415 Memory of Eldorado part7
救助したティアちゃんとレーナちゃんを拠点に連れ帰り、お互いにわかっている情報をすり合わせたところ、エルドリードの入り口は現在のルテオラから北方向、雪山を越えた先にある雪原に無数に存在しているということがわかった。これはレーナちゃんがコインを口に入れた時に周囲を見渡した時にわかったことで、入り口は一つではなく複数、それも大小様々なサイズの破損したポータルが見えたという。
『(聞こえる?)』
『(はい、聞こえます。個人メッセージは大丈夫そうですね)』
それと、個人メッセージは問題なく使えた。同じフィールドに居るからなのか、距離が離れたら使えないとかはまだわからないけれど、レーナちゃんをフレンドリストから確認した時の表示は【周囲にいます】になっていて、ペルちゃんは【離れた場所に居ます】の表示で繋がらなかった。同時に、ゼオちゃん達への念話も【接続不可】になっていて繋がらなかった。実はこれに対して物凄く焦ってる。
念話が繋がらない、死体安置所への強制送還も使用できない、つまりゼオちゃん達が今やられたり万が一にも抹消攻撃を受けた場合、私のところに帰ってこない可能性が高い。メタ的に考えれば流石にイベントフィールドでロストってなることはないだろうけど、このフィールド内で圧倒的不利な展開になることは予想されるよね。
「んっ! ヨハン~くいくいって曲がるの、どうやって撃つの~。教えて教えて教えて~」
『教えてと言われて教えられるようなものじゃないんだぞ……』
「銃見せて~。格好いい~」
『おいこら袖を引っ張るな、はぁ~……わかった。相手をしてやるから……』
「わ~い」
「まるで兄と妹のようですね……」
「ティアちゃんとカーミラさんも、姉と妹みたいですけどね」
「可愛いです~っ!!」
「ティア、人前で抱きつくのはよしてください」
『賑やかになったねえ……』
『ンッンー! ヨハーンがここまで困っているのを見るのはグッド! 初めてみる光景で面白いデス、ねっ!!』
そして案の定、レーナちゃんはヨハンさんの狙撃技術と銃に興味を示し、ティアちゃんはニッコニコでカーミラちゃんに後ろから抱きついて離そうとしない。年齢的にはカーミラさんのほうがずーーっと上だけど、ティアちゃんのほうがお姉ちゃんに見えますね~……ははっ。
『わう~…… (変な臭い~……)』
「どうしたんですか、どん太さん?」
『わんっ! (狼の女の人! 近い臭い!)』
「どん太、レディーにいきなりくんくんしないの」
「ラーラさんの臭いということですか」
『ガウウッ! (違うよっ!)』
「ん~……?」
どん太が失礼ムーブを全然やめない、こんなに頑固になったのは~……教会でどん太の"太"の部分が引っかかって通れなかった時以来かな? そこまでして伝えたい何かがあるってことかな。
『わうっ!! (ちっちゃいお姉ちゃんも!)』
「んうっ? どんちゃ、後で遊んであげる。今は大事な話、わ~くすぐったい。ダメよ、くんくんしないで~」
『どん太君、何か気になる事があるのか?』
「何か気になるみたいで……。すみません、話に割り込んで……」
『ンッンー。ミーにはよくわかりませーんねぇ……』
『私からも特には気になるところはないけどね』
『わふっ……ガウッ!! (変な臭いがするんだもんっ!)』
「どんちゃ、なんで怒ってるの? リンネ~怖い~」
「どん太、レーナちゃん怖がってるから」
『くぅーん…… (でも、変だもん……)』
ティアちゃんとレーナちゃんに変な臭い、異変を感じるのか~……。何も変わったところは見られないし、レーナちゃんもティアちゃんもおかしなところは……ッ!?
