420 Memory of Eldorado part11
『報告、致します。侵入者が、城門を破壊。大型の攻城戦兵器を、所持している模様、です』
「小賢しい。巨人を放て。兵も放て」
『巨人を、次元の狭間より、召喚します……。クロノス様、ご許可を……』
「時の扉の鍵だ、使え!! 何としても食い止めろ!! 現代に、現代に追いつけば人狼を世界中に紛れ込ませ、俺達は逃げながらジリジリと勢力を広げれば良い! 何百年と耐えてきたんだ、たかが一ヶ月そこらのこと!!」
「黄金郷は再び取り戻せば構わない。いずれ、この世界が我らの黄金郷へなるのだから」
『兵も、放ちます』
攻め込んできたか、身の程知らずの愚者共が。ここに集うは悠久の時の流れより迷いし古強者の写し身。二万と一千の我が軍勢に押しつぶされ、時の藻屑と消え果て朽ちるがよい。
「あの時はカイロスに一歩劣った、油断していた、身内だからまさかここまでするまいと高を括っていた。今度は、今度こそは同じ手は通用せん!!」
「期待している。我らの黄金郷を取り戻すその時を」
「ああ、俺とお前が組めば無敵だ。まさに最強だ!! カイロス如き造作もない……!」
クロノスは感情の起伏が激しい。長き時の中で、この者が一度たりとも落ち着きを見せることはなかった。せっかちなところを除けば、この男は完璧だ。我と共に力を合わせればまさに無敵、不死身と言って過言でない。だが、この加速術式を展開している間は無防備だ。これを邪魔されることだけは許容出来ない。
「玉座の間に近づけるな。あらゆる者を排除せよ」
『はっ……』
『女王様、狂い狼に、動きがあります……』
「放っておけ。所詮、我の手を離れ壊れゆく愚かな運命を選んだ者達だ』
『しかし……』
「くどい」
『――――…………』
『処理、致します。セカンド、手伝ってください……』
『はい、ワン様』
狂い狼、我の手駒として仕えることを拒んだ失敗作が……。愚かにも強い自我に芽生え、我に利用されるぐらいならばと、精神を狂わせ命令を聞かぬ獣となることを選ぶとは、本当に愚かな……。我が兵士として、黄金喰らいとして再び我に従うことこそが、最も賢明で幸福な選択だというのに。
「手が穢れた」
『ただいま、お拭き致します……』
理解できぬ。我に作られた生命が、その末裔の分際で、やれ感情だ、やれ魂だ、我に従えばそんなものは不要だというのに。理解できぬ。狂い狼も、そして今我の城へ攻め込んできている、侵入者達も……。不快だ。不愉快だ。万死に値する。
◆ ◆ ◆
『ええい鬱陶しいねえ! 次から次へと!! リンネは前に出てくるんじゃないよ!!』
「おらっ!! 道を、開けろ!!」
『メルティス聖騎士軍、前へ!! 侵入者を進ませるな!! この広場で止める!!』
なんとも、なんとも歯痒い……。今すぐ前線にブラックホールをぶち込みたい、ヴラドを発動したい、魔狼斬滅で暴れたい……。
『デリランド魔導帝国第四小隊の名に誓って! 侵入者をこの先一歩も通すな!!』
『知った顔が居るのは、やりにくいな』
「代わりに撃とうか?」
『いや、姿形こそ同じだが』
『システム:ヨハンが【滅びの魔弾】を放ち、デリランド兵の頭を撃ち抜きました。即死!』
『似て非なるものだ。戦場では迷ったほうが死ぬ』
「ヒュー……」
『しかし、数が多いな……』
本命は王座の間に居る、突入する私達は力を温存する為にタンカー職の人たちに囲まれて移動、道を切り開くのに暴れているのはアイギスさん率いる近接部隊と、それを援護するヨハンさん率いる射撃部隊と魔術職の混成チーム。最初こそ押せ押せだったんだけど、向こうも絶対通してなるものかと本気で守りが硬い。何か、突破口になるような一撃を与えたい所だけど、向こうだって伊達にコピーしているわけじゃないらしい。軍隊に所属していた人をコピーした人狼が指令を出していて、隊列もキッチリ整えて迎え撃ってる。
