367 ジャンクケイヴスクラップ作戦・7
◆ ジャンクケイヴ・シャウタ最下層 ◆
『S-39強欲の王(Lv,????)が【最終強化パック・K型用】をS-40殲滅戦闘兵K型(Lv,????)に装着しました』
『S-40殲滅戦闘兵K型(Lv,????)が強化され、S-40虚飾の王(Lv,????)になりました』
ああ、ああ。このゲームの運営が性格悪いのを完全に忘れてた。いや、こうなることを予測しきれなかったのが悪いのかもしれない。そもそも私はこれを予測できるだけの材料を持っていた、全ては私の判断ミス。ジャンクケイヴメロウとジャンクケイヴシャウタは別物、メロウが後から出来たもので、シャウタがメロウの原型となったものだったんだ。そう、ジャンクケイヴメロウで出た装備は『七つの大罪』や『七つの美徳』などの後から決められたもの。じゃあ原型になったシャウタは? 考えればすぐに分かる、シャウタは七つの大罪の原型――――八つの枢要罪。G型……強欲で気がつくべきだった。それぞれの枢要罪に対応したボスが居る、つまり強欲のボスは既に出現しているということ。そしてそれは今近くに、確実に……居るっ!!!
「あれだっ! 影だけ見える!」
「あっ!!」
『逃がすかぁ!!!』
『蠍座のサリーが【投網】を発動、S-39強欲の王(Lv,????)を【強制拘束】状態にしました』
『オーレリアが【禍津・地獄焼夷猫】を発動、Weak! クリティカル! S-39強欲の王(Lv,????)に21,000Mダメージを与え、撃破しました。経験値 15,000G 獲得』
『レベルアップメッセージ省略中』
『【エリアメッセージ】隠しエリアボス・S-39強欲の王(Lv,????)が撃破され、強力な敵の出現率が激減しました』
『【エリアメッセージ】S-38、S-39が王の死により自爆しました』
こいつが、赤タフを作り出していた奴の正体。でもそんなこと今となってはもうどうでもいい、最悪なのはもはや余裕綽々と言った様子の鉄の人馬改め、黄金の人馬。虚飾の王。眩しいほどの金色の装甲に、これでもかというほどの武装、もはや勝てる要素が存在しないのではないかというほどの強者のオーラ。
「…………」
『派手になっただけ、見掛け倒しということは……なさそうだな』
『言葉も話さない、表情も存在しないが、まるで……これはもう勝ったなとでも言っているかのようだ』
「脚部が攻守に長けたバリアに覆われている、蹴ってよし受けてよしだ。胴体に50連装ミサイルポッドが4基、ガトリング砲が6門、ハイギガビームソードとリンネが呼んでいた武器も強化されているな。更に両腕に遠距離攻撃用のバズーカ砲が取り付けられているのか。まるで今から我々を殺すための武装を見せつけてきているかのようだ、悪趣味な奴だな……」
「どうしますか、リンネさん! ここは逃げるも、恥ではない思います!」
あの余裕を付け入る隙と見るか、もはや相手にならない程に強化された故の死刑宣告動作と見るか……。いずれにせよテレポートは使えない、最悪なことにこの広場は大型昇降機の反対方向に位置していて逃げ切れたとしても数人。そして何よりもこの非常事態にあの昇降機が動くかどうか未確定、それも問題……。
『――――シャウウウウウウウタ国民の皆ななななななな様ににににに、お知らせ致ししししししし死死死死死ます死ます。虚飾の王が、身の程知らずずずずずの愚かな侵入ししししし死者を、2分後に排除開始致し、しし死速やかに排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除』
「――――ッ……!!!!」
舐められている、私達が…………ッ!!!
