359 ギルド緊急会議
◆ 華胥の夢・緊急会議 ◆
僕はギルドマスターとして、危機感を感じている。いや僕だけじゃない、かなりの数のギルドメンバーが危機感を感じていた。こっそりリンネちゃん以外に取ったアンケートの結果がこの会議。なんせあまりの危機感に普段はもうとっくに寝てるはずのレーナちゃんだったり、普段は居ない赫さんやミッチェルさん、高菜君や同盟ギルドからゴリアテさんやごほんさん、ダメぽさんにもってぃに至るまでかなりの人数が今、バビロニクスギルドホテルの超大部屋に集まっているんだから。
「皆集まってくれてありがとうね。周知の通り、リンネちゃん以外が今ここに集まってるよ。なんでリンネちゃん以外なのかは、わかるよね」
「そりゃあ、まあなあ……」
「まずうちは当然なんだけど、同盟ギルドの皆にも伝えた通りなんだけど、ギルド内で決めた共通のルールがあるよね」
「ダンジョンを見つけたら基本的にギルド内で共有、命名できるダンジョンは発見者に命名権やな」
「ギルド倉庫は基本持ち出し自由、モラルの範囲内で持って行って構わねえ」
「PKは自由だよね~。悪質粘着はダメだけどね~」
「逆にPKされ返しても文句を言わない、ギルドの性質上PKが多いのは容認して欲しい、でしたわね」
「困ってる初心者は余裕があれば助けるッス! 逆に半端だと迷惑だからきっぱりやるかやらないかハッキリッス!」
「暴言、過度なセクハラ、直結目的、ステータスに関しては最近は情報共有の面もありますから『ステータスについて教えて欲しい』と聞いている人に教えるのは可能、リアル詮索は公表している方以外は禁止でしたね」
「うんうん、ありがとうね。で、全員が今頭に浮かんでるのは同じワードだね?」
ここまでのルールはいい、ここまでは全員守れてる。間違いなく守れてて、未だに追放者とか苦情とかはゼロ…………なんだけど。問題が、あるよね。
「育成に……」
「貪欲で……」
「あることですわねえ……」
「や~リンネちゃんが貪欲過ぎるって思うことはあるんだけど~……」
「ついて行けてるのはつくねちゃん、レーナちゃん、ダメぽさんとか? 最近は狩りにハマってるからか、レベリング早いッスね!」
「問題はそこだよね、レベリングをソロなり自分の従者と出来る組と、出来ない組が発生してるんだよね最近」
「せやなあ……時間あわへんってプレイヤーも多いで」
「シャウタの警備ロボ狩りが出来るのなんて数人だ~~」
「だな」
「警備ロボ強すぎデース!!!!!」
そう、そう!!! リンネちゃんがとにかく別格で、つくねちゃんとかレーナちゃん達の育成スピードも尋常じゃなく早い!!! 育成に貪欲であれ~って言いながら、レベルがどんどん離されてるこの状況は、ヤバい!!
「リンネちゃんに『育成、ちゃんとしてますか?』とか言われたら『うん、してるよ』とは口が裂けても言えないよね……」
「が、頑張っていると答えるのが関の山ですわ……」
「アカンよなあ……」
「正直、ここまで離れると思わなかった。一応ソロでの時給だが、上層の警備ロボが推定時給1,800G、シャウタ中層から下層での戦闘用ロボ狩りが推定時給3,600G、最下層の殲滅ロボ狩りが推定時給5,400Gって目安のデータが出てる。重ねていうが、ソロだ」
「でも消耗がヤバいッス!」
「昨日狂化モンスター狩りから警備ロボ狩りにしただけで時給倍だもん、あそこはヤバイね。ヤバい」
「ヤバかった。1時間で3レベル上がる、発狂しそう」
「1時間掛かっても1体も倒せる気がしないんだわ」
「それな~」
そして昨日みつけたのが、そう……シャウタ狩り!!! メロウさんはジャンクケイヴには罠ロボしか居ないって言ってたけど、研究所が復活した際に警備ロボとかも復活したみたいで……しかも何処からともなく転送されてきて無限湧きするタイプの機械モンスター扱い! 何度でも蘇る!
