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380 私は悪くない

◆ 加賀利城・修練場 ◆


 ユキノさんはリアルでは目が見えないから、当然今までは点字がユキノさんの扱う文字だった。でもこの世界ではステータス欄に点字があるわけもなく、当然ユキノさんは漢字もひらがなも殆ど読めない。日本語の読み書きは小学生以下の能力ということ。つまりステータスもアイテムインベントリも何が書いてあるのかわからず、アイコンから察して『あ、これが……レベルかな?』って判断して、文章を読み上げてくれる補助機能をつかってイチイチ確認するしかない。これは物凄く……疲れることだと思う。

 そもそも全盲者用のダイブシステムって全部特注で、その人その人に合ったものを用意しなければならないから物凄く高価。私が仕送りで貰ってる金額じゃ卒業まで全額貯めても買えないレベル。それもバビロンオンラインが出来る高スペックなダイブシステムで、ユキノさんを見てた感じだと感覚フィードバックが凄くいいモデルだと思うから……相当、ハイエンドなダイブシステムを使ってるはず。結論だけ言うと『ユキノさんの使ってるダイブシステム、ヤバい』ってこと。


「ずーっとこのゲームがやりたくって、チューニングに二ヶ月以上も掛かっちゃって。でもお陰で、リンネさんやお師匠様と出会えましたから、この二ヶ月ちょっとの待ち時間は良いことだったんです!」

「ユキノさん、なんでも前向きに考えるよね」

「何も見えないので、せめて物事は前向きに考えようって、小さい頃に決めたんです!」

「わあ~……。偉い、偉すぎる……。私だったら絶望して引きこもって何も出来ないかも」

「あっ……。でも、今は引きこもりみたいな状態なので、うーん……」

「そうなんだ? やっぱり、外に出ると辛いこととか……」

「ダイブシステムの応用で、視覚情報のみをカメラとリンクすれば普通の高校も通えるようになったんです。でも、いきなり普通の人と同じ高校に通えって言われても……勇気が出なくって」

「確かに、人間は皆と違う存在に対して排除しようとする、攻撃しようとする傾向があるからね……」

「それに突然バッテリー切れとか、故障をしてしまって視覚を失ったらって思うと、本当に怖くって!」

「なるほど……それは確かに、怖いわ……」


 ユキノさんと会話をして、ユキノさんの悩みとか困り事を色々聞いている内に色々とわかったんだけど、ユキノさん実は今年高校生になったばっかりで、両親からは『健常者と同じ学校に通って卒業して欲しい』って期待されてるらしいんだよね。でもまあ、色々理由があってやっぱり怖いと。そりゃあそうだよね――――あ、出てる。


『購入:シルバーオークションで【★漆黒の眼帯】を購入しました』

「あ、ちょっとごめんね。捧げよ!」

「はい? およよ……?」


 ユキノさんとお喋りしながら待ってたのはこれよ、漆黒の眼帯! これがオークションに並ぶのを待ってたんだよね~……掲示板で買い取りを呼びかけたから、書き込みを見た人が出してくれたんだね……まあちょっと高かったけど。

 これそのものをユキノさんに渡すんじゃ面白くないから、当然呪物にして渡そうと思って巨大牛骨鬼が居るエリアまで行ってきてしばき倒して来たんだけど、巨大牛骨鬼の死体って一応ボス判定らしくって、さっきから妙に呪物化に失敗してロストしちゃってるのよ。アイテム作成保護チケは馬鹿みたいに値上がりして値段がギガの領域に入り掛けてるし、眼帯は大体50Mから100Mぐらいで出されてるから数買ったほうが絶対安上がりになると思ったんだけど……これで11本目なんだなーこれが。あ、呪いのコイン切れちゃった。ん~面倒くさいし、いつもの呪いのアイテムの代わりにいつ手に入ったかすら覚えてない【★破滅のルーンストーン】使っちゃお~。


