416 Memory of Eldorado part8
「ここまで精神系への耐性が低いとは思いませんでした。本来の人狼の姿に戻ると能力が激減するようですね」
『誰かの姿を真似しなければ力を発揮できない、バレれば元の姿に戻る、最初こそ恐ろしい化け物かと思ったが……』
『ンー。なかなか呆気ない狼デス、ねっ?』
なんとも呆気ないことに、人狼の姿に戻ったら私が左手だけでねじ伏せられるぐらい弱かった。挙げ句魅了や混乱系の精神系魔術に対する耐性もかなり低くて、カーミラさんのちょっとした魔術で即情報を吐き出し始めた。
「でも完成度は高い~。当たり障りない会話なら、絶対バレない~」
『確かに初見ならわからないだろうね。匂いすら真似てくるんだろう?』
「どん太の鼻も誤魔化す程ですから、匂いも完璧に真似てると思います」
『わう~…… (一緒だったもん……)』
「落ち込まないの、それだけ向こうだって本気ってことなんだから」
どん太が偽物を見抜けなかったことに落ち込んで、耳がぺしょっと伏せちゃってあからさまにしょんぼりした表情になってる……。本当は見抜いてドヤっとして尻尾ぶんぶん、ぴょんぴょん小躍りしながら『褒めて褒めて~』ってして貰いたかったんだろうなあ……。
「人狼は黄金の女王の手先……いえ、手先どころか道具のような存在かもしれませんね」
『影を奪い自らの力にする能力、どこかで本体を排除すれば黄金の女王は楽に戦力を強化出来る。迷い込んだ者は前情報無しにこれを見抜き、偽物を排除しなければこの空間で虚ろ人となってしまう、か』
『私達が姿無しって呼んでる連中だね。リンネが闇人間と呼んでるアレらは、偽物に負けた連中ってことになる』
姿を奪った相手が死んだ場合、闇人間こと虚ろ人という空っぽのもやもや人間になってしまう。本物が死んだら変化が解けることはなく、奪った人狼が本物として活動出来る……。つまり、影を奪った人狼を本物が倒れるよりも先に倒さないと、この空間で存在を奪われてしまう。
「もしかして、西側には姿を取ることに成功した人狼が集まってるんじゃ……」
「答えなさい。西側には何が居ますか?」
『オ、オレタチ、セイコウシタ、セイコウ、アツマル、トキガキタ、ヘイシ、ヘイシ……』
「ふむ……」
『予想通り、西側には姿を奪うことに成功した人狼が集まっているようだな。時が来た、兵士とはなんだ?』
『トキガクル、オイツク、オレタチハ、ヘイシ……ヘイシ……』
「かなり狂ってきましたねぇ……」
時が来る、追いつく、兵士……。どういうことなんだろう、情報が少なすぎるなあ~……。
「ぺるぺる、偽物に騙されてたりして。大丈夫? 西、行ってない?」
「あっ!!」
『そうか、レーナ達は東側に来たが、連れは西側に誘導されている可能性があるな。早めに捜索しなければ、手遅れになるのではないか?』
『私とヨハンが一緒に行けば、この雪原で活動する熱を持つ生命体はすぐ見つけられるさ。行動するなら、早いほうが良さそうだね』
『この拠点が、無防備になりマース。危険ではありませーん、かっ?』
『確かに、その危険もあるな』
ん~……。ペルちゃん達を捜索しに行くにも、この拠点から全員離れることになったら拠点が無防備になって危険、かあ。確かに……ん? そういえば、この拠点って……。
「この拠点、何が何でも死守しなきゃいけないんですか?」
『ん? ああ、この猛吹雪を凌ぐには必要だろう』
『こうして話が出来るのも、暖かく過ごせる建物があるおかげさ。必要だろうねえ』
『虚ろメン達は、話通じませェ~んから、そっちは問題ナッスィング!』
「西側の敵拠点を制圧すればいいじゃないですか」
『はあ?』
『何……?』
『オーウ……』
「リンネさん……」
「リンネ様~! ペルセウスさんの姿を真似っ子した悪い奴らを、退治しに行くんですねっ!! ティアも行きますっ!」
『わう~~!! (偽物、みんなやっつけてやる~!)』
「偽物いっぱいなら、全部やっつければいい~。おい、このこのっ。仲間、何人?」
『ニ、マン、ヲ、コエル、フルイ、アタラシイ、ヘイシ』
「二万!?」
あら~。代わりに西側を殲滅して拠点奪取すればいいって思ったけど、そうも行かないかな~?