た だ し 強 い ! ! !
レーナちゃんとかつくねちゃんは火力ゴリ押しで最初は美味しい美味しいって倒してたけど、集中力が切れたり殲滅テンポがズレたりすると即座に蜂の巣にされて死亡、タンカーとかヒーラーは倒す手段がなくて狩れない、火力不足組も手も足も出なくて狩れないって結果になってしまった。
そう、このままではリンネちゃんに追いつけない、離され続ける……リンネちゃんに『自分達で決めたルールも守れないなんて……』って言われたら僕、終わる。僕たち終わる。そんなことは言わない子だと思ってるし、実際言わないだろうけど! それに甘えてたら僕たちの中の何かが終わる!!!
「――――で、聞いて欲しい案があるんだ。僕はね、あることを考えたんだよね」
「ほう」
「お昼寝案を聞かせてちょ~だ~い」
「聞く聞く~」
だから僕は脳みそをフル回転させて、考えに考えてあることを思いつきました。もうね、これだ!!! って思ったよね。
「ジャンクケイヴシャウタの入口付近の安全地帯に、ギルドハウスを建てます! そしてシャウタの一角を常に制圧し続け、複数のパーティで仮拠点を設置、回避能力なり走る能力が高いクラスの人が警備ロボをごっそり集めてきて、拠点組が範囲攻撃をバンバン撃ちまくって殲滅する! 古き時代から伝わる伝統漁法をやりたいと思ってます!」
「お~~」
「このゲームでか?! これまた、古のネトゲ界の狩りじゃねえか」
「いやでも驚くほど効果的では? 警備ロボは一度ターゲットするとずーっと追いかけてくるし、射程距離外なら二足歩行での射撃攻撃よりも、スピードを出すために四足歩行型になって追いかけてくるし」
「なるほど! シャウタ中を駆け巡って拠点にトレインして、拠点組が殲滅して狩るってことッスか!」
「一般プレイヤーに迷惑かからない範囲でやらないとダメだよね~」
「幸い一般プレイヤーがここに到達出来るのは計算上最短で8日、それまでに全員200にしようぜってことか」
「常に誰かしらが常駐してれば出来そうな狩りだね」
「なんなら無反動装備つけてさ、真覚醒回しも出来るのか。一般マップだし」
「きぬちゃんとか用意時間あればどれだけ連れてきても一撃だし、よさげ」
「イケマース!」
おお、おお……意外にも賛同者が多い……! やる方針で話が進んでくれてる!
「いざって時はタンカーもいる、ヒーラーもいる、エリアバフとかなら他のパーティのも恩恵を得られるしな」
「200越えた組でも参加いいの?」
「そこら辺を今から調整していくんだろ」
「これリンネちゃんにも知らせた方がいいのでは?」
「いや、リンネちゃんは最下層狩りがしたいらしいんだよね……」
「多分マップの全部を集めてもピッタリ200体、200体の20Gで4,000G、ここから参加パーティ毎に割られるから5パーティ居るとしたらワンセット800Gぐらい?」
「ワンセット何分掛かるだろう、シャウタ広いよね」
「どん太くんが走り回った時はワンセット3分だったらしいよ」
「リンネちゃん、3分で4,000G……?」
「リンネちゃんは殲滅力的に15分セットで見てるらしい。しかも最下層だからワンセット12,000G、2パーティだから6,000Gぐらいだと」
「時給24,000Gかあ~……!!」
リンネちゃんの時給を計算して絶望するんじゃないの……。僕もそれ計算して絶望したんだから……。
「釣り役1人で3分なら、4人居れば1分以内に帰ってこられない? 8人のローテーションで釣ってくればどうだろう」
「4人が釣りに行って、タゲない4人が殲滅後にリポップ確認して奥からまた釣って~か」
「ハイスピードサイクル漁法」