『★漆黒の眼帯が呪われましました!』

『★漆黒の眼帯が変質しました!』

『★★闇の眼帯が更に変質しました!』

『★★★暗闇の眼帯がイレギュラー化します!!!』


 あ、ヤバイ。止める準備を……わ~ユキノさんがイレギュラー化初めて見たパターンだから目をキラキラさせて見てるし。これは、うーん……最後まで見せてあげようかあ~失敗したとしても。


『◆常闇の眼帯が更にイレギュラー化します!!!』

『◆◆深淵の眼帯が更にイレギュラー化します!!!』

『◆◆◆冥き深淵の眼帯が呪物化します!』

『【◆◆◆冥き深淵の眼帯】、【★破滅のルーンストーン】、【怨嗟の巨大牛骨鬼】が共鳴する――――』


 …………いやこれ知らない。こんな要素あるって私は聞いていません。聞いていません!


『□呪印黒布が完成しました! おめでとうございます!』

「引きずり込まれそうなぐらい深い闇の渦でしたね! 凄かったです、これが成功例なんですね!」

「ウン、ソウダヨ」

「……?」


 待ってね、今……性能を確認するから。ちょっと待っててね。


【□呪印黒布】(究極将器・ニューホープエピック・その他・空きスロットなし【●】)

・【呪】目を覆った場合とその他の部位に縛った場合で性能が異なる

・【他】最終消費MP-10%

・【他】最終被ダメージ-10%

・【他】30秒に1度、悪性状態異常を完全に防ぐ【予防】状態になる

・【目】解除不能な常闇状態になり、視覚を失う

・【目】最終消費MP-10%、スキル威力上昇

・【目】最終与ダメージ+10%、稀にダメージを免れる

・【目】常闇以外の全ての状態異常を完全に防ぐ【純闇】状態になる

・究極スキル【心眼】獲得

 ――目を瞑った世界のみで見えるものがある by心眼の槍術士・隠月

 強化不可・破壊不可・呪印刻名【――】・重量なし


 

「はいユキノさん、今度から僅かな光すら感じたくない時は、これを装備してね」

「は、はい! ありがとうございます。大事に使いますっ!」

「漆黒の眼帯の目に巻いた時に失明効果が、ちょっと強化されてる感じ。いつもはこう、髪とかにクルッと巻いておけばいいんじゃないかな……」

「リボン代わりってことですね、そうします! ありがとうございます~!!」


 私は悪くない。私は悪くないんだ。よし、装備したね。これでいい、これでいいんだ。


「あの、ステータス……見て貰えませんか? こんな状態なんですけど……」

「あんまり人に見せちゃダメだよ? 自分の弱点から何から何まで晒すようなものだから」

「で、でも、リンネさんは師匠なので!」

「…………じゃあ見ちゃおっかな~~!!!」


 どれどれ、ユキノさんどんな状態なのか見せて貰っちゃおう~。多分真覚醒相当にはなってるはずなんだよね、段に上がるとレベル100っぽいから。ユキノさんは早く次のお題がやりたいみたいなんだけど、『ちょっと儂は休憩じゃ』って二段の昇段試験をあっさり突破されてちょっと困惑しておやすみ中だから、今日は行けても三段か四段ぐらいかな~? どーれステータスは~?

 


