371 悲喜交交
◆ 生命研究所・ジャンクケイヴ前・仮設ギルドハウス ◆
「リンネちゃん何拾ったの!?」
「リンネちゃんさっきのアナウンス何!?」
「リンネちゃ――」
『静まれェ!!!!!』
「…………ッ!!!」
あ、ヴァルフリートさんありがとう……。まさか尋問終わって留守番組と合流して戻ってきたら、レベリングしてたお昼寝さん達含めて全員帰ってきてると思わなかった……。すごい人集りで押し倒されそうなぐらいだから助かった~……。
「えっと……まず、この狼藉者から紹介していいですか……?」
「え、誰?」
「この3人が、というより生き残りが3人しか居ないみたいなんですけど……。カナンの国王からの王命でシャウタの破壊工作を行って、それは見事に成功したみたいなんですけど、肝心の兵器を製造してるファクトリーを見つけることが出来ず、シャウタ内部が機械兵で溢れ返るようになってしまってシャウタから抜け出せなくなって、目的の代物を手に入れたものの帰れなくなった大マヌケ……ですね」
『~~~~ッッ!!! ~~~~~~ッッッ!!!!!』
「取り消せ小娘って声が聞こえる気がするんだけど」
「事実なんで」
とりあえずお昼寝さん達にも事情がわかるように説明しよう。まずこのリメン、ズール、ノダの3人は旧カナン王国の破壊工作員。シャウタ国内の兵器を暴走させる作戦に参加してたらしい。他にも部隊員が大勢居たみたいだけど、そいつらは避難シェルターに逃げ込む前に機械兵にやられて全滅したんだって。その様子を避難シェルター内で見てて『あんな恐ろしい兵器に勝てるはず無い』とシェルターに立て籠もって、救助が来るか機械兵が朽ち果てるまでシェルター内のコールドスリープ装置で延命してたみたい。
それで、私達が最下層に降りてきて戦闘をしてるのを見て『こいつらと一緒になら逃げられるかも』って作戦を練って、あんな嘘で私達について来ようとしたわけだね。まだ脳みそ凍ってたのかな。ちなみにシェルター内の監視モニターから映像を見てみたけど、音はノイズだらけであんまりハッキリとは聞こえなかった。それでも広場で『リンネ、まだですか~! お腹空きました~!』ってゼオちゃんの声は聞こえたから、私の名前はやっぱりわかってたみたいだね。
地上に連れ出したら『瘴気が~!!!』って騒いでたんだけど、これはシャウタ側が国に近づけまいとここら一帯に毒ガスを撒いてたからだったみたい。とりあえず大丈夫だってわかったら今度は『カナンまで連れてけ』だの『カナン国王陛下に会わせろ』だの『カナン王国を敵に回したらどうなるかわかってるのか』とか言い出して非常にうるさかった。いや~カナン王国はもう崩壊してるんでどうにもならないですね。
「――なるほどね~……こいつらが……」
「まあこの人たち3人だけってわけじゃないみたいですけど、平和で日和ってたシャウタは意表を突かれてしまった形ですね。姉妹国のメロウは完全に崩壊して地中に埋まってしまったみたいなんで、ああやってダンジョンとして残ってるみたいです」
「な~~るほど~~…………で?」
そうですね、お昼寝さん達が聞きたいのはこんな連中の話じゃないですよね。
「ええっと…………これ、です」
「なにこれ、ルービ」
「パーフェクトキューブです」
「パーフェクトキューブ、パーフェクトキューブね。うんうん、それで……これ、なに?」
「…………世界が、変わってしまうアイテムです」
「…………?」
「なんやそれ、何に使うんや?」
「全て、ですかね……」
「なにそれ~。リンネ~貸し――うわっちゃちゃちゃちゃ痛い」
「他人が触れようとすると電撃を放って、ええ……すみません……」
さっきアナウンスされたこれが、知りたいんですよね……!!!
「うわ地味に痛そう、怖~い」
「リンネさん! 早く効果が知りたいですわ! それは何に使うんですの!? ワールドアイテムとは何者なんですの!?」
「知りたいデース!!!!!」
「じゃあせっかくですから皆さん、一緒に白目剥いて泡吹いて倒れましょう」
じゃ、皆さんに教えてあげますね。この、世界を変える力を持つキューブの性能を……。ぶっ壊れトンデモ仰天アイテムの力を……!!!
