431 ぶっちぎりでイカれた女・21
「報告、城内より強力な龍種が出現!! ネームドモンスター、傷だらけです!!」
「傷だらけが巨大化!! 状況は不利です!!」
「バビロンガーエックス、応戦してください!!」
『バビロンガーエックスが相手になりましょう。かかってこい、傷だらけ!!』
『ファーブニル様に授かりしこの力、思い知るがいいッ!!』
ファーブニルのネーミングセンスはともかく、あの傷だらけってドラゴンは一言で表すとヤバい。恐らく中庭で増援の相手をしてるプレイヤー全員でぶつかっても大損害を出して辛勝、単純明快に巨大で身体能力が高い相手は小細工が通用しないから厄介。なら小細工なしでぶつかれば良いだけ、バビロンガーエックスにこの巨龍の相手をして貰えば良い。
「エックスが傷だらけにふっ飛ばされた!!」
「いや、城外に連れ出したんだ! ここでの戦闘は危険だから!」
「目の前の敵に集――――」
『呪龍バジリスクが【石化光線】を発動、にょっきりシメジが【石化】しました』
「一人石化した! 神官さん頼む!!」
「今行きます!!」
中庭に追加投入された増援はとにかく厄介。毒や呪いが効かないってわかってるからそれ以外、特に石化光線を使ってくるバジリスクって奴が大暴れしてる。こいつの好きにさせると石化と解除のループに陥るから、なんとか先に撃退したいんだけど……。
『シールドドラゴンが【マイティガード】を発動』
「くそっ! あの翼が盾になる奴ほんっと邪魔だ!!」
「焦って突っ込むな、思うつぼだぞ!」
巨大な翼が盾になるシールドドラゴン、あれがとにかく邪魔。こっちから手出ししたいんだけど消耗したくない。それに下手に手を出すとかえって邪魔になる可能性がある。みんながみんな臨機応変に対応出来るわけじゃないからね。予想外のことが起きて固まってる間に、敵側のほうが先に動いて逆に不利になる可能性だってあるからね。
「マリアンヌさーん! ミミッキュん返すッス~!!」
『キュッキュッ!!』
「ああ、ありがとう。リンネ、ミミッキュんに更に爆薬を持って貰いたいんだが、どこでも倉庫は出せないのか?」
「ん~……。空間が不安定で使えないって」
おかえりミミッキュん~。装備しなければマジックバッグとしても運用できる、装備すれば魔術を2発まで取り込んでストック出来る反則級のその他アクセとしても運用できる、分体を設置すればミミッキューブが仕事をしてお金も稼いでくれる。そして何より、見た目がチャーミング!! 君はなんて完璧なワールドアイテムなんだろう。最近はおにーちゃんのオモチャ入れ――結局片付けなくて一部食べられて泣いてた――になったり、マリちゃんの爆弾入れになったり、巨大雪玉入れになったり忙しいね!
この空間が現代としっかり繋がればどこでも倉庫を使えるんだろうけど、うーん今の状態では使えないって出てるなあ~……。ゴッドゴールドに扉を開いてもらう? ううん、流石に消耗して欲しくないし、でもマリちゃんの爆薬を引き出したいし、どっちを優先すべきだろう。
「リンネ様、空間を繋げばいいんですか?」
「え? うん……うん??」
「金色さん、金貨1枚くださいなっ」
『さっき100枚渡しましたよーっ?!』
「使うから補填したいですっ!」
『わ、わかりましたー……。出します、メイキングね……』
もしかしてティアちゃん、一時的にこの空間と現代を繋ぐポータルを作る気……? あ、そういえばあのティアラの効果に黄金回廊ってあったような……。でもまだ何処にも道標をつけてないからダメなんじゃないの?
『はいはい、ドーゾドーゾ』
「ありがとう金色さんっ! みんなのお家とちょっとだけ繋げます~っ!」
『ティアラが【黄金回廊】を開きました。バビロニクスのギルドルームと繋がりました』
『PROTECT! 邪龍ファーブニルが【黄金回廊】に干渉しようとし、失敗しました』
「え?! あ、どこでも倉庫~……あ、やっぱり来ない!」
「後1分ぐらいで閉じちゃいます~っ!」
「リンネ、一瞬戻って即座に補充しよう。1分あれば十分だ。行こうミミッキュん」
『キュッ!』
「わかった! もうちょっと開いて頑張ってて!」
ファーブニルが干渉しようとしてきて失敗してやんの! ふ~ん、ティアちゃんの使う特殊な金錬術には手も足も出ないってこと。流石に生殺与奪とかは効かないだろうけど、一応覚えておこう。それより一旦戻ってどこでも倉庫、爆薬補充したら即帰還しないと!!
