441 各々の行き先
仮拠点に戻ってからは大騒ぎ、それはもう大変だった。
まず大勢のプレイヤーからどうなったのか、勝ったのかと問い詰められて揉みくちゃになったし、ギルドメンバーや同盟の人達とは出費の補填を含めた報酬分配の話し合いもあったし、うちの従者からは褒めて褒めて撫でて撫でての奪い合いになるし、それらを押しのけて抱きついてくるペルセウスってわんこを満足するまで撫でる緊急ミッションも発生するし……。
『――私はゼルヴァのところに行ってみるよ。リーリを連れてね』
『私も、アイギス達と一緒に世界を見て回る。時々、ここに寄ろうと思う』
『ありがとうございました、皆さんっ!』
アイギスさん、ラーラさん、リーリちゃんはゼルヴァさんのキャラバンに向けて旅立っていった。オルヴィスの神技でみんなやられちゃったみたいだけど、私じゃない純粋なネクロマンサーのプレイヤーさんが反魂の儀式で復活させてくれたみたい。死王ルートに進んだ人と、純ネクロのまま進んだ人とで二人居るらしいね。陰ながら応援してまーす。
『マザー、小さい。とても哀れ』
『小さいマザーも可愛い可愛いネー』
『ぁ……ぉ……?』
『ンッンー! 今のミーは、オウゴンキョー復興大臣ッ! マザーよりももっとエラーイ存在なのデース!』
『哀れ』
『ぁ……』
『EGG、頭をポンポン叩くのをやめてくだサーイ……』
『ぉ……!』
ゴッドゴールドはどうして生きてるのかわからないけど、うん……生きてたね。こいつがこの世から消える日は、世界が消滅する日なんじゃないかな。そのぐらいしぶとい生命力を感じるね。そしてついでと言わんばかりに、分体の中でも最上位クラスの子達三体がいつの間にか周囲に居たよ。以前戦ったことのある4G、カタコトで話すプリンセスゴールド、何も考えてなさそうで言葉をまともに発しないEGGちゃん……。EGGちゃんは確か、エンシェントゴッドゴールドだったかな。古代神術とかを独学で身につけた分体なんだよね。ちなみにこの子だけ名乗らなくても何者なのか即わかったよ。だって頭にヘルメット被ってるみたいに大きな卵の殻を被ってるんだもん。
それと、ゴッドゴールドは現代に蘇った黄金郷ログハウスに住むらしい。ティアちゃんに黄金郷復興大臣に任命されたのもあるんだけど、自分自身で黄金郷を新しく作り上げたい、自分の居場所が欲しいんだって。元々は他国に送り込んで銀を根こそぎ全滅させる為の兵器として作られたゴッドゴールドだけど、それと真逆のことをして過去と決別したいんだって。これから仲良く、分体の三体と一緒に黄金郷を少しずつ復興していく予定らしいよ。
「ヨハン、国に帰らない?」
『ん? 帰ってどうする、俺の居た時代は大昔のことだ。今更埃を被った狼が一匹が戻ってきても、扱いに困るだけだ』
「じゃあ、どうする? うちくる?」
『そんな気軽に言うか……?』
「多分、楽しい。一緒に来るべき、ね?」
『まあ、ちょっとだけなら……』
『(*´ω`*)』
『ん? なんだ、その顔は……?』
ヨハンさんは無事陥落した。レーナちゃんにこっちの陣営に引き摺り込まれて、これからおにーちゃんに悪い遊びを沢山教えられて、ヨハンさんがダメヨハンさんになっていくことが確定した。これまで辛いこととか沢山あっただろうし、いっそここで最後の殻をぶち破って過去を乗り越えて貰うのも良いのかも知れない。
「――リンネさん? 火曜日こそ遊びに行きませんこと?」
「は? 学校は?」
「7月11日は夏の日でお休みでしてよ? 月曜日もついでに連休にする企業も多いですわ」
「あ……。そういえば夏の日だったわ」
「わたくしもすっかり忘れてましたわ!」
「むぅぅぅ~~っ!!」
「千代ちゃんもほら、おいで? そうだったわ、7月8月は休みが多いんだよね」
「此方も独占して抱きつきとう、ご~ざ~い~ま~す~~っ!!」
「ペルちゃん代わってよう~」
「仕方ありませんわね~。明後日いっぱい抱きつきますわ」
「そうして。ほら、千代ちゃん! 独占チャンス!」
「わぁああ~~……!!」
千代ちゃんが我慢の限界、爆発寸前だったからペルちゃんと交代だ~。そうか、火曜日休みか~……。だったらいっそのこと月曜日も学校休みになってくれないかな。社会人になったら、お休みに融通が利く会社に入りたいな~……。入れるかな、大丈夫かな……。私、仕事何が出来るんだろ、ヤバい……。胃が痛い……。