「その前にこの人たちどうしましょう」
「カナンに帰らせれば?」
「でもここの存在知ってるしなあ」
「もうそれは大丈夫だから問題ないんじゃない?」
「あ、そっか。もう大丈夫なんだった」
「後で川の向こうにぶん投げてくれば良いんじゃない?」
『一応他にも情報を持っているかもしれないからな! 俺達が引き取ろう、バビロン様に突き出してくるぞ!』
『珍しくクーガーがマトモ~♡ ね、リンネちゃんそれで良い~??』
「あ、それで大丈夫です。もう行くんですか?」
『そうだな、一度バビロニクスの修練場へ戻って能力と肉体のすり合わせをするぞ! 今日は素晴らしい指揮に素晴らしい経験をありがとう、感謝する! マスターリーダー!』
『リンネちゃん本当にありがと~♡』
この3人はクーガーさん達預けで良いか、それが一番の解決策な気がする。それよりキューブ回したいの、キューブ。くるくる~。
「とりあえず今から明日ログインするまで全54面を無料開放しておくんで、効果もギルド掲示板にコピペして張っておきますから、それで確認してみてください。あ、一応倉庫の近くに置きます」
「置く。設置物?」
「へ~設置して使うものなん」
『【(W)パーフェクトキューブ】を設置します。完全なる立方体が展開されます』
「だああああーーーー!!!? 凄い、なんかカチョカチョカチョカチョカチョって大きくなったーーー!!!」
「超クール、とても欲しい」
「ん……? ん……!? これ、ヤバくねえか!?」
「なんやハッゲにしてはリアクションデカいやん、言うて一つのアイテムでそんなヤバい効果ァーーーーー!!! なんやこれぇえええ!!!!!!」
「ヒュ~~…………げほっ!?」
「シュターク口笛吹いてる場合じゃないデース! ヤバいデース!」
これ、設置する時のカチョカチョカチョカチョって広がってく音と光景が格好いいんだよね~。割りと何回でも見たい光景だったりする。
「ヤバ、なにこれガチャオールインワンって感じじゃん」
「これ、今日無料!? 無料なの!? カード剥がしあるよ!?」
「あ、特にコストはないんで無料で」
「ちょっと僕、カードガチャやりたい!!! 今ね、ゴミカード持ってる!!!」
『もってぃが【パーフェクトキューブ・F-6】を使用しました。カードが消滅しました』
「…………?????????」
「え、嘘、一発?」
「もってぃ一発で今消滅した?」
「一発ロストやんけ!!! 何初手で1パー引いとんねん!!!」
「はあ~~~~~?????????」
『ガァァァ~~~』
「だよねえ!? おかしいよねえ!?」
ああ、うーん……もってぃさんがもってぃさん……。
「ちょっとカード外したい奴いっぱいある!!」
「これゴミ装備にカード刺さってたやつ全部抜いてガチャ大会しようぜ!」
「ねえこれにカード突っ込んでさ、出てきたカードの名前長い方が勝ちってバトルしようよ。ねえ」
「どうせもってぃ一発ロストじゃん」
「ねええ~~~~~!!!!!!」
「ほ、本当に今日無料でいいの!?」
「大丈夫です。なんなら曜日決めてギルドに無料設置する曜日とか決めますか?」
「無料は、今日だけ! 今日だけね! せめて半額、リンネちゃん無料はこう、争いが起きるから!」
「あ、はい、すみません……」
「これを倉庫横に設置したリンネちゃん、ナチュラルサディストじゃん……やっちゃう、こんなの……」
「あ。複合機械装備、F1に入れるとノーリスク解体。全部戻ってくる」
「うっそぉ!?」
「ほんと、全部初期化された。強化値も、なくなったけど……」
「作り直しが、作り直しが捗る!!!」
ほえ~……。機械装備にとってはF1が神効果なんだ……。初期化してどうすんのこれってしか思ってなかったなぁ~……。
「F9の複製、巨大パナシーアクリスタル入れて普通のパナクリ5個入れると複製できるわ……」
「10パー消滅怖いわ流石に」
「これ絶対ヤバい使い道あるよね」
「呪物はそもそもモンスターの死体が必要なのでダメでした」
「あ~死体がアイテム扱いされないから……ああああ!!!」
「モンスタークラフト!!!」
「あのアホほど時間のかかるモンスタークラフト、複製できるじゃん!!!」
「モンスターの死体を革とかに素材化してアイテム化してるから、クラフトはオッケーなのか」
「機械装備もオッケーじゃない?」
「機械装備はベースが高すぎて消滅が怖えよ」
ほえ、ほえ……。皆がキューブを研究し始めている……!
「ちょい俺もそれ使いたいんだけど!」
「ガチャさせてくれ、ガチャ、ガチャ」
「F2とF3をガンガン回したい!!!」
「F3にレジェ武器入れてミスティックのステータスアップアイテム出たんだけど!!!」
「は!? マジで言ってるの!?」
「そこ消滅しないけど、大体等級下がって最後ゴミになるで」
『ゴリアテが【木刀+20】を引き当てました! おめでとうございます』
「あ、全然嬉しくない。何だこれ。何だこれ?」
「おめー」
「おめ~!」
「おめ」
「全然嬉しくない! 全く感情のこもってないおめ~が木霊してる!」
「おめおめ」
わ、早速+20武器…………ぼ、木刀……。いや、分解すればチケットになるんじゃ……?
