413 Memory of Eldorado part5
穴を閉じるギリギリでどん太を引き寄せたら、どん太が私の真横にワープして来た。どうやら穴を空けている最中なら外への通信、スキル等での干渉は可能らしい。ただしメッセージは全部途中送信で一部送信になっちゃったから、長い文章を送るのは難しそう。
「な~んでお前は何もしてないのに平気なのかな~?」
『わうっ? (どうしてだろうね?)』
「あまりに唐突だったから驚いたが、なんとも気の抜ける顔の可愛い奴だな……」
「私はなんだか、ちょっと苦手だね。本能的に苦手を感じるよ」
「おかしいですね、黄金を何一つ身に着けず、体が黄金で出来ているわけもなく、なぜ平気なのでしょうか……」
『人間にしか効かァない、じゃないデスかぁ~??』
「それだと、私に効くことに説明が付きません。私は人間ではありませんから」
「なっ!? 人間じゃないのか!?」
「吸血鬼だろう、人間の体温じゃないね。人間にしては低すぎる」
「ええ、吸血鬼です。いつもは体温も偽装しているのですが、今はマナが勿体ないですからね」
「そこまでされてたら、わからなかったろうね」
ところでどん太が外からやって来たんだけど、どん太は誰かに何かをされたわけでもなくエルドリードの領域に入っても力を失わず、調子が悪くなったりもしない。これは一体どういうことなんだろう……。黄金を持っていないと、もしくは摂取していないと弱体化・存在を失うという仮説が崩れるんだけど……。
「何も黄金なんてないのにね、なんか変なもの食べた?」
『わふ、わふっ……? (いつものご飯しか食べてないよ、黄金?)』
「そう、黄金。金色で、ピカピカなの」
『わんっ! (あっ!)』
「あんよ? 足?」
『わうっ!! (黄金!!)』
ああ、ああ~~。君の前足は黄金の前足だったねえ~~……!! そうか、スキルに黄金って名前が入ってても良いんだあ……。え、セーフ判定緩すぎない?? あれ、じゃあレーナちゃんだって黄金の銃持ってるからオッケーなんじゃないの? あれは生体超機で、ただ金色なだけだからダメ? 本物の黄金が使われてないとダメなの? それとも金とは似て非なるもの? ああ、レーナちゃんの装備がオッケーならそもそも私達の装備は呪いのコイン大量に使ってるし、オッケーってことになっちゃうか。ん~……。どん太がオッケーなのは、黄金の前足が原因ってわけじゃない気がするけど、いやもしかしたら単純にそうかもしれないし……確認しておこう。
「あの、ヨハンさんの勲章は、何か正式な名前があるんですか?」
「皇帝陛下より直々に贈られた黄金級名誉勲章、最も優れた兵士に贈られる勲章だ」
「ありがとうございます、素晴らしい勲章なのですね! アイギスさんの、金の装飾とかって……」
「ジルディアヌの装い、私のために作られた特別な装飾さ。実は目眩ましの効果もある」
「ジルディアヌ、古代語で黄金ですか……?」
「そうなるね」
『ミーは』
「あ、いいです」
『オーノーッ!!』
やっぱり、名前に黄金って入ってればいいんだわこれ。黄金級名誉勲章、ジルディアヌの装い、ゴッドゴールド、黄金の前足、どの言語でも良いから黄金が入ってれば、この空間で能力や存在を失ったりしないんだ。特に身体的なものが黄金な場合は黄金時代の記憶も失わない、カーミラちゃんが呪いのコインをパクっとしてから記憶も失ってないし、力もある程度取り戻したのも説明がつく……。ん、でもこれ、もしかしたら……。
「ところでヨハンさん、どこの国に所属していたんでしたっけ?」
「ああ、俺は……」
「なんだいさっき思い出したばっかり……」
「…………俺は、どこの……。名前はヨハンだ……。今、そう呼ばれた、間違いない。それは間違いないんだ」
「この様子では、アイギスさんも忘れてますよね……? お弟子さんの、お名前は……?」
