357 アブダクション
◆ 不明なエリア・???? ◆
どん太、千代ちゃん、ゼオちゃん、デロナちゃん、アイナちゃん、メロウちゃん、私の7人で転送装置に入って、第二都市・北カナンの北側……バビロニクス方面辺りに大規模テレポートをしようとしたところまでは何も問題なかったんだよね。問題はその後だったのね。
「ダメだ、全く位置がわからない」
「トラップやモンスターも感知出来ませんねえ~……。しかし、脱出経路も見つかりませんよお~……」
「やはり、目の前の城しか……」
『わう~ (なんだか怖いね~……)』
「研究所、全く連絡繋がらない、博士反応ないです!」
「どうしよう、りんねーさま……」
「ん~~……」
テレポート先は全く知らない場所、クリスタルがバリバリ生えまくった洞窟……地下……? 地下にある水晶の城みたいな、いかにもファンタジー感を全開に出してます! って場所。どう考えてもテレポート先が異常だよね、テレポート直前に座標がどうのとか、引っ張られるとか騒いでた研究員さん達がいたから、絶対にテレポートに異常があってここに来ちゃったやつだよね。はあ~それにしても、でっかい城だあ…………。
出発した瞬間に任務失敗がチラついてガチ凹み状態だったアイナちゃんを慰めて、とりあえず現状を打破しないとってことで勇気づけて、あれやこれや指示を与えてるうちにアイナちゃんからフレンド申請が届いて、いつの間にか【アイナの心の支え】になっちゃったのは嬉しいことだけど、本当……全くをもってここが何処なのか見当もつかない。私もギルドチャットが送信できない、個人チャットもダメ、従者への念話もダメ、ポイントショップとオークションシステムすら利用できない、ログアウトを選択しようとしたら『ここに取り残された従者以外のNPCが完全にロストします』とか警告が出たし、いやいやいやいやヤバすぎ。私にどうしろと。うん……目の前の城に入れってことなんだろうけどね。
「こうなったら入るしかない。ここでジッとしていても現状を打開できる可能性がゼロに等しい。感知に長けたアイナちゃんとどん太が後方からの奇襲を警戒、メロウちゃんと千代ちゃんが先頭、ゼオちゃんとデロナちゃんと私は奇襲を受けたら即座に対応出来るように常に戦闘準備。これで進もう」
「……かなりの危険を冒すことになるが、やむを得ない。それに賛成する」
「賛成ですねえ~。あ! 狐ちゃんペアで先頭ですねえ~♪ 仲良くしましょうねえ~♪」
「むむむっ……! 此方のほうが優秀な狐であることを証明せねば……」
「張り合って共倒れしたら私達まで巻き込まれるから、協力し合ってね」
「「はい……」」
「賛成、ここに引き寄せた犯人、きっといます!」
「あ! ドク達は引っ張られるって言ってたもんね、引っ張った犯人がきっといるよね!」
『わうっ! (行こうっ!)』
かなり危険だけど、ここにいては埒が明かない。全員この城に入るってことで賛成だし、警戒しながら前に進もう。テレポート先を捻じ曲げてここに引き寄せた犯人が、きっとここにいる……はず!
