424 時を超えし黄金郷・1
阿鼻叫喚、死屍累々とはこれまさに。それはもう、凄惨な有様だった。
「何が、起きたの……?」
『ミーにも全くわかりません……。ただ、ただこれは……』
悍ましい瘴気、黒ずんだ紫色の靄が城を包み、プレイヤーも女王の兵士達も、誰も彼もが死の淵を彷徨っていた。外で戦っていたはずのバビロンガーエックスも朽ち果て崩れ落ち、何もかもが腐り果てていた。
「――リンネ様ーー!!」
「来た、リンネッ!」
「リンネさん~!! やっと来てくれましたのね~!!」
「やあ、リンネちゃん……。僕は倒れて動けない人たちを外に連れてくる、ここで状況を説明してて」
「気をつけて、お昼寝さん! お昼寝さん達が頼りですわ!」
「完全な毒耐性がここまで役に立つとはね、外れ能力だと思ってたけど……役に立って良かったよ」
「治癒魔術と解呪魔術が使える人は! いませんか! 高位の魔術師が、神官が必要です!!」
『【デロナ】を召喚します』
復活してすぐに仕事は辛いだろうけど、高位の神官が必要ならデロナちゃんが必要なはず。事情はわからないけれど、この状況を少しでも打開できるなら……。
「あ……。りんねーさま……」
「おはよう、デロナちゃん。痛かったね、ごめんね。守ってあげられなくて」
「ううん、ティアお姉ちゃんは!! ゼオお姉ちゃんも!!」
「居ますーっ! 平気ですっ!」
「大丈夫、デロナのおかげで生きているます。ありがとうっ!」
「よかった……。ううん、もっと良くないことが起きてるんだよね、これは……。古い、邪悪な龍の呪い……!!」
「でろにゃん、わかる? 凄い、まだ説明してない」
古き邪龍の呪い……!? でも、そんな話は全く……。
『厄介な奴が隠れていたものだな』
『ペルセウス! あんたも盾を張って手伝いな! 人手が足りないんだよ、説明役と頭脳は出来るやつが少数でいい!』
「あ、あ~~ん!! わたくしもリンネさんとお喋りがしたいんですの~~!!」
「ペルちゃん、後で沢山お喋りしようね。ペルちゃんの救護活動の話も、聞きたいな~」
「あ!! 行きますわ、行きましょう師匠っ!!」
『こら待ちな!! あ~~なんてわかりやすいダメな子なんだ!!』
この古き邪龍の呪いはペネトレイトや完全毒耐性で防ぐことが出来て、なおかつここにいるのは外に居た人達やラーラさん、リーリちゃん、カーミラさん、ティアちゃん、ゼオちゃん、おにーちゃん (救護活動中)、レーナちゃん……多分バリアか何かで耐えた? ユキノちゃんも生きてる、ああ眼帯してれば状態異常を完全に防げるからか! 逆にダメだったのはエリスさんやレイジさん、ハッゲさんや赫さん達も……。あれ、マリちゃんは!?
「マリちゃんは!?」
「ああすまない、ここにいる。クロノスを分解して解析中だ」
『――――…………』
「うわ、うわ!? え!?」
分解して解析って、ええ!? こ、こいつ、機械……!? 外見は成人男性だったのに、中身は……! まるで時計の中身みたいに歯車ばっかり、機械仕掛けだったんだ……。
「このままではリンネさんがいつまでも状況を理解できませんね。単刀直入に状況を、今でもなお時の暴走が止まりません。黄金の女王が途中で能力を奪い、術式だけが残りました。黄金の女王の影に潜り込み追い掛けたと判断した我々は術式を止める為に行動を開始しようとしたところ……。この地に眠る巨悪が、最低最悪のタイミングで横槍を入れてきたのです」
「邪龍ファーブニル、金銀財宝に取り憑かれた龍なんだって~」
邪龍ファーブニル……。黄金郷に集まる黄金を狙って目をつけ、横取りしようと何処かに身を潜めていたの……? もしかして、この状況……! 黄金郷を昔襲った、伝染病は……!!