「覚えてるさ、さっき聞いたんだ、今の今で忘れるはずない……」
『ンッンー。なぁるほっど、ねっ? ユー達は自分を忘れなァい、でもでもォ? ヨハーンとアーイギスは忘れてしまァう。この、差ッ!!』
『わう? (黄金だから?)』
どん太がわかってそうで何もわかってなさそうな回答を……。ま、まあ、可愛いから良いんだけどね? つまりは黄金の所在が体の外か、内か。それも外の場合は特別な過去のあるものじゃないと、恐らく闇人間と同じように自分を失ってしまう可能性が高い。
「アイギスさんとヨハンさんにも、これを飲み込んで貰ったほうがいいかもしれませんね」
「すまないが、その方が良さそうだ。さっき聞いたはずの自分のことが、もう頭から抜け落ちている」
「何を思い出せないのかすらも思い出せない、この上なくイライラするよ……」
『ミーの所有物にしたコイーンは、まだあるのですか、ねっ?』
「かなり、いつも何百枚も持ち歩いてるので」
『グッド!』
何百枚もあるって言っても、この人数で4時間毎に消費してたらすぐになくなっちゃうよね。1日辺り6枚は最低でも消費するんだし、それが人数分ってなるとあっという間になくなる。この拠点に居る人達全員になんて配ったら、それこそ一瞬でなくなっちゃう。
「一応、30枚ずつ渡しておきます。もしも戦力として見込みのある人を発見したら、渡して使ってあげてください」
「ああ、わかった」
「黄金は好きだけど、食べるほどじゃないはずだったんだけどね……」
「リンネさん、私にももう少し頂けると」
「あ、はい。すみません」
「いえ、元はと言えば全て私のせいですから、何も気になさらないで」
『わうっ! (みんな来たみたい!)』
「お?」
およ、どん太レーダーに反応が。お耳と尻尾がぴーんと立ち上がってぴょこぴょこ動いてる、なんかそれ凄く可愛いね。みんなっていうと、ペルちゃん達もこっちに来たのかな!?
「ん~……。フレンドリストからは、離れたエリアにいますって表示になってるね……」
『わふっ…… (でも、近くに感じたもん……)』
「ああ、こいつを飲み込んだら、靄がかかってた頭がすーっと晴れるような感覚になった。どうしてこんな簡単な情報が思い出せなかったんだ」
「自分の名前すら忘れる強力な呪いだ、対抗手段があるだけマシだね」
『オーウッ! 分体ちゃんからモシモーシ! 街の外で誰か戦闘デス、ねっ! 真西の方向デース!』
「行きましょう、ティア達かもしれません」
「はい! どん太、行くよ!」
「何人いる?」
『トゥーー! 狼、スィーックス! 劣勢デース!!』
2人、誰と誰だろう、急いで助けに行かないと!
「ゴールド、消音を頼む。リンネさんはデカい犬と一緒に迎えに行ってくれ。他は万が一の襲撃にここに残ってくれ」
『オーケェイ! 急ぎましょッ!』
「え? あれ? 私とどん太だけ……?」
「まさか、狼退治に全員で行くつもりか? 俺が誰なのか、忘れているんじゃないのか?」
「……冗談を言える程には余裕があると。いいでしょう、魔弾の射手と呼ばれる貴方の腕を見せていだきましょう」
え、まさか、ヨハンさんこの拠点から……狙撃するつもりなんですか?!
「リンネ班はできるだけ迅速に対象に合流、俺達は周囲の警戒と援護射撃。カーミラは魔術が得意なら道標になるような魔術を使って誘導してくれ。出来るな?」
「え、はい」
『わうっ! (行こっ!)』
「ええ、いいでしょう」
「行くよ!」
『なかなかスピーディに移動し続けてマース! 分体連絡網、出たり入ったりねーっ!』
「行動開始。散れ」
やだ、なんかこんなに的確に指示出してくれる人って初めてかも……。なんかちょっぴり、新鮮……!! あ、変なところでテンション上がってないで、迎えに行かないと!!





