419 Memory of Eldorado part10
「後三日、残り三日だ。三巡後の昼を迎えた時、遂に憎き我が姉の時を刻む世界へと追いつく!!」
『女王様、報告、致します。侵入者を発見、しました。巨大な空間崩壊を引き起こして、います』
「我らの新たな世界を邪魔しようというのか。何故だ、何故我に逆らう? 何故だ?」
度し難い、ああなんとも度し難い。我を恐れ黄金郷ごと封じ込めた忌々しきカイロスも、我の下へ帰らぬ銀も、我を邪魔する有象無象達も何もかもが度し難い。
「我が管理し、我が与え、我が救い、我が生み出し、我が滅ぼす。人は後先を考えず争うばかりだ、我を恐れるばかりで破滅の道へと歩み続け、勝手な真似ばかりする。何が気に入らぬのだ? 何が恐ろしいのだ?」
『城の前へ、侵入者が……』
『西の狼達が、姿を奪えぬ不正な突破口が……』
『この城が、攻撃されそうです……』
「三日だ、なんとしても残り三日、今更失敗出来るか!!」
「次元の狭間より、兵を出せ。我らの玉座の間に近づけるな」
『はっ……』
「一切合切を殲滅せよ」
『女王様のお心のままに』
我とクロノスが合わされば、この世の時間を支配することなど造作もないこと。静止した世界に取り残されたくなければ、時を黄金で買わせる。世界がまた、我に黄金を貢ぐようになるだろう。
銀、赦し難い……。我を避けるように、我の管理から逃れるように使い始めた銀、シルバーと呼ばれるあの貨幣が。忌々しい、この世から消し去ってくれる……。我に貢げ、我を讃えよ、我に跪け、我が永劫の管理から外れることなど赦されぬ行いなのだから。
「――ふぅ~ん……」
◆ ◆ ◆
「――リンネ~。忍び込んできた~。やっぱり時の神、黄金の女王、グル~」
「姿を確認できましたか?!」
「見えない~。でも話してた内容、確定。後三日って、言ってた~支配するっても~」
「そうですか……」
『便利だな、それが魔界の技術か。興味がある』
「じゃ、じゃ、今度射撃教えて~。いっぱい魔界の技術教えてあげる~」
『ここから生きて出られれば、だな』
やっぱり、時の神と黄金の女王は協力関係で確定……。それに、後三日……。つまり、残り1時間ってこと……。12時がタイムリミット……!!
『ンッンー……。開いても、誰も来ませェんねェ……』
「仕方ない、私達だけでも何としても突破しよう!」
『行動開始、いつどこから仕掛けてくるかわからない。油断するな、全方位を警戒しろ。頭上の警戒も怠るな』
「お待ちになって! ギルドメンバーのリストが、オンラインになりましたわ!」
来た……!? お昼寝さん達に、繋がっていないかもしれないって諦めてたメッセージが届いてたんだ! 本当だ、お昼寝さんに、エリスさんに、レイジさんに、ユキノちゃんも、つくねちゃんも! ハッゲさんもオンラインになった!! 皆、皆来てくれたんだ――――あ、あえ、ええええ!?
「お、お、おっ……」
「多いですわ!? どれだけ入ってきますの!?」
『ンッンーー!? サウザンッ、オーバーッ!? ワンサウザンッドゥ!!』
『千人を超える数が、来ているのか!?』
『随分と太いところと繋がりがあったんだねえアンタ達、こいつは凄い!』
ギルドメンバーさんだけじゃない、魔術図書館の人たちも、ラブマッチョも、もふキンも、ダメぽさんの……なんだっけ……のところも! 皆来て、知らない顔もいっぱい居る……。もしかして、野良の人達まで来てるってこと!?
「やっほ~。いやあ~本当に11時に何も起きなかったらどうしようかと、ちょっとしたラグがあってヒヤッヒヤだったよ~。呪いのコインは、全員既に使ったよ~。いや~ビックリしたね~これは」
「楽しそうなことしとるなぁ相変わらず~……なんやこのバカでかい城!?」
「レイジ、城攻め~」
「この世に顕現してはいけない存在が、古い時間軸から現代に追いつこうとしているんです!」
「あ、はいリンネちゃん。拡声器」
「えっ」
「リンネさんが踏んだフラグなのですし、リンネさんが説明しませんと!」
「大丈夫~。リンネなら皆言うこと聞く~」
「え、えっ……」
え、嘘、こういうのってお昼寝さんに説明してお昼寝さんがやるものなんじゃ……。あ、時間がないんだった……どうしよう、き、緊張する……。ガタガタ震えながらになるかも……わあ!?