本当のことを言って悪いけど、私達は言ってしまえば烏合の衆。この場で呼びかけて集まっただけの気ままな集団に過ぎない。本物の軍隊と当たれば当然差が出る……。このままだと、カーミラさんが動くか私達が動くか、その必要性が出てくる……。外ではバビロンガーエックスと射撃職魔術職の混成チームが西に居た狼達を迎え撃ってる。バビロンガーエックスに頼ってはこっちにも大きな被害が出るし、どうすれば……。
どうにか陣形を崩せばいい、しかし不用意に範囲攻撃魔術を撃てば味方を巻き込む可能性が高い。人は限られてる、後方待機要員の私達は力を温存したい、この要求を通す方法……。相手は幾多の戦場を駆けてきた軍人のコピー、強かった頃の連中らしいメルティス教の騎士、冒険者風の連中に、傭兵のような連中、山賊風の大男、かなり強い巨人の戦士も数人居る。あの巨人にアイギスさんが捕まってる内はどうにも出来ない……。
――――ああ、そうだ! 私ってば何遠慮してるんだろ!!
「ヨハンさん、この城の監視塔を破壊しましょう。あと、逃げ道を塞ぐ為に岩の壁を戦線に作成、破壊された瓦礫がこちらに来ないように二重三重で。こちらはやや後退しつつ、瓦礫を相手に押し付けて押しつぶして陣形を破壊しましょう」
『それを実行可能な人員は』
「大砲持ちが大勢居るッスよ!!」
「我の持ってきた爆弾を使ってくれ」
「モロトフくん、投げるの得意っしょ!」
「火炎瓶も投げ込め! 誰かバックパックから出せ!」
「投げて、ええんか!? これ全部投げてええんか!? 投擲スキル磨いてきたからよ、任せろぉぉ!!」
こんな城、滅茶苦茶に破壊して進めばいいじゃん! なーんでお行儀よく門を潜って正面から入ろうとしてるんだろ、ぶっ壊せぶっ壊せ~目的は城の奪取じゃないんだ、徹底的に破壊しちゃえ~!!
「壁を作れる人はモロトフさんの投擲に合わせ壁を展開、投擲を見たら大砲持ちの人は一斉に城を、塔を破壊してください! 瓦礫で敵を埋めます!!」
「あ~~僕も毒爆弾投げたい~~」
「ダメ~~」
「ダ、ダメでしょ、戦力温存……!」
「つくねさんも小龍砲使いたいですよね~……。ヴァルさんのも見たいなぁ~……」
『ユキノ嬢、そのスリスリをやめてくれ……!』
上手く行けば圧倒的に有利、上手く行かなくても突破口ぐらいは見えてくるはず! よし、ぶっ壊そう!!
「まだ持ってる奴いるか!?」
「装填完了ー」
「おーし、チャージ出来たぜー」
「カウンターミサイル、除去の準備出来ました」
「私は強力な目眩ましを使います!」
「よし、揃った! 行ける!! 全力で行くぜ!!」
『システム:モロトフくんが【テロリズム】【破壊の美学】【フルスロットル】【クイックスロー】【スプラッシャー】【ワンモアチャンス】を発動、【ベルセルクポーション】【冥神のエッセンス】【綺麗な流れ星ですねポーション一号】を使用しました』
うわ、凄いバフの量……。対人戦とかボスと対峙してる地獄パーティとかならこんなバフ絶対盛れないけど、こういう時は盛り放題だわ……。こういうのも、ありなんだ……。
「目標、敵陣破壊及び地形破壊! 自陣の被害を最小限に食い止め、徹底的に敵陣を破壊せよ!!」
『システム:【攻撃の号令+2】を発動、自軍・友軍が攻撃力強化状態になりました』
「改良型デストロイハリケーンクリーナー、起動」
「うおおおおおっしゃあああーー!! 行くぜ行くぜ行くぜ行くぜ!! ぶっ壊れろぉおおおーー!!」
「フラッシャーボム、行きます!!」
「撃て!!」
「撃つッスよーー!!」
烏合の衆には、烏合の衆の戦い方がある。型に嵌まった陣形は確かに強い、でもそれじゃ対応出来ないほどどうしようもない滅茶苦茶な攻撃を仕掛けてくる相手には、どうだ!!