「それは、その西の拠点にだけに?」
『シロ、ツカエル、ジョ、オウ、ツレテ、イク』
「西には、何人いる?」
『ヨ、ン、ゼン、カ、ゴ、センハ、イ、ナナナナナアアアアアアアアアアアア、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
『システム:ヨハンが【デッドエンド】を発動、ウェアセルヴァウォルフが即死しました』
「完全に壊れてしまいましたね。いい判断です」
『五千は居ないか、しかし本物と同等の力を持つ者が五千となると、厄介だな』
五千かあ~……。メルティシア侵攻の時みたいに奇襲からの無双が出来れば行けるかもしれないけど、かなりの強敵になるであろう相手が居るかもしれない五千は、ちょっと厳しいだろうなあ~……。あ、でも簡単に殲滅しようーって思ったけど、これはマズいかも?
「ああ、でもマズいですよね。時の神と黄金の女王って睨み合いを続けてるんですよね?」
『そうデースねぇ。ミーが城に忍び込む時、常に戦う寸前デース』
「下手に均衡を崩すと、急に戦闘開始ってことになったりして。そうじゃないと…………ん? あれ?」
「リンネさん、何か?」
あれ、あれ? あれあれ?? なんかおかしくない?? 自分で言ってて段々と話が破綻して来たんだけど。
「人狼は、黄金の女王の駒ですよね」
「ええ、そうですね。これの言ったことが正しいのであれば」
「黄金の女王の戦力は、増えてるんですよね」
『そうなるねえ』
「黄金の女王が使える駒は、西の拠点から連れて行って城に集めているんですよね?」
『そうだな』
「時の神と黄金の女王の戦力は、拮抗している。睨み合っている」
『イエース……』
おかしい、おかしいよね? 明らかに、変だよね??
「黄金の女王の戦力が増しているのに、睨み合いが続いているのはおかしくないですか? 逆転してるか、既に倒している差が出来ていてもおかしくないはずですけど」
「…………」
『…………』
あれ、私なんか、変なこと言ってる? 私の考えがおかしいだけ?
「確かにそう。ずっと睨み合いなのは、おかしい」
『ゴールド、本当に睨み合いを続けているんだろうな?』
『本当デース! 激しく言い合いもしてるヨ!』
『そいつは、どんな内容なんだい』
『時の神、イーズ……後何百回、繰り返し怒っていマース! ゴールデンクィーン、イーズ……イライラ、退屈、何か像をメイキング、破壊の繰り返しネー!』
いや、もしかしてなんだけど、これって……。
「時の神と、黄金の女王は、協力関係なのでは……?」
『頭が痛くなってきた……』
『なんで前から詳しく説明しないんだい!』
『したヨー! でもでもヨハーンもアイギースも、すぐ忘れちゃうでショ!!』
『なんてことだ……』
「人狼が時が来たら兵士とか、追いつくとかって、時の神と黄金の女王の計画を、何かしら知っているんじゃないですか?!」
「前提から間違っていたとは、しかし狙いがわかりませんね……。全く性質の違う者同士、何故協力しているのでしょうか」
『わうっ? わう~? (金のぐるぐる、助けに行かないの?)』
「西に向かいましょう、情報を持っている連中がペルちゃん達の中に混じっているはずです。捕まえて……」
「ごうもんだ~。つっかまえっろ~」
『憶測の部分と謎のままになっている部分が多い。西に向かいつつ内容を纏められるか?』
「出来ます。ヨハンさんが進軍指揮を執ってください。私が改めて情報の整理と謎のままになっている部分を纏めます」
『よし、わかった。これより西側へ迅速に移動、人狼に誘導されている可能性の高いリンネの仲間の救助に向かう。西側陣営との戦闘は今は避け、仲間に混ざっている人狼を捕獲して情報を吐かせる。反対意見はあるか!』
やっぱり、時の神と黄金の女王の関係性がなんだか怪しい。恐らく敵対関係じゃない、それと狂い狼はもしかしたら黄金の女王の敵、第三勢力の可能性も出てきた。まずはペルちゃん達を捜索、救助しないと……。人狼が混ざっているはず、それも炙り出さないと。
「反対意見がないなら、行きましょう!」
『雪の中で機動力のない者はいないな、どん太君……だったな? 先頭を任せられるか?』
「どん太、先頭でも大丈夫? ペルちゃん達を追える?」
『わうわうっ!! (大丈夫! 出来るよ!!)』
「大丈夫です」
「カーミラ様を抱っこして運んでもいいですかっ!?」
「ダメです。この姿でもちゃんと素早く移動出来ます」
「はぁ~い……」
『よし、行くぞ』
移動しよう、この異常な空間で何が起きていて、どうなっているのか。そして何より、誰が敵で誰が味方なのか、それをハッキリさせないと!