『わうっ!! (僕の背中、乗って~!)』
「こ、こら! どん太~!!」
「全員聞いて~~!! リンネちゃんから状況説明があるよ~~!!」
嘘でしょ……!? あれよあれよと、まだやりますとも言ってないのに、本当に私がやるの!? ええい、時間がないし、やらなきゃいけない流れなんだ、簡潔にわかりやすく何をするか伝えればいい、はず!
『全員、聞いてください! この世界は古い時間に取り残された隔離空間、ここには時の神クロノスと黄金の女王なる存在が、私達の活動する時間軸へ合流し侵略をかけるべく時を加速させています!!』
「時を加速……?」
「うわ、太陽メッチャ動くの早いじゃん」
「しーっ! 魔王様の話を黙って聞いてろ!」
「美しい……」
「踏み台になってるどん太くん、メッチャ尻尾振って喜んでる……」
「此方も踏み台になりたい……」
『(;´∀`)』
「今大事なところだから!」
うわあ、皆静かにならないでよ……。心臓が、バックバック言ってうるさい、これ皆に聞こえてない? 聞こえてないよね?? 大丈夫だよね?
『敵の兵士はウェアウルフ、人狼です! ここに迷い込んだ人間の皮を被り我が者とし、存在を奪い取る恐ろしい存在です! 数は、二万を超えるとされます!!』
「二万……!?」
「嘘だろ、これで足りるのか……?」
「おーいこっちだ、そこに置いてくれー」
「何だようるせえ連中居るな……」
『この世界は20分で1日が経過し、もうすぐ吹雪の夜が来ます!! 敵は恐らく吹雪の夜とともに攻め込んで来ると思います! 城からも大勢の敵が溢れかえってくると思われます!!』
「もしかして、挟み撃ちにされるんじゃ……」
「ここ、ヤバくない?」
「そいつはこっちだー」
『残り時間は三日、つまり後一時間で時の神の目的は達成されてしまいます。つまりそれは、我々の敗北を意味しています……!』
「ええ……」
「ヤバいじゃん……」
「タイムリミット短え~……」
でも、敵の勢力は事実だから伝えないと……。どうしよう……。
『……士気だ、士気を上げる何かを言え』
「え?」
『……勇気付けろ、それで十分だ』
「は、はい!」
ヨ、ヨハンさん……! わかりました、えっとでも、何を言えば……。
『……ここにいるのは!! ルナリエットを沈め、メルティシアを攻め落とした、勇敢なる地獄の女神の戦士達です!! 古き時代に取り残され、埃を被った時代遅れの連中に、現代の厳しさを叩き込め!! 時の神? 黄金の女王? 真似するだけが取り柄の人狼? 恐れるな!! 魔神バビロン様、そして姉妹神である死神カレン様、冥神ティティエリィ・ティスティス様、宝神ジュエリアに勝利を捧げましょう!!』
あ~……。あ~~……。すっごい、滑った? 静かになっちゃったんだけど……。
『敗北は赦されないよ!! 近接戦闘に自信のある奴は私のところに集まりな!! 素早く!!』
『射撃技術、破壊工作、特殊な戦闘に自信のある奴は俺のところだ。モタモタするな!!』
『魔術師はミーのところにあーつまりなさーーい!! カモォーーン!!』
「お、お、俺は破壊も近接戦闘も得意だ!!」
『アンタはこっち来な、デカ斧!!』
「やるぞ、俺は爆弾作りが得意だ!」
『来い、城門をふっ飛ばす奴が必要だ』
『リーンネッ!! アナータは精鋭を集めて城へGO!! 雑魚はお任せプリーズ!!』
「は、はい!!」
「よし、それが最後だー。ここに置いてくれー」
あ、良かった……。滑ってなかった……! 皆、ニヤッとしてやる気に満ち溢れた顔してる……。良かったあ……。で、あの、さっきから大きな荷物を運び込んでるのは、何処のどなた? あ、ゴリアテさんってことは、まさか!!