「伝染病……!」
『直接的感染性はない。しかし呪われれば体が腐り、朽ち果て、泥のように崩れる。そして新たな呪いが生まれ、それが広まる。強力な毒性の効果を発揮する呪いのようだ』
「不死属性~状態異常抵抗~毒耐性、ペネ、シールドがあれば、効かないっ」
「それと、銀です。銀の力を宿す者は例外として効いていません。ラーラさんとリーリさん、それに銀装備を身に着けていた者は瘴気を退けました」
「銀……」
「銀は昔から悪しき者を退ける聖なる力を宿すとされています。その性質である可能性が高いでしょう」
「でも聖属性マンは死んだ~。聖属性じゃダメ、アウト」
こいつが原因だったんだ、邪龍ファーブニル……! 一体どこに潜んでいたのか、見当もつかないけど……。
「邪龍ファーブニルは呪い殺した兵士を自らの手駒として作り替えています。幸い異界人は力を封じられる程度で済むようですが、高位の神官による解呪がなければ戦線に復帰することは難しいでしょう。恐らく今度は、先程と同じような手は通用しない。奴を止めなければ、今度は奴を現世に放つことになってしまう」
『呪いの瘴気は払っても払っても湧いて出てくる。完全に耐性のある者で対処しなければならない』
「多勢に無勢~」
「銀の装備があれば……」
『悠長に装備を揃えている場合ではないぞ!』
「弱い銀装備、すぐ壊れる。無理~」
女王の兵士は、放置して見殺しにしてもファーブニルに作り変えられ手駒が多くなってしまう。ならいっそのこと、私のところに持ってきて貰って銀の装備にでも作り替えてしまえばいいのでは? 弱い銀装備がダメなら、強い銀装備を揃えればいいだけのこと。例え銀の装備にならなくても、手駒を減らすことには繋がるはず。
銀、銀を作るにはどうする……。それこそ、祝福された銀色の涙こと、銀を金に変えることが出来るゴッドゴールドはここにいる。でも反対力はあるの? 恐らくない、あの女王がその力を与えて作り出したとは思えない。じゃあそれに匹敵する力を持つ人は? 金の狼と同等の力を持つ者、銀の狼はその昔同等の力を持っていたとゴッドゴールドは言っていた……。
「ラーラさん、リーリちゃん」
『どうした?』
『はい、どうしましたかっ!』
「これを、このティアラを装着できるか、試して」
この2人のどちらかしか居ない。さっき作ったばかりの、未完の黄金郷。金錬術を獲得出来るのであれば、銀を生み出すことが出来るはず。きっと、どちらかが装備出来るはず……!!
『エラー、波動のラーラは長の証・金錬術スキルへの適性がありません。王位継承に失敗しました』
『エラー、リーリは長の証・金錬術スキルへの適性がありません。王位継承に失敗しました』
『ダメだ、着けられない』
『ごめんなさい~……』
「…………そっか、ありがとう」
この2人では、ダメなの? じゃあゴッドゴールドなら……。
『ミーを、見ました……ねっ?』
「お願い」
『エラー、黄金のゴッドゴールドは金錬術を使用することは不可能です。王位継承権がありません』
ラーラさんとリーリさんには、一応は王位継承権自体はある……? でもスキル適性がないなら、ダメか……。そうだ、ティアちゃんなら……。ティアちゃんは恐らく特別製、金を他の物質に変える能力でなく、自分自身を変化させる能力を持って生まれてきてしまった子。可能性は、あるかもしれない。
『ンッンー……』
「…………ティアちゃん。これ、着けられるかな?」
「え? 私、ですか?」
「リンネさん……」
もしかしたらこのティアラを着けて、何かを思い出すかもしれない。覚悟は出来てる。
「わかりました、着けてみますっ! わあ~ティアラ、着けてみたかったんです~!」
『エラー、ティアラが装備するには、王位継承権を保有する三名からの承認が必要です』
「あ……! 弾かれちゃいました……」
「三名……?」
王位継承権自体があるのは、銀の狼の末裔であるラーラさん。そしてリーリさん。もう一人……? そうか、そうか!! まだこのエリアで回収してない問題がある!!
