430 ぶっちぎりでイカれた女・20
城の外部で二千以上の龍が出てきて応戦している。城門は以前の攻撃で破壊されたままの状態だけど、上空からの侵入や城内への遠距離攻撃は守護龍の強力な結界で防がれる。強力な隠密スキルを使用すれば龍にバレずに城内へ侵入可能だけれど、カーミラさんレベルの能力がないと、一部のエリートモンスターにはバレてしまうから奇襲は難しい。よって、正攻法での突入しか方法がない…………と、見せかけて。
「そろそろ向こうの左翼が壊滅するね。赫さん達と魔術師部隊を前線に向けて進めよう」
「赫に連絡を取るか?」
「お願いマリちゃん」
「マリアンヌからレッドボックス、レッドボックス聞こえるか」
『レッドボックス聞こえるッス! 全員準備出来てるッス!』
「マリアンヌより軍団長に代わる」
「赫さん、敵左翼がそろそろ壊滅します。急遽思いついた作戦ですが、やってみましょう」
『オペレーションフロストカクテル始動ッスね! タイミングは――』
「モロトフさんに一任します。現地の魔術師隊と連携を取ってください」
『了解ッス! これよりオペレーションフロストカクテルを発動するッス! 交信終了』
「交信終了」
私は守護龍達の結界に脆弱性を発見したんだよね。もしこれが上手く行けば戦闘時間の大幅な短縮と、僅かなリソースで効率的に敵を殲滅出来るメリットが発生する。上手く行かなかったとしても、ほぼ損害なく先制攻撃が出来て相手の迎撃態勢を崩すことが出来る。完全にやって得しかない作戦を思いついちゃったんだからやるしかない。
『ん? 中央突破まで待たずに進めるのか? しかも極少数、50人程度では奇襲の効果は薄いだろう』
『あの爆弾魔をまた使うのかい? 火への警戒が高まってる、同じ手は通用しないんじゃないかい?』
「魔術師が数名居ますね、何をするのですか?」
「確かにさっきの戦い、ファーブニルには見られていました。火攻めや雷撃攻撃対策、遠距離攻撃には特に対策されています。城壁の上を通過しようとしても対策されていて罠が作動します。だからこそ、対策されているもので攻めるんです」
『理解出来ん……』
『対策されているから、対策されているもので攻める? 余計に意味がわからないよ?』
「リンネ~。働き蜂と繋がった~。映像、出せる~」
「ありがとうございますレーナちゃん! み~せ~て~」
「い~い~よ~」
「あら、これは何が始まりますの?」
「いや~~先行突撃してるメンバーをみる限り絶対ヤバい、僕にはもう嫌な予感しかしない」
レーナちゃんの蜂型ドローンと映像が繋がった! 武装全部ばらして映像と音声中継に全振りに改造した奴だけど、思ったより画質も音質もいいね。さあ、突如思いついた作戦が上手くいくかどうか見せて貰おう!
◆ ◆ ◆
「主任~~!! やっぱ正攻法でやる気ないですよ、イレギュラー軍団!!」
「なんで……?」
『プレイヤー軍、城外左翼のドラゴンを優先して処理。51名のプレイヤーが城壁右側へ進軍中』
まただ、またなにかする気だ。現状負けイベント状態の差があるんだぞ、つい最近やっと真覚醒を迎えて、ぼちぼち上位プレイヤーに昇華転生が現れた程度じゃクリア出来ない、あ~何が何やらわからない内に大規模レイド発生して、両陣営大打撃! これでチャプター2の進行が遅れてプレイヤー陣営辛くなるな~。陣営割れも起き始めるだろうなと思ったのに、なんでこうなるんだ?? どうしてファーブニルに対抗出来ているんだ??
「先行している51人に映像を回してくれ」
「今、出ます!」
『――そろそろバックパックを開く準備しておくッスよ! とにかく早くやれ、それだけが軍団長からの命令ッス!!』
『オーケーオーケー! もういつでも取り出せるようにしてる!』
『よし、魔術師さん達お願いするッス!!』
『メタルウォール!!』
『メタルウォーール!!』
『メタルウォール!!』
『メタルウォール』
「ん、な……」
『状況、外壁を超える為に階段状に障壁を展開した模様。飛行禁止結界による妨害は、この方法なら作動させず城壁を飛び越えられます』
『罠対策に、最後の一段はジャンプ禁止!! よじ登るんッスよ!!』
『罠対策了解!!』
『了解ー』
城壁を飛行したら勿論だが、大ジャンプでも飛び越えたら罠が作動して弾き飛ばせる、撃退出来るように設定していたはずなのに、最後の一段……城壁をよじ登って通過すれば罠が作動しない? バカな、ありえるのか!?