『隊長! 相手の様子が!!』
『監視塔を破壊しようとしています!!』
『塔!? いかん、下敷きにする気だ!! バリアを出せ!!』
『も、ものすごい数の何かがこっちに――――』
「うはははは!! 燃えろ燃えろ!! 吹っ飛べ吹っ飛べ!! 木っ端微塵だぜ、一人絨毯爆撃の時間だオラァ!!」
「凄え勢いでアイテム減ってく!! 怖え、まだ誰か持ってねえのか!!」
「あ、ある!! とっておきのがカバンに!」
「虎の子だ、使え!!」
「ッシャア!!」
『ギャアアアアアアアアアアアアアア!!』
『あああ、熱い!! あああああ!!!』
『グオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
『酸か!? 火炎瓶、爆弾!? くそ、何でも手当たり次第――――』
「壁を出します! 皆さん、合わせて!!」
「メタルウォール!!」
「メタルウォーール!!」
『…………何かデカいことをする時は言いなぁああ!! 死ぬだろうがあああ!!』
アイギスさんごめんなさい!! アイギスさんなら大丈夫かなって!! むしろこの程度で死ぬとは思えなかったんで……!!
『この程度で死ぬようなお前じゃないだろうが』
『そりゃそうだけどさあ!!』
『ならこの爆撃が収まったら一斉突撃の準備だ、急げ!』
『人使いが荒いったらありゃしない、まあ……退屈してたところさ!!』
「壁、ものすごい勢いで叩かれてます!」
「鋼鉄の壁が、崩れそうですね」
『なら逆にふっ飛ばしてやりな、更に瓦礫を追加してやるんだよ!!』
「火力集中、メタルウォールを先にこちらからふっ飛ばします! 同時に残りの爆弾を全部投げてください!」
「ウオオオオォォオオオ!! グォオオオオオ!!!!」
「あ、ヤバいッスよ! モロトフくんドーピングし過ぎで……!」
「う、撃って!! 早く!!」
わあわあ、こんなに無理なドーピングしたら、そりゃあ体がヤバいですよね!? お願い早く、間に合って――うわ、撃つとほぼ同時に投げてる!? 弾速ほぼ変わらないし、ええ……!? あ、流石に大砲勢の着弾のほうが早かった、良かった~……!
「爆発と同時に突撃!!」
『私に続きな!! 行くよ!!』
『アイギス達を援護する、味方に当てるな』
「ォ……」
「モロトフくーーん!!」
「ああ、モロトフ……。イカれた良い奴だったよ……」
け、痙攣してる……。モロトフくん、痙攣してピクピクして死にかけてる……。ご、ごめんなさい、貴方のおかげで突破口が開きました、本当にありがとうございました……!!