「ユーリさんの許可があれば、ティアちゃんにそのティアラを着けることが出来る」
『ユーリ……? ユーリが、まだ生きているの!?』
『お母さんが、どこですか!!』
「雪原を駆ける狂い狼、そのうちのどれかがユーリさんのはず」
『しかし、狼が元に戻ることはナッスィング! それはつまり、無理ということではないですか、ねっ!』
『……狼の姿になったとしても、ユーリの誇り高い精神は変わらない! 信じてる! 探してくる、必ず――』
『どん太が憑依を解除しました。どん太が顕現します』
あ、どん太憑依したままだった。すっかり忘れてた。ごめんねどん太……? うん、どん太? 随分いつもより凛々しい顔をしてるけど…………。
『――――ワォォォオオオオオオーーン!!』
うわ……。出てきて即遠吠えは、びっくりするからやめてよ……。はあ~びっくりしたぁ……。
『あ……!! ワォォォオオオオオーーン……!!』
『ワォォォオオオオオーーン……!!』
『ワァォォオオオオオオオオオーーン…………』
『探しに行くよりは、早そうだな。何を考えている、頭の中の計画を全てアウトプットしてくれ。俺達は何をすれば良い』
「……敵の兵士を、銀の装備に変えます!! 私は魔界軍団長であり、死霊術師です!! 死体を呪物に変えることも出来る、貧弱な銀の装備と呪われた銀のコインが大量にあれば、きっと銀の装備が作れるはず」
「禁呪、アニメイト・フェティッシュ……ですか」
え、禁呪? これが? え、えっ、そんなおっそろしいものなんですか、これ?!
『……貧弱な銀の装備がダメなら、禁呪を持ち出してでも強力な銀装備を作り出すということか。わかった……そこまで、本気なのであれば。総員、動ける者は全員敵兵士の確保に動け! 強い銀装備を身に着けた者、呪いに耐性のある者、毒をものともせぬ者、強力な守護や加護に守られし者は俺に続け! 時間がない、とにかく動け!』
「ティアちゃんとゴッドゴールドはここに居て」
「え、は、はいっ!」
『オーケー、考えがあるのです、ねっ?』
「おにーちゃん!」
『(;´x`)?』
「これから狼の大群が押し寄せてくる、万が一のためにここに残って!」
『(;´∀`)b』
他にここに残すべきは……どん太、オーレリア、千代、他は全員他のことに当たって貰おう。とにかく装備を作らないと、ユーリさんの説得が上手くいくと信じて計画を進めないと……!
「銀装備、銀装備を持っている人は私にください! ああもう、もっと大きい声出ないの!!」
『特殊能力ブレインストームが発動【大拡声】を発動可能です』
「お、あっ……。おお! 銀装備ーー!! 銀装備を私にくださーい!! どんなに弱い銀装備でも構いません、銀装備ーー!!」
「おい聞いたか、銀装備だって」
「あるか?」
「こんなゴミでもええんかな……」
「酸化した銀装備とかでもいいのかな? とにかく、持っていこう!」
「こんな時に乞食かよ、暇な奴もいるもんだなオイ」
「バカお前、他のやつなら乞食だ! でも魔王様だぞ、あの魔王様が銀装備欲しがってるんだぞ、これはなにかあるに決まってるだろうが!」
「お近づきのチャーンスッ!!」
「あ、ズリい!!」
よし、皆に聞こえたみたい。ありがとうブレインストーム、これからも大拡声は使わせてもら……あれ? スキル欄に入ってない!! もしかしてブレインストームって、その場その場で欲しいスキルが一時的に使える、発動するだけってこと!? うへぇ~だよね、ぽんぽんスキルが覚えられるなんて美味しい話ないか。使いたければ何度も発動させて熟練度を上げるか、発動方法をマスターするしかないのね。そのきっかけが出来る、一時的に使えるだけってことかあ……。大拡声は欲しいし、絶対マスターしよう。
「ティアちゃん、私の側に居て。もし、何か……苦しいことや、悲しいことを思い出したら、私に何でも話して。私はいつでもティアちゃんの味方になるから」
「はい……? わかり、ましたっ!」
『ミーも、味方になりましょーう! いつでも相談プリーズ!』
「金色さんは、ちょっと言葉が難しいです……」
『オーノーッ!!』
まず、死亡した全員を再度召喚しよう。この国を狂わせるきっかけになった、すべての歯車が狂うキッカケになった横槍大好きクソ野郎を、ぎったんぎったんに叩きのめしてやる! 何でもお前の思い通りに行くと思うなよ、邪龍ファーブニル!!





