388 最後までしっかり
◆ ローレイ・ギルドロビー ◆
ちょっと目を離した隙に千代ちゃんはぽんぽこになってるし、ゼオちゃんはティアちゃんとデロナちゃんと一緒に満腹になって寝ちゃってるし、リアちゃんは私に魔術の発動速度で負けるのが悔しくなってきたとかで魔術を即発動出来るように練習してるし、ユキノさんも零姫おばあちゃまがついてると来たら私に構ってくれる子が居なかったのでどん太と一緒にローレイへ戻ってきちゃった。
最初はどん太も『モッチリーヌちゃんのところに行く~!』ってはしゃいでたけどそれには待ったをかけて、まずさっき決めた魔狩魔狼にランクアップしちゃうことに。操作は今まで通りと変わりなく、これを選択しますか~みたいな確認画面が出て素材を支払って実行を押すだけ。職業のレアリティが現状最高レアリティだったから特別な演出でもあるかな~と思ったけど特になくって、あっさり終了して特に容姿も変わらず。な~んだちょっとガッカリ~なんて思ったのはステータスを見るまでだったわ。
・ステータス
【名前】どん太
【レベル】100
【属性】ボス属性・闇属性・悪魔系・大型
【性別】オス
【職業】■□魔狩魔狼
【魔界侵食値】+1,000
【親密度】今日は絶好調だよ!
【HP】45M+45M+45M (15.0倍適用後)
【MP】50,000
【闘】40
【STR】3,900+1,500
【AGI】4,000+1,500
【TEC】1,850+1,500
【VIT】3,200+1,500
【MAG】500+1,500
【MND】400+1,500
【基礎攻撃力】約305,000
【基礎防御力】約220,000
【ARC】0
【AARC】50
【特殊能力】
・【魔狼】活殺魔狼拳
・【命】ヘルスブースターLv.1
・【力】火事場の馬鹿力
・【速】神速対応
・【技】スキル圧縮
・【体】状態異常確率無効
・【魔】不滅のマナ
・【心】アーケインエナジー抵抗
・古代語ベテラン
・コントロール
・チャンスメイカー
【スキル】【10/15】
【究極を求める魔狼】
・通常攻撃スキル化
┣斬滅
┣爆滅掌
┣魔狼身弾
┣食い千切り
┗魔狼咆哮撃
・通常攻撃強化
┣斬滅波
┣爆滅二段掌
┣神速身弾
┣切断
┗咆哮一極化
・魔狼流星
┣【闘・10】消費・魔の狩猟者時に5消費に変更
┣魔狼身弾の超強化版
┗防御不能な破壊の流星となって突進する
・魔狩魔狼拳
┣闘全消費・魔の狩猟者時に15消費に変更
┣HP50%消費 (悪性反動)
┗防御不能な極限の一撃を叩き込む
【パッシブ】
・インジーニアス
┣スキル枠:-15状態
┣潰したスキル枠の数だけステータス上昇
┗全ステータス:+1,500状態
・不落不沈
┣現在適用中の最終最大HPの20%の最終ダメージをカットする
┣プレイヤー耐性90% (最大値)
┗HPが3段階になる
・魔狩魔狼+0
┣魔手装備・特殊強化スキル
┣闇の分身を生み出し、自由自在な形に変化させる
┣修練次第で尻尾も変形可能になる (ロック中)
┗スキルリンク可能
・ウルトラアイドル
┣とてもかわいいと認識される
┣クリティカル率・威力極大上昇
┣不死・機械以外に常に特効
┣跳躍
┣急加速・急旋回
┗職ポイントコストダウン
・破壊魔狼
┣攻撃に地形破壊効果
┣攻撃に装備破壊効果
┗隠蔽・フィルタリング無効
【真覚醒スキル】
・魔の狩猟者
┣常時発動型スキル
┣主人がオン・オフを切り替える事が出来ます
┣【最大闘ポイント・20】減少
┣切り替えクールタイム300秒
┣オフにした時、最大闘ポイントを返却する。即時回復はしない
┣効果時間【永続】
┣最終闘ポイントコスト減少
┗最終HP10倍
【神技】
・活殺魔狼拳
┣毎週水曜日の5:59に再使用可能
┣上記以外の如何なる手段でも再使用可能にならない
┗生かすも殺すも魔の狩猟者次第
【装備】
・魔手:魔狩魔狼の闇の力+0
