426 時を超えし黄金郷・3
「すみません、俺が最後です……!」
「捧げ、げほっげほ……。捧げよ……」
『【★霊銀のピアス】【偽銀の人狼】【カースドコスモスメタル】が共鳴する……』
『【◆銀色の幻想盾】が完成しました!』
「はい、大事に使ってね……」
「ありがとうございます!!」
終わった、終わった……。1時間近くかかったけど、恐らく参加者全員に銀の特殊装備が行き渡った……。これでファーブニルの瘴気への対策は出来た、ただしカーミラさん曰くファーブニルの瘴気結界は段階があるみたいで、アルティメット・シークレットレアリティ装備の銀装備で祓える瘴気は城の外の1段階目まで、アルティメット+11以上・スーパーシークレットは城の中庭と入り口までの2段階の瘴気を、アルティメット+16・トップシークレットは城の内部の3段階の瘴気を、完全耐性持ちやエピック以上になるとファーブニルの全ての瘴気結界を無効化出来る。
じゃあ耐性持ちとエピック持ちでファーブニルを袋叩きにすればいいかって言うとそうでもない。ファーブニルの作り出した強力な毒龍が複数体居て、これらがファーブニルを強化する結界と結ばれていて、守護龍が生きている限りファーブニルは永続的に強化され続けるらしい。しかもカーミラさんが守護龍撃退に接近したところ、城の頂上玉座の間にいるファーブニルから強力な遠距離攻撃を受けたらしい。更に厄介なのが、相手の人数によって強化される類いの結界らしく、9人以上で突入した場合はカーミラさんでも相手にするのが厳しいほど強化されてしまうんだとか。
『終わったか。情報を纏めた資料は――』
「一応聞いてはいました。4箇所の結界と守護龍を同時に襲撃してからファーブニルを攻撃する、でしたよね?」
『あ、ああ。よく聞いていたな……』
ヨハンさんが立てた作戦は、まず4箇所の守護龍を撃破してから全員が集結し、ファーブニルとの最終決戦に臨むというもの。ファーブニルからの熾烈な遠距離攻撃が予想されるけれど、分散していれば4箇所全部には攻撃されないのではないか、その間に守護龍を撃退してしまおうという作戦。一見何の問題もない無難な作戦に見えるけど、私はこの作戦が上手く行かないと思ってる。
「一時的に力を取り戻した状態のカーミラさんが、一撃で撤退の判断をした強力な攻撃です。私は4箇所に突入したとしても、順番に全滅させられるだけだと思います」
『むう……』
「確かに、ファーブニルは相当な余裕を持っているように感じますねえ……。あの攻撃もその気になれば連発出来るかもしれない、攻撃能力は未知数です」
「4箇所の内、どこか1箇所でも撃退に失敗すれば弱体化出来ないのでしょう? 結界を別の場所に再度設置されるだけではなくって?」
「確かに、新しく作られるだけ、かも? かもかも?」
「最悪の想定は必要だろうねえ~。僕達の中でもファーブニルの守護龍を撃退出来るメンバーは限られてるし、それに守護龍の援護に雑魚トカゲが突っ込んでくる可能性もあるんだよねえ~?」
「守護龍暗殺に失敗した時は周囲の雑魚に取り囲まれました。あれだけの数ですから、囲まれれば脅威になりえます」
『では、どうする? これ以外に方法があるか?』
これ以外の攻略方法となると、かなり難しい。でも攻略可能ではある作戦がないわけでもない……。ただしこれは各員の負担、責任が途轍もなく重い作戦となる。この重役を引き受けてくれるリーダーが9人もいるかどうか……。
『ある、という顔だな』
「厳しい作戦になると思いますが、あります」
『聞かせてくれ、可能性は少しでも多い方がいい。リンネの作り出したこの装備のおかげで、可能性は十分に広がった。後は覚悟の問題だ』
「……まず、リーダーになる人物が10人は必要です」
『10人か……。リンネと同程度の指揮能力を持つ10人としたら諦めてくれ』
「突撃のタイミング、後退のタイミング、それらを臨機応変に判断できる10人が必要です。欲張りすぎず、引き際を見定める能力のある10人が」
「僕がいるさ~。後は、ペルちゃんも冷静になれば出来るでしょ~? レイジ、レーナちゃん、ハッゲ、エリス、ヨハンさん、アイギスさん、あ~……。後は~……」
