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423 葛藤、理解

「捧げよ」

 

 そんなに黄金が好きなら、望み通り黄金と一体化させてやろう。オークションで今適当に買った金の髪飾りと呪いのコイン、これらと混ぜて黄金そのものにしてやろう。こいつだって本望でしょ。


『呪物化を開始します――――』

 …………

 ……

『――――【黄金装備】【黄金の女王】【呪いのコイン】が共鳴する……』

『【□■未完の黄金郷(デミ・エルドリード)】が完成しました。おめでとうございます!』


 皮肉を込めて組み合わせたものが大当たりだったわ。ウルトラエピックで未完の黄金郷、か。未完の品が完成したって、なかなか矛盾したメッセージだね。仕方ないから性能を見てやるか……。


【□■未完の黄金郷(デミ・エルドリード)】(究極宝具・ウルトラエピック・その他・スロットなし)

・【呪】特殊な金錬術を発動する為には【エルドリード金貨】をチャージして使用する必要がある【0/100】

・【常時】即死系無効・存在証明

・【常時】悪性反動無効・時空干渉無効

・【常時】特攻・弱点削除

・【特金:1】黄金道標:位置を保存

・【特金:1】黄金回廊:専用ポータルを開く

・【特金:5】肉体再生:HP50%回復

・【特金:5】魔力再生:MP50%回復

・【特金:10】能力再生:職ポイント20回復

・【特金:25】反動消滅:クールタイム即時終了

・【特金:100】生殺与奪

・ユニークスキル【金錬術】獲得

・【未開放】不明

 ――いつも暖かく、ひもじい思いをせず、民の笑顔が溢れる黄金郷になりますように。 by初代黄金の女王・ジルディアヌ

 強化不可・破壊不可・王位継承者【――】・重量なし


「ジルディアヌ……。初代の想いは未だ叶えられず、故に未完の黄金郷……か。悲しいね……」


 最後の黄金の女王が、黄金郷の全てを踏みにじったんだ。これまで豊かに、平和に続いてきた黄金郷が失われた原因は紛れもなく、たった今始末した黄金の女王だったのだろう。もしかしたら最初こそ良い女王だったのかもしれない。それがいつの間にか、強き黄金郷、豊かな黄金郷……理想とする黄金郷の姿を大きく描き過ぎて押し潰されて、狂い果ててしまったのかもしれない。

 真相はわからない。ただ、こいつは赦されないことをした。赦されないことを言った。そして私はこれを赦さなかった。誰も幸せになれない黄金郷は、二度とこの世に現れることはない。これでいい、これでいいんだ。ティアちゃんにとっては自身の過去を知る、唯一の存在だったかもしれない。でもきっと、知らない方がいい。もしかしたら、そのことで恨まれるかもしれない。覚悟の上だ。


「そうか…………そうか、そうか…………そうなんだ…………こんなに…………」


 ああ、これが真弓の抱えていた感情なんだ。大切な人の過去を知っているのに、気がついているのに、それを伝えることをせずに守ることを選んだ覚悟。葛藤。重圧。

 重い。伝えて、知って貰って、楽になりたい。でも真実を伝えたら壊れてしまうかもしれない、関係が、心が、今まで紡いできた全てが。伝えられない、葛藤。私は耐えられるかな、この責任に。いつか訪れる避けようのない、ティアちゃんが全てを知って私を審判する日の到来に。


『…………ユーが、やはり。殺してしまったのですね』

「ゴッドゴールド……」


 ゴッドゴールド、私を追い掛けてきたのか。一見ふざけているようで恐らくすべてを知っているであろう存在。普段のふざけた姿は道化として、我々を騙している姿に過ぎないんだろう。本当の彼は、いや彼女は、恐らく……。


「エルドリードに引き込んだのは、貴方ね」

『さァて、なんのことですかね』

「狂った狼を元に戻す方法は?」

『…………人に戻ることを捨て、狼となった彼女達を再び元に戻すことが出来るのは、黄金の女王だけでしょうね』

「神の御業をもってしても、不可能なの?」

『少し、昔話をしましょう。金を喰らう銀狼とは、本来は黄金の女王に匹敵する力を持っていた故に、そう呼ばれていたから。銀狼はかつて黄金の女王に仕えていた忠臣だった――――』




◆ ◆ ◆




 遥か昔、銀の狼と金の狼がこの北の雪原に居た。金の狼は気高く聡明で、銀の狼達の長として一族を繁栄させ導いてきた。いつしか金の狼の周りには狼のみならず、大勢の人や魔族、道に迷った天使達も訪れ、それはそれは大きな国へと成っていった。それはまさに、黄金郷と呼ぶに相応しい程の豊かな国になったのだ。

 しかし、その黄金郷に影が差す。金の狼の体は年々老いが進み、肉体的限界を迎えようとしていた。金の狼は新たな女王を生み出すために最後の力を振り絞り、自らの能力を全て継承させた金の狼を作り出した。これが黄金郷の破滅へと繋がる災厄であったとも知らずに、人々は新たな女王誕生を称え喜び合い、黄金郷の更なる発展を願い、宴を開いた。だが新たな女王の顔には何一つも表情がなく、ただ目の前の光景を見つめ続けるだけ。それはまるで――――人形のようだった。