┗ARC+0
・補助:◆わんわんチョーカー
┣基礎攻撃力+5,000
┣ダメージカット率+20%
┗飼い主【おいで!】使用可能
・補助:◆あばれんぼう勲章
┣悪性反動無効
┗時空干渉完全耐性
信じられないステータスがにょきにょき生えてた。もう、信じられなさすぎて信じられない。悪い夢かなにかであって欲しい。まずおかしいよそれって思ったのがHPで、HPバーが三段階になってる。一段回目のHPを消費しきった場合は二段階目に移行して、二段階目を消費したら三段階目に移行する。しかもこの最終段階は最大HPが33パーセントぐらいの扱いになるみたいで、マキシマイズパワーから火事場の馬鹿力に変更した効果『最大HPが35%以下で最大ダメージ1.5倍』の効果が乗る。乗っちゃうんだ。更に最悪なのが、このHPを一気にゼロにすることが出来ずに一本消費したらちょっとの間だけ無敵になれる。つまりどん太を一撃で倒すことが出来なくなったということ。
更にぶっ壊れてるのはダメージカット性能。どん太は最終ダメージを9Mカット出来る……って言うとゴミみたいな性能だなーと一瞬思うけど、これはPvPの仕様と新しく生えてたプレイヤー耐性90パーセントと合わさることで脅威の数字になる。
具体的な数字にすると、どん太の45MHPを一撃で削りたいならまず元の数値が450Mダメージないとダメ。PvPでダメージが10パーセントまで落ちるからね。でもどん太はプレイヤー耐性90パーセントがあるから、ここから更に10パーセントまでダメージが落ちる。つまりどん太に対してプレイヤーは元のダメージの1パーセントしか通らないってこと。
つまりどん太の45MHPを消し飛ばすには、装備の性能でダメージ20パーセントカットされるのと、最終ダメージが9Mカットされるのと踏まえて、最終的に6,750Mダメージを出さないとHPが一本削れないってこと!! これは結構重めの技を一発クリーンヒットさせてようやく出るダメージだし、しかもどん太は闇の分身を盾の形状にして防御することも覚えちゃったから、今までみたいに殴れば当たるってわけじゃなくなっちゃった!! もう私より遥かに強いね、これで逆に私に負けたらどん太に小一時間の説教コースだよ。
「もう私よりどん太の方がずーっと強くなっちゃったね~。一人前って感じだ~」
『くうぅ~ん…… (これからも一緒だよ……?)』
「あっはは、どん太が私を見捨てない限り、私はどん太と一緒にいるよ」
『わうっ!! (やくそく!)』
「はいはい、約束ね。これからもよろしくね」
『わうわうあうあうっ!! (わぁい! これからも一緒! やくそく!)』
なんて良い子なのかしら。全く私に育てられたとは思えないぐらい素直で良い子に育っちゃったなぁ~……。腹ペコでおバカで無駄なところでプライドが高くて、ドジで太っちょで要所要所で間が抜けてて…………賢くて勇敢で頼れる私の相棒。これからも一緒に頑張ろうね、どん太。
「よし、モッチリーヌちゃんのところに行ってきなさいっ! 強くなったよ~って報告しにいってらっしゃい」
『わんっ! (いってきまーす!!)』
はあ~……。これで構ってくれる子が誰もいなくなっちゃった。今日はまだ23時だけど落ちようかなぁ~……? それともちょっと、ローレイの街の中を歩いてみようかな? 初心者狩りなんて最低の行為をしてる連中がどれだけ減ったか、サキュバスポリスさん達はローレイに馴染めてるか見に行かないと。一応配下のNPCだし、挨拶もしないとね。魔神殿から出たらいるかな~?
――――バァンッ!!!
うわっ……! 凄まじい発砲音、PvPなら近くで誰々が誰々にキルされましたみたいなログが流れるから、PvPではない……はず? となると今の発砲音は、NPCの誰かが射撃した音ってことになるよね、多分……。見に行こう、窓から飛び出しちゃえ! ローラちゃんとねーさんが使った201号室の窓から出撃~っ!!
