっ! ユーを待っていたのデス、ねっ!』
『ぁ~……』
『へえ~こんなお嬢さんが軍団長! まあこのゴールドスミス様も美少女にして凄腕鍛冶師、外見が伴わないことなんざよくあることか!』
『キタキタ』
『ゴキゲンヨー、リンネサーン』
「うわあ増えてる……」
「増えてますわね~……」
「あ! リンネ様~! おかえりなさ~いっ!」
「ただいまティアちゃん~。みんなは~?」
ゴッドゴールドファミリーが増えてる……。スルーしよう、スルーに限る。これを相手してたら今日の予定時間を絶対に超える。手を上げて軽く会釈するだけにして、向こうもこれで忙しいって察してくれるはず……!
「来たかリンネ、これを見てくれ」
『(*´∀`*)!』
「ん、これは……?」
マリちゃんが何かタブレットみたいなのを持ってる、なんだろう……。この、赤い点でぽーんぽーんって表示されてるのは、一体……? この青い矢印の部分が自分達のいる場所かな?
「恐らく古い黄金城の瓦礫の下、地下宝物庫よりも下の辺りだ。妙な反応がある……多分、生命反応だと思うのだが……」
「ええ……」
『(;´∀`)』
『わうっ! (掘る? 掘る?)』
「今日は忙しいんだよね、出来れば明日に……」
「それが、徐々に反応が小さくなってきているんだ。明日には消滅するかもしれない」
「ええ……」
どうして、どうしてイベントが起きてしまうのでしょうか。むしろどうしてマリちゃんはこんな生命反応探知機みたいなのを作ってしまったのでしょうか。私には理解が出来ません!
「どうしてそんなの作ったのよ……」
「黄金郷再建の前に、まだ何か潜んでいたら嫌だと思って。調べたら、引っかかった」
「あ~~……。不安要素は排除しないと……。よし、面倒だから消し飛ばそう? ブラックホールで大穴にして、消滅させちゃえばいいでしょ」
「放置していれば勝手に消えるのでしたら、放置すればよろしいのでは?」
「何が居て、何が消えたかわからない場所に城を建てるのは嫌じゃないか?」
「確かにそうですわね……」
「再度地下空間を作れば良いし、掘るより穴の方が楽だよ。派手にやっちゃおう?」
「あっ! じゃあ私はお姉ちゃんの攻撃に巻き込まれないように、皆さんに避難勧告を出しますっ!」
『わう~~ん!! (僕も行く~! リアちゃん乗っていいよっ!)』
「乗らせてどんど~ん」
もういちいち探索してたら時間がないんでね、どうせ地下また作るんだろうから先に地下から作っちゃいなさいよ! ここに大穴をどかーんと作って、それでいいでしょっ!
「リンネ様~! ティアもお手伝いしたいです~っ!」
「よし、ティアちゃんのパワーを借りよう。本物の大暗黒球体でふっ飛ばしてやる」
「あわわわ……。大変なことが起きる気がしてなりませんわ……」
「一応戦闘態勢、取るべき思いますっ!」
「ほら! デロナの予想通りだったよヴァルフリートさんっ!」
『うむ……。我が予想は探索だったが、デロナ殿の言う通りふっ飛ばすで当たりだったな……』
ティアちゃん、実はレベル800超えてるんだよね……。ティアちゃんは私に何も話さないけど、恐らく黄金の女王に作り出されてからの記憶とか全部蘇ってるんだと思う。ティアちゃんは私のティアちゃんで居続けたいから、話さないつもりなんだろうね。私はティアちゃんがそれでいいならそれもいいかなって思う。私だって真弓に過去のことは全部話してないし、気持ちは凄くわかる。ティアちゃんは賢い子だから、記憶を取り戻してるって私が知ってる上で話さないことを選択した。私はそれを尊重するよ、だから聞かない。
『【アンデッド憑依】を発動、ティアラ・エルドリードが憑依し【恐怖の女王】状態になりました』
「よ~し、ふっ飛ばすぞ~!」
『(ふっ飛ばすぞ~です~っ!)』
うん、元気で可愛らしい女王陛下でよろしい。実は黄金の女王の座を継いだ時に、ティアちゃんも人の心がわからない怪物になったらどうしようって、正直ちょっと不安だった。これからも可愛らしい私達のティアちゃんで居続けて欲しいね……。
それと、ティアちゃんのレベリングこれからどうしよう……。どこに連れて行っても規格外過ぎて、正直パワーレベリング状態になりそうなんだよね、私のほうが! これは早いところ、せめてレベル600ぐらいまで上げないと、ティアちゃん頼りの生活になってしまうっ! ティアちゃんに『え~またリンネ様のお守りですか~?』って言われたくない……。絶対そんなこと言わないだろうけど……。
『おやおやぁ? これから何が始まるんですか~??』
「ワイパーニさん、下がっていた方がよろしくてよ? 今から地下の生命反応を、面倒だから地形ごとふっ飛ばすつもりのようですから……」
『は、はい? ちょっとよくわからない……』
『安心してくれ、理解している人間は少ない』
『え、ここ、安全ですよね? 大丈夫ですよねえ?』
「多分……?」
「大丈夫、多分安全思います!」
「一応戦う準備だけはしておかないとっ!」
「――ふ、ふぅ……。サウナから、飛び出して参りました……。戦闘にございますかっ!」
『十中八九、戦闘であろうな』
よーし、周囲から順調にプレイヤーさんもいなくなったことだし、やるか~……。さて、新しい黄金郷に不安要素を残さないために! 消え去ってもらうよ、謎の生命反応! ついでだからカーミラさんが使ってた方の新旧複合型のブラックホール、試しに使っちゃおう!