「よし、私達も前進します! 各員、状態と装備をもう一度点検してください! 奇襲を警戒しつつ前進、頭上からの奇襲も考えられます。射撃班は頭上を警戒してください!」
『爆発で鼻が効かない、臭い……!』
『うぅ~……!』
『きゃう~~…… (くちゃい……)』
ああ、わんこ勢がお鼻ダメになってる!! そ、そうだよね、手当り次第攻撃性のアイテムを投げたから、薬品臭が凄いよね……。
『城内に通じる門までぶっ壊してるじゃないかい……』
『凄まじいな、これほどの破壊力とは』
『これは壁を叩かれたんじゃないね、さっきの爆発で壁が破壊されただけだね』
『そのようだな……。過剰殲滅だったかもしれんが、まだ敵は大勢残っているはず。ゴールドによればこの広場を抜けた後は狭所での戦闘が多くなるかもしれんとのことだ』
ん~……。そんなところに入るの、嫌だなあ~。敵のホームに飛び込むような行為は避けたいよね。
「じゃあ、広くしましょう!」
『…………』
『それ、も……。アリ、だが……』
「向こうが設置してる罠、待ち伏せポイント、全部潰しましょう! ここから爆発魔術とかいっぱい使って、内部をボロッボロにしちゃえば全部台無しです!」
「わ、わっち、職ポイント回復早いから、や、やる……! 消耗、少ないか、かから」
『俺もやろう。連発しなければ問題ない。消耗という程でもないからな』
よし、じゃあつくねちゃんとヴァルフリートさんにね、やって貰おう。
「全員聞いてくださーい!! 今から敵の罠、待ち伏せを全部潰すのに、城を燃やしまーす!!」
「は?」
「リンネさん……!?」
「わ~リンネ式攻城術だあ~~」
「爆発魔術、火炎魔術、雷撃魔術、広範囲殲滅攻撃を持ってる人は前に!! 城の入口から内部を燃やして、城を巨大かまどにしてやりましょうーー!!」
『やることエグいよこの子、人間の考えることかい……?』
『皇帝陛下ですらここまでの残虐行為は思いつかん』
「うわーリンネちゃんエグいッス~」
「かまどって……」
「ひぇ~……」
ん? でも、これが一番安全で手っ取り早いよね? だってわざわざ向こうのテリトリーに入ってバカ正直に戦ってたら、この戦力差は覆せないもん。それに入り口の守りが緩くて開放されてるってことは、どうぞ攻撃してくださいって言ってるようなものだから。
「か~ま~ど~。か~ま~ど~。どっろどろ~」
「レーナさん、絶好調ですわね……」
「楽しい~~」
「リンネ殿、此方の出番は……」
『(;´∀`)』
「大丈夫、この後本命が待ってるから。それに今急いでるから。これは仕方ないの」
「急いでいるなら仕方ありませぬ」
『(*´∀`*)』
「わあ~! 今から敵さんのお城、燃えちゃうんですか~?」
「そう、私も手伝う。獄炎は消費が少ない」
「あっ! 私もやります!! 猫ちゃん消費タイミングなのでっ!」
「じゃあ余力のある人は全員攻撃で、敵の城を燃やせーー!! 総員、構えーー!!」
◆ ◆ ◆
『女王様……。女王様……』
「なんだ、騒々しい。まだ兵の余力はあるであろう」
『い、いえ、それが……』
「残り二日を切る、残り一日と僅かだ…………なんだ、随分と、暑いな…………」
騒々しい、敵は未だ城に入ってすら居ない。この城は迷路のようなもの、狭路で罠にかけ、待ち伏せで確実に潰せば何も問題ないではないか。そして迷えば迷うだけ、この場所に辿り着く時間は遅くなる。余裕で間に合う。何も問題は…………暑い…………?
『城が、燃やされています……。崩れて、おります……』
「なんだと……?」
『城が超高温の炎によって、溶解しています……。まるで今この城は、炉のように燃え盛っております……』
「消火せよ。洪水の魔術で対抗せよ」
『既に……実行しております……』
『か、火力が……』
『追いつきません……』
なんだと……? 我が城が、溶けている……? 馬鹿を言うな、そんな馬鹿げた城攻めがあってたまるか。
『この城は、外からの魔術攻撃には非常に強く、作られております……』
『しかし、物理的なもの、内部からの攻撃には……』
「黙れ」
なんだ、これは。我は、今何を相手にしているのだ……? 理解できぬ、理解できぬ、理解できぬ、何者だ、何なのだ、何だというのだ、これは……??
「金を、金を使う。掻き集めよ、城を再構成する」
『はっ……』
『女王様の、お心のままに……』
焦っている……? この、我が。侵入者如きに、つまらない人間如きに。ありえない、この我が……。
「なんとしても食い止めろ、この術を絶対に邪魔されてはならないんだ!」
「黙れ、黙れ。今、やっている」
おのれ……。おのれ、おのれ、おのれおのれおのれ……。忌々しき侵入者が、我に歯向かったことを永遠に後悔させてくれる……。文字通り、永遠に、な。