「行こう、かけ続けられる補助は切らさないように」
『メロウが【ハイパーサーチ】を発動』
『アイナが【シックスセンス】を発動』
『ゼオが【メタモルフォーゼ】を発動、正体を認識出来なくなりました』
『どん太が【ストライキング】を発動、次のスキル攻撃時に5秒間、最終ダメージ50%上昇します』
『デロナが【プロティシルド】を発動、デロナの周囲に攻撃を防ぐバリアが展開されます』
『姫千代が【陽炎】を発動、攻撃を受けた時にダメージを無効化し回避します』
『姫千代が【滅殺】を発動、次のスキル攻撃の最終ダメージを50%上昇します』
「彷徨える恐怖の亡霊達よ、我らの力とならん! ネクロフィアーフォース!」
『【ネクロフィアーフォース+1】を発動、6分間パーティメンバーに【ステータス+11%】【被ダメ時3秒無敵】【1度だけ状態異常を完全無効化】を付与します』
ネクロフィアーフォース、恐怖の呪物の効果でスキル効果が強化されたんだけど、これも沼だなあ……。恐怖の呪物を作ったら、そこから先は恐怖の呪物強化ってシステムに変わって呪物を強化しなきゃならないんだけど、素材に使った恐怖の結晶の種類は経験値が倍、その他は等倍扱いで上がっていく仕組みなんだよね。
つまり、バビロン様の名前が入ってる恐怖の結晶で呪物を作ったら、バビロン様の恐怖の結晶で強化すれば2倍、原初のマナに触れた~とかカレン様の力に触れた~とかで強化すると等倍、しかも結晶にも等級があって『触れた』『帯びた』『秘めた』『籠もった』『凝縮された』の5段階。当然凝縮されたって結晶が一番経験値量が高いんだけど、これ……作り出せる呪物の質も上がる確率が高いんだよね。はい、今使ってる呪物は最低ランクなんで、出来れば【魔神バビロンの力が凝縮された恐怖の地獄結晶】で作って、今使ってるのは売りに出そうかなって思います……。
【魔神の力に触れた恐怖の呪物】
・【必須】神技Lv1獲得
・アーケインパワー+10
・基本MAG+100
・基本MND+100
・恐怖系スキル強化+1Lv
強化段階【0】・装備登録者【リンネ】・重量なし
ちなみにカレン様の呪物が【STR+100】【VIT+100】で、ティスティス様が【TEC+100】と【AGI+100】、原初のマナが【全ステータス+30】、アーケインパワーの上昇量は一緒……。このアーケインパワーっていうのが、この数値が高ければ高いほど最終ダメージ量が増えるっていうシステム。相手がアーケイン抵抗0でこっちが100なら最終ダメージ+50%、相手がアーケイン抵抗100でこっちも100なら変化なし、逆に相手が抵抗100でこっちが0なら最終ダメージ-50%、アーケインパワー2毎に最終ダメージが1%上がる仕組みって覚えておけばいいね。ちなみに減少と上昇の量は50%が最大値。
はい、お気づきでしょうか。これ強化必須です。獄で得たアーケイン抵抗が+50みたいなのでまずはこれに到達する呪物+4を目指さなきゃならないんだけど、+4にするのに【触れた】なら32個、【帯びた】なら16個、【秘めた】なら4個、【籠もった】なら2個、【凝縮された】なら1個必要なんだよね。秘めた以上が出る可能性が低い気しかしないよね? 絶対そう、間違いなくそう。
「…………不気味なほどに静かだ」
「誰も居ないのが、更に不気味ですねえ~……」
「これだけ広い城だと言うのに、警備兵も何も居ないのでしょうか……」
『わう~? (おかしいね~?)』
うわ、完全に余計なことを考えてた。いやでもなんかこう、ここ落ち着くっていうか、嫌な雰囲気はないんだよね。静か過ぎるってだけで。むしろこれだけの場所に住んでる存在って、その気になれば私達を捻り潰すぐらい一瞬でできると思うんだよね。それをしないってことは、割と好意的っていうか敵対心はないんじゃないかなって……まあこれは憶測だし、全員の注意力が激減することになるから言わないけど。実はこっそり多分大丈夫じゃないかなって勝手に思ってる。
「おや、おやおやあ~……如何にも、ですねえ~……」
「如何にも、で御座いますね……」
「私の分身に行かせよう」
『アイナが【分身】を発動、6人の分身が現れました』
「あの扉の向こう側を確認してく――――」
『――――ようこそ旅の者よ。さあ、どうぞ入ってくださいな』
『古き大きな扉が開きました……』
「帰っていい~?」
「…………」
『アイナが【分身】を解除しました』
「…………」
「ええ……」
アイナさん……ドンマイだよ……。肩ポンポンしてあげたら、ちょっと涙目になってる……可愛いね……。それより、やっぱりこの城の主は私達の侵入に完全に気がついてるし、その気になればいつでも排除可能って感じの余裕さえ感じさせる声だったね。もうしょうがない、行くしか無いか。
「行こう、私が前に出よっか?」
「いえ此方が」
「いえいえ私が」
「むっ」
「むっ!」
「こら、無駄に張り合わないの」
「くぅ~ん……」
「むぅぅ~……」
『わんっ! (僕が行く~!)』
「あ! どんちゃ、危ないから!」
千代ちゃん達が無駄に張り合ってる間に、どん太が抜け駆けしよった! んもう~どん太に続け~! 私達をこんなところに引き寄せた奴の顔を拝みに行くぞ~!