「リンネちゃんの時給に追いつくには数が重要ですからね。質が伴わないなら量、一般に迷惑がかからない今がチャンスということですね」
「出来るだけ消耗も抑えたい、アイテム消耗型の人は別の攻撃手段を用意すべき?」
「それはミッチェルがリアちゃんと開発したスクロールが解決するッス! リンネちゃんが一般に売り出す予定だった【古代の火術スクロール】を全部、ギルド資金で買ったッス!!!」
「全部で1000枚、誰でも使用出来ます」
「これはやるしか無いでしょ~」
「問題は崩れた時か?」
「崩れた時のための仮設ギルドハウスでしょ」
「あ~それでギルドハウスか!」
今僕は必死に、みんなから出た案を書いてはまとめ、書いてはまとめを繰り返してるんで……。すみません皆さん、もうちょっとお話し合いを続けて居てくださ――
「――ここまでの発言を纏めましたわ。同盟ギルドの掲示板から各々コピーしてくださいまし。それで、纏めた結果この狩りにはいくつかのリスクポイントがありますわ。資料をご覧になって?」
「ゔぇ」
あ、あ……!? ペ、ペルちゃんが、いつものペルっとした顔をしてない!? いつの間にかシャキッとしたガチの顔になってる!? 仕事の出来る女社長みたいな感じになってるーー!!? ぼ、僕の役目が……!
「まだコピー出来ていない方はいらして? 全員出来ましたわね? やり方がわからない方は挙手なさって、誰かに方法を教わってくださいまし」
「ご、ごめ、どうやってコピーするの……?」
「もってぃ……」
「すみませんうちのギルマスがまだです!!!」
「あ、出来た! ごめん出来ました!!!」
もってぃ……。どうして君はどこまでもこう、もってぃなんだろうね……。そこが良いんだろうけど。
「まず、今回実施するのはシャウタ上層で集めて纏めて狩る、仮称シャウタシュレッダーと呼びますわね。このシャウタシュレッダーの良い点としてまず、ソロで狩れる方は楽な経験値収入、タンカーやヒーラーには破格の経験値収入、更に大勢での参加による安定性、一般プレイヤーに迷惑がかからない今しか出来ない大胆な大規模行動、リンネさんに追いつける超効率の狩りが出来る点ですわね」
「そうだな。特に問題点は無いように見えるが」
「だよね~」
「あ~」
うんうん、そうだね。かなり効率的な狩りが出来て何も問題点が無いように感じるけども……。
「では次に、お気づきの方もチラホラと出てきましたわね。シャウタシュレッダー致命的な問題点がありますわ。それは……釣りに行く方の負担が尋常じゃなく大きいことですわ! 拠点で待っていて瞬間的に火力を出す、タンカーの仕事をする、ヒーラーの仕事をするだけなら負担は少ないですけれど、常に走り続けなければならない釣り役の負担が激しいところですわ!」
「ああ~~~」
「確かに、間違えば一人だけデスペナだ」
「デスペナじゃなくて、走り続けるのキツイよね~」
「1時間走りっぱなしはキツイわな」
「ん~確かに」
あ~~そこまで気が付かなかった~~……。そっか、釣り役の負担が……。
「ローテーションでの釣りは効率が上昇します。回転率が上昇するということは負担も増えるということ。故にリンネさんは15分のローテーションというクールタイムを設定しています。狩る気になれば最下層で7分サイクルが可能と言っていましたわ。しかしそれをしないのは釣り役の負担が大きい故。釣り役の負担軽減を考えるべきです。どうしても効率を上げたいのであれば、息を合わせたローテーションではなく、釣り役のタイミングでの拠点へのトレイン。拠点への負担を上げるべきですわ」
「確かにこれやと釣り役に寄生しとるようなもんやなぁ」