あ、千代ちゃんぽかぽかして温かい。温かいと言えば、せっかく雪国なんだしサウナとかあったら良いよね。千代ちゃんのダイエットスポットにもなるよ、きっと。マリちゃんに頼んでラッシュの転移装置みたいなの作って貰って、自由に行き来出来るようにすれば利用もし易いと思うんだよね~。
「千代ちゃんさ、あ~……え~っと」
「はいっ! はいっ!」
「そう、蒸し風呂! 蒸し風呂とかって好き?」
「虫風呂で、ございますか!?」
「そうそう。最初慣れない内は結構キツイかもしれないけど、慣れてくると良いんだよ~蒸し風呂」
「さ、左様に、ご、ござい、ますか……」
「千代ちゃんのためにどうかなって」
「ひっ」
「沢山汗かけると思うし、修行的にも良さげかと思って」
「どうかそれだけは……! 何卒、虫風呂だけは……!!」
「え? 嫌?」
「嫌に御座います!!」
え~そんなに嫌なんだ、サウナ。千代ちゃんって汗かくのが嫌いなのかな? 痩せたい、でも汗かきたくないって相当にワガママな子だよ千代ちゃん。ワガママなのはボディだけにしておきな。
「千代ちゃん、蒸し風呂いきなりキツイのから入ったんじゃないの~? まず軽めのからさ、色々種類用意して入ってみようよ」
「い、嫌で、ごじゃい、まひゅ……!」
「え~。温かくて気持ちいいのに」
「気持ちいい!?」
「わたくしも入ってみたいですわ! どこまでリアルに再現されているか気になりますわね!」
「ペルセウス殿も、虫風呂に、お入りに、にゃられるのです、かぁ!?」
「ええ? 結構入りましてよ?」
「ひぃ……!」
え、千代ちゃんがぷるぷる震えてる!! そんなに嫌なの!? いやいや、サウナに入ってるのと同じぐらいダラッダラ汗出てるよ!? もうここがサウナみたいなものなのでは!?
「蒸し風呂ですかっ? 私も入ったことがありますっ!」
「リア殿……!?」
「ん? 蒸し風呂か、試しに何度か入ったことはあるが、入った後はスッキリして気分が良くなるから好きだ。インスピレーションが湧いてくる。我も入りたいな」
「マリアンヌ殿……!?」
『!(*´ω`*)ノ』
「お、おばけ殿まで……」
「蒸すお風呂、湯気の上に座るですか? 難しい思います!」
「ん……? えっ?」
「違うよゼオお姉ちゃん、あっつ~い石に薬湯をかけて、その蒸気で温まるの! 湯気の上には座らないんだよ?」
「あ、そうですか! 面白そう、入りたいです!」
「ん…………?!」
「わあ~! ティアも入ります! リンネ様の隣がいいですっ! くっつきますっ」
「んんん……!?」
「あ、ずるいです! 私は反対側の隣です!」
「ん゛!?」
千代ちゃん、これで千代ちゃん以外全員が入るに賛成になったよ……。もう、諦めて入ろうね……! 絶対に嫌ならまあ、流石に無理はさせないけど……。そんなに嫌なのかな……?
「あ、あの……」
「気が変わったの?」
「え、えっと…………申し上げにくいの、ですが……」
「うん?」
ふっふっふ、サウナ入ってみたい好奇心が勝ったか。最初から素直に入りますって言えばいいものを、諦めて痩せるんだよ、千代ちゃん!
「む、蒸し風呂とは、蒸気で蒸すものであって、虫さんのほうでは……ない……?」
「むしさん?」
「その、蜘蛛や芋虫などのほうの、虫では……な、い……?」
あ、あっ……。ぐ、ぐっ……!
「ぐ、あっははははははははははは!! そんなの私も入りたくないわ!! 虫風呂だと思ったのね、虫がいっぱいの!! あっはははははははははは!!」
「千代さん!?」
「それは我も無理だ、入れない」
「虫さんはちょっと苦手思います!」
「デロナも絶対無理!」
「ティアもちょっと怖いです~……!」
『(;´∀`)……』
「わ、笑わないでくださいまし、笑わないで……あうあうあうあう……」
可愛いねえ千代ちゃん!! それでずっと嫌だ嫌だ言ってたんだ!! あっはははは!! 最高、そんなの絶対私でも嫌だわ、サウナって言っても伝わらないかと思ってわざわざ蒸し風呂って言ったら、逆に伝わらないでやんの!! あっはははは!! あーーっははははは!!
「あっは! あは、げほっげほ、げほっ……! げほ、げほっ!! あははははははははは!!」
千代ちゃん最高! サウナ行き決定!