『わっうぅん…… (わぁぁぁ…………)』
「は……」
『――――ようこそ。出迎えも出さずにご無礼を、どうか許してくださいね』
なん、だろ……。白い翼、これだけで若干のむむっ……! っと来るポイントだけど、頭の上にヘイローはないし、ターゲットしてみても特効効果が活性化しないからメルティス勢力ではないのは確か。メルティス勢力だとターゲットした時に特効効果活性化のアイコンが表示されるから、間違いない。あ、ちなみにターゲット機能については最近レーナちゃんに教えて貰った……相手を見つめて手元のUIでターゲットする、を選択するだけだったよ。むしろ今までやってなかったのってすっごい驚かれたけど、知らない機能は気が付きようがないからね、しょうがないね……。で、このドデカイ謎生命体は、誰?
『私の名前はヴァハール、龍神王ヴァハールと申します。その名の通り、龍の神です……全ての龍を統率しているわけではありませんが……』
「龍神王ヴァハール……!!! 馬鹿な、古に滅びた龍の名だ!」
「古き時代、ゴルゴラ王国の魔族迫害と共に、聖メルティス教団によって滅ぼされた龍の国と、イリーナから聞いたことがありますが~……」
『そのヴァハール龍王国で間違い御座いません。こうして我々は地下に潜り、傷ついた体を癒やし、世界が変わるまでここで眠りにつこうと決めたのです』
「我々……?」
待って、今間違いなく我々って言ったよね。ってことはここにはヴァハール以外の龍も存在してるってこと……だよね?
『転移先に龍が大勢居ては警戒するどころか、即座に戦闘になってしまうでしょう? 今私の臣下達や兵士達は一時的に隠れております。決して害する目的で潜んでいるわけではありませんから、お気を悪くなさらないでください』
「その言葉を信じます。その気であればとっくに私達は全滅してるはずですし」
『ありがとう、聡明な人の子よ』
なるほどね。私達を迎え入れるのにドラゴンだらけの状態じゃ絶対警戒されるから、今はどっかに隠れてるってわけね……。これが罠だったとしても、自分達の王にすんなりと会わせるってのは愚行だろうし、王自らがこうして迎え入れてるのが何よりもの歓迎の証、だよね……多分。きっとそう。そう思いたい……。
『まず、ここに誘った理由を説明させてください。先日より地上の動きが活発になったことを感知し、我々は地上で戦争が起きたのではないかと予想をしました。それはますます大規模なものとなり、ひとつかふたつ、国が消えたのではないかとも。しかし我々にはこれを確認しに行くだけでもリスクが高い……殆どの者が体が大きくなり過ぎ、人化の術を覚えている者は既に亡くなり……。我々の中に治癒や蘇生などといった高度な術を使える者もおらず、外に出る事自体がリスクとなってしまったのです』
「地上に出て、敵対者のど真ん中に出る可能性もあるからリスクってことね?」
『そうです。我々は過去の戦いで力を失いすぎました。そしてそれは未だに取り戻せていません……。隠れるのに長け、外の様子を感知する能力に長け、餌となるマナの流れる川を掘り続ける毎日。これではまるでモグラではありませんか、我々は龍、ドラゴン、自由に空を飛び……自然を愛し……宝石や鉱石を磨き、鍛え、育てる。嘗ての栄光を取り戻したいのです。どうか、力を貸していだけませんか』