「失礼、私の名前はゴリアテ。パペットマスターだ、よろしく頼む」
『ヨハンだ。悪いが一人一人対応している暇は――』
「まずはこれを見てくれ。よし、行くぞ! 起動せよ、魔神バビロンガーエックス!!」
『システム:ゴリアテが【マスターパペッティア】を発動、【魔神バビロンガーX】が起動します……』
『こ、これは……』
「お~。持ってきた、偉いぞ~ゴリゴリ~」
「あ、レーナさん……! こちらにいらっしゃったんですね……」
『なんだい、そのバカでかいのは!?』
『オーーーウッッ!! グレェエエエエーーットッ!! エーーーックセレンッッッ!!!』
やっぱり、例のアレを搬入してたんだ! しかも前よりパワーアップしてる感じがする、あ、顔がちょっとニヤッとして可愛くなってる!! いいね……。いいねいいね、今のバビロンちゃんの容姿に合わせてドリルツインテから、ふんわりロングヘアに変わってる! いいね~……。スカートの中覗いちゃお、あっ。ミサイルポッドになってる……。うぅ~ん……。
『そいつで城の門を壊せるか?』
「まず全力を叩き込みましょう。それでダメなら……」
「私が本気で魔術を撃ちましょう」
『その時は頼む。よし、希望が見えてきたぞ。作戦を立てる! 突入班、制圧班、挟撃を防ぐ防衛班を作成する! この中でも強者と自負している者は前に出ろ!! リンネ班で2班作れ、それともう一班を援護部隊として作成、合計3班で本丸を叩く精鋭を選出しろ!』
「あっ! 私の従者は全員ここに! ペルちゃん、レーナちゃん、ユキノちゃんも!!」
「僕が集めよう~。エリス、ハッゲ、レイジ、きぬ、高菜く~ん、つくねちゃ~ん」
「え、私!?」
「え、俺!?」
時間がないから、ちゃっちゃとメンバーを決めて突入準備をしないと……。えっと、全員いるよね? あれ、どん太は? あ、どん太踏み台にしたままだった! ごめんごめん、ありがとうね。
「破壊力の高い班と、広域殲滅とフォローに長けた班で分けるよ」
『私も連れて行ってくれ!』
『私も、お力になれれば……』
う、ラーラさんとリーリちゃんもかあ……。ラーラさんはともかく、リーリちゃんは大丈夫かな……。うーん心配だけど、よし! おにーちゃんとヴァルフリートさんにガッチリ守らせよう。リーリちゃんも大事な鍵になる人物な気がするんだよね。
「私、どん太、ラーラさん、ペルちゃん、千代、ユキノちゃん、ティアちゃんが第一班!」
「りあにゃん~。ぜおぜお~。でろにゃん~。リーリ~。おにーちゃ~ん。まりにゃん~。ゔぁるゔぁる~」
「抜け漏れ居る? 名前呼ばれてない子! ユキノちゃんちゃんと呼んでた!?」
「ユキノは呼ばれました~! 一緒で~す!」
『(おにーちゃん、ヴァルフリートさん、リーリちゃんをがっちり守って! この地域に、お母さんが居るかもしれないの)』
『(*´∀`*)!』
『(承知した。任せてくれ)』
「ありがとうございます、レーナさん!」
「いいえいいえ~」
よし、前衛と後衛に分かれる割り振りになったけど、恐らくこれで臨機応変に動ける……はず。
「夜が来る……。残り50分……」
『ゲートは限界、ねっ!! 閉じるデース!!』
『システム:ゴッドゴールドが【黄金の航路】を閉じました』
「リンネさん。私は後から追い掛けます。露払いを手伝わねば」
「はい、カーミラさん! お気をつけて!」
「そちらもお気をつけて」
これだけ大々的に動いたんだから、夜と吹雪に紛れて相手も襲いかかってくるに違いない……。ここからだ、ここからが本番だ。待ったなしの一発勝負、失敗は赦されない!!
『夜が来る!! 各員、敵襲に備えて戦闘準備!! 各リーダーに従い、臨機応変に行動せよ!!』
『システム:特殊能力【ブレインストーム】が発揮され、指揮スキル【鼓舞激励】を閃き発動しました』
『システム:自軍・友軍が【鼓舞】状態になり、全ステータス・攻撃力・回復力が上昇します』
えっ。
「まあ、リンネさん凄いスキルですわね!?」
「おおーー。職ポイントまで回復ちょっと早くなってるーー」
えっ……。えっ……? えっ……??
「…………え?」
あ……。そういえば私、魔界軍団長だったの忘れてたわ……。あ、あ~~……。