『51名全員が無事に城壁上に到達』
「バグじゃないのか?! バグ利用にならないのか!?」
『判定、否。バグ利用と認められません。新たな攻略法として承認されました』
「いやー"この橋渡るな"みたいなトンチですねー」
「言ってる場合か!?」
『モロトフくん~。今度のは更にドギツイ奴ッスよ~』
『コスモスエナジーポーション、銀色に虹色がかったどう見ても見た目がヤバいポーションだな……』
『うぉぉおおおーー!! マッスルパス!! 俺の筋力を、受け、取れぇ……』
『筋さんのマッスルパワーが俺に流れてくる!! うおおこのポーションメッチャ美味い!! あ、辛い、苦い、うお、が、甘、おおお、おえええ……!! マズい、あ、美味い――――あ、宇宙を感じる……早くやろうぜ、俺が俺であるうちに……』
『モロトフくんがぶっ壊れる前に作戦開始ッスよ!! 全員、事前の練習の通りに開始ッス!』
『キュッ!!』
『一番!』
何をする気だ……? 全員、マジックバッグを持っているのか……? 一体何を……?
『大玉の雪の塊を取り出しているようです』
「あ~赫って人にミミッキュんが貸し出されてますね」
「はあ!? ワールドアイテムだぞ!? 貸し出す!?」
『二番ヨシ! 三番! 三番ヨシ! 四番!!』
『おらおらおらおら!! てめえらはもう、お終いだぁああ!!』
雪玉を投げつけて、敵に先制攻撃を与える作戦か!! ものすごい数の雪玉を持ち込んで、数を減らそうって作戦だな!? ん? だがこれは遠距離攻撃に該当するのでは……? いや、それよりもだ。
「当たってない、ですね……?」
「なんかヤバいポーション飲んで、狂ってるのか……? 全然当たってないぞ……?」
「あれ? なんで雪玉はオッケーなんですか? 遠距離攻撃じゃないんですか?」
『状況解析。雪を防御するには自然に吹き荒れている雪全てに対策する必要性があるため、雪の防御は除外されています。もし雪の防御も含めた結界にした場合、ファーブニル軍の負担が激増し、この結界は容易に破壊可能なレベルに弱体化します』
そんな馬鹿な話があるか?! いや確かに、この豪雪地帯で吹雪まで防ごうとなると凄まじいコストがかかる。それに雪はこの龍種達にはほぼ影響がない、むしろプレイヤーが動きにくくなる天然のトラップとして逆に都合がいい。雪を防ぐメリットが全くない……! だから雪玉で攻撃を……だが、当たっていないなら意味がないな! 良かった、異常なパワーの代償で命中精度が欠けていて。
『二十五番! 二十五番ヨシ! 確認!!』
『ミーリ、ありません!』
『ごほんごほん、ありません!』
『グリモア、ありません』
『ミッチェル、ありません』
『筋さんとモロトフを抱え撤退します!』
『撤退了解! 確認ヨシ!! 投入開始!!』
『投入開始!!』
一発も当てていないのに撤退だと? これのどこが"ヨシ"なんだ……? 中庭のドラゴンも困惑してるようだが……。
『――――汝は知るだろう、永遠の楽園と永劫の地獄をも超越せし、破滅と虚無の虚空の深淵を』
『いでよ鋼鉄の要塞、メタルウォール!!』
『彼方より押し寄せ、総て押し流されよ、無限の水流! タイダルウェイブ!!』
『リクドーリンネッ! ヤマビーコッ! ニンッポー! 大洪水の術ーー!!』
『――タイダルウェイブ!!』
『――タイダルウェイブ!!』
『――破壊する青の衝撃!!』
「あれ、中庭で遠距離攻撃は魔術もダメなんじゃ」
「そのはずだ、遠距離攻撃は倍増して跳ね返るように…………」
『深淵より生まれし重苦の力、押し潰されよ!! アルマ・ヘーラ・ギガドン!!』
「これは……?」
『状況解析、中庭内部に発生している【遠距離・魔術攻撃倍返し】の効果により、大量発生した水魔術が倍増して反射。毎秒100トンを超える大質量の水となって反射されています。ただし、反射された魔術は超重力の効果によってプレイヤーに届かず落下。中庭が途轍もない勢いで水で溢れかえっています。参考として、一般的な25メートルプールを3秒で埋める量の大洪水です』
「城は穴だらけですぐ漏れるだろう、雷撃にも完全対策をしているはずだ。水浸しコンボは使えない」
『穴は先程塞がれました。最も巨大な穴である城門も、メタルウォールで塞がれています』
「は……? ああ、あああ……!?」
「さっきの雪玉、水漏れ対策にぶん投げたんですよこれ!!」
ふざけるな、こんなシステムの穴を突くような攻略が許可されるはずないだろ!? なんで管理者AIは何もアクションを起こさない?! 完全にバグ利用の挙動だろこれは!!