ん~…………。このヴァハールの言うことを鵜呑みにするならぜひとも協力してあげたいけど……。悪いけど、その場の勢いや感情だけで物事を決めると痛い目に遭うのはよくあることだし、未だにヴァハール以外の龍を見てない内に助けると決めるのも違う気がする。
『ストーリークエスト【龍神王ヴァハールの願い】が発生しました』
「いくつか質問をさせて」
『答えられることであれば、なんでも』
気になることを全部聞いて、それからかな。
「まず、どうして私達なの?」
『簡単……というのも言葉が悪いですね……。地上で大規模な転移術式、それも我々に馴染みのある転移術式が起動したのを感知しました。それを起動したのが魔族の気運を帯びた存在だということもわかりました。つまり、次に利用する者がまた魔族であれば、その時にここへ誘おうと議会で決めたのです。そして現れたのが、あなた方でした』
「なるほどね。筋は通る」
「ドクか……」
「ドクですねえ~。昨日使いましたからねえ~」
「あれはずっと使ってなかった、痕跡が僅かでも漏れるのを嫌がっていたからな……」
「ゼオとデロナの反応を見て、それどころじゃありませんでしたからねえ~」
なるほどね、私達を狙ったわけじゃなくって、あの転移装置に乗った魔族を狙ったってことね。じゃあ次……。
「あなた達の具体的な要求は? どこまで助けて欲しいか明確じゃない、何から何まで支援しろって言われても無理だからはっきりさせたい」
『我々が地上に出て安全に暮らせる場所、絶対安全でなくてもよいです。聖メルティス教が今にも攻め込んでくる場所でなければ、それこそ何もない荒野であっても。安全に外に出るための経路が知りたい、世界情勢が知りたいのです』
「なるほどね……」
『当然対価は支払います。まず、あなた方にこの地下龍王国の宝物庫に眠る宝具、神器、将器、それらをお譲り致します。物を見てから決めて頂いても構いません』
「私達の国土の一部を提供するわけだから、国に対しての見返りと国交も結びたい」
『…………? あなたは、国の一部を提供できるような立場のお方なのですか……?』
「間違いなく国に一番貢献しておられる方に御座います。多少無理を言えば、国土の分譲も可能かと思われまする」
「リンネは凄い人! 神様に一番愛されてるから、きっと大丈夫!」
「魔神バビロン様の、みぎうで? なんだよっ!」
『龍神王ヴァハールの好感度が激増しました』
『ストーリークエスト【龍神王ヴァハールの願い】が【龍神王ヴァハールのお願い】に変化しました』
『こ、これは飛んだご無礼を……。謝罪させてください』
あ、ゼオちゃん達が所属をバラしちゃった。まあいっか、ちょっとこれ以上はゲロったりしないように『し~っ』ってしとこ。みんな『あ、ごめんなさい』って顔してるわ、良いのよ、大丈夫大丈夫。
「謝罪を受け入れます」
『ありがとう、聡明なる魔神バビロンの愛し子よ』
さっきまで人の子だったのに、急に呼び名が変わってる~! あれ、でもこの人って天魔大戦より前に地下に籠もってるはずなのに、バビロン様のこと知ってるのかな?
