392 叡智の結晶
『――――バビロンオンラインへようこそ!』
『出席報酬授与24日目、贈呈』
『バビロンちゃん (の、代理の魔神兵スージー) からのプレゼント! 24日目のログインボーナス【◆選べないギフトセット】を獲得しました』
『出席継続称賛。以後出席継続推奨』
学校で過ごす時間があっという間に終わっちゃった……。いつもの日課を諸々済ませて、トレーニングとお風呂に入ってVRダイブシステムに入ったら、あっという間に18時過ぎだよ。早い、あまりにも早いよ……。もしかして一日って24時間無いんじゃない? 絶対12時間ぐらいしかないよね、学校4時間、バビオン4時間、睡眠4時間で終わりだよ絶対。実際は全部2倍ぐらいのはずなんだけど……。
今日のログインボーナスは選べないギフトセット……。え、選べないんだね、中身がランダムに決定されるプレゼントボックスみたい。ラインナップを見たらギフトって書いてある通りギフトに適したアイテムが勢ぞろいしてて、ギフトハムセットとか雰囲気だけ楽しめるノンアルコール名酒セット、ランダムなアクセサリーにオモチャまで、開けてみるまで何が出てくるかわからないやつなのね~。じゃ、早速開けちゃおう!
『【◆◆◆熱狂! ドラゴンダービー!】を入手しました! おめでとうございます!』
「うわ、おにーちゃん好きそうなの出た」
オモチャだわ。まさかのオモチャだわ……。これは家具系のアイテムかな? うわ、結構大きい。会議室とかにおいてある長机2個分ぐらいの大きさのドームが出てきたわ。あ、中にちっちゃいドラゴンがいる~! 馴染みのあるレッドドラゴンに、まだ見たことが無いブルードラゴンとかグリーンドラゴン、イエローにブラックにホワイトもいるね。
遊び方はまず賭け金をセットすればいいのね? それで、一位になる子を選択して、出走時間になると一斉にドラゴン達がスタートするんだ。火山エリアがあったり、水中エリアがあったり、飛行禁止エリアに、飛行してしか進めない積乱雲エリア、毒沼地帯があって、最後は財宝の山に向かって一直線に進んで激戦が繰り広げられるのか~……。うわ、演出が多彩で楽しそう。わあああ~~!? これ、一定時間で全く違うコースに変更されてコースが4パターンもあるの!? そのパターン毎に演出がランダム、これはハマる人はハマるわ。ずーっと眺めてられそう。
「ゲーセンのど真ん中に置いておくか、カジノに寄贈するか悩むな~……」
まずはギルドのゲーセンのど真ん中に設置しておいて、暫くして皆が飽きたらカジノに寄贈しようっかな~? 賭け金上限と倍率は良心的な数字にしておいて、あくまで演出を楽しむ用に設置しておこう。とりあえず初期資金として10Gぐらいチャージしておけばいいでしょ。
「あ、このオモチャを好きそうなおにーちゃんは今何してるんだろ?」
そういえばおにーちゃんは何してるんだろ、まさかもうマグナ研究所から移動したでしょ……え、まだ居る!? しかも今日も今日とてどん太以外全員が精神修行みたいなことやってる!? こ、これは邪魔しないように……むしろ缶詰め状態になってるおにーちゃんとマリちゃんの様子を見に行かないと! 体調は良いみたいだけど、徹夜続きでハイになってるだけなのに絶好調って出てるだけかもしれないし!!
「とりあえずさっさとゲーセンのド真ん中にこれ設置して、見に行かなきゃ!」
急げ急げ~……! よーしゲーセン到着! えーっと、賭け金上限を設定して、倍率を……あ、面倒だからオススメに設定しておこう! とりあえず10Gシルバーをこのオモチャにチャージ!!
『【◆◆◆熱狂! ドラゴンダービー!】を設置しました。チャージ金額【100,000,000,000シルバー】、賭け金上限【オススメ設定】、倍率【オススメ設定】、イベント内容【波乱万丈】』
「よし、行こう!」
早くおにーちゃんとマリちゃんの様子を見に行かなきゃ! 手遅れかもしれないけど、まだなんとかなるはず! きっとまだ大丈夫……多分!
◆ ◆ ◆
あれ……。研究所内が暗い……? いつもならマグナさんが『おや、マリアンヌの飼い主がやっと来てくれた。聞いてくれよ飼い主さんや』って感じで出て来るはずなのに……。もしかして研究所の奥にある実験用のエリアに居るのかな?
