364 ジャンクケイヴスクラップ作戦・4
◆ ジャンクケイヴ・シャウタ・最下層 ◆
上層、中層、下層と大型の昇降機で降りてきて最下層、ここだけは上三層と比べて非常に天井が高い。まるでここに一つの都市が存在していたかのように、上の三層と比べて三倍以上も天井が高く設定されている。前の階層が30メートルぐらいなら、ここだけ90メートルはある。高層ビルの残骸や、元はドーム型の建物だったと思われる施設の廃墟等、どこを見ても滅びているとしか言えないが、未だに警備ロボットだけは変わらず動き続けている。それがなんとも不気味で、異様で、どこか物悲しい。まるで守るべきものを守ろうとしているような、滅びを理解出来ず機械だけが正常に稼働しているような……。
『リンネ殿が壁を背にした方がいいと言っていたのはこのためか。あまりにも危険な戦法だと思っていたが、これなら納得できる』
『ヒャアア……倒した後が一番ヤベえ……!』
『即時戦力投入、要警戒』
『うむ……!』
『後衛は儂らの後ろに即隠れておれ! こっちはテレポート出来んというに、向こうは使いたい放題とはのう!』
『ここは敵の本拠地、腹の中だからな! ノコノコ入ってきた獲物は逃さんというわけだろう!』
『珍しく頭使ってねえでビームだせビームをよお!!!』
『今は出ない!』
『だーーーーー!!!!!』
『牡牛座のグスタフが【グスタフトルネード】を発動、S-31警備兵A型(Lv,400)に840Mダメージを与えました。周囲の敵を巻き込み吸引しました』
『纏めたぞ!!!』
『でかした!』
『蟹座のクーガーが【マッスルビーム】を発動、複数のS-31警備兵A型(Lv,400)に平均2,250Mダメージを与えました』
『オーレリアが【まがちゅ・地獄焼夷猫】を発動、複数のS-31警備兵A型(Lv,400)に平均2,470Mダメージを与え、撃破しました。経験値合計 640G 獲得』
『レベルが192に上昇しました』
『どん太がレベル72に上昇しました』
『オーレリアがレベル92に上昇しました』
『フリオニールがレベル77に上昇しました』
『姫千代がレベル152に上昇しました』
『マリアンヌがレベル69に上昇しました』
『ティアラがレベル122に上昇しました』
『ゼオがレベル82に上昇しました』
『デロナがレベル82に上昇しました』
お、やっと上がった。6セットとリポップした雑魚処理6セット分で1レベルか~……。あ、うん、経験値14,000Gね。2,000Gずつ上がってくのほぼ確定だわ。最終的にこのペースだと195で20,000、200に必要なのが28,000になるんだけど? 運営さ~ん??? 正気か……?
「1セットと追加雑魚処理に3分20秒、予備時間40秒見てサイクル4分、1時間に15セットが限界かな?」
『ううん、もうちょっと効率的に回れる道覚えた』
『どん太も、もう一回一緒に行こう? イルは、エルが通った道わかるから』
『わうっ! (道おしえて!)』
「あら、危険な道だったら無理せず今までのルートを使ってね」
『『わかった』』
『わうっ! (わかった!)』
「気をつけてね~」
おお、昨日どん太に乗って開拓したルートより良いルートがあるって……! イルちゃんとエルちゃんは見つからないように行動する為の技術は優れてるけど、逆に見つかるように行動するのも得意なのかな? 陽動作戦とかやってたのかしら。無茶振リーダーから色々と任されてたんだろうなあ~。もう見えなくなったわ、遠くからガッシャンガッシャンってあいつらの追いかけていく音が遠くなったり近くなったりだけが聞こえる……。
「赤いのが近くに出たぞ!」
「リンネ様! いっぱいこっちに来ます!」
「よし出番だわ。ヴラディウス・カルナ・スペアリス!!!」
『【串刺公】を発動、無数の槍が敵を串刺しにします』
『3体のS-32警備兵R型(Lv,????)に平均2,900Mダメージを与えました』
『複数のS-31警備兵A型(Lv,400)に平均3,150Mダメージを与えました』
あ、ヤバい。あの赤いの3体とも全部エリートだわ。こんなの初じゃない?