「影がない!!」
「え?」
「ええ? あ、本当です~!!」
『当たり前にあるものがないのに、気が付かないものだな……』
『顔や体に出来る影はあるんだねえ、足元から伸びる影だけがないのか!』
「…………なるほど、しかし、いやまさか」
影が、足元から伸びてるはずの影がない! これは一体どういうことなんだろう、カーミラちゃんは何かに気がついたみたいだけど……。何か仮説を思いついたものの、確証がないから口に出せない段階なのかな。
「カーミラさん、何か仮説か、気がついたことが?」
「確証はありませんが、もしやと……。この拠点にいる、リンネさんが闇人間と呼んでいる存在は……」
「まっくろおばけ、もしかして~……」
「??」
『なるほど。確かにありえる話だ』
『なんだい、姿無しがどうなんだ』
『ンーッ……! この世界にイーンッ! その時体と影がッ!!』
「ティアの影さんは、ついてきてくれなかったんですか?」
「あ、多分ついて来たけど、こっちで体と影が別れちゃったんじゃないかなって。うん」
「わあ~! 早く見つけないと~っ!! リンネ様が入る影がなくなったら、寂しいです~!」
うんうん、そうだね。私が入る為の影がなくなって寂しい――――うわああ!! 私が入る為の影がないじゃん!! いつもは使いたい放題使ってた皆の影がないとなると、いつもより役に立たない指揮官が完成しちゃうじゃん! しかもしかも、今回はヨハンさんのほうが指揮能力高い気がするし、私本格的に……! うお、マズい。早くティアちゃん達の影を取り戻さねば……。
「でも、どこに行ったかわからない~」
「リンネ様は影を取り戻したんですか~?」
「ん? あれ、確かに。私は最初からある状態だったね」
「私もありました。どん太君もありますね、ヨハンさん達もある、と」
「私達は、吸い込まれたから? どんちゃは、リンネがテレポートさせたから、ある?」
『わう?』
「ありえます。こちらに入場した際、ポータルで何者かに干渉され、影を奪われた。そしてお二人だけ別の場所に出された。干渉された際にお二人に臭いが残り、どん太君がそれをずっと気にしている」
んん、思ってたより深刻な状況じゃない? つまりこれって、用があるのはティアちゃんとレーナちゃんの影のほうで、本体の方は必要ないから狼に処理させようとして別の場所に投げ捨てた、とも取れるよね。ポータルをくぐった存在の実力が高すぎて影を奪えない、もしくはポータルではない別の場所から入場したために感知すら出来ず影を奪えなかった……と、見るのがしっくり来る。
「――リンネさ~ん!! ここに居ましたのね~!!」
お? おお、ペルちゃんだ~! 自力でここまで辿り着くなんて、なかなかやるじゃない。あれ、でも一人だけか~。他の皆は一緒じゃないのね……。
「おや、しかしお一人ですか……」
『影があるな』
「お~。凄い、ここまで狼に会わずに良く来られたね~」
『わう……』
「ラーラさん達とはぐれてしまいましたわ~! 狼に追われて大変なことになっているかも、一緒に探して頂きたいですわ!」
「うんうん、わかった! あ、そうだペルちゃん今日ごめんね~」
「いえいえ、全然構いませんわ!」
あれ、一緒にお出かけするのをあんなに楽しみにしてたのに、割とあっさり……。なにか裏がありそうで怖いなあ~……。
「また今度、一緒にお出かけしようね」
「え? 今から一緒に探しに行くのでは?」
「ん? だってあんなに楽しみにしてたのに、悪いなあ~って」
「楽しみだなんて、はぐれてしまって焦っていましてよ!」
…………なんか、話が噛み合わない。何? この、気持ち悪さ。
「それはそれとして、今度何を見に行こっかって話をしようと思ってたんだけど」
「今度、何を、見に……? 今から、ラーラさん達を探しに行きますわ!」
『わうっ……! (なにか、変だよ!)』
『(リンネ、なにか変。おかしい)』
『(あ、リアルの話だからはぐらかしてるのかも、すみません……)』
『(なるほど~。ぺるぺる、しっかりしてる~)』
あ、そっか、レーナちゃんが居るからプライベートな話はしないようにしてるのね。このズレた回答は『リンネさん、察してくださらないかしら??』っていう怒りの表れなのね?! ごめんごめん、じゃあ個人メッセージで…………。
――――離れた場所に、居る…………?
『(ねえ、ペルちゃん。聞こえるよね?)』
「リンネさん、早く行きましょっ! 時間がないですわ、刻一刻と状況が悪い方に進んでいる気がしてなりませんわ!」
「…………全員、戦闘態勢! 敵です!!」
「敵!? どこですの!?」
はあ、はあ~……。こういうことするんだ、やってくれるじゃん。しかしよりによって、ペルちゃんの姿で現れたのは愚行だったね!
「お前だよ、偽物ッ!!」
『ドウシテ、ナゼ、ナゼ、ナゼ、ナゼナゼナゼナゼ、カンペキダッタ、カンペキダッタ』
『システム:ペルセウスが正体を現し、ウェアセルヴァウォルフが出現しました』
『逃さんッ!! ゴールド!!』
『既に袋のマウス、ねっ!!』
『システム:ゴッドゴールドが【ゴールデンプリズン】を発動、脱出不可能な黄金の牢獄に囲まれました!』
「出来るだけ殺さず生け捕りにしたいです! 抵抗できなくなるまで痛めつけます!!」
「捕虜~捕虜~つっかまえろ~。ごうもんだ~」
『白銀のレーナが【クラスターストームショット】を発動』
こいつは捕まえて徹底的に情報を吐かせる、舐めるなよ真似っ子モンスター! この程度の再現度で私を完璧に騙せるはずがないでしょうが!! あ~腹が立つ、徹底的にやってやる!!