「お、お邪魔しま~す……」
『おや? 遂にお金を使いすぎたのを察知して飼い主が来たようだ。遅かったね、もうマリアンヌが相当な額を使い込んでしまったよ』
「え゛っ」
なにそれ聞いてない。マリちゃんが勝手にお金を……? あ、確かに研究費用とか素材を買う費用は倉庫から自由に出して良いって前に言ってた気がする。魔導砲を作るのにそんなにお金が必要だったのかな?
「あっ! リ、リンネ、その、昨日服を持ってきてくれた時に、言おうと思っていたんだ! でも、まだあの時はそれほどの額じゃなくて、その、あの……。言い出せなくて……」
『(;´∀`)…………』
「え、い、いくら使ったの……?」
この様子からして、もしかして結構使った!? さっき倉庫を見た時は上限の999G表示になってたけど、金庫の方がゴソッとなくなっちゃってたりする?! あれ、金庫内の金額も別に……?
「飛空艇、もう一隻……つ、作れる、かも……」
「えええええ!? そんなに使ったのーー!?」
「た、楽しくなって、つい、だって……。わ、我も、役に立ちたくって……その……」
飛空艇がもう一隻出来るぐらい使っちゃったの!? それだけ使って金庫がパンク寸前ってことは、えええ!? キューブの収入どんだけ狂ってるの!? ヤバい、キューブの対価を下げる……? いやいや、そんなことしたら余計に利用者が増えて相場も崩壊する……。
「何を、買ったの、かな~~??」
「ウニさんに頼んで、希少な鉱石を、たくさん……」
『ほら、購入リストだよ』
『(;´∀`)!?』
「マグナ!? 何を買ったのか記録していたのか!?」
『当たり前だ、絶対怒られると思ったからね』
「うわあ、見たくないけど見たいです、ありがとうございます……」
ウニさんに頼んで、オークションから代理購入して貰ってたかあ……!! マリちゃんはオークションが使えないから大丈夫と思ってたら、まさかまさかの代理購入……。まさか、前にゴールドオークションを見せた時にオークションの存在を認識したからやった行動ってこと!? ひえええ……! バビオンのAIはそこまで学習するの!?
それで、これが購入リストね……。えっと、まずは真地獄晶石買ってるねえ! 8個も買ってるねえ!? 飛空艇に何個使ったんだっけ、4個だか5個だよねえ!? その倍近くも購入しちゃったのぉ!? それからライブメタルを大量に買ってる、バイオナノタイト……? 聞いたこと無い鉱石だけど、これとんでもない金額なんだけど!? これウルトラエピックレアリティじゃん!! 信じられないぐらい高いんだけど!! もはやシンギュラリティ号一隻どころか二隻か三隻作れる金額……。お、おおっふ……。めまいめまい。
「これ使って結果が出てなかったら、今すぐ際どい水着を買ってきてそれで生活させるから」
「いや、出来た! 出来たんだ、ただフォーマルハウトを更に強化していく内にかなり大きくなってしまって、人が乗って動かすことを全く考えていないフリオニール殿の専用機になってしまったんだ! それで我の装備をどうしようと思っているところに、ウニさんがライブメタルを使っていて……」
「ああ、それでこんなにライブメタルを買ってるのね」
惜しい、これで結果が出て無ければ際どい水着マリちゃんヌが見られたのに。でも結果が出たなら良いことだし、喜ぶべきだよね。とりあえずここで口頭で説明されてもさっぱりわからないから、出来上がったものの性能を見せて貰おう。百聞は一見にしかずって言うからね。
「ん~~……。わかったわかった、怒ったりしないからとりあえず、出来上がったものを見せて貰っていい?」
「あ、ああ……。とりあえず、ここでは見せられないんだ。我々は地下ドックから出ていくから、ローレイ西部にある岩場で待っていてくれないか……?」
『これだけお金を使っても怒らないリンネに感謝するんだね』
「あ! ああ、リンネ! 本当に、その……ありがとう……ございます」
「いいよ~。強くなりたかったんでしょ? その気持ちが嘘偽りじゃないなら、怒ったりしないよ~」
「…………ありがとう」
2回目のありがとうの時に見せたマリちゃんの満面の笑みが見られるなら、飛空艇の一隻や二隻や三隻分ぐらい安いもんよ……。いや安くはないよ。やっぱり高いよ。マリちゃんの満面の笑み高すぎるでしょうが……!!!