『(;´∀`)ノ』
「あ、フリオニールさん! ほら、10人! これにリンネちゃんで10人、どう?」
「最後まで生存するという能力も必要です」
「それだとエリスちゃんは厳しいかな~って、思いま~す……ごめんね~」
「ワイは生存ってなると厳しいわ、代わって欲しいんやけど」
「俺も厳しいな。そのメンツに並んだら俺は数歩劣るぜ」
『俺が出よう。元龍将の名に恥じぬ働きをしてみせよう』
「ヴァルフリートさん! やって頂けるなら、ヴァルフリートさんにお願いします!」
『我が名に誓って、必ず如何なる任務も遂行してみせよう』
これで後2人、最終決戦におにーちゃんが居ないのはかなりの不安要素だけど、私が考えている作戦の要を任せられるような人はおにーちゃんしかいないのも事実。残り2人、かあ……。
「俺がやります~。どうですかね、判断力と生存能力だけなら自信がありますけど!」
「高菜さん!」
「高菜さんなら行けそう、あと1人!」
「高菜さんなら間違いないわ、やってくれるならありがたいね!」
「たっかたっかな~」
「安心と信頼の高菜やなぁ」
「ぼ、僕じゃ、ダメ……?」
「もってぃか……」
「もってぃかあ~……」
「もってぃ~……」
「もってぃさんかあ……」
「もってぃ……」
「不安と疑心のもってぃやなぁ……」
「ドウシテ……ドウシテ……」
もってぃさん、もってぃさんかぁ……。ゴリアテさんはバビロンガーエックスの修理が終わったら、対雑魚集団の方に回って貰いたいから、う~ん……。もってぃさんで大丈夫かなぁ~……。
「リンネさん、私ではダメなのですか?」
「カーミラさんはファーブニルにぶつかって貰うからダメ!」
「なるほど、難しいですね……」
『(;´∀`)!!』
『フリオニールが【魔神兵召喚】を発動しました』
「お? ああ!!」
あ、そんなスキルがあったの忘れてたわ! いやでも、誰か来るかな……。崩壊しかけて不安定な空間とはいえ、この空間から呼びかけて応じてくれるような人は……。
『クーガーが呼びかけに応じました』
『他の魔神兵には呼びかけが届きませんでした』
『――マッスル、テレポーートッ!! どりゃああーー!!』
『(;´∀`)……』
「ええ……」
「時空の亀裂を引き裂いて来ましたね……」
「はい、クーガーさんこれ着けといて。銀装備ないと毒で死ぬから」
『おお、マスターリーダー殿! あ、いや! 軍団長殿、何かはわからないが、ありがたく頂戴するッッ!!』
うわあ、クーガーさんしか来なかったよ……。しかも時空の亀裂を筋肉で引き裂いて来たの……? 筋肉ってテレポート出来たんだ、卓越した筋肉は魔術を凌駕するのかもしれない。筋肉って凄い……。
「うるさいですね……」
「リアちゃん、本当のこと言っちゃだめ」
「雪の世界なのに温度が上がりました」
「リアちゃん、ギリギリ悪口だから……」
「人間加湿装置、筋肉バカ、プリン泥棒」
「リアちゃん、リアちゃん……」
リアちゃんがクーガーさんを嫌ってるっていうか、こんなに悪口を言うのは理由があって……。聞いた話なんだけど、サリーちゃんがお菓子作りにハマったらしくって、リアちゃんに食べて欲しいからってピンク色の可愛くて美味しいプリンを作ってくれたそうなんだよね。だけどそれをクーガーさんが食べちゃったんだって、しかも全部。挙句の果てにそれで材料も切らしちゃって、ハッゲさんも材料がなくって、新しく作れなかったんだって。
そしたらもう~~……リアちゃんがブチギレてクーガーさんをほうきで百叩きにして、二度と口を利いてあげないって怒って拗ねちゃったのよね。幸いにも後から私が来て、課金アイテムの『絶品ぷるるんプリン』を与えたから殺すまでは至らなかったんだけど、それから滅茶苦茶仲が悪いのよ。仲直りにって新しくプリンを作って――クーガーさんのは見た目も味も悪かった――くれたり、色々とプレゼントを持ってきて――持ってきたは良いけど、転んでリアちゃんにぶつけた――くれたりしたみたいなんだけど、それでも一向に仲が改善しないみたい……。
『あっ……! オ、オーレリアちゃん……。その』
『オーレリアが【にくきゅーいんぱくと】を発動、クーガーに550Kダメージを与えました』