「ダーリ・トゥム・ダーリ。終焉は斯くして記されるであろう、古きものよ無へと還れ、新たなる時代の礎としてここに消え去れ…………」
『(わあ~いつもより陣がたくさんです~っ! ラーナラーナ、ニルヴァリーチェ、レウルアディタ、セーナキェレスィ、シズナギウス!)』
あ、ごめんなんて!? ティアちゃん母国語出てない!?
『三系統複合スキル【超黄金球体】を発動します』
「あ、これヤバ」
『(あ、ちょっと大きい気がします!)』
「あ!! 絶対ヤバいですわ!! 退避!!」
『掴まれ!』
『(;´∀`)!?』
「デロナ、逃げますよ!」
「わあああ~~!!」
「た、退避で御座います!!」
『え? え? あ、逃げないとマズいですねこれ~!!』
『オーウッ! 超ド派手デース!!』
『ぁ~~……』
『マザー! 馬鹿なこと言ってないで逃げるぞ! アイツまともじゃねえ!』
『だから言った、軍団長はイカれてる』
みんなごめんね、なんかちょっと……威力が、思ってたより高いみたいなんだよね……。
『エリアアラート:黄金城跡地が消滅しました……』
『エリアアラート:おうごんきょー (仮)が消滅しました……』
『エリアアラート:隠された地下宝物庫が消滅しました……』
『エリアアラート:黄金郷地下最深部の封印が破壊されました!!』
「…………負傷者なし! ヨシッ!」
『(ヨシッ! です~っ!)』
絶対良くない。言い訳を今考えてる。何も出てこない。よし、開き直って…………んっ!?
「メガリスアーマー、だよね、アレ…………」
生命反応じゃなくって、メガリスアーマーのエネルギー反応を拾ってたんじゃないの、マリちゃん……。絶対そうでしょ、だって生命反応って断言してなかったし、妙な反応って言ってたし!
『(でも、ボロボロですね~。直したら使えますか~?)』
「どうだろ、腕とか片方ないし、足も壊れてるみたい……。本当にボロボロ……」
直すにしても、相当ボロだなぁ……。胴体も装甲が剥がれてコアみたいなのが剥き出しになってるし……。ああ、マリちゃんはあのコアの反応を拾ったのか! だとしたら、あのコアが完全に機能停止しちゃったら、メガリスアーマーを復活させるのは新しいコアを用意するまで不可能になっちゃうんじゃ……?
「よし、マリちゃん達呼んで来よう。魔界技師のみなさんが飛空艇改修が終わって暇になったら、今度はメガリスアーマーの研究もやって貰おう……」
『(大きくて運び出すのも大変そうです~っ!)』
とりあえずこれ、なんとかして運び出して貰おう。ここで研究されたら再建の邪魔になるし……。あ、いやいや? 待ってよ? むしろここまだ黄金城を建てるのに時間が掛かるんだし、この敷地の一角に研究所作って新たな拠点として利用してもらえばいいのでは? ああ、やっぱり忙しくなった……! でもまだ時間はある、その時間で効率的にやることを決めて終わらせればギリギリ間に合う! よし、やるぞっ!! 時間との勝負だーっ!!