◆ ◆ ◆
「マグナさんマグナさん、どうしておにーちゃんが一緒に居たのにマリちゃんを止めなかったの?」
『ああ、マリアンヌがフリオニールやグリムヒルデにモーションセンサー? とやらを接続して、フリオニールとグリムヒルデの戦闘データを何百戦分も収集していたからね。フリオニールもグリムヒルデも、何十何百と戦う内にテンションが上ってしまったんだろうね。研究所に訪れる腕利きの連中も巻き込んで、時を忘れて模擬戦闘を続けていたのが原因だ』
「…………は?」
私が見てない間に、他のプレイヤーまで巻き込んで何やってんのよ……。う~頭が痛い、でもこれから私の目の前に更に頭が痛くなるような奴が現れるんだよね。何十何百と戦闘したデータを集めて出来た何かが……。
『ほら、来たぞ。あれが新兵器――』
うーわ、絶対おにーちゃんが好きそうな見た目のロボットだ……。もう気分は絶好調有頂天大興奮って感じなんだろうなぁ……。
「新兵器、アークトゥルスだ」
「うわ、マリちゃんいつの間に!?」
「今来たんだ」
びっくりしたぁ……。居るなら居るって先に言ってよ~……。アークトゥルス、フォーマルハウトから進化し過ぎてマークツーじゃ収まらないから、新しい名前を付けたのね。
『(っ’ヮ’c)~~~♪』
「うわあ~~…………」
『やはり大きいな。全長5メートル、重量3トンはやり過ぎだ』
「ありったけのロマンを詰め込んだから仕方ない。仕方ないんだ」
見た目はフォーマルハウトよりもかなり整ったイケメンロボットって感じだけど、大きさが2.5グスタフぐらいあるわ。そして重量3トン、真っ赤なボディが煌めくビームソードに照らされて綺麗~……。あっ……。赤タフを微妙に意識してる感じがする、絶対そう。一瞬赤タフのトラウマが呼び起こされたもん。
『フリオニールが【モードチェンジ:フリージンクビームセイバー】を発動』
『( ´・v・`)』
「絶対ドヤ顔してる。火属性じゃなくて水属性だって切り替えられるんだぜ、みたいなアピールを感じる」
「サンダーモードもあるが、残念ながらアースモードはない。更に背部に搭載した魔導砲に右手に持っているビームセイバーを接続すれば、強力なマージキャノンを発射することが出来るんだ。あ、やらなくていい。威力が高すぎて被害が尋常ではないからな」
『(´・ω・`)』
「やりたかったのね……」
「ダメだ、エネルギー消費量も激しいから乱用できないし、周囲にリンネの同郷が居たら巻き込んでしまう」
既に武装を二つ聞いただけでこの頭の痛さ、なんてものを作ってるのよ……。絶対搭載してる武装はこれだけじゃないよね、もっとあるよね……。
「他の武装は?」
「虚飾の王から手に入れたフィールドブレイカーを強化した、フィールドイレイザー。前方に展開された範囲術式や罠などを破壊する超音波のようなものと思ってくれて構わない」
「ああ、鬼に金棒だ……」
「デロナのプロティシルドと同じ術式をそのまま巨大化して発生させる装置もある。その都度使い捨ての盾を作り出すことになるが、フリオニール」
『( `・ω・´)』
「…………アークトゥルスはこの性能で満足してくれた」
「あ、うん、アークトゥルスさんが満足したなら、それでいいんじゃない……」
『(*´・ω・`*)』
良かったねおにーちゃん、新しいオモチャは超高性能だよ……。それにしても3トンか、これだけ重いとなると流石にミミッくんに入らないね。フォーマルハウトぐらいのサイズに収まってれば入るなーと思ってたんだけど残念だわ。
「ちなみにフリオニールのいつもの鎧を収納しておく異空間収納機能もある。緊急脱出時にはいつもの姿で復帰出来る」
「アークトゥルスを倒しても第二形態があるのズルくない?」
「正直やりすぎたなとは思っている」
『(*´・ω・`*)b』
おにーちゃんが満足してるならいいっか。とりあえず性能を見せて貰って良いかな……?