『――総て。総て。総て押し潰されよ、引き裂かれよ、此処に在るは魂まで凍てつく永劫の極寒と知れ!』
『状況。プレイヤー、ブリザーマンが究極魔術のダブルキャストを発動します』
「まさか……」
「おいおいおいおい、馬鹿、やめろ!!」
『…………極寒地獄第一円、カイーナッ!! 第二円、アンティノラッッッ!!』
は、は……? は…………? なんだこれは、なんだ? 中庭には、千を超える上位クラスの龍が居たんだぞ……? 苦戦だ、大苦戦だ、大勢の犠牲を出してようやく突破出来る試算の大苦戦を強いられるはずじゃなかったのか??
『状況終了、バビロンガーエックスを突撃させるッスよ!!』
『後はバビロンガーエックスが踏み潰すだけだ、撤退しよう!』
『ジャンプ禁止! ジャンプ禁止ッスよ、ゆっくり降りるッス!』
『ジャンプ禁止了解!!』
「あ、ああああ…………」
「苦戦、しなさそう、ですね……主任……」
「ああ……あああ……」
『ファーブニルが動きます。緊急対応として、ネームドドラゴンの投入を行います』
「お、おお……。それは、苦戦しそうなのか……?」
『バビロンガーエックスが突入した場合、プレイヤー陣営の勝率は99.99999パーセント。巨大ゴーレム、バビロンガーエックスの方が圧倒的に有利です』
「あ、うん、そう……」
『バビロンガーエックスの長時間の足止めにはなるため、プレイヤー陣営が総合的にはやや不利な状況となります』
「お、そうなの!? 勝率減った!?」
『最終勝率、67パーセント。前回計算時より40パーセント上昇しています』
勝率40パーセントも上がってんの……? うん、そっか、なんかうん、そっか。そうなんだ~……。
「伊藤くん、コーヒー貰えるかな……」
「刺激の少ない飲み物のほうがいいんじゃないですか……?」
『乳酸菌飲料を推奨』
「そこの自販機で、なんか買ってきます……」
「うん、はい。私のジハポカード使っていいよ……」
「あ、あざーす」
胃が痛い。目眩がする。帰りたい……。
◆ ◆ ◆
「――――かなり、うまく行きましたね!」
『反射を逆に利用するとは……。対策が仇になっている……』
『リンネ、あんたが生まれてくる時代がもっと前だったら、多分だけど天魔大戦は魔族の圧勝で終わってたよ』
「リンネはぎゃくさつのプロ」
「え、なんか嫌ですね……。向こうの対策がガバガバなだけで、たまたま上手く行っただけですから。こんなの何回も続きませんよ」
「…………何回も続いてるんだよね」
「続いてますわね」
「続いとるなあ……」
「とりあえず第二部隊もこれで負担が減ったので、中庭で戦闘予定だったパーティも突っ込みましょう!!」
お~よかった~。雪玉に反応して全部防がれるのが負け筋だったけど、狙いが悪すぎる攻撃に困惑して防ぐ気配が全くなかったから助かった。雪玉で出入り口を全部封鎖、破壊された入り口もメタルウォールで塞ぐのも止められなかった。大洪水になってからの向こうの慌てる様子は面白かったね、飛んで逃げた奴が自分達の結界に阻まれて墜落してたのが無様だったわ。
「先行部隊の特殊作戦が成功しました!! 全軍進撃!! 城壁を完全破壊し、中庭を制圧せよ!!」
さあ、ここからはバビロンガーエックスの独擅場よ。物理的に氷漬けになった龍をぷちぷちバリバリ砕いて進撃する時間だ! ファーブニルの予想通りの展開になんてさせないよ、これからもっと度肝を抜いてやるんだから!!