「赤エリート!」
『ガァ!!!!!』
『ヴァルフリートが【小龍砲】を発動、複数のS-31警備兵A型(Lv,400)に平均3,990Mダメージを与え、撃破しました。経験値 320G 獲得』
『3体のS-32警備兵R型(Lv,????)に平均3,700Mダメージを与えました』
『マリアンヌが【超改良マリアマイトボム】を起爆、3体のS-32警備兵R型(Lv,????)に平均4,700Mダメージを与えました』
『S-32警備兵R型(Lv,????)が【ハイパービームソード】を発動』
『S-32警備兵R型(Lv,????)が【ハイパービームソード】を発動』
『S-32警備兵R型(Lv,????)が【ハイパービームソード】を発動』
うへえ、硬いし速いし全然怯まないんですけどーーー!! マリちゃんが緊急時用に仕掛けておいた爆弾まで耐えるし、5倍は硬いんじゃないのこれ!? 地獄は~どとかの並のボスより硬いまであるよこれは!
『フリオニールが【マルチカウンター】を発動、カウンター! S-32警備兵R型(Lv,????)に750Mダメージを与え、ノックバックさせました』
『フリオニールが【マルチカウンター】を発動、カウンター! S-32警備兵R型(Lv,????)に100Mダメージを与え、ノックバックさせました』
『山羊座のドミエラが【マルチカウンター】を発動、カウンター! S-32警備兵R型(Lv,????)に1,200Mダメージを与え、ノックバックさせました』
『ノンナ、やれ!』
『ヒャア!!!』
『牡羊座のノンナが【不動無拍】を発動、クリティカル! S-32警備兵R型(Lv,????)に合計20,500Mダメージを与え、撃破しました。経験値 150G 獲得』
え、強ッ……!!??
『ゼオが【滅殺・マッハパンチ】を発動、クリティカル! S-32警備兵R型(Lv,????)に合計13,100Mダメージを与えました』
『蠍座のサリーが【オリハルコンクラッシュパンチ】を発動、クリティカル! S-32警備兵R型(Lv,????)に合計13,900Mダメージを与え、撃破しました。経験値 150G 獲得』
『魚座のルゥが【マドモワゼル】を発動、クリティカル! S-32警備兵R型(Lv,????)に合計1,200Mダメージを与え、撃破しました。経験値 150G 獲得』
『あらごめん遊ばせ、おほほほほ』
『(ヽ´ω`)……』
『出しおった……』
今のが、数々の男性を葬ったルゥちゃんの蹴り……!! な、なんて破壊力……。それにしてもこいつら、HPが5倍はあったね。推定25Gぐらいかな? 経験値は450Gを3パーティで割って150Gか、何と何と15倍もあるじゃん経験値! すごーい。
「むっ……!?」
『姫千代が【乱華閃舞】を発動、S-35特殊戦闘兵D型(Lv,????)に合計6,100Mダメージを与えました』
『獅子座のレオンが【獅子連斬】を発動、S-35特殊戦闘兵D型(Lv,????)に合計5,200Mダメージを与えました』
「何かおりまする!」
「え!?」
『透明なやつが居る、カス当たりだった』
『そこだァ!!!』
『牡羊座のノンナが【不動無拍】を発動、クリティカル! S-35特殊戦闘兵D型(Lv,????)に合計20,500Mダメージを与え、撃破しました。経験値 300G 獲得』
『やるじゃねえか! 鈍ってねえな!』
『や、マグレっすよ、マグレ。へへっ……!』
うわ、倒したら姿が見えるようになった。暗殺者みたいなローブみたいなのを羽織った奴が居たんだ、全然足音もしなかったし、姿も全く見えなかったのに良くわかったね……。
「よくその透明ロボットが居るのわかったね!?」
「影までは誤魔化せぬようです」
『単純に透明というわけではないようだな』
「……なるほど、この羽織っているローブが、周囲の景色と同化出来る装備のようだ。残念ながら視覚のみで、戦闘で生じた光によって出来る影まではどうにもならないようだ。足音がないのは、このロボットの性能によるものか、この細い足で接地音を抑えているんだろう」
『そろそろどん太君が戻ってくるぞ! 広域殲滅、構え!』
なるほど、影……影ね。いや~こういう拠点狩りも運営は想定してるんだろうなあ~……。こうやってどーんと構えてやってるとこういうのが紛れ込んで来るように、上手いこと変なのがちょいちょい居るわけね。はあ~……。
『いっぱいいる!』
『ちょっと多い!』