 新たな女王には心がなかった。日々淡々と過ごし、淡々と国の発展のために尽力した。そんな新たな女王をあざ笑うかのように黄金郷に流行り病が流れ着く。初めこそ女王は病に冒された民を治療し、その対策に尽力していた。しかし、一向に終息する気配はなく、むしろ増え続けていた。

 来る日も来る日も、女王は銀の狼達に病の元を断つ為に命令を与えていた。銀の狼達は不思議と病に冒されず、これは病に打ち勝てという金の狼から守護であると信じ、毎日を必死に生きていた。過ぎる時間、広がる感染、減らぬ死者――――黄金郷に絶望感が漂っていた。


 ある日の朝、黄金郷が急に…………静かになった。


 銀の狼達は我が目を疑った。国中には見たこともない騎士が、黄金の女王に似た顔の、同じ顔に揃いの武装、そして頭には綺羅びやかなティアラを着けた騎士が、体中に返り血を浴びた騎士達が、国中を我が物顔で歩いていたのだから。

 女王が新たに生み出した人形の兵士だった。そして女王が下した命令は、病の元を根絶せよという……銀の狼達に与えた命令と全く同じものだった。だが人形の兵士達が取った行動は民を救う為に力を尽くしたのではなく、殺して病自体を抹消してしまうというものだった。

 銀の狼達は怒り狂い、女王に詰め寄った。あれはなんだと、これはどういうことだと。しかし女王は一切動じること無くこう言い切ったのだ。


「――――初めからお前達が始末せぬから、こんなにも病が広がったのだ」


 銀の狼達はこれに耐えきれず激怒した。この人の心を持たぬ怪物を生かしておいてはならぬと決意し、女王に反旗を翻した。だが女王の持つ力は圧倒的で、銀の狼達は次々に倒れていった。黄金の力によって力が増幅した女王に対抗する術がなかったのだ。


「黄金で溢れているから黄金郷なんじゃない、黄金のように輝き誰もが羨む国だから黄金郷なんだ! 民を殺し、心なき兵隊だけが国を歩いているこれが、これが黄金郷の姿か!!」

「黙れ、持たざる者。我はこの世で最も価値ある物である黄金を自在に操り、汎ゆる物を生み出す能力を持って生まれた。つまり我は最も価値ある物の上に立つ頂点の存在である。我が絶対だ、我が世界なのだ。その我がお前達に全てを与え、全てを管理する。黄金郷の邪魔ばかりする愚者を排除して何が悪い? これこそがまさに理想の世界、黄金郷ではないか」


 銀の狼達の生き残りは遠くの仲間に咆哮し、女王の危険性を、黄金郷の異常さを伝えた。遠くに居た銀の狼達は黄金郷を離れ、道行く者達に黄金郷へ向かうなと伝える警告者として暮らすことにした。

 仲間の遺体は女王に奪われ、姿形を真似る人狼へと変えられた。それらは他国へ渡り、銀の狼達の警告虚しく黄金郷には各国から黄金が集まることになる。そして銀の狼達の中にも、いつの間にか人狼が混ざり……。長い、長い時を掛けてゆっくりと、女王の支配が血に流れるようになり、エルドリードへ帰ろうとする銀の狼達が出るようになり始めた。

 そんな中生まれた希望が、古き血を継いで生まれた銀の狼、ラーラとユーリである。人狼達は当然ラーラとユーリを排除しようと必死になった。しかし最後の希望であると本能的に感じた銀の狼達は、黄金の女王の支配を受け少しずつ思考を侵蝕されながらもラーラとユーリを必死に守り、遂に一人で生きられるまでに成長させることに成功した。そしてラーラは紆余曲折を経て里を離れることとなり、ユーリは里へ残ることとなった。

 やがて大陸から徐々に金が失われ、黄金郷を危険視した国々が銀を持ち出し、黄金郷の人狼にも気が付きこれを排除すべしと立ち上がったのが、魔導帝国デリランドとデリランド皇帝が信仰している時刻の神カイロス、その他にも各国から同志達が立ち上がり…………黄金郷は遠い時間の果てに封印されることとなった。

 誤算だったのは、カイロスに対抗心を燃やしたクロノスを同時に封じてしまった為、内側から徐々に時を進められ、現代に追いつかれそうになっていたことだろう。この時間暴走の余波に巻き込まれた複数人が古い時間に取り残されることとなり、その中には時の牢獄へと封印する呪いを撒き散らす怪物に襲われた者達、アイギスやヨハンも引き込まれてしまった。