「それ、分解したら凄いチケットにならないですか?」
「…………あぁ!」
「え、あ! そっか、分解時のチケット!」
「なんか結構良いチケになるんじゃないの~??」
「ゴリ~! 今何番で回してた~!?」
「C1! C1!!」
「チケが良いもんだったら俺もやってみよ」
『モロトフくんが【★★★ニンジンソード+19】を引き当てました! おめでとうございます!』
「は?」
「え?」
「あ、許されない」
「ん????」
「嘘でしょ、俺の時お祝いの言葉一切ないじゃん」
「アルティメット+19はダメでしょ」
「それヤバいって、両手剣? 片手剣??」
「えっと、両手剣!」
「ビジュアル装備代表じゃねえか! 見た目が良いだけのやつ!」
「ああ!! それかあ!」
お~+19装備!! いやでも、見た目が凄く……平べったい人参の形の大剣だ……!! 流石に+19まで行けば強いんじゃないの……?
「ん~……。料理はハッゲの奴の方が好き」
「わかる。ハッゲの料理の方が100倍は美味しい」
「高級料理だけど、なんかこれじゃない感が……」
「お、嬉しいねえ。俺リストラかと思ったぜ」
「ハッゲがどうしても忙しくて居なくて、ご飯も何も無い時ぐらいじゃない? 使うの」
「効果もイマイチ」
「ヤバイカ突っ込んで肉厚ビーフバーガー出てくるのはどうなの?」
「ヤバいと思う」
「ヤバイカだけに」
「出てくるものまでヤバくなくていいから……」
料理はハッゲさんのほうが断然美味しいんだ。じゃあなんか安心したわ、実はそこだけものすごく気にしてたんだよね。あとここの機能はローレイとバビロニクスの食堂より高く設定しておこう。ガッツリ業務妨害になるし……。
「うへ~……。アクセの失敗作がどんどん面白アクセに変わってく~……」
「これ細工師には良いね~」
『つくね、失敗作はこの面に入れれば良いのか?』
「そ、そう、今日だけ、無料だから、全部入れちゃえ……!」
『へ~すっげ~。そこらの雑魚蹴散らしてそれに入れれば飯になんのか~!』
「無料なの今日だけだから、明日からはダメ」
『ちぇ~』
『ぎゃ~う』
「ちょっと、F5、やります!!!」
「お? お昼寝がアバガチャ行くってよ」
「ハズレアバター、なんか可愛いのにな~れっ!!」
おお、お昼寝さんがアバガチャにアバターを突っ込んだ! 何が出るのかな、センスが良いアバターが入ってるといいけど、これロストの可能性もあるから怖いんだよね。
『お昼寝大好きが【◆釘バット】を引き当てました! おめでとうございます!』
「うわ要らないんだけど。これ武器じゃなくてアバターなの!?」
「あ、欲しいですね~。是非買いたいんですけど、幾らぐらいですか?」
「高菜君要るの……? あ、あげるよ。とてもこれでお金を取りたくない」
「本当ですか~? じゃあ今度可愛いアバ出たらあげますね~」
高菜さんが武器アバを……く、釘バット……。しかも無駄にレアリティ高いし……。
「りんねーさま! 転生しないのっ?」
「あ! そうだ、行こっか」
「もってぃほら、勝負しようぜ~」
「僕の幸運を見せる時が来たね。ここって場面で僕の運は発揮されるから」
「ソダネー」
「うんうん、そうだね……」
皆キューブに夢中だし、今のうちに魔神殿に行ってバビロン様に会って、ジュエリアにも今日のことを報告して……うん! 転生しに行こう!
『わうっ (疲れたから休んでる~)』
『(*´∀`*)ノ』
「この光景が楽しいんで、見てていいですか? それに待っていたい気分です!」
「我も待っているよ。それにバビロン様にお会いするんだろう? 尚更一人がいいだろう」
「では、此方は魔神殿までご一緒致しまする」
「私も行きましょう、是非行くんです!」
「デロナも行く~! 魔神殿までっ!」
「ティアも、行きます~!!」
『戻るのか。俺はここに居よう、暫く休憩だ』
「ん、ヴァルフリートさん今日はありがとうございました。ごゆっくり休んでください……今度、コントロールを教えて下さいね!」
『ああ、こちらこそ感謝する。コントロールは後日、今日はなかなかに疲れてしまってな……』
千代ちゃん、ティアちゃん、ゼオちゃん、デロナちゃんが一緒に魔神殿までついてきてくれるのね。そういえばさっきワールドアナウンスも流れたし、確かに護衛が欲しいよね。
ヴァルフリートさんからコントロールを教わるのはまた明日ってことで、今日はとりあえず転生しに行こうね。虚飾の王を倒した時にレベル200になったからね!! レベルアップメッセージ省略して気がつくのが遅れたよ~。さっき確認してビックリしちゃった。
「じゃ、行こっか」
「ええ、参りましょう」
は~全プレイヤーで最速の200レベル転生だ~。転生後は何の職がいいかな~? 確か、転生後の職業選べるんだよね。むしろ何が選べるのか楽しみだね!