『ぐおぉ――――』
「シャーー!!」
「あ~~……リアちゃん~よしよし……。怒らない、怒らないよ、ね?」
「フーッ……! フーッ……!!」
これはダメだわ、徹底的に嫌われてるわ。絶対一緒のパーティにしないようにしよう……。嫌われたのが私じゃなくて良かった、リアちゃんに嫌われたら私、生きていけないかもしれない。
「あれ、エリスちゃんってもしかして、嫌われてない……?」
「嫌いです! 変態、変態変態ッ!!」
「あーー……。助かるーー……」
『おい、この筋肉野郎は……。大丈夫、なのか?』
「一応魔神バビロン様直属の部隊の隊長、なんですけど……」
「まあ、リーダーではあるよねえ……」
「もってぃよりは信頼できる~」
「僕、そんなに信頼ないのっ!?」
「リンネちゃんの結婚式で、百合の花びらもしゃもしゃ食っとるアホの何をみたら任せられると思うんや」
「もってぃは変なところでポカしそうで、ちょっと」
うん、もってぃさんごめんね。それにもってぃさんをリーダーにすると従者ももれなく付いてくるだろうから、火力不足になると思うんだよね。一応断る理由を説明しよう。
「もってぃさんは従者との連携による能力が高いです。主に防衛、受けの能力が高い。でも今回はこちらが攻撃側なので、もってぃさんの能力を十分に活かすことが出来ないと思っています。主に激戦区での撹乱、妨害で暴れて欲しいです」
「リ、リンネちゃん~~……!!」
『確かに、それなら見るからに筋骨隆々なアタッカーの……』
「クーガーさんです」
『クーガーのほうが、適任だろう。よし、リーダーは揃った。この10部隊で何をする?』
とりあえずもってぃさんにフォローを入れておいて、私が考えてる作戦を説明しよう。
「まず、前回の突入時と同様に中庭が激戦となるのが予想されます。これはもってぃさん率いる参加者全員で対処しつつ、パーティを2パーティずつ、5班に分断します。左翼の塔、右翼の塔、内城中央、地下宝物庫、ここに陣取る守護龍の撃破の為に4班、8パーティを当てます」
『9人以上で結界内に突入しては、強化されるのではないか?』
「外部で1パーティが待機、先に戦闘したパーティに瞬間火力を叩き出せるメンバーを編成し、交代で待機パーティと入れ替わります。後発パーティは継戦能力の高いメンバーで構成、龍種特有のバカみたいな生命力を削り切るには、こうするしかないと思います」
『これで倒しきれなかったら、どうするんだい?』
「継戦能力が高いパーティを後発にした理由がそれです。先発パーティが再度最大火力を叩き出せるようになり次第、後発パーティと入れ替わり火力を再度集中。後発パーティは先発パーティが立て直すまでの時間稼ぎ、もちろんそのまま倒しても問題ありません」
『なるほど、なるほどな……。しかし、入れ替わるタイミングが……ああ、ああ。なるほどな』
「はい、だからこそ判断能力の高い頭脳となるリーダーが必要なんです」
8人までしか守護龍と戦闘出来ないなら、16人で交代交代で突撃すればいい。本当は24人でやりたいけど、そこまでの人数を割いたら誰が中央の激戦区を処理するのって話になる。それにそんなに連携の取れるリーダーが多くない。自分以外の7人を制御し、引っ張っていけるようなリーダーは。
「残り2パーティは、ファーブニルの牽制です。できれば1班で、ファーブニルの強力な遠距離攻撃を撃たせないのが目的です。更に強化結界消滅後、最終決戦パーティが交代で突入。ファーブニルをここで仕留めます」
『強化状態のファーブニルを8人で抑えるつもりか? 無謀ではないか?』
「そうしなければ、守護龍攻略班がかなりの苦戦を強いられることになります」
『それを、誰がやる気だい?』
『(*´ω`)b』
「本気ですか、フリオニール……!」
「耐えるなら、自信があるよっ!」
「強化ファーブニルの耐久パーティは……フリオニール、どん太、オーレリア、マリアンヌ、ゼオ、デロナ、ゴッドゴールド、それとエリスさんを貸してください」
「え? エリスちゃん? え? えっ??」
「エリスさんの分身スキルと強力な支援が必要です。全員、攻撃よりも防御を優先してください。どん太だけ、隙を見て徹底的に攻撃。ただし無理な攻撃はしないで!」