「ぶっ壊してやる……ッ!!!」
『あ、サリーちゃんもさんせ~い♡ ぜってーぶっ壊す』
『(;´∀`)!?』
『待って』
『周りの敵、集合しようとしてる』
『集まってる』
……ああ、ちょっと頭に血が昇っちゃった。ああ、なるほど……ね? こいつが2分後に排除開始って言ってるのは、味方の集合を待ってる故のブラフなんだ。は、ははっ……! そうだ、虚飾……。虚飾!!! この余裕そうな立ち振舞が、そもそも虚飾なんだ!!! 武装は本物だろう、強化されたのも本当、さっきノンナさんが破壊した脚が復活して完全な状態なのも本当、ただし私達相手に余裕というのは、嘘。
「……デロナちゃん、サイレントフィールド」
「は、はいっ! 我らに静寂を与え給え、サイレントフィールド!」
『デロナが【サイレントフィールド】を発動、外部への音の流出を防ぎます』
『モーリスが【デコイバンカー】を設置』
『S-40虚飾の王(Lv,????)が【フィールドブレイカー】を発動、デコイバンカーによって妨害されました』
こいつは自分一体だけではこの状況をどうにか出来ない、今一気に攻め込まれたらギリギリ負けるかも知れないという計算をしている。だから今もこちらの情報を集めるために必死、攻めて来ない。窮鼠猫を噛むという言葉があるように、今まさに私達は追い詰められた鼠。しかしただ追い詰められたのではなく、戦う覚悟を決めて構えた鼠……攻めた時に思わぬ反撃で負ける可能性があるから拮抗状態を作りたいんだ。自分が有利な状況を作り出せるまで時間を稼ぎたい――――それに恐らくさっき、強欲の王が呆気なく破壊されたのが計算外だったはず。戸惑いこそ機械らしく見せなかったものの、勝率が下がったことを悟られたくなかった。だからこそさっきの放送、虚飾。嘘で出来ている偽りの余裕。私はそう分析した。
「ルゥちゃん、緊急用に侵入を防ぐ方陣を出せるって言ってたよね。どれぐらいの範囲? 何分?」
『ほ、ほ、本気でやれば、3分ぐらい……? この広場ぐらいなら、絶対通さない自信があるっ!! ルゥが、やられなければだけど……』
「作戦を伝える、失礼だけど急いでるから敬称は省かせて。ドミエラとモーリスとデロナがルゥの絶対死守、何が何でもルゥを優先。私達に構わずルゥを絶対優先」
『わ、わかったわい!』
『う、うむ』
『S-40虚飾の王(Lv,????)が【フィールドブレイカー】を発動、デコイバンカーによって妨害されました』
相手の援軍はこの広場に迫っている、でも焦らない。この準備、この1分で相手に傾いた天秤を傾け返す。拮抗状態は作らない、これは私達が優位である状態を手放さないための2分。
「ヴァルフリート、クーガー、オーレリア、ティアラ、マリアンヌ、グスタフ、スージーで絶えず攻撃、絶対に手を緩めないで。千代、ゼオ、サリー、レオン、ノンナ、カムイ、この6人は近接戦闘の要になる。攻撃のチャンスは私が必ず作る、絶大な一撃を用意して。どん太、イル、エルで奴を翻弄する。攻撃を絞らせるな、可能な限り動き続けて相手が最も嫌がるであろう武装解除を狙って。ドミエラ、モーリス、デロナはルゥの死守と方陣維持、ルゥは合図があった瞬間にこの広場を隔離。フリオニールを合図役にする!」
『(;´∀`)!?』
『わかったわっ! 3分、それ以上は無理よ!』
「3分あれば上等、必ず3分以内に破壊する。必ず」
『S-40虚飾の王(Lv,????)が【フィールドブレイカー】を発動、デコイバンカーによって妨害されました』
『デコイバンカーが破壊されました』
あの広域電磁波攻撃みたいなフィールド系スキル破壊効果は厄介、でもモーリスさんが設置出来るデコイバンカーなるスキルで3回は打ち消せる。次のフィールドブレイカーはサイレントフィールドを破壊するだろう、デコイバンカーは? とアイサインを送ったらまだ無理だとジェスチャーを返された。次のフィールドブレイカーには間に合わない。なら逆にそれを行動開始の合図にする!
『S-40虚飾の王(Lv,????)が【フィールドブレイカー】を発動、サイレントフィールドが破壊されました!』
「今! 巨大化!」
『(;´∀`)!!!???』
『フリオニールが【巨大化】を発動しました!』
『これねっ!?』
『魚座のルゥが超越スキル【完全隔離の大方陣】を発動! 周囲のエリアと魚座のルゥ周囲のエリアが約3分間隔離されます!』
内緒話はもう終わったんだよ、そしてお前の援軍はこの広場に入って来られない! ブラフだろうがなんだろうが、私達を舐めた態度を永遠に後悔させてやる!!!
「各員、行動開始! これより3分以内に虚飾の王を破壊せよ!!!」