376 星に願いたい
◆ 7月7日金曜日【学園】 ◆
眠い。とにかく眠い。だって昇華転生してテンション上がっちゃって、結局夜中の4時ぐらいまでやってたんだもん……。それにしても転生して一般フィールドに出た途端にチュートリアルが出たのは笑っちゃった。そういえば私、チュートリアル受けたことがなかったんだよね。多分ゲーム内部のフラグ処理が変なことになってたんじゃないかってレーナちゃんが言ってたから、運営の方に一応不具合報告は入れておいた。そしたらこんな処理になってたのは私だけみたいだから、特例中の特例の不具合だってすぐ返事が来たよ。お詫び……って言ってたけどこんなのでいちいち貰ってたら私の部屋がバビロンちゃんのブロマイドで埋まっちゃうし、今回は要らないからチュートリアルの項目いっぱい増やしてって要望出しといた。
「燐音さ~ん? もしも~し??」
「あ。ごめん真弓」
「完全に眠る寸前でしたわね~」
「ん~。次体育だっけ、保健室で寝ててもいいかなぁ……」
「それがいいですわ! 女の子特権を行使しましょ!」
「それこの前使った気がする」
「…………正直に体調不良ですわね!」
「その方が良いね。そうしよ」
ああ、それと学校についてからはクラスでバビロンオンラインやってる子達からお祝いと質問の雨あられだった。それを『疲れてるからまた今度になさいな!』ってピシィッと叱って全員を解散させてくれた真弓には本当感謝感謝。ちなみにだけど今日はつくねちゃんが来てない、家の事情らしいけど詳しいことは真弓にもわからないって。もしかしてこっそりシャウタでレベリングしてたりして~……。ん~~……。
「あら? あらあら……?!」
「ん~……いい匂い、何か変えた?」
もうだめだ~体を支える力が入らないよ~。真弓に寄りかかってこのまま寝よう、いいよね? いい匂いするし、いいと思う。だって真弓だし許してくれるでしょ。
「そうですの! 実はシャンプーを」
「真弓髪下ろしたの、可愛いよね。好き」
「好き……!?」
「好き」
「好き……ッ!!!!!」
「うるさい」
「酷いですわ!? 急に拒絶されましたわ!?」
「保健室」
「んもう~! 燐音さんが完全に限界ですわ~! ほらしっかり立って? よく掴まって歩いてくださいまし?」
うごけ~私の体うごけ~……。保健室まで頑張れ~……。最近授業サボりがちな気がするなあ~。一応この前のテストでは真弓より合計で2点低いだけで2位だったけど、授業態度が悪いから成績下がってるかも~。いやでもね、眠いの。眠いから眠くて眠いの。
「ふわふわ」
「わたくしの髪の毛で遊ばないの!」
「どん太よりふわふわ」
「なんだか嬉しいのか何なのか絶妙なラインですわね……! あ、こら! 寝ないの! わたくしの髪の毛は毛布か何かじゃなくってよ!?」
「ほえ~」
「ほえ~じゃなくって!」
ふわふわ。ふわふわ。
◆ 自室 ◆
あの後ね、多分保健室までは辿り着いたんだと思う。お昼前までぐっすり寝て、ふと起きたら保健の先生居て『ダイブし過ぎに気をつけてね、燐音さん』って困り顔だったのが記憶に鮮明に残ってる。というわけでぐっすり休んで再起動したので、私は元気です。とっても。
「あ……」
そうだ、そういえば真弓に液タブ買って貰ったり、バビロンちゃんの服が届いたりしてるのにバビロンオンラインに夢中ですっかりそのままだった。どれどれ、開封して……せっかくだからゴリアテさんから貰ったバビロンちゃん人形のデータ使いまわしじゃなくって、自分で描いたバビロンちゃんにしてみようかな? ちょうど服もあるし、ブロマイドもあるし、やってみよ~!!
「…………これ、フリルの量でデータ量が激増しそう」
私のサイズに合わせて作られてる服だから、胸元のデザインが違う……。でも違和感なく仕上げてある辺り、やっぱりプロの仕事って感じがするなあ~……あっ? シリアルコード……??
「Gothic & Lolita社コラボ、ゴシックロリータ・和の魔神……?」
こ、これ、コラボアバターのシリアルコードじゃん!!! え、嘘、こんなのついてるなんて全然気が付かなかったんだけど……。しかも通常版のバビロン様の礼装アバターもあるし! ええ……ゲーム内で2着も貰えるって、こと……?! ひゅぉぇーーーー……!!!
「早く描こっ!! INしてデザイン確かめないと!!」
これは早くやるって決めたことをやって、シリアルコード打ち込んでログインしてアバターのデザインを確かめなきゃ! できればバビロン様に着て欲しいけど、うーん……なんだかジュエリア関係で忙しいみたいだから、自分で着るかあ~。和って言えば加賀利、加賀利にこっそりポータルで飛んで、そこで自撮りスクショしてデザイン確認するか~!!
◆ 加賀利城・姫の間 ◆
あ~……♡ あ~…………♡ 良い~……。なんていうかこう、バビロン様に包まれてる感。これ最高、でも人前で着用するような度胸が全く出てきませんね……。
まず大胆に肩出し、胸も結構どどーーんと露出してる。注目が行きがちな胸元に和を感じさせるデザインが集中してて、そこから離れれば離れるほどゴスロリ感を出してる。フィッシュテールスカートっぽくデザインされてるのも、バビロン様のご健脚を見せるためのデザインなんだろうけど……。
「ふふ……っ」
いけない、変な声出ちゃった。いやぁ~これ、加賀利レイドとか加賀利最終決戦とかの時に勢いで引っ張り出せたかもしれないのに、惜しいことしたなあ~……。
『なんじゃ、姫千代かと思ったらリンネじゃったか。元気にしておったかえ? なんじゃその!? だ、大胆な!!???』
「え゛」
え゛……。え゛。
「零姫おばあちゃま……!!???」
『儂がいたことに気がついておらんかったのかえ!?』
「ど、どこから……」
『変な笑い声が聞こえたところからじゃが、そ、そのように肌を見せるのは、姫千代の前だけにせんか!!』
「す、すみませ……」
『あ、待て! 隠すでない! せっかくじゃ、ちとそのままでおらんか!』
「ええ……!?」
え、私これ誰にも見せるつもりなかったのに、零姫おばあちゃまにバッチリ見られた挙げ句、もうちょっとこのままで居なきゃダメなんですか!? う、嘘でしょ……?
『麒麟にも見せてやらねば』
「いやそれは……!!??」
まずい、これ以上見られるわけには……!! それだけは、絶対に――――!!?
『あねさまーーー!!!! あれ? あら!?』
「やおちゃん!?」
『おお、ちょうどよい。ほれ、やお! そっちの手を掴め! 逃さんように!』
『はいっ!』
「…………!?」
嘘でしょ…………!? だ、誰か、誰か助けて……! 千代ちゃん助けてー!!!!! 貴方の、貴方の親族がぁ!! 力がぁ、強いっ!!!