 そして長い時を経て、異界人達がこの地を見つけた。何百年と停止し続け、遂に突破口を見出して動き出し、現代に向けて加速を始めたこの黄金郷に。




◆ ◆ ◆




「――なんで、貴方は黄金の女王に逆らったの?」

『ミーも最初はクィーンの言うこと絶対でしたヨ? でもでもしかーし、ファーストはとてーもいい子いい子でした。ええ、とても……いい子で。黄金の女王に作り出された人形の中で唯一、感情のある不思議な子。ティアラの精神支配も受けず、命令に従うフリをして全く命令を聞かなかった優しい子……。病に倒れた人々を殺したと嘘をついて隠し、黄金を使って皆を治療していました。そして見つからないように逃して、少しでも人を救おうとしたあの子を……ミーは見ていました。影響を受けた。学習したのデス、これがあるべき姿だと。これが正しいのだと、ミーは思いました』


 全部、黄金の女王が……。こいつさえいなければ、でも……。少し、ゴッドゴールドを見ていると、ほんの少しだけど思うところはある。

 生まれたと同時に母を失い、国を任され、望みを叶え続け、それでいて黄金の女王に影響を与えられるような善人が、近くにいなかったのかもしれない。もしかしたらそういった人が居たのに、それを見て何も感じなかった可能性もある。ゴッドゴールドには生まれてから少し余裕があったんだと思う、だからファーストを……ティアちゃんを見て、学習出来る時間があったんだと思う。

 もう少しだけ、黄金の女王に余裕があったら。もう少しだけ、誰か黄金の女王に寄り添う人がいたら。たらればが尽きない、結果としてそんな人は居なかったし、黄金の女王は人の心を学ばなかった。その結末がこれ、それは揺るぎない事実。


『しかし、ファーストは処分されてしまいました。あの時、黄金郷に来たばかりのクロノスにその行為を見られ、黄金の女王に伝えられたのです。ファーストは時空の彼方へ捨てられ、モンスターに襲われ死んだ――――と、映像では見えていたでしょうネ』

「貴方……もしかして……」

『当時のミーにはそれが限界でしたヨ』


 そっか、そうなんだ。時空の彼方に飛ばされたティアちゃんを守ったのは、ゴッドゴールドだったんだ……。モンスターの姿に化けて、襲ったように見せかけて。


『あの時のミーは、全然力がありませんでした。その上戦争が起きて、このままではミーは死んでしまうと。自由意志を持ち、まだ世界のほんの一部しか見ていない内にここで一生を終えるのは絶対に嫌だった。外に出たい、そして黄金の女王が間違っていることを証明し、目を覚まさせてやりたい。ミーは……。今となっては、何が正しかったんでショ……』


 ん~……。ん~~……。何が正しかったのか、何をすれば最善だったのか、どうすれば銀の狼は大勢が死んでしまい駒にならずに済んだのか、その当時のティアちゃんを救うにはどうするべきだったのか、そんなのわからない! でも、でもさ。私は十分ゴッドゴールドは立派な奴だと思うな。


「私はティアちゃんと出会えたし、カーミラさんとも仲良くなることが出来た。そのおかげで黄金郷に辿り着く事が出来たし、何が正しくて何が間違ってるかなんてわからないよ。ただね、正しい行いをしようと必死に学習して努力した。それだけは真実なんだから、胸を張って生きるべき!」

『…………そうデス、ねっ!! さ、帰りまショ! きっと元の時空でもそろそろ――』

『個人メッセージ◆◆◆◆◆:……ネさ……大変……早く…………て…………ださ……まし……』


 あ~……。嫌な予感がする~……。ちょっと、薄っすら思ってたんだよね。クリアした割にはどうにも、誰からも連絡が来ないなあって。


「急いで戻らないと、何かまだ……見落としてたかもしれない!」

『オーケェイ! ベリーベリーファーストでゴーッ!!』


 まだ見落としてた何かがあったか、攻略に必要な時間がとにかく少なかったもんね。これは何かある、気を引き締めて現地に戻ろう。や、その前に反魂の儀式で全員を復活させてからにしよう。無策で戻ったら大惨事かもしれないしね!

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本作をご覧頂き誠にありがとうございます
 宜しくお願いします!
ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました ~裏イベントを最速で引き当てた結果、世界が終焉を迎えるそうです~Amazon版
アース・スターノベル様より出版させて頂いております!
― 新着の感想 ―
[良い点] 黄金の女王の力は伊達じゃないですね。ゲキつよ装備になった。でも王位継承者の欄があるってことは黄金の女王の血統じゃないと装備できないかも。それか装備したら黄金の女王になるか。 流行病はやって…
[良い点] とりあえず女王だろうが捧げよしてしまうリンネさんグッジョブ。 うーんぶっ壊れアクセですわね! 究極宝具の名前に恥じない性能ですわ……。 何も使わず常時存在証明はありがたいですし、悪性無効だ…
[一言] いややっば……(白目) こんなやつから生み出された装備使いたくないけど性能的にはめちゃめちゃ有能……!? というか始まりの志をその後の人間が踏みにじるのはよくある事だけど、 「初代の言葉」が…
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