「ざ、ざっけんな……! 初心者に道案内しただけで、初心者狩り判定なんてありえんのかよ!!」
『うるっせえ。こっちは指名手配犯の情報をぜーんぶ冥神サマから貰った装備で共有してるわけ。もちろんその手口もね? この先の路地裏にいるお前の仲間と一緒になって、初心者をボコボコにして持ち物奪おうって手口でしょぉ~? ノーチェはそういうゴミクズ野郎がぁ!! だぁぁいっ嫌いなんだよっ!!』
「くそっ!!」
うん、飛び出したのは良いけどこれ現場がほぼ真下だったわ。どうしよ? あ、なんか逃げてる奴がいるからちょっと足止めしておこ。
『刻印【串刺公】を発動します』
「うわあああ!!?」
「なんだ、これっ!?」
『ノックスノーチェ(Lv,????)が【オメガショット】を発射、ほーおーが不明なダメージを受け死亡しました。レベルドレイン効果によりレベルが大きく下がりました』
『逃がすかァッ!』
おっ足止め成功。ノックスノーチェちゃんって言うのね、今対応してるサキュバスポリスさんの名前は。サキュバスポリスさんって武器は銃だったよね。銃でオメガショットなんて撃てちゃうんだぁ……。あのスキルってメロウちゃんが使えたオメガブラストよりは多分範囲も威力も控えめなんだろうけど、それでも不明なダメージって出ちゃうレベルの威力かあ~……。
『ローレイに巣食うダニは、このノーチェが許さない!!』
『ノックスノーチェ(Lv,????)が【オメガショット】を発射、もっつぁれらんが不明なダメージを受け死亡しました。レベルドレイン効果によりレベルが大きく下がりました』
『ノックスノーチェ(Lv,????)が【オメガショット】を発射、ダミオが不明なダメージを受け死亡しました。レベルドレイン効果によりレベルが大きく下がりました』
しかも連発出来るらしい。このログを目の当たりにして初心者狩りとか詐欺とかの違反行為をしようだなんて絶対思わないんだけど、どうしても一度成功して二度成功して~って成功体験をすると、癖になっちゃうんだろうなぁ~……。まあそもそも、PvPで負けて物が盗られないようなシステムにすればこの辺りの問題は解決するんだろうけど、敢えてダーティプレイをしたいっていうプレイヤーもこの世にはいるだろうからこのシステムは必要だったのかなって。それにそういうプレイもまた、このゲームのコンセプトの【自由】の一つだろうし。ただ自由と無法を混同してる人が多すぎるってだけで。
『君、指名手配犯の撃退に協力してくれてありがとう!』
さて、実はこの恐ろしいログを発してた相手の姿を確認出来ていないんですね。逃げた仲間の妨害に行っちゃったのと、そもそもサキュポリさんの動きが高速過ぎてしっかり確認できてなかったん――――!?
「私より、で、でかっ……!?」
『おーっ? ノーチェと同じぐらいでっかいね~。それにすっごく美人、ねえねえ? ノーチェはもうお仕事終わりの時間なんだけどさ、この後ちょっと一緒に遊びに行かない? 君、名前は? あ、そうだ! 協力してくれたついでに、ちょっとお話を聞かせて貰おうっかな~?』
「リ、リンネ、です……が?!」
『…………』
わーすっごい、私より大きいって言えば朱璃ちゃんとローラちゃんぐらいだったけど、ノーチェちゃんは間違いなくナンバーワンだわ。あれ、ノーチェちゃんなんで固まってるの? さっきまで口説きに来てたけど、どうしたのかな?
『え、あの、ぐ、軍団長殿であります、かっ……?』
「あ、そうです。近くでいきなり銃声が聞こえたので、様子を見に来たんだ~」
『し、失礼致しましたァ!! 先程の発言は、どうぞお忘れください! そしてどうかニュックスニーニャにだけは報告しないで頂けると幸いでありますッ!!』
「ノーチェさんは、ニュックスニーニャさんの部下なのかな? まだ構成とか所属も知らないから、教えてくれると嬉しいな」
『しししょ、しょじょくは、サキュバススーパーぽりしゅの、第一機動部隊、隊長でありまひゅ!!』
「第一機動部隊の隊長さんなんだ! ニュックスニーニャさんは機動部隊総隊長だから、今のを報告されたくないのね~。なるほどなるほど」
『ど、どうか、御慈悲をぉぉ……!!』
まだ仕事中なのに協力してくれた人を口説いた挙げ句、しかもそれがまさかの自分の上司の更に上司だったなんて、いやぁ逆の立場だったら私も青褪めるかも。そうだね、私からは報告しないほうが良いね。だって可哀想なことになるのは目に見えてるもん。
「うん、わかった。今のは、内緒にしててあげるね。私からは報告しないから」
『わぁぁぁ……!! 感謝致します、軍団長殿!!』
「私からはね」
『…………?』
ごめんね、ノーチェちゃん。可哀想なことになるのは今まさに目に……見えてるんだ。そして約束通り、私からは報告してないからね? ノーチェちゃん……。
『ノーチェェエエエ……!!』
『ひっ……!?』
「もうすぐ仕事が終わりで緊張感が抜けてた時だから、ね? ね? 許してあげて欲しいなぁ~……」
『ダメであります!! 銃声がしたので駆けつけてみれば、我らが軍団長殿を口説いているとは何事でありますかっ!! 恥を知るのであります、恥を!! 帰って反省文!! 清掃奉仕活動であります!!』
『あ゛あ゛あ゛あ゛…………』
うーん、自業自得とは言えちょっと可哀想だし、ここは私もついていって減刑をお願いしよう。せっかくローレイのダニ退治をし終えて大活躍したのに、ちょっと軽口叩いただけで自由な時間が潰れるのはあんまりだもんね……。なんて、実は構ってくれる人が今いないから、面白そうだしついて行っちゃおう~ってだけなんだけどね~!