『わおーーーん!!! (さんばい!)』
『『退避!』』
『双子座のイル・エルが【スクランブル!】を発動、【超加速】状態になりました』
「三倍!? いや三倍までは居ない、居ても倍ぐらいだわ! ブラックホールかなこれは……!」
『使うのか!! ヴァルフリート、リンネちゃんが大技を出すからそれ撃ってからだ!』
『あ、ああ……? わかった』
三倍までは居ないわ、でもかなり量が多いね~……こういう時の為に、私が基本的に休んでるのよ。攻撃射程に入ればどん太が急加速して退避して、後はグスタフさんが纏めてくれる……。
「ダーリ・トゥム・ダーリ……」
「慈悲深き地獄の女神達よ、彼の者に強敵へ打ち勝つだけの力を与え給え! ヴェレス・ヘーラ・ゴッディス!」
『デロナが【ヴェレス・ヘーラ・ゴッディス】を発動、1分間貴方の最終攻撃力と全ステータスが1.1倍になります』
『オーレリアが【トルネードスクロール】を使用、【トルネード】が発動します』
『牡牛座のグスタフが【グスタフトルネード】を発動、スキルリンク! 【グスタフ大旋風】が発動、S-31警備兵A型(Lv,400)に1,220Mダメージを与えました。周囲の敵を巻き込み吸引しました』
そもそも最上位の暗黒球体の術式を削って、最低限発動出来るラインに落としたのが小暗黒球体。これは小暗黒球体に威力を増加させる術式を増やして魔術陣の数が多くMP消費量も倍になった術で、30の陣を正しい順番に並び替えなきゃ発動しない。流石にこの数を暗記しろって言われると難しいんだけど、基本的には20の陣は小暗黒球体と一緒で、増えた10個の陣をその後ろに並べればいいだけ。しかも古代神語を繋ぐ陣の線が20の陣と形式が異なるから、まだわかりやすい方だと思う。よし、出来た……!
「大いなる虚空に沈め!!!!!」
『【古代神術・中暗黒球体】を発動』
『複数のS-31警備兵A型(Lv,400)に平均25,500Mダメージを与え、撃破しました。経験値合計 2,000G 獲得』
『複数のS-32警備兵R型(Lv,????)に平均25,000Mダメージを与え、撃破しました。経験値 600G 獲得』
『2体のS-33戦闘兵B型(Lv,????)に平均25,000Mダメージを与えました』
「うっそぉ!? 生きてるの居る~~!!!」
『こ、この術で生き残れるものなのか!!』
『驚いてる場合じゃないぞヴァルフリート、ビームだ!』
『ビームじゃない、ブレスだ!!! ガァアア!!』
『ヴァルフリートが【小龍砲】を発動、2体のS-33戦闘兵B型(Lv,????)に平均4,000Mダメージを与えました』
えええええ、これだけダメージ与えてまだ死なない人型ロボット兵器居るんだけどー!? 間違いなく1グスタフあるよ、1グスタフ! デカい!!
『ティアラが【カオスランサーレイン】を発動、2体のS-33戦闘兵B型(Lv,????)に平均1,100Mダメージを与え、撃破しました。経験値 2,000G 獲得』
「あ! た、倒しちゃいました!」
「倒していいんだよ! 偉い、ティアちゃん偉いっ! 30秒後のリポップに注意!」
『トルネードはいつでも撃てる、かかってこいや!!!』
あ、これはちょうどHPが30Gぐらいかな……? 経験値、1体だけで3,000Gもあるの!? これは何もさせずに倒して正解かも、絶対強いじゃんこれ。いや待って? もしかしてこいつの赤いバージョンとか、居る…………? まさか、まさかね……はは……。
『キラキラ拾った』
『リーダー持ってて』
『(*´∀`*)』
「リポップまで後10秒!」
『マリアンヌが【超改良マリアマイトボム】を設置しました』
『水瓶座のモーリスが【焼却火炎砲】を構えました』
『オーレリアが【禍津・地獄焼夷猫軍団】をスタンバイ』
『牡牛座のグスタフが【グスタフトルネード】をスタンバイ』
リポップ、今ッ!
「来た! 少ない!」
『牡牛座のグスタフが【グスタフトルネード】を発動、S-31警備兵A型(Lv,400)に840Mダメージを与えました。周囲の敵を巻き込み吸引しました』
『オーレリアが【禍津・地獄焼夷猫軍団】を発動にゃ、くっくっく、S-31警備兵A型(Lv,400)は丸焦げにゃ、ぶざまぶざま。経験値は 176G ぐらいだにゃ』
「我々は次回だな」
『うむ』
今回はリアちゃんの術だけで全部丸焦げになったね、透明なやつも……いないね! ヨシ、ドロップしたアイテムを回収する時間だー!