「今浮かんだ質問を。バビロン様についてはどこまで知っていますか?」
『魔界を統べる魔神となった者、とだけは……。それ以上は……』
「今バビロン様は地上に進出し、砂漠の国ステラヴェルチェと貿易都市ローレイを支配下に置き、聖メルティス教の国であるルナリエットとメルティシア法国を滅ぼしました」
『なんと……!!! メルティシア以外の国はわかりませんが、あの国の巨大さは存じております。アレを滅ぼしたということは、魔族は昔のように隠れ住んでいる肩身の狭い暮らしをしていないということですか?』
「そうです。今、魔族と天族は拮抗しています。どちらかと言うと、魔族側に勢いがある状況かと」
『龍神王ヴァハールの好感度が更に上昇しました』
『なんと、素晴らしい……。それほどまでの躍進、何百年という争いがあって、先日の大規模な抗争というわけですか……』
「あ、多分ここ数週間かな……」
『…………?』
そうだね、何百年……下手したら何千年と迫害されてきた魔族が、急に大躍進を遂げて聖メルティス教をフルボッコにしてるよ~なんて信じられないよね。こればっかりは実際の光景を見るまでは信じて貰えないと思うわ。
「次の質問良いですか?」
『え……? え……? あ、ど、どうぞ……』
「我々の中には龍を食べる者が居ます。どうしてもその肉が好きで、主にレッドドラゴンを食す者がいます。共に暮らし、主従関係となって戦っている者もいます。その点についてはどうお考えですか?」
『我々の同族にも人間を喰らう者がいます。それと変わらないでしょう、この国にいる者は人を食べたりはしませんが……。皆、そのような同族がいることは理解しているはずです』
「ありがとうございます。我々も知性と理性ある龍を食べることはないでしょう」
『龍神王ヴァハールの好感度が少し増加しました』
そう、これもはっきりさせておかないとね。後からレッドドラゴンをもっちゃもっちゃ食べてるどん太を見て怒り狂われたら困るし。これに関しては理解があって良かった。さて、後は……これかな。
「最後に、死者を生き返らせる行為は死への冒涜だと思いますか?」
『生き返らせる者がそれを受け入れ、生き返らせた者が死者を傀儡として扱わない限り、そうは思いません。古き友人が帰ってきた、そのような感覚であると思っています』
「ありがとうございます。私の従者は皆が殆ど、一度死を迎えた者達……私の蘇らせたアンデッドです。今は力を付け、進化を遂げ、生者と変わらない肉体と生命を手に入れましたが……」
『到底そうは見えません! そう、そうでしたか……!』
『龍神王ヴァハールの好感度が増加しました』
「とりあえず、質問はこれだけです。まずあなた方の安全な脱出経路、そして魔神バビロン様への謁見、その後の展開次第でバビロニクスかローレイ周辺への移住、これでいいですか?」
『ええ、ええ! それで、どうかお願いします!』
ドラゴンにしてはすっごく話の分かる相手だなあ~……。まあ、ここまで聡明なドラゴンじゃなきゃ国を作り上げ、危機を乗り切り地下に逃げ込んで今日まで大勢を生かし続けることなんて出来ないか。
『…………その、リンネ殿? で、合っておりますか?』
「あ、失礼しました。リンネと申します。魔神バビロン様を崇拝し、魂を捧げていると言って過言でありません」
『では、改めてリンネ殿……。その、逆に質問をしても宜しいですか?』
「大丈夫です、どうぞ」
『死者を蘇らせることが、出来るのですか? それは、大規模な術で、難しいものですか……?』
「私の力が及ぶ相手かどうか、死者の状態、蘇らせる為に触媒が必要な場合もあります」
『そう、ですか……。無礼を承知で、その……いえ、やはり、なんでもありません……』
『サブクエスト【龍将ヴァルフリートの復活】が発生しました』
なるほど、これは好感度が足りたのと、私が復活系スキル持ちだからついでにクエストが発生したって感じかな? 結構奥手っていうか、ドラゴンにしてはズカズカ来ないタイプだから聞いてあげないと進行しなさそうだなあ~。聞くか~……。
「誰を蘇らせれば良いんですか? 大勢は無理かもしれませんが、一度か二度なら可能かもしれません」