・ステータス

【名前】ユキノ

【階位】二段:レベル110相当

【属性】無属性・悪魔系・中型

【性別】女性

【職業】修行の剣豪

【魔界侵食値】+1,000


【HP】420,000

【MP】420,000

【印】20


【STR】50+110

【AGI】50+410

【TEC】50+410

【VIT】50+110

【MAG】50+110

【MND】50+1,100


【特殊能力】

・指先に感じる世界

・【命】なし

・【力】なし

・【速】なし

・【技】なし

・【体】なし

・【魔】なし

・【心】なし


【スキル】

【剣術】【8/15】

・心眼一刀流

 ┣視界がゼロの時、自身を強化する

 ┃┣通常攻撃強化

 ┃┗スキル攻撃力強化

 ┃

 ┣┳縮地

 ┃┣高速移動

 ┃┗無属性ダメージ

 ┃

 ┣┳通常:乱華

 ┃┣【MP消費なし】

 ┃┗【近距離~中距離・5~10ヒット】

 ┃

 ┣┳弧月斬

 ┃┣【MP10%】消費

 ┃┣【即死】

 ┃┗【装備破損】

 ┃

 ┣┳鎌鼬 

 ┃┣【印 1】消費

 ┃┣【MP10%】消費

 ┃┗風・無属性遠距離ダメージ

 ┃

 ┣┳零姫式抜刀術・祓魔斬

 ┃┣【印 2】消費

 ┃┣【MP20%】消費

 ┃┣不死・悪魔系特効

 ┃┣念属性特効

 ┃┗聖・無属性攻撃

 ┃

 ┗┳零姫式抜刀術・三日月一閃

  ┣【印 5】消費

  ┣【MP30%】消費

  ┣バリア貫通・ペネトレイト貫通・無敵貫通

  ┗クールタイム1分


・指先に感じる世界

 ┣スキル圧縮

 ┣スキル枠+10or【-10】

 ┃┗【-10】適用

 ┣下記効果は視覚がゼロの時に発動する

 ┣スキル枠を減らした際、階位に比例して自己を強化する

 ┃┣MND以外+110

 ┃┣MND+1,100

 ┃┣最終攻撃力上昇

 ┃┣基礎攻撃力上昇

 ┃┗クリティカル率・ダメージ強化

 ┣視覚以外の感覚強化

 ┣シールド系破壊+1

 ┣消費MP半減

 ┗最終消費MP5%減少・0%可


・燕のように

 ┣AGI+300

 ┣TEC+300

 ┗【未開放】

・妖刀の心得

 ┗妖刀使用可能

・文字読み上げ

 ┗選択した文章をアシスタントナビが読み上げる


【印術】

・印一つ

 ┣喝【範囲攻撃打ち消し】

 ┗克己【状態異常回復】

・印二つ

 ┣必殺【次に発動する攻撃スキルを強化】

 ┗集中【MP20%回復】

・印術マスタリー

 ┣印術低コスト化

 ┣30秒毎に印 1 回復

 ┗敵を倒す毎に印 1 回復


【奥義】

・細雪

 ┣印20消費・印決壊(悪性反動)

 ┣中距離範囲100~200HIT・中ダメージ

 ┗反射無効


【究極スキル】

・心眼

 ┣クールタイム2時間

 ┣上記以外の如何なる手段でも再使用可能にならない

 ┣【MP50.0%】消費

 ┣発動時から終了までステータス-30%

 ┗3分間、視覚を失った状態でも見えるようになる



【装備】

主:★鮮紅

副:◆零姫の退魔篭手【左】


頭:★牛骨鬼の兜

体1:★牛骨鬼の鎧

体2:◆零姫の護符

足:★牛骨鬼の鎧


アクセサリー【指】:◆退魔の守り

アクセサリー【腕】:◆退魔の篭手【右】

アクセサリー【首】:◆退魔の勾玉

アクセサリー【他】:□呪印黒布


特殊装備【お守り】:なし

特殊装備【呪物】:なし



 何だこの人? バグってない? 強くない? 指先に感じる世界って何……何?? 特殊能力から生えたスキルっぽいわこれ、ああ……さっき目潰しして攻撃を当てた奴とか、その後も目潰ししたまま連戦のお題をクリアしたから『これは本物ですね~』ってシステムに認められたってこと?? 私もこれ欲しいんだけど、狙って取得出来ない? 出来ないね、そうだね、ごめんね。目を閉じたまま気配を感じて攻撃当てて~なんて流石に無理だわ。うん…………。


「つよぉい……」

「本当ですか!」


 強いが過ぎるで御座います……。転生後の忍者きぬちゃん並の爆速でレベル1から110まで上がってるよぉ……怖いよぉ……!!! どうしてこうなったの? 私? 私がユキノさんに出会ったのが悪いの? キューブ設置したのが悪いの? 私は悪くない、私は悪くないはずなんだ……!! どうしてこうなった……!!


たくさんの感想でのお祝いありがとうございます。返信しきれず申し訳ないです。全部読んでにっこりしております! これからも感想沢山くださいね!

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