『火が収まったら』
『回収するね』
「ありがとう~。ルゥちゃん、陣出しっぱなしだけど大丈夫?」
『攻勢方陣は一度も壊されずにここまで維持出来てるから、負担が少なくて楽勝よっ!』
「は~い。リアちゃんマナは大丈夫?」
「ティアにゃんとゼオにゃんに交代を要請しますっ!」
「わかった、任されるた! まかされるた? まかされ……」
「任された、ですっ!」
「任せて、かな……」
「はうっ!」
「はい、任せて、です! 覚えました!」
『ゼオが【魔杖・獄炎】に変更しました』
リアちゃんはティアちゃんゼオちゃんと交代ね。今回釣りに行くのは~……ちょっと休んでからどん太でいいかな? イルちゃんエルちゃんは回収があるし。
「どん太、ちょっと休めそうだから休憩したらもう一回行ってくれる?」
『わうっ! (いいよ! もう行ける!)』
「全員用意が終わってから、ちょっとだけ休憩なの」
『わんっ! (わかった! 休憩するね!)』
どん太はオンオフの切り替えがハッキリしてるね~……。休憩ってなったら即ごろ~んとするもんね。まあでも、休憩の姿勢としては正しいのかも……。
『むぅ……』
「わかるよ、我々は微妙に火力不足だ。下手に張り切るより予備火力に徹したほうが良い」
『うむ……』
マリちゃんとモーリスさんは同じ悩みを抱えてるみたいね……。確かに、既存装備のマリちゃんとモーリスさんは、本人が強くなっても武器性能が強くならないと火力が上がらないんだよね。機械系装備の宿命というか、なんというか……。あ、そうだ。言いたいことがあったんだった。
「ねえねえモーリスさん」
『むっ?』
「その大砲って、マナを圧縮して燃焼エネルギーに変換して発射するんですよね?」
『うむ』
「モーリスのは大砲というよりは火炎放射器だな。パナシーアクリスタルを更に圧縮すれば火力が少しは伸び――」
「それって、リアちゃんの使ってるスクロールをカートリッジみたいなのにして、変換する装置の部分もマナタンクにしてもっとマナ容量を上げたら大火力にならないんですか?」
『…………?』
「…………は?」
やっぱり思いつきで言うもんじゃないね。何いってんだこいつみたいな顔されちゃった。いや、言ったからには最後まで発言に責任を持たないと……。
「ほら、例えばこう、大砲にスクロールをセットして、チャージしたマナでスクロールを発動して術を起動、発射ーー!!! みたいな感じで……ダメ?」
『…………マリアンヌ嬢のマスターは天才なのか?』
「ああ……ああ、うん……。天才なんだ、凄く、残酷な程に……あああああああ…………」
『帰ったらそれを形にしよう。して、カートリッジというのは?』
「えっと、発動する術を書いた、もっと頑丈な素材で作った……例えばオリハルコンに術式を刻んだ板みたいな? それを大砲にセットするでしょ? そしたらセットしたカートリッジに刻まれた術が発動出来るようにならないかなーって」
『魔導砲』
「あ、やっぱりもうあるんだ」
『いや、ない。今俺が命名した。リンネ嬢考案の新兵器として開発の許可を貰いたい』
「全然、どうぞどうぞ! 是非、改良出来そうなら取り入れてください!」
『ああ……うむ……ありがとう……』
「リンネ、我も魔導砲が作りたい……」
「つ、作って……? お金は、いっぱい使っていいから……」
「ああ、ありがとう、ありがとう……ああああ…………」
と、とりあえず、装備が強く出来そうだし、良かった、ね……? 良かったんだよね? どうしよう、マリちゃんとモーリスさんが変な笑みを浮かべて肩を揺らしてる……。そ、そっとしておこう……。
『わうっ! (走りたい!)』
「ん~~! あ、そうだ! 影しか見えない奴と、大きくて強いのと、赤くて素早いのが居るみたいだから、気をつけてね!」
『わんっ!!! (わかった! さっき居たよ!)』
「え、どれが――――!?」
え……。待って? どれが、どれが居たの? どん太? どん太!? まさか、赤くて大きくて強くて素早い奴が居たんじゃないよね!? 大丈夫かな、不安だ……。不安だよ……!!!