『…………! では、あの……。我々が地下へ逃げ込むまで戦い続け、この国を守った英雄……ヴァルフリートを……彼にお礼が言えるだけでも構いません。彼が蘇るのを拒否するのであれば無理にとも言いません。どうか、彼を……。我々全員の、心残りなのです』
「わかりました……試してみましょう。案内して下さい」
「良いのですか? リンネ殿、これこそ……その……」
「大丈夫、その気になればこの場で全員消し炭にされてるよ。大丈夫」
英雄ヴァルフリートかー……。おにーちゃんもフリオニールで、なんかどことなく名前が似てる感あるなあ、勝手に親近感が……。とにかく、行くだけ行ってみてやってみようかな。出来なかったらごめんなさいってことで。
『私の霊体が霊廟まで案内します。見ての通り、体が大きすぎまして……』
「霊体になれるならそれで地上まで偵察に行けば……?」
『この城から出れぬ程度しか活動出来なくて……申し訳有りません……』
「あ、失礼しました……」
『クエスト【龍神王ヴァハールのお願い】【龍将ヴァルフリートの復活】を受諾しました』
『制限されていた機能がオンラインになりました』
あ、チャットとか色々使えるようになった。オークションも行ける? 行ける! どこでも倉庫がちゃんとどこでも来てくれるようになってる! ふあ~~……これで一応、最悪の状況は回避できたってことでいいのかな。ログアウト時の消失警告も無いし、危機を脱したね~。ふえ~良かったあ~……。
◆ ◆ ◆
え~~……。ヴァルフリートの復活素材、全く足りません。そこで急遽私が取った行動は、そうですね。どこでも倉庫と繋がってる金庫から売上金の回収、そして必要素材をオークションで爆買い、これからの必要になる可能性を考えて5セット分ぐらい購入したということですね。なんせこの復活に必要な素材の一式、前に魔神兵さん達の復活に必要だったのと全く一緒の内容だったもんね。買っとこ買っとこ……。
『こんなに希少な素材が必要だったとは……。も、申し訳ありません。やはり、この話は……』
「もう取り出しちゃったのを引っ込める訳にはいかないでしょ。やるよ」
『ああ、なんという……! ありがとうございます……!』
本当腰の低いドラゴンだよね……。もっと尊大な奴だったら死を覚悟でコテンパンにしてやるところだったけど、ここまで礼儀正しく頭をペコペコと下げる相手だとね、うん……ま、いいや。やってみようか!
「…………起きろ」
『対象が復活を受け入れました』
『触媒を消費します……【ヴァルハラの花】【大いなる福音の鐘】【魔の大晶石】【死の大晶石】【冥の大晶石】【クアドラハイパナシーアクリスタル】【魔晶石☆5・9999個】を消費しました』
『龍将が貴方の従者に――既に龍神王ヴァハールの従者です。名前を――名前は【ヴァルフリート】です』
さようなら、馬鹿みたいに高い触媒たち……。おはよう、ヴァルフリートさん……。しっかり私の従者にならずにヴァハールさんの従者に戻る辺り、このヴァルフリートさんは忠誠心が凄まじいんだろうねえ。
『ああ、ヴァルフリート……!! ごめんなさい、私達の為に……!!』
『ここは……これは、一体……。そうだ、敵は! 戦わねば!!!』
どーどーどーどー……。お、落ち着いてくださいヴァルフリートさんや、その物騒な武器をはよ戻して貰って……。
『貴方のおかげで我々は地下に逃げ込めました! ここは貴方が戦った時よりも数百年後、今は戦う相手は居ません!』
『…………そう、か。そうか。そうなのか。では、こちらのお嬢さん方は一体……?』
「初めましてヴァルフリートさん。私はリンネと申します。貴方を蘇らせた、死霊術師です」
『貴方が俺を! これは失礼した、龍将ヴァルフリートだ。この度の件、感謝する』
「いえ~……じゃ、後は積もる話もあるでしょうから……途中紹介して貰った応接間、使っててもいいですか?」
『あ……! ぜ、是非! 今、隠れていた者達が戻っているはずですから!』
「よし、じゃあ全員移動~! ほれどん太、回れ~右!」
『わう~わうっ! (は~い! 狭い~!)』
じゃ、私達はこれで……。後はこう、話したいことがいっぱいあるでしょうからゆっくりして貰って……。慣れないことをして緊張状態が続いたから、少しリラックスした~い。後、今の状態をギルドの皆に伝えないとね。あ~わわ~……戻ったら大変だ~…………。