「どこでも倉庫!!」
「どこだ、どれだ……? しまったな、普段から整頓していれば……多分このボックスがそうだ!」
『き゛ゅ゛』
「すまない、少し我慢してくれ」
「はいはいはいはい! 戻る戻る~!!」
よし、間に合った! わ、ミミッキュんがなんかでっぷりしてる……。ごめんね、パンパンになるまで詰め込んじゃって。とりあえずこれで、爆薬の補充はオッケーかな?
「リンネ……。持ってくるものを、間違えた……」
「ええええええ~~……」
「はわわ、もう一回開きますか?」
「ちょっと待ってねティアちゃん、それで? それは何を入れてたボックスだったのよ……」
「使えなくなった素材を、入れていたものだ……。砕いたパナシーアクリスタルとか……」
「はあ~……」
な~にやってるのよマリちゃん、もう一回取りに戻ろうか? いやでも今度は干渉に成功してくるかもしれないし、流石にリスクがあるってわかった行動はしたくないんだよね。どうしよ、本当にゴミみたいなアイテムばっかりだわ……。
「レーナちゃん、砕いたパナシーアクリスタルって、何か使い道とかって……」
「ん、ない。負荷をかけたらぴかーってなって砂になる」
「ないんだぁ……」
「ごりごりに頼んだら、圧縮して大きいのにしてくれる」
「ゴリアテさん戦闘中だし……」
「だから、ゴミ~」
「…………ん? 光るって、どのぐらい光るんですか?」
「びみょ~に光る。ぽや~」
「大量に、それこそ纏めて負荷をかけたら?」
「やったことないかも」
「光る石にすれば良いんですか~?」
『オーウ、マイクィーン? なぜ、ミーの腕を掴んだまま言うのですか、ねっ?』
ティアちゃんにもう一回黄金回廊を開いて貰うより、確かにこの場で即席のアイテムに作り変えて貰ったほうがリスクがないし、それに今考えてる目当てのアイテムに変えられるかも……? 味方を巻き込む可能性がある爆薬より、よっぽど良いものを持ってきた可能性があるね?
「金色さ~ん」
『はい、もう、作ったヨ……。お腹ペコペコネ……』
「食うだけで回復するなら、確かさっき作ったカレーの残りがあるぜ。食うか?」
『オーウ!! 食べるだけで回復バディ!! プリーーズ!!』
「いっぱいピカピカ光る石に、な~あれっ!!」
『ティアラが【金錬術】を発動、【ゴールドフラッシャークリスタル】が10個完成しました』
「どうですか~? 結構良いと思います~!」
「んっ……ん!! 偉い、ティアちゃん偉い! ゴッドゴールドもありがとう~!」
「えへ~」
『はふっ!! ん、ぐっ! グッド!!』
ここって、一応粉砕された城門跡地、戦場っちゃ戦場なんだよね……? 現地でアイテムを作成してたり、カレーを頬張る粘液少女がいたり、倒した龍の肉を串焼きにして食べてる子がいたり、ストレス発散とバフ継続の為に隠れて近寄ってきた龍をボコボコにしてる子がいたり、どん太のもふもふの中で寒い寒いってぷるぷるしてる猫ちゃんとかもいるけど、戦場なん……だよね。
「カーミラさん、これを起動させたら何かトラップに引っかかりますか?」
「…………問題ないかと。魔術的なものでもなく、強烈な金色の光を放つ石ですし。しかしこれはかなり強力な光になりますよ」
『閃光による目潰しか。自軍にも影響は出るぞ』
「さっきの傷だらけって奴を怯ませるのに使いましょう。バビロンガーエックスがここに戻ってくればあっという間に片付くはずですから」
『…………ああ。ああ、そうか。なんでバビロンガーエックスの援護は期待できないと決めつけていたんだ』
『なるほどねえ、確かに一番そいつが手っ取り早いね』
「よし、どん太! これを傷だらけに――」
「そういうのは自分達に任せて欲しいッス!! 軍団長が危険を冒す必要はないッス! モロトフく~ん! 反動でグロッキーなところ悪いッスけど、仕事ッスよ~!」