・ステータス
【名前】フリオニール・アークトゥルス
【レベル】なし
【属性】強ボス属性・無属性・ヒーロー系・大型
【性別】なし
【職業】□アークトゥルス
【魔界侵食値】+1,000
【親密度】感無量
【特殊能力】
・【影】封印
・【命】封印
・【力】火事場の馬鹿力
・【速】神速対応
・【技】スキル圧縮
・【体】状態異常確率無効
・【魔】不滅のマナ
・【心】アーケインエナジー抵抗
・古代語ベテラン
・戦闘兵器操作
・飛空艇シンギュラリティ号操作
【HP】600M
【MP】150M
【SP】10
【STR】10,000
【AGI】9,000
【TEC】9,900
【VIT】15,000
【MAG】10,000
【MND】1,950+1,000
【基礎攻撃力】約700,000
【基礎防御力】約600,000
【ARC】150
【AARC】50
【スキル】【5/5】
【英雄戦闘兵器】
・英雄戦技
┣使用量に応じたMPを消費
┣ビームセイバー
┣マージキャノン
┣モードチェンジ【火・水・風・聖】
┗神速の武器切り替え
・戦技マスタリー
┗戦技系の職ポイントコスト減少
・英雄戦術
┣【SP1】消費
┣フィールドイレイザー
┣プロティシルド
┣リペア【HP20%回復】
┗ダークブレッシング【攻撃闇付与】
・不滅のゴースト
┣【SP3】消費
┣全身鎧系に憑依・乗っ取り
┣属性を念属性にチェンジ可能
┗種族を死霊系にチェンジ可能
・魔界の新たなる希望の星
┣装備制限一部無視
┣MND+1,000
┣プレイヤー耐性90% (最大値)
┗あらゆる分野を楽しめる強い精神
【究極スキル】
・ファイナルアークブラスター
┗究極威力の胸部のビーム砲を発射する
【封印中】
・使用出来ないスキルを封印中
【装備】
主武装:□アークトゥルスセイバー
副武装:□アークトゥルスマージキャノン
頭:【全身】□アークトゥルス
体1:【全身】□アークトゥルス
体2:□フリオニールの超越魂【念属性】
足:【全身】□アークトゥルス
アクセサリー【1】:□フィールドイレイザーシステム
アクセサリー【2】:□プロティシルドシステム
アクセサリー【3】:□異空間収納システム
アクセサリー【4】:□リペアシステム
あー。ダメだね、こんなに頭がおかしい性能してるのにHPが600Mって、何をどう考えたらこれが許されると思ってるんだろうね? しかもプレイヤー耐性あるし、お前もPvPで1パーセントしか受けない勢になってたか……。もしかしてこれ、私が魔界軍団長になった時に従者全員に付与されてる? 後でリアちゃんたちも確認しておこう。もう性能を理解するのはとりあえず、諦めよう。諦めた。
あれ? でも待ってよ? ウルトラエピックの素材を使って出来たのがアークトゥルスじゃないの……? バイオナノタイトとかいう素材があったはずだよね? 真地獄晶石も使ってないように見えるんだけど、ライブメタルとかも使ってないよね? じゃあ、それを使ったのって……。
「ねえ、マリちゃん?」
「な、なんだ? やっぱり、怒られるのか……?」
「マリちゃんの装備は?」
「…………」
『私は報告の義務があると思うがね』
「わかった、わかった……。見せるから……」
何をそんなに出し渋ってるのかな、そんなに作ったものに自信がないのかな? アークトゥルスを見せた後では物足りないかもって感じなの?
「これは、レーナやウニさん達を含めた数十名の戦闘データとモーションデータを解析し、我の戦闘時に攻撃をアシストするように作った生体機械で、使えば使うほど戦闘を学習して性能を増す生きた機械とも言える――――」
「みーーせーーてーー」
「うぅぅ~~……!! わかった、わかったよう!!」
お、やっと見せる気になったか。長々と説明されても私にはあまりわからないんだから、潔く諦めて早くその装備を見せたまえ~。
「起動せよ、アルテナ!!」
「お?」
『マリアンヌが【アルテナ】を起動します。戦闘モードに移行』
なるほど、首に見慣れないネックレスをしてると思ったら、それが新しい装備なのね。それがピカッと光るとこれまで学習した知識をマリちゃんに伝えて、マリちゃんの戦闘をサポートしてくれるってわけ……ええ!?
「こ、これが、我の叡智の結晶、学習成長型戦闘武装アルテナ、だ……!」
は、はああ……!! これが、飛空艇三隻分もする新しいボディスーツ型の装備なんだぁ~……! そしてこれが、マリちゃんの今まで積み上げてきた叡智の結晶なんだね~……! わぁ…………。わぁ…………。叡智だぁ…………。叡智じゃん…………。