362 ジャンクケイヴスクラップ作戦・2
◆ ジャンクケイヴ・シャウタ ◆
出発は19時直前とちょっと予定より遅れたけど、お昼寝さん達は班分けに時間が掛かってるから私達が無事先に入場出来た。お昼寝さん達80人近くも集まっちゃって大混雑状態だったよ。10パーティも出来るから上層と中層で分かれるべきか、それとも上層で拠点を2箇所作ってやるか、はたまた中層で拠点2箇所にするのか、色々試行錯誤してやってみるって。どれが一番効率良いんだろうね。
「次から次へと、数だけは多くてうんざり致します」
「質よりも量で制圧してくるタイプの機械の兵隊だな。これだけの数を生産できる能力のある拠点が、こいつらにもあるんだろうか?」
「雷効かないです! イライラします!」
「イライラしないのリアちゃん」
『火の方がよっぽど効くようだ。俺がブレスで道をひらく、討ち漏らしたら頼む』
「ヴァルフリートさんのブレスを軸に、ティアちゃんとゼオちゃんとリアちゃんで広範囲を面制圧しながら進もう。火が有効だから出来れば属性は火で。他全員で後方と横からの襲撃に注意しつつ前進、昇降機を目指すよ」
『わかった…………ガァァ!!!!』
『龍将ヴァルフリートが【小龍砲】を発動しました』
『多数のS-01警備兵A型が溶解しました』
ヴァルフリートさんの小龍砲、ブレス攻撃っていうかレーザー砲に近いようなブレスなんだよね。ビュウン!! っと発射して、一拍置いて爆発するタイプの殲滅レーザーだよ。いずれつくねちゃん辺りもこんなブレスを吐くようになるのかな……。どん太もこう、魔狼砲みたいなの覚えてみない? コミカルに『わおーん』って文字を発射する攻撃でもいいから、便利な範囲攻撃欲しいよね。今のところ周囲無差別攻撃か、一直線上か、ピンポイントに攻撃だけだもんね。
『思ったより、討ち漏らすな……』
『ヒャア! 全然残ってねえじゃねえかドラゴンの旦那ァ!』
『ダメージが入ってるのは必ず倒すんだ、後続の人たちの迷惑になるぞー!』
『うむ』
『水瓶座のモーリスが【焼却火炎砲】を発射しました』
「何回見ても水瓶座なのに火炎放射器なの納得いかない」
『燃える酒作ってる内に、火炎放射器作んのにハマったんだよこいつ~♡』
『うむ……』
『燃料として使っとるもんがアルコールじゃなくなったのはいつからだったけか?』
『う~む……』
『覚えとらんのかい……』
『うむ』
モーリスさん、大砲を使うってまでは知ってたんだけど、まさか背負ってるのが火炎放射器だとは思わなかったよね。水瓶座なのに火炎放射器って、ええ……。燃料は最初はアルコールだったらしいんだけど後からマナに切り替えて、マナを火の力に変換して攻撃する装置とか何か色々な装置を取り付けたら、最終的に大砲の形状になったんだとか。大砲のガワは内部の装置を守るためのものなんだって。モヒカンさんがそう言ってた。
『正直ヴァルフリート氏のブレスを見て火力不足を感じる』
「!?!?」
「え、喋った」
『わうわうわうわう! (しゃべった!)』
『そりゃあ、ちょっとぐらい喋るじゃろ……』
『うむ』
『みてみて、機械の部品』
『キラキラ、綺麗な部品』
「わ~わ~わ~イルちゃんとエルちゃんが何か集めてる!! それ何!?」
『『さあ? あげる』』
この双子の盗賊ちゃん達、大人しいのかなって思ったら予想以上に手癖が悪いんですけど! いつの間にかいないなーって思ったら、ドロップアイテムを回収して来たのかな……なんかキラキラしたのいっぱい持って帰ってきたぁ……! しかもくれるって、良い子かな?
『イルから【エンチャントジャンクチップ】を受け取りました』
『エルから【アップグレードジャンクチップ】を受け取りました』
「おあぁぁぁ……!!」
これ、100個集めるとアーティファクト用のエンチャントアイテムになる奴だー!! こっちも100個集めるとアーティファクト用の強化アイテムになる奴! 集めて復元した時にどんな等級になるかはランダムだけど、これなかなか出ないなーって思ってたのに、あっさり10個ぐらい持ってきたよこの子達!! 凄く良い子!! 手癖が良い!!
『いいもの?』
『かんたん、すぐ集まるよ』
「凄く良いものだけど、今は危ないかなって思ったら集めるのやめて命を優先してね! イルちゃんとエルちゃんの命ほどの価値は、微塵もないから!」
『きゅん』
『マスターリーダーは私達を大事にしてくれる。トキメキを感じた』
『ね、無茶振リーダー。ね。無茶振リーダー?』
『(´ε`;)』
「おにーちゃんこんないい子たちに無茶振りばっかりしてたの? 極悪大罪人じゃん。ゲーセンとカジノ出禁にする?」
『m(_ _;)m』
『それは可哀想』
『リーダーの生きる価値がなくなる』
イルちゃんとエルちゃんにとって、おにーちゃんの生きてる価値ってゲーセンとかカジノで活躍するぐらいしかないの……? いやでも、ほら、硬いし、いざって時に格好いいし、戦闘センスが凄まじいし、ほら、役に立つ……よ……?