「言われてみりゃ、こりゃあ親鳥に餌を運んできてもらう雛鳥みたいなもんだな」
「親鳥が潰れないための工夫、そもそも釣り役が何人出来るかって問題もあるわな」
「きぬはデキマース!」
「私もできる、ふふ~ん」
「釣り役に立候補する方は後で、今は釣り役への優遇と拠点の負担についてどう考えるか、全員の意見が欲しいところですわね」
なるほどね、釣り役が親鳥で、拠点が雛鳥か~。言われてみればそのまんまそうだね。ん~やっぱり、思いつきで言うと問題が出てくるもんだね~……。
「釣り役にお金出し合って払うとかは?」
「それはそれでなんか不公平感あるわな、いや感謝すべきなんだけど、なんか違う感じ」
「ん~確かにお金はなんか違うよね」
「あ~こっちは、ウニで転がれば大体なんとかなるから、一番負担少ない釣り役なのがな~」
「いうてジャンクケイヴシャウタでもジャンク品落ちるじゃん。優先獲得権は?」
「獲得希望のジャンク品を決めておける、のほうが良いかも」
「あ~大罪シリーズの何々が欲しい~みたいな感じ?」
「それが出たら貰う、出てなかったら普通に分配かオークション?」
「そこもリスクポイントですわ。ドロップアイテムの分配ですわね。例えばAパーティで4つのレアアイテムが出たとして、その他はゼロだった時、この分配をどうするかも問題ですわ」
「あ~~確かに、それも考えてなかったな」
「それこそオークションだな」
「釣り役は希望箇所宣言、出なければオークション?」
「それが良いかもしれないね――――」
「後は――――」
おお……。どんどん意見が出てくる、僕の案が形になっていく……! なんかちょっと、感動的かも……!
「――それでは、おおよその草案が出来ましたわね。まず明日の19時より順次開催、インスタントハウスに関しては先程話した通り10Gもあれば出来ますわ。全員で少しずつ出して頂ければ、最低限の機能を持った単純に大きいだけのギルドハウスが仮設で設置出来ますので、余裕のある方は寄付をお願い致しますわね。パーティに関しては釣り役が各パーティに入るように、釣り役は交代制で3人、殲滅したら1人が走る形で。細かい形式に関しては明日までに纏めておきますわね」
「ペルちゃんありがとう~!」
「お~し、やる気出てきたな!」
「150目指してたら急に200が見えてきたよお……」
「ミッチェルさん、スクロールの増産……自分も手伝えますか? 手伝えるなら手伝いたいですね」
「あらゴリアテさん、出来ればお願いします。なかなか大変でして」
「それじゃあ今日は解散! 明日リンネちゃんにも会議内容を伝えよう~! みんな遅くまでごめんね~! お疲れ様~!」
「うーい」
「乙~」
「寝るか~おやす~」
「おつおつ、ねんね~」
「すごい企画ありがとね~」
「範囲攻撃特化装備作っとくか~」
「いいね、やっとこ」
「火力なんてなんぼあってもいいからね。やれるだけやっとこ」
「寄付忘れんなよ~」
ふう~……もう2時じゃん!! 2時間も会議してたの!? うーんでも、有意義な会議だったね……これは、明日が楽しみだあ~~!!
「くぅ……」
「アッ! レーナ、ねんねねんねデース……!」
「まあいつもはもう寝てるからな。後は纏めるだけってところまでは起きてたんだぞ」
「ほな、ワイも寝るで。明日は早めに来るで!」
「おう、お疲れ」
「お疲レイジー!」
「なんやその挨拶、ほなまた」
『レイジがログアウトしました』
遅い時間までやったからね、寝落ちしてる人もいるか~。まあまあでも、これはリンネちゃんに何としても近寄るチャンスだから……。一般に迷惑をかけず、一気にレベリングするチャンス! 逃すわけには、いかないよねえ~!!!