「うお、おお……? 投擲が、俺を呼んでる……!? 貸してくれ、そいつで確実に傷だらけの目を潰してやる!!」
こと投擲に関して、モロトフさんの右に出る人はいないもんね……。投擲専用スキル、投擲の威力上昇、投擲物の速度上昇、とにかく投擲に全振りしてる彼の投擲テクニックを信じて、この役目をお願いしよう。
「じゃあ、お願いします!」
「これより、ネームドモンスター傷だらけの目潰しによる、バビロンガーエックス援護作戦を行うッスよ! ブリザーマンはゴリアテ君へ連絡と連携、作戦実行班は絶好のタイミングで一撃離脱、失敗出来ないッスよ!!」
「巨体に踏まれないように注意しよう。起動方法は……」
「魔力を限界まで込めた後、およそ10秒後に強烈な閃光を発します。破壊された時に強烈な黄金の閃光を放つでしょう」
「カーミラさんの説明の通り、魔力を込めて投擲! 魔力を込めたらモロトフくんへ渡して投げたら即撤退! 少数部隊で行くッス!」
「メインパーティの8人で良いか、後は内城突入の準備を整えて待機しよう」
「行動開始ッス!」
「……お、良かった。我の無能っぷりが薄れたな……」
「マリ、にゃ、ん。む、むの、へくちっ……!」
『わうぅぅ~? (リアちゃん、大丈夫~?)』
「は、はひ……」
赫さん達、前は『戦闘とか向いてないから~』って言ってた気がするけど、気がつけば各々の得意分野でがっつり戦闘に貢献して活躍してるなあ~。私も気合い入れて頑張らないと。
「――――だ~クソ、硬え!!」
「シールドドラゴンが抜ける気がしないよ!」
「弱音を吐くな、突破口は絶対ある! 諦めるな!」
前線はかなり辛そう、内城の敵も出てきてるんだからそうだよね、辛いよね……。それに思ったよりも数が多い、恐らく突入後更に兵隊を増員したんだろうね。死体を自分の眷属の龍に変えることが出来る能力、呪いを振りまく邪龍、なんだか死霊術師に通じるところが若干あるなあ……。確かに死霊術師って軍団を作るにはかなり向いてる職業だもんね。死霊術師のドラゴンバージョンみたいな感じなのかな。そうなると、さっき黄金回廊に干渉して来た能力は私の魔界領域制圧みたいなもの? あ、この呪いの靄がそうか。ん……ん? じゃあ逆に領域制圧し返すことが出来るんじゃないの、これ?
「よっ……おっ?」
『邪龍ファーブニルの【呪毒領域】が強力なため、【魔界領域侵食】に失敗しました』
「あ、ダメか~」
「リンネさん、何をなさっているのですか?」
「ここがファーブニルの領域に侵食されているとしたら、私の能力で侵食し返すことが出来ないかな~って試したんですけど……」
「ファーブニルは最強の龍種が一角、容易ではないでしょう」
「ですよね~……。あ、守護龍の結界を制圧するぐらいなら出来るかも?」
「…………確かに、むしろしなければ倒したところで結界が有効なら、無意味なのでは?」
「あっ! 確かに、術者が死亡しても結界って残ってるんですよね?」
「ええ、ルゥの結界が残っていたように、龍種の結界も恐らく」
「メンバーを再編成しないと! 領域制圧能力のある人を入れないと、ダメじゃないですか?!」
「確かに、今気がついて本当に良かったですね。各班の構成を見直しましょう」
お~今のうちに気がついてよかった~。これから実行する作戦が無駄になるところだった。でもこれで逆にこっちが強化されるような結界に張り替えれば、ファーブニルが弱体化するんじゃない? そうすればファーブニル撃破もかなり現実的なものになるはず!
「お昼寝さ~ん!」
「ん、なになに~? また怖いことする?」
「しないですしないです! そうじゃなくって――――」
お昼寝さん、私のことなんだと思ってるんですか? それに私、そんなに怖いことばっかりしてないと思うんですけど! もうっ!