『わうっ!! (任せてね!)』
『(`・ω・)b』
「エリス~頑張りなよ~。リンネちゃんに期待されてるんだからさ~」
「せや、たまには最前線で気張れや!」
「お、どうしよ、胃薬欲しいかも……。が、頑張りま~す!!」
正直、相手の実力は未知数。ガッチリとした正統派の防御力のメンバーと、高機動力での回避メンバーと、特殊な方法での防御や回避が出来るメンバーで構成してみた。中でもエリスさんは分身や能力向上系の踊りを複数持っている。パーティの底上げが出来るなら、それに期待したい。
「最終決戦は……私、千代、ユキノ、つくねつみれ、ティアラ、カーミラさん、それとレイジさんを貸してください。防御役不在、火力でゴリ押しになります。己の身は己で守ることが出来る、かつ火力最強のメンバーで行かせてください」
「ワ、ワイも行くんかぁ!?」
「エリスちゃんより、ずーっと責任重大じゃんレイジ~。気張れや~」
「きばれ~」
「ほんまかいなぁ……!」
「大丈夫ですよ~。だーっと行って、サッと、やることをやればいいんですから~。ね~?」
「此方達は此方達の、最強最大の力を最大限発揮すればよいのです」
『わかった。この案で行こう……これ以外に良い作戦を思いついてる奴はいるか! どんなことでもいい、小さな可能性が勝利へと近づく第一歩だ! 遠慮なく意見を出してくれ!』
――――結局、この後誰からも新しい作戦は出てこなかった。むしろ交代の合図に関してや、この作戦のタイムリミット、メンバー構成のすり合わせなどが主な話し合いの内容となった。
そして遂に作戦とメンバー構成のまとめが終了し、時刻は15時。これから全員の前で作戦の周知のため、大拡声を使って内容を伝えようという時に、それは起こった。
「全員、聞いてください!! ん……?」
『システムアラート:警告、ログインから12時間が経過しようとしています。警告、食事と休憩をしてください。10分後に強制ログアウトを行います』
「――――え、後10分でログイン12時間なの!? 食事と休憩しろって!?」
「えええええええええ」
「おいおいおいおい」
「このタイミングでかよ、魔王様~~!!」
「あら、わたくしもですわ~~!?」
「あ、ログアウトしてもここ戻って来られるよ! 俺さっきやった~!」
「先に全員トイレとか行ってきた方がいいんじゃね?」
『…………異界人は、枷があって大変なんだな』
「リンネちゃ~ん。30分後、15時30分開始でいいんじゃないか~い。それまで全員準備進めて、これから即開始じゃキツイでしょ~! 15時30分、5分前には集まっておいてね~~!! 一回休憩~!」
「すみません、一旦休憩! 一旦休憩しましょう! 15時30分に再開します!! 一旦解散~!!」
なんということでしょう。12時間の強制ログアウトを完全に、忘れてたんですねえ!! そういえばご飯も食べてないし、真弓とのお出かけも……あ゛……!! 今度、今度ね……!
「良かった、魔王様も人間なんだな……」
「超人過ぎてそういうのないのかと思ったわ」
「速報、魔王様12時間ぶっ通し、ようやく休憩っと……」
「アホみたいなスレ立てんな!」
「なお、休憩後まだやるもよう」
「ダイブ中も疲れないわけじゃないのに、体力おばけ過ぎるわ12時間とか」
「いや~良かった、マジで良かった、ちょうどタバコ吸いに行きたかったんだマジで」
「今のうち行っとけ~。俺もトイレ行ってこよ……」
「ほなワイもちょっと休憩してくるわ~」
「休憩~。おやつ~」
「晩飯食えなくなるぐらい食べるなよ、程々にしとけよ」
「僕も一旦休憩だ~」
「リンネさ~ん! また今度お出かけしましょうね~! 今日は大イベントですから仕方ありませんわ、今度ですわよ~!」
え、真弓それここで、大声で言う? リアフレだって大声でバラしてるようなものでは? やっぱりポンの子なのでは? まあそこが、可愛いところでもある……あるのかな……。やっぱりただポンコツなだけかも……。
「(今の……リアフレだって、バラしてるけど)」
「…………あっ!!」
ポンの子。ポンセウス。うーん、ポン……ッ!