『ヒャア!! 何か赤いのがいるぜぇ!! 速え!!!』
「ガッチョンガッチョン言ってます! ティアにゃんやっつけて!」
「は、はいーー!!」
うわなんだあれ、はっや!? 3倍速で動いてるじゃん、気持ち悪ッ!!!
『ティアラが【カオスストライク】を発動、S-01警備兵R型(Lv,????)に1,614,110Kダメージを与え、撃破しました。経験値 20G 獲得』
「R型……? エリートモンスターとはまた違うのが居るんだ、気が付かなかったね。お昼寝さん達に注意喚起しておかないと」
『しゃうた、ぜろ、いち、せきゅりてぃーたいぷ、れいど……って、金属の板に書いてあるよ』
『普通のは、あさると』
「攻撃型、強襲型ってことね。強襲型は数が少ないけど、たまーに居るんだ。なるほど……」
『この、さっき生き残ってたのは、しゃうた、ぜろつー』
「ゼロツー、S-02の方が見た目そっくりで改良されて強いやつってことかな。なーるほど、こっちがエリートモンスターか」
なるほどね、運営も単調でつまらない狩りにならないように、こうして刺激物をちょっとひとつまみ入れてくれてるわけね。いらない。まあ一応A型が経験値20Gの3パーティで6.6Gなのから比べて3倍ってかなり経験値が高いし、沢山狩れれば美味しいんだろうけど……。数居ないしね。
『その大きいキラッとしたのは?』
「ルゥちゃんよくそこから見えたね……どれ、これ?」
『そっ! なんだ、宝石じゃないならいらな~い』
『【?スペシャルジャンク】を入手しました』
「あ゛ぁ゛!?」
いる。こいつもっと増やして運営、今すぐこいつだけにして。ええ~~落ちるんだ、スペシャルジャンク落ちちゃうんだあ~~!!! いやでも、多分アーティファクトじゃなくってエンチャ用現品、もしくは強化用現品とかだろうなあ~……。早く持ち帰って修復と鑑定したい~!!
『あれが昇降機か? 何か大きな鉄の籠のようなものが見えてきたぞリンネ殿』
「あ! そうそう、あれが昇降機! あれで中層に行けるんだよ」
「我としてはここで暫く調査がしたいぐらい宝の山なのだが」
「ダメダメ、もっと奥行くんだから」
「そうか……」
ふう~やっと中層に行ける、中層にもさっきのR型が居るのかな? それからもスペシャルジャンクが落ちたら、もう赤いのはスペシャル持ちって確定だよね。是非毎度狩りたい、もう本当赤いのだけにして欲しいぐらいだわ。
「四足歩行でわらわらと、子蜘蛛のようで不気味で御座いますね……」
『確かに追ってくる時は蜘蛛みたいな奴らだ、言われてみればそうにも見えるな!』
『サリーちゃん蜘蛛きら~い♡』
『うそだ、凄い毒を作るのにって、蜘蛛をいっぱい飼ってるぞ』
『カムイちゃんちょっとサリーちゃんの秘密バラさないで~♡』
確かにこいつら、言われてみれば蜘蛛みたいな……。それに一応こいつらは警備兵なんだから、何かを警備する為に作られた存在なんだよね。昨日は最下層まで行っただけで詳しく調査まではしなかったけど、最下層には何かあるのかな……。
『気を抜くと一気に取り囲まれそうだ。下層はもっと硬いのか?』
「ん~……ん、ヴァルフリートさんのブレスだと、一番の雑魚相手でも2発から3発は掛かるかも」
『そんなにか! なかなか、用心が必要だな……よし、到着だ』
「全員乗れるぐらい大きいし、一気に移動しようか。じゃあ皆乗って~」
とりあえずまずは最下層に安全に向かうところからだよね。この昇降機のスイッチを押すと、こいつら近寄って来なくなるから、さっさと押しちゃおうっと。
『昇降機が作動します。昇降機が作動します。危険ですので、担当者以外は昇降機に近寄らないよう退避してください。繰り返します――――』
『わ、びっくりした~』
『喋る機械』
『潜入即バレ、恐ろしい装置』
「もう入り口で交戦開始した時点でバレてると思うよ」
『『確かに』』
中層はこいつらが一回り大きくなってバレーボール大ぐらいになるだけだけど、攻撃力と機動力も一回り上がるんだよね。おしゃべりが出来るのは、中層を抜けていくまでが限界かな~。下層とかは上層と比べ物にならないぐらい素早い、それこそさっきのR型よりちょっと遅いぐらいで接近してくるし。最下層はさっきのR型と一緒かな?
「この階層よりも素早くて強くなるから、全員ここと一緒と思って油断しないようにね」
『ああ、わかった。第二班は俺を先頭に警戒しながら歩行、足元にトラップがあるかもしれない。注意して進むぞ』
『奇襲に警戒しながら進むぞ! さっきのタイプレイドって赤い奴もいるかもしれないから、注意していくぞ!』
おー……。リーダーが私以外にも居るって、本当に頼もしいね。それじゃあ、中層行きますか~。